第1章 高齢化の状況(第2節 3)
第2節 高齢期の暮らしの動向(3)
3 生活環境
(1)65歳以上の者の住まい
65歳以上の者のいる主世帯の8割以上が持家に居住している
65歳以上の者のいる主世帯について、住宅所有の状況を見ると、持家が82.1%と最も多い。ただし、65歳以上の単身主世帯の持家の割合は66.2%となり、65歳以上の者のいる主世帯総数に比べ持家の割合が低い(図1-2-3-1)。
(2) 安全・安心
ア 65歳以上の交通事故死者数は減少
令和3年中における65歳以上の者の交通事故死者数は、1,520人で減少傾向が続いている。65歳以上人口10万人当たりの交通事故死者数も、平成23年の7.8人から令和3年には4.2人へと大きく減少した。なお、交通事故死者数全体に占める65歳以上の者の割合は、令和3年は57.7%となっている(図1-2-3-2)。
また、75歳以上の運転免許保有者10万人当たりの死亡事故件数は減少傾向にある。ただし、令和3年における運転免許保有者10万人当たりの死亡事故件数は、75歳以上で5.7件、80歳以上で8.2件であり、前年と比較すると若干増加している(図1-2-3-3)。
イ 65歳以上の者の刑法犯被害認知件数は減少傾向
犯罪による65歳以上の者の被害の状況について、65歳以上の者の刑法犯被害認知件数を見ると、全刑法犯被害認知件数が戦後最多を記録した平成14年に22万5,095件となり、ピークを迎えて以降、減少傾向にある。なお、全認知件数に対して、65歳以上の者が占める割合は、令和2年は16.4%と増加傾向にある(図1-2-3-4)。
ウ 特殊詐欺の被害者の9割弱が65歳以上
令和3年中の被害者全体の特殊詐欺の認知件数は1万4,461件で、手口別で見ると、オレオレ詐欺に預貯金詐欺(令和元年まではオレオレ詐欺に包含)を合わせた認知件数は5,504件と前年比で14.1%減少し、キャッシュカード詐欺盗は2,587件と前年比で9.2%減少した(表1-2-3-5)。
年次
区分
|
平成24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 令和元 | 2 | 3 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
認知件数(件) | 8,693 | 11,998 | 13,392 | 13,824 | 14,154 | 18,212 | 17,844 | 16,851 | 13,550 | 14,461 |
オレオレ詐欺 | 3,634 | 5,396 | 5,557 | 5,828 | 5,753 | 8,496 | 9,145 | 6,725 | 2,272 | 3,077 |
預貯金詐欺 | 4,135 | 2,427 | ||||||||
キャッシュカード詐欺盗 | 1,348 | 3,777 | 2,850 | 2,587 | ||||||
被害総額(億円) | 364.4 | 489.5 | 565.5 | 482.0 | 407.7 | 394.7 | 382.9 | 315.8 | 285.2 | 278.1 |
資料:警察庁統計による。令和3年の値は暫定値 | ||||||||||
(注)特殊詐欺とは、被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪(現金等を脅し取る恐喝及びキャッシュカード詐欺盗を含む。)の総称。キャッシュカード詐欺盗は平成30年から統計を開始。預貯金詐欺は従来オレオレ詐欺に包含されていた犯行形態を令和2年1月から新たな手口として分類した。 |
そのうち、高齢者(65歳以上)被害の特殊詐欺の認知件数は1万2,708件で、法人・団体等の被害者を除いた認知件数に占める割合は88.2%にのぼった。手口別の65歳以上の被害者の割合は、オレオレ詐欺95.4%、預貯金詐欺98.8%、キャッシュカード詐欺盗98.4%となっている。
エ 65歳以上の者の犯罪者率は低下傾向
65歳以上の者の刑法犯の検挙人員は、令和2年は4万1,696人と前年に引き続きやや減少した。犯罪者率は、平成19年以降は低下傾向となっている。また、令和2年における65歳以上の者の刑法犯検挙人員の包括罪種別構成比を見ると、窃盗犯が69.5%と約7割を占めている(図1-2-3-6)。
オ 契約当事者が65歳以上の消費生活相談件数は約25万件
全国の消費生活センター等に寄せられた契約当事者が65歳以上の消費生活相談件数を見ると、平成25年に26万件を超えた後、平成28年までは減少傾向にあったが、平成29年から増加に転じ、平成30年は約36万件となった。その後は減少し、令和3年は約25万件となっている(図1-2-3-7)。
カ 養護者による虐待を受けている高齢者の約7割が要介護認定
令和2年度に全国の1,741市町村(特別区を含む。)で受け付けた高齢者虐待に関する相談・通報件数は、養介護施設従事者等によるものが2,097件で前年度(2,267件)と比べて7.5%減少し、養護者によるものが3万5,774件で前年度(3万4,057件)と比べて5.0%増加した。また、令和2年度の虐待判断件数は、養介護施設従事者等によるものが595件、養護者によるものが1万7,281件となっている。養護者による虐待の種別(複数回答)は、身体的虐待が68.2%で最も多く、次いで、心理的虐待が41.4%、介護等放棄が18.7%、経済的虐待が14.6%となっている。
養護者による虐待を受けている高齢者の属性を見ると、女性が75.2%を占めており、年齢階級別では「80~84歳」が23.6%と最も多い。また、虐待を受けている高齢者のうち、66.0%が要介護認定を受けており、虐待の加害者は、「息子」が39.9%と最も多く、次いで、「夫」が22.4%、「娘」が17.8%となっている(図1-2-3-8)。
キ 成年後見制度の利用者数は増加している
令和3年12月末時点における成年後見制度の利用者数は23万9,933人で、各類型(成年後見、保佐、補助、任意後見)で増加している(図1-2-3-9)。
ク 一人暮らしの60歳以上の者の5割超が孤立死を身近な問題と感じている
孤立死(誰にも看取られることなく、亡くなった後に発見される死)を身近な問題だと感じる(「とても感じる」と「まあ感じる」の合計)人の割合は、60歳以上の者全体では34.1%だが、一人暮らし世帯では50.8%と5割を超えている(図1-2-3-10)。
ケ 孤立死と考えられる事例が多数発生している
死因不明の急性死や事故で亡くなった人の検案、解剖を行っている東京都監察医務院が公表しているデータによると、東京23区内における一人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数は、令和2年に4,238人となっている(図1-2-3-11)。
(3)60歳以上の者の自殺者数は減少
60歳以上の自殺者数を見ると、令和3年は7,860人と前年(8,126人)に比べ減少している。年齢階級別に見ると、60~69歳(2,637人)、70~79歳(3,009人)、80歳以上(2,214人)となり、それぞれにおいて前年に比べ減少している(図1-2-3-12)。