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キックオフ・ミーティング

【分科会総括報告】


○司会 それでは、セッションIIに入ります前にセッションI、第一分科会と第二分科会両方ございましたけれども、それぞれ議論された内容につきまして、各分科会の司会者の方から報告していただきたいと存じます。
 まず第一分科会について、太田先生、よろしくお願いいたします。

○太田 太田でございます。第一分科会のほうは、プログラムのほうにございますように『交通安全のビジョンとターゲット』ということで議論させていただきました。ビジョンとターゲットとは何かということでございますが、基本的にはこれからの安全に関してどういう将来像を持つか、長期的な向かうべき方向がビジョンで、それに対して具体的にある年次までにこんなことをしたいという目標値、水準を決める、それがターゲットであろうかということで議論をしたわけです。そのための戦略ということで、どういうステークホルダー、関係者がどういう形でかかわるのが適切かということにつきまして、いろんな従来のものとは違うものがあるのだろうかというようなことについて議論させていただきました。
 プログラムにございますように、最初にクラウス・ティングヴァルさんのほうから、スウェーデンの「ビジョン・ゼロ」ということで、私どもにとっては非常に刺激的な一つの大ビジョンが出ているわけですが、それにつきまして具体的なその背景であるとか考え方ということで議論させていただきました。
 いろんな議論があったのですが、基本的にはビジョンがすべての利害関係者に問題意識を共有化する。そして将来の方向について共通の目標を持つということでビジョンというのは大変重要だということが再確認されたように思います。
 それから、やはり交通安全が非常に重要な問題ということで、四つのルールということでご紹介がございましたが、倫理要綱ということで、最初に人命とか健康にかかわるもの、これをほかのものと取引するようなトレードオフみたいなことは避けるべきであろうということが1点。それから、責任ということで、最大限の努力をすべきだということ。あるいは三番目に、最善の方法。科学的に一番いい方法を追求すべきであろうという話。それから四番目に、変革を具体的に推進する、そういう仕組みづくりが重要だということで、いくつかのそれぞれについての紹介があったということです。この辺は午前中のオルソップ先生の基調講演にかなり共通する時点かと思います。
 議論の中では、一つはその目標とか目標値、ターゲットを議論するときに、ヒューマンエラーをどう捉えるべきであるかということで、こういうものを前提として、その上で交通事故が起こらないようにする。起きてもそこで重大な障害を起こさないようにする。そういうものをシステム的に道路交通システムとして組み立てていく、そういったアプローチが必要ではないかと。そのためには大きな問題は、日本の場合には縦割り行政的なところで、十分そのための手段、関連する主体の協力、これはワークトゥゲザーという話が午前中にございましたけれども、そういった協働関係をうまく作っていく、そういうことがないと難しいのではないかという話であるとか、あるいは、特にいろんなこういった新たな戦略をつくる上では、交通事故情報というものをきちんと皆さんがアクセスでき、そこからいろんな経験を学ぶと、そういう仕組みも重要ではないかというようなご指摘が出てきております。
 それから、戦略という意味では、一応今回は交通安全ということでございますけれども、やはり車社会、車の利用ということにかかわるいろんな環境問題、その他もございますので、より広いアプローチからの視点も重要ではないかというようなご指摘。それから、それに絡んで、いろんな側方支援ということが、サポーティブアクションでしたか、午前中にございましたけれども、そういった面で、やはり交通安全という狭い範囲だけで議論していると、どうも解けないような段階に来ているのではないかというようなご意見をいただいたように思います。
 それからもう一つは、いろんなアプローチの中で既存インフラというものについても、その基準、具体的な構造基準についても、交通安全ということで見直すような点がないかということで、この辺もワークトゥゲザーといいますか、いろんな視点の人たちがもう一度原点に返って安全ということで見直す余地があるのではないかというようなご指摘もございました。
 それからもう一つは新しい技術、特にこれはITSということになると思いますが、高度道路交通情報技術というものをもう少し活用するような、そういう場面があるんではないかということで、これにつきましては、その中のいろんなご意見がございましたけれども、インテリジェント・スピード・アダプテーションのような速度管理の技術というようなものも、もう少し使えるのではないかというようなことがありました。それに関係して、実際のスウェーデンの実験ではドライバーのほうも思った以上にそれに対して参加するといいますか、受容する、そういう余地がありそうだというふうなご報告をいただいております。
 そんな意味で、いろんな利害関係者全員が入ってやる新しい仕組み、ワークトゥゲザーといった方向の中で、特に市民に対して、これはドライバーとして、あるいは歩行者として、さまざまな形で道路交通システムに参加するわけですけれども、その動機づけをうまくやる必要があるのではないか。そういうときに実はドライバーとして、あるいはコミュニティの参加者としての個人というのは、皆さん遵法精神はある程度あるし、結局それが人命とか健康にかかわる、あるいは環境にかかわるということであれば、それに対する参加意欲はあるのだと。それをうまく動機づける仕組みが今はないのではないかということで、例えばそういうITS技術をそういった動機づけに使えないかというような、そんな意見が出てきております。
 そんなことでいろいろな議論をしたわけですけれども、私の感想としては、こういった大きな目標に対して、その取り組みの仕組みが一番大きなポイントであることと、実際にそれを可能にするいろんな新しい可能性、技術を含めて出てきているというふうに感じた次第です。
 簡単ですが、私のほうからの個人的な意見を含めた総括になるかと思いますが、よろしくお願いします。

○司会 ありがとうございました。では、引き続きまして、第二分科会について、飯田先生、よろしくお願いいたします。

○飯田 第二分科会のテーマは『交通安全と道路』というテーマでございます。オランダからのヴェーグマンさんのプレゼンテーションをベースにいたしまして、日本との同質性、異質性を見ながら、将来の安全対策にどう生かしていくのかということについて議論をいたしました。
 私の印象から申し上げますと、オランダではありとあらゆる階層の方が、安全対策の計画に参加をされまして、しかも、あらゆる専門分野の方が総合的に、科学的にこ問題に取り組むということでございまして、日本ではよくセクショナリズムというふうに言われるのですけれども、そういう壁もなく、みんなで一体的にこの問題に取り組むということございました。
 全般的な内容から申し上げますと、道路安全は、計画、設計、運用の三つの段階で考慮されるべきだということでありまして、オランダでは、サスティーナブル・セーフティを目指して、安全対策に1990年代から取り組んでおられるということでございます。この対策においてはデザインにおける三つのキーワード機能性、均質性、予測性でその原則が示されております。
 中身の具体的なことについて少しご紹介をさせていただきますと、交通安全に関しましては土地利用計画に加えて、ルートマネジメントとアクセスマネジメントで一体的に取り組むということでございます。土地利用の面から交通安全に取り組むことは、日本では明示的には行われておりません。具体的にどういう考え方がされているのかといいますと、土地利用の空間構成は交通量の発生でありますとか、交通機関分担の問題に影響するということでございまして、交通の距離でありますとか、道路網構成、道路ネットワークの機能分類といったものを考えていかなければならないということでございます。日本でも最近はコンパクトシティというようなことが研究者の間で盛んに言われておりまして、今までのように土地利用を一つの目的で使うのではなくて、複合的な目的で使うことが言われています。例えば住宅地と業務地、住宅地と商業地を一緒にするというような形で複合化がいま進んでいます。それからもう一つは、公共交通機関の沿線沿いに都市施設を配置することによって、その交通移動そのものが少なくできます。このような考え方で、リスクというものをベースに安全対策に取り組まれるわけです。エクスポージャー、これは台キロであらわされるそうですけれども、「交通の危険性」といいますか、交通危険に遭遇する総期待数というようなことになろうかと思います。エクスポージャーリスク、それから衝突リスク、負傷リスク、といったリスクで安全というものに対しての具体的な取り組みをするという、そんなお話がされました。
 土地利用計画とルートマネジメント、アクセスマネジメントというのは、お互いに関係がございまして、これらを一体的にうまく考えていくというお話であったと思います。ルートマネジメントの中で特に目を引きましたのが、ヨーロッパでのスピード抑制です。スピードアダプテーションといいますか、そういうものに非常に力が入れられているということでございました。走行速度を30キロ以下に抑える地域は「ゾーン30」と言われているそうですけれども、この対策によって非常に大きな効果が上げられたという報告がございました。
 それからもう一つは、やはり道路の機能分類をしないといけないということです。ファンクショナリティという言葉がございましたけれども、オランダでは道路機能分類は全体道路のうちの90%が既にできているというご紹介がございまして、我々としては非常に驚いた次第でございます。こうして道路機能に応じた道路の使い方を重視するということでございます。
 それから参考にすべきは、危険度というものに対する評価の考え方でございます。日本にはないのですけれども、RIA(ロードセーフティ・インパクト・アセスメント)と、RSA(ロード・セーフティ・オーディット)というのがございまして、これらのシステムで交通安全の評価をするということです。第三者機関になっているわけですけれども、このメリットは情報の透明性ということにあるというお話がございました。これらによって情報を共有し、安全対策にすべての人が協力・合意できる仕組みを作っていくということでございます。
 また、交通安全度の評価につきましても、単に事故件数が多いという評価が、これはブラックスポットアプローチというふうに言われているのですけれども、また日本では事故多発地点と呼ばれているものですけれども、必ずしも有効ではないというようなことで、ヨーロッパでは違う考え方がされているというお話でございました。特に、対費用・効果を大変重要視しているというお話でございました。
 いずれにしましても、オランダでは非常にグローバルな視点から、しかも、各界各層、専門も各分野からたくさんの人が協力参加して安全対策に取り組んでいるということです。また、ITSというものも非常に期待されておりまして、特にスピード抑制については、将来の交通量減少の50%に寄与するというふうに推定されており、その中でもITSが非常に大きな役割を果たすのではないかというお話がございました。
 以上でございます。どうもありがとうございました。

○司会 ありがとうございました。


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