内閣府大臣官房審議官
内閣府官房審議官の加地でございます。本日は長時間にわたりまして大変ご熱心な討議をいただきまして、まことにありがとうございました。
ただいま西山先生から第IIセッションだけではなくて、全体の取りまとめもしていただいたので、今さらという感もいたすわけでございますが、本日のキックオフ・ミーティングの閉会にあたりまして、本日の内容を全般的に振り返り、総括をさせていただきたいというふうに思います。
まず、午前中の基調講演におきましては、ロンドン大学交通研究所のオルソップ教授から、我が国が今後10年間で交通事故死者数を半減できるかどうか。それは意思決定者、利害関係者、そして一般国民の意識や考え方を変えることができるかどうか。そして、あらゆる関係者がともに協力をしながら連携をする体制を構築できるかどうか、これにかかっているというご指摘をいただいたところでございます。まさにオルソップ教授のおっしゃるとおりだと思います。我々も含めました国民全体の意識改革の第一歩といたしまして、まさに今回のこの国際シンポジウムが位置づけられるのではないかと感じた次第でございます。
今後とも国民一人ひとりの皆さんの交通安全意識を高めるとともに、私ども内閣府は総合調整機能を有しておるわけでございますけれども、各関係省庁の交通安全対策を有機的に連携させるため、今後とも努力してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
また、午後の部におきましては、セッションIのうち、第一分科会において『交通安全のビジョンとターゲット』をテーマとし、パネルディスカッションが行われ、太田教授から分科会総括報告がありましたとおりでございますが、まず、スウェーデン道路庁のティングヴァル道路安全部長よりスウェーデンの交通安全対策『ビジョン・ゼロ』が紹介をされました。このビジョンを設定することのメリットですとか、あるいはビジョンの四つのルールについてのご説明があり、それを踏まえて、ビジョンとターゲットの違いですとか具体的な戦略、そして市民のかかわり方などについてディスカッションがなされたところでございます。
我が国におきましても、現行の「第七次交通安全基本計画」の第1節、道路交通事故の趨勢と交通安全対策の今後の方向におきまして、こういうくだりがあるわけでございます。「交通事故による死傷者数を限りなくゼロに近づけ、国民を交通事故の脅威から守ることが究極の目標であるが、当面云々」という記載でございます。これはまさにスウェーデンの『ビジョン・ゼロ』の考え方に相通ずるものがあるのではないかというふうに思う次第でございます。次期交通安全基本計画の策定に際しまして、本日のご議論を参考にさせていただきたいというふうに考えておるところでございます。
次に、第2分科会におきまして『交通安全と道路』をテーマとしてパネルディスカッションが行われました。飯田教授から分科会総括報告がありましたとおり、オランダ道路安全研究所のヴェーグマン所長から、オランダの交通安全対策のビジョンであります「持続可能な安全」が紹介されますとともに、オランダの道路設計ですとか道路管理の考え方、中でも、交通安全の考え方が土地利用や都市計画の重要な要素とされているというご説明があったところでございます。そして、それを踏まえまして、我が国の道路環境との比較をはじめといたしましたさまざまなディスカッションがなされたところでございます。
昭和46年度の「第一次交通安全基本計画」から、現行の「第七次交通安全基本計画」に至りますので、交通安全施策メニューのパッケージであります第2節、講じようとする施策の冒頭に常に「道路交通環境の整備」という項目が掲げられているわけでございます。この事実は交通事故の原因を構成すると言われております人・車・道路の三つの要素の中で道路環境が基盤をなすものであるとの考え方、思想に基づくものではないかというふうに考える次第でございます。その意味におきまして、第二分科会における議論は、次期交通安全基本計画の策定に際しまして、大いに示唆に富むものであるというふうに思う次第でございます。
さらに、セッションIIにおきまして『交通参加者と交通安全教育』をテーマとして、ただいまパネルディスカッションが行われたところでございます。まず、スウェーデン道路交通研究所のペタソン上席研究員から、ヒューマンエラーのレベルと交通事故発生のメカニズムについてお話があり、その中で、ヒューマンエラーが発生する確率を低くするよりよい道路設計の重要性などについてご説明があったわけでございます。また、イギリス交通研究所のライナム主任研究員から、道路利用者の行動管理の手法であります教育や取り締まり等につきましてのご説明があったわけでございます。そして、これらのご説明を踏まえまして、ただいま皆様にお聞きいただきましたようなさまざまなディスカッション、フロアからのご発言もいただきながらなされたところでございます。
交通安全教育につきましては、現行の「第七次交通安全基本計画」におきまして、交通安全教育の推進が重点施策の一つとして掲げられているところでございます。また、本年3月には政府の交通対策本部におきまして、本格的な高齢社会への移行に向けました総合的な「高齢者交通安全対策が」が決定されたわけでございますけれども、ここにおきましても、交通安全教育及び広報・啓発の徹底などが定められておるところでございます。言うまでもなく交通安全教育は非常に重要な交通安全施策の一分野でありまして、今後とも引き続き強力に推進していくことが肝要であるというふうに考えておるところでございます。
以上、各プログラムごとに本日の議論を簡単に振り返ってまいりましたけれども、内閣府といたしましては、世界一安全な道路交通の実現を果たすべく、本日いただきました大変有意義なご提言ですとか、あるいはご議論を踏まえまして、今後策定作業が本格化してまいります「第八次交通安全基本計画」をよりよいものにしていきたいというふうに考えております。
また、会場の皆様方におかれましては、本日のシンポジウムの結果をそれぞれ持ち帰っていただきまして、あすからの仕事、あるいは日々の生活の場において何らかの形で反映させていただけたらと思う次第でございます。
最後になりましたけれども、本日のシンポジウムにご出席くださいました講演者やパネルディスカッションの先生方に心から感謝を申し上げますとともに、ご参加いただきました皆様方のますますのご多幸と今後のご活躍をお祈りいたしまして、全体統括とさせていただきます。
本日はまことにありがとうございました。