第1章 高齢化の状況(第3節)

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第3節 〈特集〉高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査(概要)

内閣府では、「高齢社会対策大綱」(平成30年2月閣議決定)に基づく、「就業・所得」「健康・福祉」「学習・社会参加」「生活環境」「研究開発・国際社会への貢献等」の分野を踏まえて、高齢社会対策に関する調査を実施しており、令和3年度は「高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査」(調査時期は令和3年12月)を実施した。以下において、その結果の一部について紹介する。

なお、本調査は60歳以上の男女を対象としているが、本白書では65歳以上の男女の集計結果を紹介する。

1 生きがいを感じる程度について

生きがいを「十分感じている」が22.9%、「多少感じている」が49.4%となっており、合計すると72.3%となっている。

図1-3-1 生きがい(喜びや楽しみ)を感じる程度について(年齢・性別)

2 日常生活の状況について

(1)近所の人との付き合い方について

82.8%が「会えば挨拶をする」、57.3% が「外でちょっと立ち話をする」と回答している。

また、生きがいを「十分感じている」と回答した人の割合は、「趣味をともにする」と回答した人では33.2%、「お茶や食事を一緒にする」と回答した人では30.4%、「外でちょっと立ち話をする」と回答した人では26.2%と、いずれもこうした付き合いをしていない人に比べ、高くなっている。

図1-3-2 近所の人との付き合い方(複数回答)(年齢・性別)
図1-3-3 生きがいを感じる程度について(近所の人との付き合い方別)

(2)親しくしている友人・仲間をどの程度持っているかについて

「普通に持っていると感じる」(39.1%)が最も高く、次いで、「少し持っていると感じる」(35.1%)となっており、「たくさん持っていると感じる」(5.3%)を合わせ、79.6%が親しい友人・仲間を持っていると回答している。

また、親しくしている友人・仲間を、より多く持っていると回答した人ほど、生きがいを「十分感じている」と回答した人の割合は高くなっている。

図1-3-4 親しくしている友人・仲間をどの程度持っていると感じるか(年齢・性別)
図1-3-5 生きがいを感じる程度について(親しくしている友人・仲間を持っている程度別)

(3)ふだんの外出について

「よく外出する」が55.6%、「たまに外出する」が29.9%となっており、合計すると85.5%となっている。

また、外出頻度が高い人ほど生きがいを「十分感じている」と回答した人の割合は高くなっている。

図1-3-6 ふだん(散歩なども含め)外出するか(年齢・性別)
図1-3-7 生きがいを感じる程度について(外出頻度別)

(4)情報機器の利用内容について

「インターネットで情報を集めたり、ショッピングをする」(23.7%)が最も高い。一方、「情報機器を使わない」と回答している人が17.0%となっており、中でも75歳以上の人は「情報機器を使わない」と回答した割合が高い。

また、生きがいを「十分感じている」と回答した人の割合は、「情報機器を使わない」と回答した人では10.3%であるのに比べて、「パソコンの電子メールで家族・友人などと連絡をとる」「インターネットで情報を集めたり、ショッピングをする」「SNSFacebookTwitterLINEInstagramなど)を利用する」と回答した人では3割を超えている。

図1-3-8 情報機器の利用内容(複数回答)(年齢・性別)
図1-3-9 生きがいを感じる程度について(情報機器の利用内容別)

3 社会活動等への参加について

(1)現在の収入の伴う仕事について

自営農林漁業、自営商工サービス業、会社または団体の役員、フルタイムの被雇用者、パートタイム・臨時の被雇用者を合わせて30.2%が、収入の伴う仕事をしていると回答している。

また、収入の伴う仕事をしている人の方が、収入の伴う仕事をしていない人よりも、生きがいを「十分感じている」と回答した人の割合が高い。

図1-3-10 現在の収入の伴う仕事(年齢・性別)
図1-3-11 生きがいを感じる程度について(収入の伴う仕事の有無別)

(2)社会活動への参加について

社会活動に参加した人は51.6%となっている。活動内容については、「健康・スポーツ(体操、歩こう会、ゲートボール等)」(27.7%)、「趣味(俳句、詩吟、陶芸等)」(14.8%)などとなっている。

また、社会活動に参加した人の方が、参加していない人よりも、生きがいを「十分感じている」と回答した割合が高い。

図1-3-12 過去1年間の社会活動への参加(複数回答)(年齢・性別)
図1-3-13 生きがいを感じる程度について(社会活動への参加の有無別)

4 健康について

現在の健康状態について

「良い」「まあ良い」と回答した人が31.2%となっている。

また、健康状態が良い人の方が、良くない人よりも、生きがいを「十分感じている」と回答した割合が高い。

図1-3-14 現在の健康状態(年齢・性別)
図1-3-15 生きがいを感じる程度について(現在の健康状態別)

5 まとめ

今後も、一層の高齢化の進行が見込まれる中、高齢者が生きがいを持って満ち足りた人生を送るためには、身近な地域での居場所や役割、友人・仲間とのつながりを持つこと、デジタルデバイド解消に向けた支援等が重要となってくると考えられる。

また、高齢者が、様々な就業や社会活動への参加の機会が得られるよう、環境整備を図るとともに、生涯にわたる健康づくりを推進していくことが重要である。

(トピックス1)デジタルを活用し高齢者と地域のつながりを生み出している事例

富山県朝日町は(株)博報堂と連携して、地域における高齢者の移動の課題を解決するため、住民の普段のマイカー移動の際に、自由に移動しづらい近所の高齢者を乗せる乗合サービス「ノッカル」の取組を令和3年10月から本格実施している。利用者向けの予約システム、ドライバー向け運行管理システムを活用し、高齢者の移動支援が行われるとともに、世代を超えた交流も生まれている。

(トピックス2)高齢者雇用の推進の取組事例

(株)ノジマは社会に貢献する経営を目指し、高齢者の雇用機会の創出のため、平成25年4月に定年を60歳から65歳へ引き上げ、令和2年7月に定年後の再雇用年齢の年齢上限を80歳に引き上げた。再雇用された高齢者が同世代の客層の根強い支持を得るとともに、若い従業員の良き相談役となっている。

(トピックス3)社会活動への参加促進の取組事例

大阪市鶴見区において、定年退職後の高齢者の地域での居場所づくりや社会活動への参加が課題となっており、それを促すため、平成30年4月、野菜を栽培し地域のこども食堂等に無償で提供する「鶴見区シニアボランティアアグリ」が立ち上げられた。参加者は、収穫の達成感や地域貢献を通じた充実感を味わうとともに、子供からの感謝の声が高齢者のモチベーションとなっている。

(トピックス4)誰もが健やかに暮らせる地域づくりの取組事例

奈良県川上村では、誰もが健やかに暮らせる村づくりを目指して、平成29年4月より移動販売の機会に「コミュニティナース」が同行し、地域の診療所等と連携して早期診察や早期治療指導につなげる取組を開始している。健康体操を継続的に行うなどの取組により、低い介護保険料を実現した。

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