第1章 高齢化の状況(第3節)

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第3節 〈特集〉高齢者の健康をめぐる動向について

内閣府では、「高齢社会対策大綱」(平成30年2月閣議決定)に基づく、「就業・所得」「健康・福祉」「学習・社会参加」「生活環境」「研究開発・国際社会への貢献等」の分野を踏まえて、高齢社会対策に関する調査を実施しており、令和4年度は「高齢者の健康に関する調査」(調査時期は令和4年10~11月)を実施した。

この白書では、調査結果の一部を紹介するとともに、他の調査のデータも活用し、これらを分析したものを特集としてまとめた(資料出所は特に断りのない限り、「令和4年度高齢者の健康に関する調査」(5年ごとに「高齢者の健康に関する調査」(以下「健康調査」という。)を実施)である。)。

1 高齢者の健康について

(1)健康についての心がけについて

○若いときから健康に心がけている人は健康状態が良い

健康についての心がけ(休養・散歩など)と現在の健康状態について見ると、健康に「心がけている」と回答した人は、健康状態は「良い」と回答した割合が高くなっている。また、健康に心がけ始めた年齢別に健康状態について見ると、40代以前から健康に心がけ始めた人は約半数が健康状態が「良い」と回答しているなど、若いときから健康に心がけ始めたと回答した人は、健康状態が「良い」と回答した割合が高くなっている(図1-3-1-1)。

また、厚生労働省が実施した、過去約20年にわたるパネル調査ではスポーツ・健康活動(ウォーキングなど)を50代から行っている人は、「健康状態は良い」と回答した割合が高くなっている(図1-3-1-2)。

図1-3-1-1 健康についての心がけ・心がけ始めた年齢と健康状態(択一回答)
図1-3-1-2 スポーツ・健康活動と健康状態

(2)健康と社会活動への参加について

○社会活動に参加した人は健康状態が良い

社会活動(健康・スポーツ・地域行事など)への参加の有無別に現在の健康状態について見ると、この1年間に社会活動に参加した人は、健康状態が「良い」と回答した割合が高くなっている(図1-3-1-3)。

また、別の内閣府の調査において、社会活動に参加したいと思わない理由について見ると、「健康・体力に自信がないから」と回答した人の割合が最も高くなっている(図1-3-1-4)。

なお、社会活動に参加して良かったと思うことについて見ると、「生活に充実感ができた」「新しい友人を得ることができた」「健康や体力に自信がついた」と回答した割合が高くなっている(図1-3-1-5)。

図1-3-1-3 社会活動への参加の有無と健康状態(複数回答)
図1-3-1-4 社会活動に参加したいと思わない理由(複数回答)
図1-3-1-5 社会活動に参加して良かったと思うこと(複数回答)

(3)健康と生きがいについて

○健康状態が良い人ほど生きがいを感じている

現在の健康状態別に生きがいを感じる程度を見ると、健康状態が「良い」と回答した人ほど生きがいを感じる程度は高くなっており、健康状態と生きがいは非常に強い相関関係が見られる(図1-3-1-6)。

図1-3-1-6 健康状態別生きがい(喜びや楽しみ)を感じているか(択一回答)

2 新型コロナウイルス感染症の拡大による高齢者のコミュニケーション等への影響について

○コロナ禍により人とのコミュニケーションに変化が生じている

内閣官房が令和3年度に実施した「人々のつながりに関する基礎調査」の調査結果を見ると、コロナ禍により、人と直接会ってコミュニケーションをとることが「減った」と回答した割合が6割を超えている。なお、そのうち、約3割が直接会わずにコミュニケーションをとることが「増えた」と回答している(図1-3-2-1、図1-3-2-2)。

また、健康調査の結果では、コロナ禍前のインターネットでの医療機関や病気等の情報収集状況を前回(平成29年度)と比較して見ると、インターネットで調べることがある高齢者の割合が大きく増加している(図1-3-2-3)。

さらに、別の内閣府の調査によると、「携帯電話・スマホで家族・友人などと連絡をとる」「インターネットで情報を集めたり、ショッピングをする」と回答した割合が次第に高くなっている(図1-3-2-4)。

図1-3-2-1 コロナ禍により人と直接会ってコミュニケーションをとること
図1-3-2-2 コロナ禍により直接会ってコミュニケーションをとることが減った人のうち直接会わずにコミュニケーションをとること
図1-3-2-3 インターネットの情報収集状況(複数回答)
図1-3-2-4 情報機器の利用状況(複数回答)

3 考察

(1)高齢者の健康について

健康状態が良いことが社会活動への参加につながる可能性があり、また、社会活動に参加することで、健康・体力に自信がつき、更なる参加につながるという好循環を生み出すことも可能であると考えられる。他方、高齢者になる前から自らの健康に関心を持つことも健康につながる可能性がある。さらに、社会参加活動により、健康や体力に自信がつき、それが生きがいにつながることも考えられる。

(2)コロナ禍の影響による高齢者のコミュニケーションの変化について

コロナ禍が高齢者による非対面のコミュニケーションのきっかけとなっていると考えられる。また、高齢者のインターネットによる情報収集や、情報機器を利用し友人と連絡をとることなどに対する意識の変化も見られ、コロナ禍が契機となり、高齢者のインターネットを活用した社会活動につながる可能性も考えられる。

(3)まとめ

今後、加齢に伴う心身機能や認知機能の低下を予防し、健康寿命の延伸を実現するため、高齢者の社会参加活動を促進する取組や、その一環として、情報機器の使い方が分からずに使いこなせていない高齢者や必要性を感じられない高齢者を対象としたデジタルデバイドを解消する取組をより一層推進していく必要がある。

例えば、トピックスの事例のように、高齢者の社会参加活動が健康や生きがいを生み出し、それが更なる活動につながり、コミュニティづくりにも貢献するという健康の好循環の実現が図られるよう、各地域の実情に応じて取り組むことが期待される。

<トピックス>

(事例1)新潟県佐渡市~和太鼓を活用した高齢者の健康づくりと社会参加~

新潟県佐渡市では、大幅な人口減と高齢化により、コミュニティの維持も困難になりつつある中、市の介護予防教室の1つとして、和太鼓を活用したエクササイズが実施され、高齢者の健康増進や認知症予防のみならず、社会参加の促進やコミュニティの再活性化といった地域の課題の解決にまちぐるみで取り組んでいる。

(事例2)愛知県一宮市~次世代へつなぐ「通いの場」への挑戦~

愛知県一宮市では、高齢期になってもいきいきと元気に過ごすための健康づくりをテーマに、地域の公民館を拠点とした「通いの場(オフライン)」の活動と、コロナ禍をきっかけとした「在宅(オンライン)」の活動を組み合わせて、高齢者の社会参加を図り、次世代型のコミュニティづくりに取り組んでいる。

(事例3)青森県弘前市~岩木健康増進プロジェクト~

青森県弘前市では、弘前大学が同市岩木地区の住民を対象に毎年実施している大規模健康診断において蓄積されたビッグデータを活用し、生活習慣病・認知症をターゲットとした疾患予防法の研究開発を行っており、自治体、教育機関、企業などと連携した健康増進プロジェクトを推進している。

(事例4)大阪府~スマートシニアライフ事業~

大阪府では、高齢者の課題の解決や健康寿命の延伸を目的として、自治体の提供する行政サービスと、金融・保険、IT、医療・薬品、エンターテイメントなど様々な分野の民間企業による高齢者向けサービスとを、タブレット端末やLINEアプリなどのデジタル機器を通してワンストップで提供する取組を実施している。

(事例5)北海道更別村~更別村 SUPER VILLAGE構想~

北海道更別村では、高齢者が100歳世代まで生きがいを持って楽しく過ごせるために必要な基本サービスを目指し、デジタル技術を活用して少子高齢化により薄れた人々のつながりの回復と、村民の健康の向上を図るとともに、高齢者でも楽しく元気に続けられるスマート農業を実現するための取組を実施している。

政府としては、各地域の取組を後押しし、生涯にわたって生きがいを感じて健康に暮らせるよう取り組んでいくことが重要であると考えている。

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