第1章 高齢化の状況(第2節 4)
第2節 高齢期の暮らしの動向(4)
4 生活環境
(1) 65歳以上の者の住まい
65歳以上の者の8割以上が持家に居住している
65歳以上の者について、住宅所有の状況を見ると、「持家(一戸建て)」が75.6%、「持家(分譲マンション等の集合住宅)」が11.8%となっており、持家が合わせて8割以上となっている(図1-2-4-1)。
(2) 安全・安心
ア 65歳以上の交通事故死者数は減少
令和4年中における65歳以上の者の交通事故死者数は、1,471人で減少傾向が続いている。65歳以上人口10万人当たりの交通事故死者数も、平成24年の7.7人から令和4年には4.1人へと大きく減少した。なお、交通事故死者数全体に占める65歳以上の者の割合は、令和4年は56.4%となっている(図1-2-4-2)。
また、75歳以上の運転免許保有者10万人当たりの死亡事故件数は減少傾向にある。ただし、令和4年における運転免許保有者10万人当たりの死亡事故件数は、75歳以上で5.7件、80歳以上で7.9件であり、前年と比較すると75歳以上は横ばい、80歳以上は若干減少している(図1-2-4-3)。
イ 65歳以上の者の刑法犯被害認知件数は減少傾向
犯罪による65歳以上の者の被害の状況について、65歳以上の者の刑法犯被害認知件数を見ると、全刑法犯被害認知件数が戦後最多を記録した平成14年に22万5,095件となり、ピークを迎えて以降、減少傾向にある。なお、全認知件数に対して、65歳以上の者が占める割合は、令和3年は16.8%と増加傾向にある(図1-2-4-4)。
ウ 特殊詐欺の被害者の9割弱が65歳以上
令和4年中の被害者全体の特殊詐欺の認知件数は1万7,520件で、手口別で見ると、オレオレ詐欺に預貯金詐欺(令和元年まではオレオレ詐欺に包含)を合わせた認知件数は6,640件と前年比で20.4%増加、キャッシュカード詐欺盗は3,051件と前年比で17.3%増加した(表1-2-4-5)。
年次
区分
|
平成25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 令和元 | 2 | 3 | 4 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
認知件数(件) | 11,998 | 13,392 | 13,824 | 14,154 | 18,212 | 17,844 | 16,851 | 13,550 | 14,498 | 17,520 |
オレオレ詐欺 | 5,396 | 5,557 | 5,828 | 5,753 | 8,496 | 9,145 | 6,725 | 2,272 | 3,085 | 4,278 |
預貯金詐欺 | 4,135 | 2,431 | 2,362 | |||||||
キャッシュカード詐欺盗 | 1,348 | 3,777 | 2,850 | 2,602 | 3,051 | |||||
被害総額(億円) | 489.5 | 565.5 | 482.0 | 407.7 | 394.7 | 382.9 | 315.8 | 285.2 | 282.0 | 361.4 |
資料:警察庁統計による。令和4年の数値は暫定値である。 | ||||||||||
(注)特殊詐欺とは、被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪(現金等を脅し取る恐喝及びキャッシュカード詐欺盗を含む。)の総称。キャッシュカード詐欺盗は平成30年から統計を開始。預貯金詐欺は従来オレオレ詐欺に包含されていた犯行形態を令和2年1月から新たな手口として分類した。 |
そのうち、高齢者(65歳以上)被害の特殊詐欺の認知件数は1万5,065件で、法人・団体等の被害者を除いた認知件数に占める割合は86.6%に上った。手口別の65歳以上の被害者の割合は、オレオレ詐欺98.2%、預貯金詐欺98.7%、キャッシュカード詐欺盗98.9%となっている。
エ 65歳以上の者の犯罪者率は低下傾向
65歳以上の者の刑法犯の検挙人員は、令和3年は4万1,267人と前年に引き続きやや減少した。犯罪者率は、平成19年以降は低下傾向となっている。また、令和3年における65歳以上の者の刑法犯検挙人員の包括罪種別構成比を見ると、窃盗犯が69.9%と約7割を占めている(図1-2-4-6)。
オ 契約当事者が65歳以上の消費生活相談件数は約26万件
全国の消費生活センター等に寄せられた契約当事者が65歳以上の消費生活相談件数を見ると、平成25年に26万件を超えた後、平成28年までは減少傾向にあったが、平成29年から増加に転じ、平成30年は約36万件となった。その後は減少傾向にあり、令和4年は約26万件となっている(図1-2-4-7)。
カ 養護者による虐待を受けている高齢者の約7割が要介護認定
令和3年度に全国の1,741市町村(特別区を含む。)で受け付けた高齢者虐待に関する相談・通報件数は、養介護施設従事者等によるものが2,390件で前年度(2,097件)と比べて14.0%増加し、養護者によるものが3万6,378件で前年度(3万5,774件)と比べて1.7%増加した。また、令和3年度の虐待判断件数は、養介護施設従事者等によるものが739件、養護者によるものが1万6,426件となっている。養護者による虐待の種別(複数回答)は、身体的虐待が67.3%で最も多く、次いで、心理的虐待が39.5%、介護等放棄が19.2%、経済的虐待が14.3%となっている。
養護者による虐待を受けている高齢者の属性を見ると、女性が75.6%を占めており、年齢階級別では「80~84歳」が24.6%と最も多い。また、虐待を受けている高齢者のうち、68.0%が要介護認定を受けており、虐待の加害者は、「息子」が38.9%と最も多く、次いで、「夫」が22.8%、「娘」が19.0%となっている(図1-2-4-8)。
キ 成年後見制度の利用者数は増加している
令和4年12月末時点における成年後見制度の利用者数は24万5,087人で、各類型(成年後見、保佐、補助、任意後見)で増加している(図1-2-4-9)。
ク 近所の人との付き合い方について、65歳以上の人の82.8%が「会えば挨拶をする」、57.3%が「外でちょっと立ち話をする」と回答している
近所の人との付き合い方を見ると、「会えば挨拶をする」(82.8%)と回答した人の割合が最も高い。次いで、「外でちょっと立ち話をする」(57.3%)、「物をあげたりもらったりする」(50.8%)となっている。また、男性よりも女性の方が、「外でちょっと立ち話をする」「物をあげたりもらったりする」などと回答した人の割合が高い(図1-2-4-10)。
ケ 65歳以上の者の1割弱が常に人との付き合いがないと感じている
65歳以上の者の孤独感について見ると、8.9%が人との付き合いがないと感じることが「常にある」と回答している(図1-2-4-11)。
コ 孤立死と考えられる事例が多数発生している
死因不明の急性死や事故で亡くなった人の検案、解剖を行っている東京都監察医務院が公表しているデータによると、東京23区内における一人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数は、令和3年に4,010人となっている(図1-2-4-12)。
(3) 60歳以上の者の自殺者数は増加
60歳以上の自殺者数を見ると、令和4年は8,249人と前年(7,860人)に比べ増加している。年齢階級別に見ると、60~69歳(2,765人)、70~79歳(2,994人)、80歳以上(2,490人)となり、70~79歳を除き前年に比べ増加している(図1-2-4-13)。