平成13年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況
第1編 陸上交通 第1部 道路交通
第2章 道路交通安全施策の現況 第1節 道路交通環境の整備
第1編 陸上交通
第1部 道路交通
第2章 道路交通安全施策の現況
1 道路及び交通安全施設等の現況
- (1)道路の現況
- 我が国の道路は、平成12年4月1日現在で実延長115万9,723キロメートルである。国土交通省では、安全で円滑な道路交通環境を確保するため、高規格幹線道路を始めとする道路ネットワークの体系的な整備を進めており、道路種別ごとの現況は、以下のとおりである。
- ア 高規格幹線道路
- 高規格幹線道路は、全国的な自動車交通網を構成する自動車専用道路網のうち、道路審議会答申(昭和62年)に基づき建設大臣が定めたもので、高速自動車国道、本州四国連絡道路、一般国道の自動車専用道路に分類される。
- (a)高速自動車国道
- 高速自動車国道については、平成13年度に新たに98キロメートルの供用を開始し、14年3月末現在の供用延長は6,959キロメートルとなっている。
- (b)本州四国連絡道路
- 本州四国連絡道路については、平成14年3月末現在の供用延長は164キロメートルとなっている。
- (c)一般国道の自動車専用道路
- 一般国道の自動車専用道路については、平成14年3月末現在の供用延長は387キロメートルとなっている。
- イ 地域高規格道路
- 地域高規格道路は、全国的な高規格幹線道路と一体となって規格の高い幹線道路網を形成するものであり、平成6年に路線の指定、10年度には路線の追加指定を行い、14年3月末現在、候補路線110路線、計画路線186路線(約6,950キロメートル)、供用延長は1,419キロメートルとなっている。
- ウ 都市高速道路
- 都市高速道路は、大都市圏における円滑な道路交通を確保するために建設されているものであり、地域高規格道路の一部を構成するものである。平成13年12月末現在の供用延長は、首都高速道路270キロメートル、阪神高速道路221キロメートル、名古屋高速道路50キロメートル、広島高速道路12キロメートル、福岡高速道路37キロメートル及び北九州高速道路50キロメートルとなっている。
- エ その他の一般道路
- 一般国道、主要地方道及び一般都道府県道として分類される道路の実延長は、平成12年4月1日現在18万1,959キロメートルとなっており、自動車交通の大部分(全国道路・街路交通情勢調査(道路交通センサス)によると、総走行台キロの9割程度)を受け持っている。
これに市町村道を加えると115万9,723キロメートルとなり、その改良率(幅員5.5メートル以上。以下(a)(b)について同じ。)及び舗装率(簡易舗装を含む。以下同じ。)はそれぞれ54.4%、76.4%である。 - (a)一般国道
- 一般国道の道路実延長は5万3,777キロメートル、改良率、舗装率はそれぞれ89.2%、98.9%である。
- (b)主要地方道等
- 主要地方道(国土交通大臣の指定する主要な都道府県道又は市道)の道路実延長は5万7,438キロメートル、改良率、舗装率はそれぞれ72.3%、96.7%である。主要地方道以外の一般都道府県道については7万745キロメートルで、それぞれ55.8%、93.0%である。一般国道や主要地方道に比して、主要地方道以外の一般都道府県道の整備水準は低くとどまっている。
- (c)市町村道
- 市町村道の道路実延長は97万7,764キロメートル、改良率(幅員5.5メートル未満を含む。)、舗装率は、それぞれ51.3%、72.8%であり、その整備水準は最も低くなっている。
- (2)交通安全施設等の現況
- 交通安全施設等は、都道府県公安委員会及び道路管理者がそれぞれ整備を行なっており、平成13年3月末現在の状況は次のとおりである。
- ア 都道府県公安委員会が整備する施設
- (a)交通管制センター
- 交通管制センターは、全国の主要75都市に設置されている。主な業務としては、信号機、道路標識及び道路標示の操作その他道路における交通の規制を広域にわたって総合的に行うとともに、道路交通に関する情報を収集・分析し、運転者等の道路利用者に提供している。
また、隣接都府県の交通管制センターと連携し、必要に応じて交通情報の交換を行うことにより、迅速かつ的確な交通情報を提供している。 - (b)信号機
- 信号機の設置基数は17万6,013基であり,その約33%に当たる5万7,908基が交通管制センターで直接制御されている。信号機のうち、押しボタン式信号機は2万5,696基、視覚障害者用付加装置の付いた信号機は、1万584基である。
信号機については、集中制御化、系統化、機能の付加等の高度化を計画的に推進しており、交通の状況に的確に対応するため、青の時間配分の見直し、調整等を適宜行なった。
また、交通実態に応じた信号機の運用等に努めるとともに、常時点検を実施し、故障等を早期に把握し修理を行うなど適正な保全管理に努めた。 - (c)交通情報提供装置
- 安全・快適な道路交通環境の整備を図ることを目的として、新交通管理システム(UTMS:Universal Traffic Management Systems)構想に基づき交通管制センターの高度化、光ビーコン※、交通情報板等の交通情報提供装置の整備を図った。
※光ビーコンについて:通過車両を感知して交通量等を測定するとともに車載のカーナビゲーション装置等と交通管制センターとの情報のやりとりをする路上設置型の赤外線通信装置。 - (d)道路標識及び道路標示
- 都道府県公安委員会が設置し、管理する規制標識及び指示標識は1,083万2,804枚で、そのうち主要幹線道路における標識の視認性の向上等を図るための路上式の大型標識(灯火式、反射式又は自発光式)は、63万6,147枚である。
- イ 道路管理者が整備する施設
- (a)歩道、自転車歩行者道等
- 道路交通上の弱者である歩行者、自転車利用者等と自動車交通を分離することにより、歩行者、自転車利用者等の安全と快適性を確保し、併せて、道路交通の円滑化に資するため、歩道及び自転車歩行者道の整備を推進しており、その整備延べ延長はそれぞれ11万3,706キロメートル、10万2,439キロメートルである。
また、安全で快適な歩行空間の拡大を図るため、歩道、自転車歩行者道等の整備に際しては、高齢者や身体障害者等が安心して社会参加できるよう、幅が広く使いやすい歩道等の整備、既設歩道の段差・傾斜・勾配の改善、視覚障害者誘導用ブロックの設置等の措置を講じている。 - (b)立体横断施設
- 横断歩道橋及び地下横断歩道は、歩行者等と車両を立体的に分離することにより、歩行者の安全確保とともに、自動車交通の安全且つ円滑な流れを確保するものであり、それぞれ1万1,303箇所、3,268箇所を整備している。
また、高齢者や身体障害者等の利用の多い駅やその周辺等において、必要に応じてスロープ付・昇降装置付立体横断施設の整備を行う等利用者の利便性の向上を図った。 - (c)道路照明
- 道路照明は、連続して設置することにより路面を明るくし、自動車を安全に走行させるとともに、道路の線形を明示して交通を誘導する効果があるほか、横断歩道等の交通事故の多発するおそれがある箇所に部分的に設置することにより、特殊な箇所の存在を明示する効果がある。このような目的で288万8,594基の道路照明を設置している。
- (d)防護さく
- 車両の路外逸脱を防止するとともに、視線を誘導することにより交通の誘導を行い車両を安全に走行させ、また、歩行者が歩道から路外に転落することを防止することを目的として、防護さくを16万5,010キロメートル分設置している。
- (e)道路標識
- 道路管理者が設置し、管理する案内標識、警戒標識、規制標識及び指示標識は214万5,072本ある。特に、案内標識については、道路利用者に目的地や通過地についてその方向及び距離を示し、現在の道路上の位置を示すため、あるいは旅行者等の利便のために著名地点や道路の付属施設の案内をするため、整備の推進を図っている。
また、高齢者、身体障害者等を含む歩行者の安全且つ円滑な移動の確保のために、「エレベーター」、「乗合自動車停留所」、「便所」等の歩行者用の案内標識についても整備の推進を図っている。 - (f)道路情報提供装置
- 異常気象時の道路状況に関する情報等(都市間のルート選択に資する情報を含む。)を迅速かつ的確に提供するため、道路情報板2万869基を設置・運営するとともに、カーラジオを通してドライバーに道路の状況に関する情報を提供する路側通信システムの整備を推進している。同システムは、交通安全の確保に大きく寄与しており、全国375箇所で運用されている。
また、安全で円滑な道路交通を確保するため、高速道路等に、所要時間表示板、情報ターミナル※等を設置した。
さらに、既存の駐車場の利用促進や駐車場を探す迷走運転の防止等を目的として、駐車場の満空情報をドライバーに提供する駐車場案内システムの整備を推進している。
※情報ターミナルについて:※歩車共存道路について高速道路の休憩施設内に設置され、道路交通情報、行先別経路案内等情報を提供する装置。
2 道路の新設・改築による交通安全対策の推進
- (1)適切に機能分担された道路網の整備
- 基本的な交通の安全を確保するため、高規格幹線道路から居住地域内道路に至るネットワークによって適切に機能が分担されるよう道路の体系的整備を推進するとともに、他の交通機関との連携強化を図る道路整備を推進した。
- ア
- 自動車、自転車、歩行者等の異種交通を分離し、交通流の純化を促進するため、高規格幹線道路から居住地域内道路に至るネットワークを体系的に整備するとともに、特に自転車・歩行者専用道路等の整備を積極的に推進した。
- イ
- 通過交通の排除と交通の効果的な分散により、都市部における道路の著しい混雑、交通事故の多発等の防止を図るため、バイパス及び環状道路等の整備を推進した。
- ウ
- 幹線道路で囲まれた居住地域内や歩行者等の通行の多い商業地域内等においては、通過交通をできる限り幹線道路に転換させるなど道路機能の分化により、生活環境を向上させるため、補助的な幹線道路、区画道路、歩行者専用道路等の系統的な整備、区画道路におけるコミュニティ道路や歩車共存道路※等の交通安全施設の整備等を総合的に実施した。
※歩車共存道路について:歩道等の設置が困難な場合において、ハンプや狭窄等を組み合わせることにより車の速度を抑制し、歩行者等の安全な通行を確保する道路。 - エ
- 国民のニーズに応じた効率的な輸送体系を確立し、道路混雑の解消等円滑な交通流が確保された良好な交通環境を形成するため、道路交通、鉄道、海運、航空等複数の交通機関の連携を図るマルチモーダル施策を推進し、鉄道駅等の交通結節点、空港、港湾の交通拠点へのアクセス道路の整備等を実施した。
- (2)改築による道路交通環境の整備
- 交通事故の多発等を防止し、安全且つ円滑・快適な交通を確保するため、次の方針により道路の改築事業を強力に推進した。
- ア
- 歩行者及び自転車利用者の安全と生活環境の改善を図るため、歩道等を設置するための既存道路の拡幅、小規模バイパスの建設と併せた道路空間の再配分、自転車の通行を歩行者や車両と分離するための自転車道の設置などの道路交通の安全に寄与する道路の改築事業を積極的に推進した。
- イ
- 交差点及びその付近における交通事故の防止と交通渋滞の解消を図るため、交差点のコンパクト化、立体交差化等を推進した。
- ウ
- 一般道路の新設・改築に当たっては、交通安全施設についても併せて整備することとし、道路標識、中央帯、車両停車帯、道路照明、防護さく等の整備を図った。また、歩行者の安全を確保するため必要がある場合には、スロープや昇降装置の付いた立体横断施設の整備を図った。
- エ
- 道路の機能と沿道の土地利用を含めた道路の利用実態との調和を図ることが交通の安全の確保に資することから、沿道からのアクセスを考慮した副道等の整備、植樹帯の設置、街路事業や特定交通安全施設等の整備事業による自転車駐車場の整備、路上駐停車対策等を推進した。
- オ
- 商業系地区等における歩行者及び自転車利用者の安全で快適な通行空間を確保するため、これらの者の交通量や通行の状況に即して、幅の広い歩道、自転車道、コミュニティ道路、歩車共存道路、車両の通行を禁止又は制限したショッピングモール等の整備を推進した。
- カ
- 交通混雑が著しい都心地区、鉄道駅周辺地区等において、人と車の交通を体系的に分離するとともに、歩行者空間の拡大を図るため、地区周辺の幹線道路、ペデストリアンデッキ※、交通広場等の総合的な整備を推進した。
- ※ペデストリアンデッキについて:歩行者を保護するために車道と分離し、立体的に設置した歩行者道。
- キ
- 歴史的街並みや史跡等卓越した歴史的環境の残る地区において、地区内の交通と観光交通、通過交通を適切に分離するため、歴史的地区への誘導路、地区内の生活道路、歴史的みちすじ等の整備を体系的に推進した。
- ク
- 環境にやさしい自転車を自動車、徒歩、公共交通と並ぶ都市の交通手段として利用しやすくするため、自転車の安全な走行空間の整備を行うとともに、鉄道駅周辺等で道路事業等による自転車駐車場(原動機付自転車の駐車を含む。)の整備を推進した。
- (3)災害発生時に備えた安全の確保
- 豪雨・豪雪、地震、火山噴火等による災害が発生した場合においても安全で安心な生活を支える道路交通を確保するため、異常気象時において地域の孤立等を避けるための生命線となる道路の整備や道路の防災対策、緊急輸送道路を中心とした橋りょう等の耐震補強、雪崩・地吹雪対策について、平成13年度は事業費4,892億円をもって実施したほか、道路防災週間等を通じた道路利用者への道路防災対策の普及・啓発を推進した。
- (4)地域に応じた安全の確保
- 交通の安全は、地域に根ざした課題であることにかんがみ、沿道の地域の人々のニーズや道路の利用実態、交通流の実態等を把握し、その特性に応じた道路交通環境の整備を行なった。
また、積雪寒冷特別地域においては、冬期の安全なモビリティ(移動利便性)を確保するため、冬期積雪・凍結路面対策として適時適切な除雪や凍結防止剤散布の実施、交差点等における消雪施設等の整備、流雪溝、チェーン着脱場等の整備を推進した。さらに、安全運転の確保に資するため、気象、路面状況等に関する情報を収集し、道路利用者に提供する気象情報システムの整備を推進し、これらについて事業費1,480億円をもって実施した。
3 交通安全施設等整備事業の推進
平成13年度は、特定交通安全施設等整備事業七箇年計画の第6年度として、都道府県公安委員会及び道路管理者が連携を図りつつ、交通安全施設等の整備を強力に推進した。
特定交通安全事業としては、公安委員会所管分約508億円、道路管理者所管分2,748億円(第1‐5表)を計上し事業を推進した。特に、沖縄県以外の信号機新設を特定交通安全事業としたのは、昭和60年度以来であり、全国で約4,000基の信号機を新設するために必要な経費を盛り込んだ。
また、地方単独事業による、信号機の新設、防護さくの設置、道路標識等の整備や地方道路整備臨時交付金を用いた事業により、交通安全施設の一層の整備拡充を図った。
なお、事業の実施に当たっては、(財)交通事故総合分析センターの活用を図りながら、交通事故の科学的な調査・分析を重点的に実施し、効果的な交通安全施策の実施に努めた。
- (1)事故多発地点対策の推進
- ア
- 自動車交通の安全と円滑を確保するため、事故多発地点のうち緊急度の高い箇所について、詳細な事故分析を行い、これに基づき交差点改良、視距の改良、付加車線等の整備を改築事業による整備等と併せて重点的に実施した。また、道路の構造等に応じて、中央帯の設置、バス路線等における停車帯の設置及び防護さく、道路標識、道路標示、区画線等の交通安全施設等の整備を推進した。
整備後においては、その効果を評価し、対策効果が不十分な箇所においては、事故発生要因の分析・対策立案段階に立ち返り、追加的な対策を講じた。また、効果的な事故削減対策のノウハウを整理・蓄積し、これを適切に活用することにより、幅広く交通事故の削減を図った。
- イ
- 道路の構造及び交通の実態を勘案して、交通事故が発生する危険性が高い場所等に信号機を設置した。既存の信号機については、交通状況の変化に合理的に対応できるように、集中制御化、系統化、速度感応化、多現示化、右折感応化等の高度化を推進した。特に、幹線道路で夜間等横断交通が極めて少なくなる場所については、信号機の閑散時半感応化・押しボタン化を推進した。また、必要のある場所には、バス感応化等を行なった。
- ウ
- 道路の構造、交通の状況等に応じた交通の安全を確保するために、道路標識の高輝度化・大型化・可変化、標示板の共架、設置の場所の統合・改善、道路標示の高輝度化等の交通安全施設等の整備を推進した。また、交通事故発生地点を容易に把握し、速やかな事故処理及び的確な事故調査が行えるようにするとともに、自動車の位置や目的地までの距離を容易に確認できるようにするためのキロポスト(地点標)の整備を推進した。さらに、見通しの悪いカーブで、対向車が接近してくることを知らせる対向車接近システムの整備を推進するとともに、幹線道路の単路における速度超過による事故を防止するための高速走行抑止システムを整備した。加えて、依然として多発している夜間死亡事故に対処するため、道路照明・視線誘導標等の設置による夜間事故対策を推進した。
- (2)バリアフリー化を始めとする歩行空間等の整備
- ア
- 歩行者及び自転車利用者の安全で快適な通行を確保するため、歩行者等の交通事故が発生する危険性の高い区間等について、改築事業等による整備と併せて歩道及び自転車道等の整備を引き続き重点的に実施した。
その際、快適な通行空間を十分確保した幅の広い歩道の整備とともに、既存の道路に歩道等の設置が困難な場合においては、その歩道等の代替として既存の道路と並行した歩行者専用道路、自転車歩行者専用道路等の整備を推進した。
また、通過車両の進入を抑え、歩行者等の安全確保と生活環境の改善を図るため、コミュニティ道路、歩車共存道路等の整備を推進するとともに、見やすく分かりやすい道路標識・道路標示とするため、道路標識の高輝度化・大型化・可変化、標示板の共架、設置の場所の統合・改善等を行い、視認性の向上を図った。 - イ
- 高齢者、身体障害者等の自立した日常生活及び社会生活を確保するため、駅、公共施設、福祉施設、病院等の周辺を中心に平坦性が確保された幅の広い歩道、音響信号機、高齢者等感応信号機、歩行者感応信号機等のバリアフリー対応型信号機、待ち時間表示装置、昇降装置付立体横断施設、歩行者用休憩施設、自転車駐車場、身体障害者用の駐車ます等を有する自動車駐車場等を整備するとともに、改築事業等と併せた電線類の地中化を推進した。あわせて、道路標識の高輝度化・大型化・可変化、道路標示の高輝度化等を推進した。
また、駅前等の交通結節点において、エレベーター等の設置、スロープ化や建築物との直結化が図られた立体横断施設、交通広場等の整備を推進し、歩きたくなるような安全で快適な歩行空間を積極的に確保した。
特に、高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(平成12年法68。以下「交通バリアフリー法」という。)に基づき、重点整備地区に定められた駅の周辺地区等においては、公共交通機関等のバリアフリー化と連携しつつ、誰もが歩きやすい幅の広い歩道、道路横断時の安全を確保する機能を付加した信号機等の整備が面的且つネットワークとして行われるよう配慮した。
また、バリアフリー歩行空間が有効に利用されるよう、高齢者を始めとする歩行者等に対して、視覚障害者誘導用ブロック、歩行者用の案内標識、バリアフリーマップ等により、公共施設の位置や施設までのバリアフリー経路等を適切に案内した。
このほか、積雪による歩道幅員の減少や凍結による転倒の危険性の増大など、冬期特有の障害に対し、鉄道駅周辺、中心市街地、通学路等、特に安全で快適な歩行空間の確保が必要な所において、歩道等の除雪の重点的な実施や、交通バリアフリー法の特定事業としての融雪施設、流雪溝、雪覆工の整備の推進を図った。 - ウ
- 高齢運転者の増加に対応するため、道路標識の高輝度化・大型化・可変化、道路標示の高輝度化等高齢運転者に見やすい道路標識・道路標示の整備を図った。
- エ
- 児童・幼児の通行の安全を確保するため、歩道等の整備、押しボタン式信号機、歩行者用灯器等の整備、立体横断施設の整備、横断歩道等の拡充により、通学路、通園路の整備を図った。
- オ
- 市街地における安全且つ円滑・快適な道路交通環境を効率的に確保するため、交通安全施設等の整備と併せ、道路空間と一体となって交通安全施設と同様に機能する歩行者用通路や交通広場などの整備を推進した。
- (3)円滑・快適で安全な道路交通の確保
- ア
- 交通に関する情報の収集、分析及び伝達並びに信号機、道路標識及び道路標示の操作その他道路における交通の規制を広域的かつ総合的に行うため、交通管制エリアの拡大等交通管制システムの充実・高度化を図った。
- イ
- 幹線道路において、交通の変動実態を的確に把握し、予想される変動に対応した信号制御を行うため、系統化、閑散時押しボタン化、半感応化、多現示化、右折感応化等の信号機の高度化を図った。また、信号交差点における歩行者の安全確保を図るため、全国100箇所を抽出し、歩行者と車両の通行を時間的に分離する歩車分離信号のモデル運用を行なった。
- ウ
- 多数の路上駐車のため安全で円滑な道路交通が阻害されている都市内の道路において、交通安全施設としての駐車場、路上駐車施設、駐車場案内・誘導システム、違法駐車抑止システムの整備を図るなど、総合的な駐車対策を推進した。
また、過労運転に伴う事故防止や近年の高齢運転者等の増加に対応して、都市間の一般道路において追越しのための付加車線や「道の駅」などの休憩施設等の整備を積極的に推進した。 - エ
- 分かりやすく使いやすい道路交通環境を整備し、安全で円滑な交通の確保を図るため、交通監視カメラ、各種車両感知器等の整備、道路・交通等に関する情報(異常気象に関する情報や都市間のルート選択に資する情報を含む。)を迅速かつ的確に提供する道路情報提供装置、交通情報板、路側通信設備等の整備、時間別・車種別等の交通規制の実効を図るための視認性・耐久性に優れた大型固定標識及び路側可変標識の整備並びに利用者のニーズに即した系統的で分かりやすい案内標識及び中央線変移システムの整備を推進した。特に、主要な幹線道路の交差点及び交差点付近における大型案内標識や交差道路標識の整備を重点的に進めることとし、外国人に分かりやすいローマ字併用表示・シンボル表示を積極的に取り入れ、国際化の進展への対応に努めた。
また、道路交通情報通信システム(VICS:Vehicle Information and Communication System)の整備・拡充を推進した。 - オ
- 平成12年度に警察庁及び国土交通省が設置した「道路交通環境安全推進連絡会議」を活用し、学識経験者のアドバイスを受けつつ、施策の企画、評価、進行管理等に関して協議を行い、的確かつ着実に安全な道路交通環境の実現を図った。
- (4)災害に強い交通安全施設等の整備
- 地震、豪雨、豪雪等による災害が発生した場合においても安全な道路交通を確保するため、交通管制センター、交通監視カメラ、各種車両感知器、交通情報板等の交通管理施設の整備及び通行止め等の交通規制を迅速かつ効果的に実施するための道路災害の監視システムの開発・導入、交通規制資機材の整備を推進するとともに、災害発生時の停電に起因する信号機の機能停止による混乱を防止するため、予備電源として自動起動型信号機電源付加装置の整備を推進した。
また、オンライン接続された各都道府県警察の交通管制センターから詳細な交通情報をリアルタイムで一元的に収集し、それを災害時の広域的な交通管理に活用できるよう、平成13年5月に警察庁において広域交通管制室の運用を開始した。
4 高速自動車国道等における交通安全施設等の整備
高速自動車国道等においては、緊急に対処すべき交通安全対策について、一般道における特定交通安全施設等整備事業七箇年計画とも連携を図りつつ、総合的な対策を実施する観点から、高速自動車国道等における交通安全対策に関する事業計画に基づき、交通安全施設の整備等を計画的に進めている。
- (1)事故削減に向けた総合的施策の集中的実施
- 事故多発地点のうち、緊急に対策を実施すべき箇所について事故の特徴や要因を分析し、箇所ごとの事故発生状況に対応した交通安全施設等の整備を下記のとおり実施した。
大型車の交通量が多く、中央分離帯の突破による重大事故のおそれがある箇所については強化型防護さくの設置の推進を図るとともに、雨天時の事故を防止するための高機能舗装の整備、夜間の事故を防止するための高視認性区画線や自発光式視線誘導標等の各種交通安全施設の整備を実施した。また、道路構造上往復の方向に分離されていない二車線の区間(暫定供用区間)については、対向車線へのはみ出しによる正面衝突事故を防止するため高視認性のポストコーンを設置するほか、後続車のイライラ運転を防止するための付加車線の設置等の交通安全対策を実施した。 - (2)安全で快適な交通環境づくり
- 過労運転やイライラ運転を防止し、安全で円滑な走行環境の確保を図るため、インターチェンジ及び本線料金所の改良・本線拡幅を実施したほか、混雑しているサービスエリアやパーキングエリアの駐車ますの増設を実施した。
- (3) 高度情報技術を活用したシステムの構築
- リアルタイムな道路交通情報等を提供するVICSのサービス内容の充実を図るとともに、ノンストップ自動料金支払いシステム(E.T.C:Electronic Toll Collection System)について、東名・名神高速道路、東北自動車道、山陽自動車道、九州自動車道等、平成14年3月末現在、681箇所の料金所にサービスを拡大するなど、高度道路交通システム(I.T.S:Intelligent Transport Systems)の関連施設の整備を推進した。また、携帯電話やインターネット等を利用した、出発前におけるリアルタイムな情報提供の充実を図った。
5 効果的な交通規制等の推進
- (1)交通規制の実施状況
- 安全で円滑な交通の確保及び交通公害の防止を図りつつ、都市及び道路の交通機能を十分発揮させるため、道路網全体における個々の道路が有する社会的機能、道路交通の実態及び交通障害の状況を的確に把握し、効果的な交通規制を実施した。また、既設の交通規制については、交通事故の発生状況、道路の状況、交通量等交通実態の変化に応じた合理的な交通規制となるよう点検・見直しに努めた。
- (2)地域の特性に応じた交通規制
- 主として通過交通の用に供される道路については、駐停車禁止、転回禁止、指定方向外進行禁止、進行方向別通行区分等交通流を整序化するための交通規制を、主として地域交通の用に供される道路については、一方通行、指定方向外進行禁止等を組み合わせ、通過交通を抑制するなど、良好な生活環境を維持するための交通規制を、また、主として歩行者及び自転車利用者の用に供される道路については、歩行者用道路、車両通行止め、路側帯の設置等歩行者及び自転車利用者の安全を確保するための交通規制を強化した。
特に、生活の場である住居系地区等においては、歩行者等の安全の確保に重点を置いたゾーン規制を実施し、コミュニティ・ソーン等の形成を図った。 - (3)安全で機能的な都市交通確保のための交通規制
- 安全で機能的な都市交通を確保するため、計画的に都市総合交通規制を推進し、交通流・量の適切な配分・誘導を図った。また、路線バス、路面電車等大量公共輸送機関の安全・優先通行を確保するための交通規制を推進した。
- (4)幹線道路における交通規制
- 幹線道路については、交通の安全と円滑化を図るため、道路の構造、交通安全施設の整備状況、交通の状況等を勘案しつつ、速度規制及び追越しのための右側部分のはみ出し通行禁止規制等について見直しを行い、その適正化を図った。
- (5)高速道路における交通規制
- 高速自動車国道においては、平成13年中に新たに供用された路線(150.1キロメートル)について、交通安全施設の整備状況、既供用道路における交通規制との斉一性や一般道路との関連性を考慮し、最高速度規制等所要の交通規制を実施した。特に、道路構造上往復の方向に分離されていない二車線の区間(暫定供用区間)については、対向車線へのはみ出しによる正面衝突事故を防止するため、追越しのための右側部分のはみ出し通行禁止規制等の交通規制を実施した。また、既に供用中の高速道路における交通規制についても、交通実態や交通安全施設の整備状況に応じて見直しを行なった(第1‐6表)。
このほか、異常気象時や交通事故、交通渋滞及び道路工事等の場合にも、高速道路の交通の安全と円滑を確保するため、最高速度規制、通行止め規制等の臨時交通規制を迅速かつ的確に実施した。大規模交通障害発生時においては、広域的観点に立った交通情報の提供、交通規制の実施等により、適切なう回誘導に努めた(第1‐7表)。
また、大型貨物自動車等の安全対策として、東名高速道路等8路線の一部区間において、最も左側の車線を通行すべき車両通行帯として道路標識により指定しているところである。 - (6)事故多発地域における重点的交通規制
- 交通事故の多発する地域、路線等においては、最高速度の指定、追越しのための右側部分のはみ出し通行禁止等の効果的な交通規制を重点的に実施した。
- (7)災害発生時における交通規制
- 災害対策基本法(昭和36年法223)による通行禁止等の交通規制を的確且つ迅速に行うため、信号制御により被災地への車両の流入を抑制するとともに、う回指示・広報を行い、あわせて、災害の状況や交通規制等に関する情報を提供する交通情報板等の整備を推進した。
6 コミュニティ・ソーンの形成
住居系地区や商業系地区において、通過交通の進入を抑え、歩行者等の安全等地区内の生活の安全を確保するため、交通事故が多発しているなどの問題が生じている地区を抽出し、歩行者の歩行等に車両の通行を調和させるという考え方のもとに、ハンプや狭窄等が整備されたコミュニティ道路等の面的整備と都道府県公安委員会によるゾーン規制等の交通規制を適切に組み合わせ、良好なコミュニティ・ゾーンの形成を図った。
特に、歩行者、自転車、自動車等が集中し、錯綜する商業系地区においては、コミュニティ・ゾーンの形成と併せて、バリアフリー歩行空間の整備、自転車走行空間の整備など各交通モードの安全で快適な通行空間の整備を総合的に実施した。
整備の立案・実施に当たっては、コミュニティ・ゾーンの形成が身近な生活道路の利用の在り方に密接に関係することから、整備の立案段階において、関係住民との意見交換を行うなど理解と協力を得ることに十分配慮した。
事業実施後は、事故の発生状況調査や通過交通量調査、改善状況等に関する地域住民等へのヒアリング等を実施し、対策の効果を評価するとともに、対策効果が不十分な場合は、事故発生要因の分析・対策立案段階に立ち返り、追加的な対策を実施した。
7 高度道路交通システムの整備
最先端の情報通信技術(I.T:Information Technology)等を用いて、人と道路と車とを一体のシステムとして構築し、安全性、輸送効率及び快適性の向上を実現するとともに、渋滞の軽減等の交通の円滑化を通じて環境保全に大きく寄与することを目的とした高度道路交通システム(I.T.S)を推進している。そのため、平成8年に策定されたI.T.S全体構想に基づき、産・官・学が連携を図りながら、研究開発、フィールドテスト、インフラ(社会基盤)の整備、普及及び標準化に関する検討等の一層の推進を図るとともに、I.T.S世界会議等における国際情報交換、国際標準化等の国際協力を積極的に進めた。
- (1)道路交通情報通信システムの整備
- 渋滞情報、所要時間情報及び規制情報等の道路交通情報をリアルタイムに直接車載機へ提供する道路交通情報通信システム(VICS)の整備を推進し、平成13年度末現在、37都道府県の一般道路及び全国の高速道路においてサービスを開始している。さらに、全国展開及びシステムの高度化に向け、ビーコン・情報通信基盤の整備を全国の高速道路や主要都市等において推進した。
- (2)新交通管理システムの推進
- 高度化された交通管制センターを中心に、個々の車両等との双方向通信が可能な光ビーコンを媒体として、交通流・量を積極的かつ総合的に管理することにより、高度な交通情報提供、動的経路誘導、車両の運行管理、公共車両の優先通行、交通公害の減少、安全運転の支援、歩行者の安全確保等を図り、交通の安全及び快適性を確保しようとする新交通管理システム(UTMS)の構想に基づき、システムの充実、キーインフラである光ビーコンの整備等の施策の推進を図った。平成13年度はこのUTMSの中核となる高度交通管制システムの整備の一環として、盛岡市及び姫路市の交通管制センターを更新し、高度化した。
- (3)スマートウェイ・スマートゲートウェイ・スマートカープロジェクトの推進
- 障害物や車線逸脱等の情報を自動車と道路間の通信によりリアルタイムでやり取りすることによって、従来不可能であったドライバーの発見の遅れに対する情報提供、判断の誤りに対する警告、ドライバーの操作支援を行い、安全で安心な走行支援の実現と道路交通事故の低減を図る走行支援システムについて、国際電気通信連合(I.T.U)で国際標準となったE.T.Cの技術を活用し、(a)I.T.S仕様の次世代の道路(スマートウェイ)、(b)自動車と道路側システムの間を結ぶ高度な情報通信(スマートゲートウェイ:知能通信)及び(c)高速走行する自動車(スマートカー)に関する技術の三位一体となった研究開発を行い、早期実現・普及を促進しており、要求性能の妥当性やサービスの受容性などについて検証するため、実証実験等を行なった。また、スマートウェイの構造・機能・要件に関する制度・基準類の整備を並行して進めている。
さらに、高速走行時における自動車と道路等の通信を確実かつ円滑に行うことを可能とするため、高速走行対応のハンドオーバー制御技術、連続セル構成技術、高速走行対応の高信頼接続システム技術等のスマートゲートウェイ(知能通信)技術の研究開発を実施している。 - (4)道路運送事業に係る高度情報化の推進
- 環境に配慮した安全で円滑な自動車の運行を実現するため、道路運送事業においてI.T.S技術を活用し、公共交通機関の利用促進に資する利用者支援システム、運行支援システム、物流の効率化に資する運行管理支援システム、荷物管理支援システム等の整備を進めている。
公共交通においては、情報提供の高度化による利用者の利便性向上や、運行管理の高度化による道路運送事業者の支援等を中心に取り組んでおり、平成13年度は、高速バス運行情報システムを九州と新潟地区において構築して実証実験を行い、その整備に係る課題の抽出や評価を行なった。
また、物流においては、運行管理を支援するとともに、荷物管理についての高度化や効率化の実現を図ることにより、環境負荷の軽減、安全で円滑な運行の確保、物流コストの低減などを推進しており、平成13年度は、特定地域の荷主からの集荷情報の集約を行うことにより、域内流入車両の低減を図ることを目的とした、都市内物流効率化システムの実証実験を行なった。
8 交通需要マネジメントの推進
依然として厳しい道路交通渋滞を緩和し、道路交通の円滑化を図るため、バイパス・環状道路の整備や交差点の改良等の交通容量の拡大策、交通管制の高度化等に加えて、パークアンドライド※の推進、情報提供の充実、相乗りの促進、時差通勤・通学、フレックスタイム制の導入等により、道路利用の仕方に工夫を求め、輸送効率の向上や交通量の時間的・空間的平準化を図る交通需要マネジメント(TDM:Transportation Demand Management)を推進した。
また、都市圏における交通渋滞の緩和等を図るため、TDM実証実験に参加する事業者への支援を含め、TDMを推進する地方公共団体等への支援を行うとともに、広報・啓発活動を積極的に行なった。平成13年度より、地域における自動車交通流・量の調整、事業者による交通事業の改善等を行うTDM実証実験に対する認定制度を設け、26地域の実験計画を認定した。
※パークアンドライドについて:都心部等の自動車交通混雑の緩和を図るため、都心部へ乗り入れる鉄道の郊外駅、バスターミナル等の周辺に駐車場を整備し、自動車を駐車(パーク)させ、鉄道、バス等公共交通機関への乗換え(ライド)を促すシステム。
- (1)公共交通機関利用の促進
- 道路交通混雑が著しい一部の道路について、バス専用(優先)レーンの設定、バス停やバス感知式信号機、公共車両優先システム(PTPS:Public Transportation Priority Systems)の整備、パークアンドバスライドやコミュニティバスの導入等バスの利用促進を図るための施策を推進するとともに、これらの施策を関係省庁が連携して総合的に実施するオムニバスタウン構想を推進した。また、路面電車、モノレール等の公共交通機関の整備を支援し、鉄道、バス等の公共交通機関への転換による円滑な道路交通の実現を図った。
さらに、鉄道、バス事業者による運行頻度、運行時間の見直し等により、利用者の利便性の向上を図るとともに、鉄道駅・バス停までのアクセス確保のために、パークアンドライド駐車場、自転車道、駅前広場等の整備を促進し、交通結節機能を強化した。 - (2)自動車利用の効率化
- 乗用車の平均乗車人数の増加及び貨物自動車の積載率の向上により効率的な自動車利用を推進するため、自動車相乗りの促進、共同配送システムの構築、車両運行管理システム(MOCS:Mobile Operation Control Systems)の導入等による物流の効率化等の促進を図った。
- (3)交通需要の平準化
- 交通需要のピーク時間帯の交通を分散するため、時差通勤・通学及びフレックスタイム制の導入を促進するとともに、道路交通情報の充実を図った。
9 総合的な駐車対策の推進
- (1)違法駐車の状況
- 違法駐車は、幹線道路等における交通渋滞を悪化させる要因となるだけでなく、交通事故の原因ともなっており、また、歩行者等の安全な通行の障害となるほか、緊急自動車の活動に支障を及ぼすなど住民の生活環境を害し、国民生活全般に大きな影響を及ぼしている。
平成13年中の駐車車両への衝突事故の発生件数は2,933件で、109人が死亡したほか、110番通報された苦情要望のうち、駐車問題に関するものが27.3%を占めている。 - (2)秩序ある駐車の推進
- ア
- 道路の構造や地域の交通実態を勘案し、幹線道路等特に必要がある区間においては駐車禁止規制を強化する一方で、特定の時間帯、曜日に駐車需要が減少する地域では駐車規制を解除するほか、都市部の商業地域等の短時間駐車が多く、かつ、無秩序な駐車が問題になっている地域であって、当該地域の短時間駐車需要を路外駐車施設で収容することが困難と認められる地域においては時間制限駐車区間規制を実施するなど、地域全体の駐車管理構想に沿ったきめ細かな駐車規制を行なった。平成13年3月末現在、パーキング・メーターの設置基数は2万6,392基、パーキング・チケット発給設備は1,539基であり、時間制限駐車区間における駐車可能枠数は3万8,217となっている。
- イ
- 違法な駐停車が交通渋滞等交通に著しい迷惑を及ぼす交差点においては、違法駐車抑止システム等の整備を促進し、駐停車等をしようとしている自動車運転者に対して音声で警告を与えることにより、違法駐停車を抑制して交通の安全と円滑化を図った。
- ウ
- 違法駐車の取締りは、高齢者、身体障害者等の移動の円滑化にも資するため、幹線道路の交差点、横断歩道、バス停留所の付近等における悪質・危険性、迷惑性の高い違反に重点を置いて行なっている。平成13年中の駐車違反の取締り件数は181万6,870件であった。
また、道路を自動車の保管場所として使用するいわゆる青空駐車や自動車の使用の本拠の位置、保管場所の位置等を偽り保管場所証明を受けるいわゆる車庫とばしの検挙を推進した。 - (3)駐車場等の整備
- ア
- 駐車場整備計画の調査を推進し、自動車交通がふくそうする地区等において、駐車場整備地区の指定を促進するとともに、当該地区において計画的、総合的な駐車対策を行うため、駐車場整備計画の策定を推進した。
- イ
- 大規模な建築物に対し駐車場の整備を義務付ける附置義務条例の制定の促進等を行うとともに、道路開発資金等の低金利融資制度の活用による民間駐車場の整備や、中心市街地等商店街・商業集積活性化施設等整備事業による助成により、商店街において商店街振興組合等が行う駐車場の整備を促進した。この場合、共同荷さばき駐車場の整備についても配慮した。
また、都市機能の維持・増進を図るべき地区及び交通結節点等重点的に駐車場の整備を図るべき地域において、特定交通安全施設等整備事業や有料道路融資事業(無利子貸付制度)等を活用した公共駐車場の整備を積極的に推進した(第1‐8表)。 - ウ
- 既存駐車場の有効利用を図るため、駐車場案内・誘導システムの整備と高度化を推進した。また、郊外部からの過剰な自動車流入を抑止し、都心部での交通のふくそうを回避するため、パークアンドライドの普及のための駐車場等の環境整備を推進した。
- (4)違法駐車締出し気運の醸成・高揚
- 各地方公共団体に対し、違法駐車防止条例の制定を働きかけるとともに、その運用に必要な協力と支援を行なった。
また、地域交通安全活動推進委員、報道機関等の協力を得て違法駐車に起因する交通事故の実態、交通渋滞の状況等違法駐車の危険性・迷惑性に関する情報の提供を積極的に行うなど、違法駐車排除のための広報啓発活動を進めた。
10 地域住民等と一体となった安全な道路交通環境の整備
安全な道路交通環境の整備に当たっては、道路を利用する人の視点をいかすことが重要であることから、地域住民や道路利用者の主体的な参加のもとに交通安全施設等の点検を行う交通安全総点検を積極的に推進するとともに、道路利用者等が日常感じている意見について、はがき、インターネット、「道の相談室」等を活用して取り入れ、道路交通環境の整備に反映した。
また、交通の安全は、住民の安全意識により支えられることから、安全で良好なコミュニティの形成を図るために、交通安全対策に関して住民が計画段階から実施全般にわたり積極的に参加できるような仕組みをつくり、行政と市民の連携による交通安全対策を推進した。
さらに、安全な道路交通環境の整備に係る住民の理解と協力を得るため、事業の進ちょく状況、効果等について積極的に公表した。
11 その他の道路交通環境の整備
- (1)重大事故の再発防止
- 社会的に大きな影響を与える重大事故が発生した際には、速やかに当該か所の道路交通環境等事故発生の要因について調査するとともに、発生要因に即した所要の対策を早急に講ずることにより、当該事故と同様な事故の再発防止を図った。
- (2)道路使用及び占用の適正化等
- ア
- 道路の使用及び占用の抑制
- 工作物の設置、工事等のための道路の使用及び占用の許可に当たっては、道路の構造を保全し、安全且つ円滑な道路交通を確保するため、原則として抑制する方針のもとに適正な運用を行うとともに、道路使用許可条件の履行、占用物件等の維持管理の適正化を図り、特に、地下埋設物の管理について指導を強化した。
また、道路使用状況を正確に把握することにより、道路使用による道路交通への影響を最小限にとどめるため、道路使用許可に係る事務の電子化を進めた。 - イ
- 不法占用物件等の排除
- 不法占用物件等の排除については、従来から全国交通安全運動の実施項目として取り上げるなど重点的に取り組んでいる。また、道路上から不法占用物件等を一掃するためには、沿道住民を始め、道路利用者の道路についての十分な認識と自覚に待つところが大きいことから、「道路ふれあい月間」等において道路愛護思想の普及を図った。
なお、道路工事調整等を効率的に行うため、図面を基礎としてデータ処理を行うデジタル地図を活用したコンピュータ・マッピング・システムを開発し、運用中である。 - ウ
- 道路の掘り返しの規制等
- 都市部の道路における無秩序な掘り返しを規制し、道路の掘り返し工事に起因する交通事故、渋滞を未然に防止するため、道路管理者、警察その他の関係機関及び公益事業者により構成される地方連絡協議会を活用し、地下埋設工事等の施工時期を調整、交通事故防止、地下埋設物件の実態把握、工事施工者、地下埋設物件の管理者及び道路管理者相互間での緊密な協議による安全確保の措置を講ずること等について各道路管理者を指導している。
また、道路の掘り返しを防止し、円滑な道路交通を確保するため共同溝の整備を推進しており、平成13年度は事業費566億円で整備を実施した。 - (3)道路法に基づく通行の禁止又は制限
- ア
- 特殊車両の通行の禁止又は制限
- 車両制限令(昭和36年政265)に定める車両の幅、重量、高さ等の最高限度を超える大型車及び重量車の場合、道路を通行させることは、道路構造の保全又は交通の危険の防止の観点から原則として禁止されており、一定の条件を満たすものについてのみ道路管理者の許可を受けて道路を通行させることができることになっている。しかし、これに違反して通行する車両が依然として発生していることにかんがみ、軸量計、車重計、車高計など取締り機器を設置した取締基地の整備を促進するとともに、警察等関係機関と緊密な連携を図りつつ、道路監理員による指導取締りを実施した。
- イ
- 災害、異常気象時等における通行の禁止又は制限
- 道路管理者は、道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため、異常気象時等の緊急時において、道路の破損、欠壊等により、現に一般交通に危険が生じている場合はもちろん、その危険の発生が客観的に予測される場合又は道路工事のためやむを得ないと認められる場合には、規制基準及び規制区間を設定するなどして、適時適切な道路の通行の禁止又は制限を実施している。
- ウ
- 水底トンネル等における危険物積載車両の通行の禁止又は制限
- 水底トンネル等※において、道路構造を保全し、又は交通の危険を防止するため、道路管理者は、爆発性又は易燃性を有する物件その他の危険物を積載する車両の通行を禁止又は制限しており、平成9年12月の関係省庁等による「危険物運搬車両の事故防止等対策についての申合せ」も踏まえて、違反車両の取締りを実施した。
- ※水底トンネル等について:水底トンネル及びこれに類するトンネルで国土交通省令で定めるもの。水底にあるトンネルで当該トンネルの路面の高さが水面の高さ以下のもの又は長さ5,000メートル以上のトンネルを含む。
- (4)自転車利用環境の総合的整備
- ア
- 都市交通としての自転車の役割と位置付けを明確にしつつ、自転車や歩行者、自動車の交通量に応じて歩行者、自動車とも分離された自転車道及び自転車専用道路、自転車が走行可能な幅の広い歩道である自転車歩行者道等の自転車利用空間を整備した。また、自転車専用通行帯、普通自転車の歩道通行部分の指定等の交通規制を実施した。
- イ
- 自転車等の駐車対策については、その総合的かつ計画的な推進を図ることを目的として、自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律(昭和55年法87)による施策を総合的に推進しており、自転車等駐車対策協議会を設置して調査審議し、総合計画を策定するよう促進するとともに、自転車等の駐車需要の多い地域及び今後駐車需要が著しく多くなることが予想される地域を中心に、交通安全施設等整備事業、街路事業等による自転車等の駐車場整備事業を拡充し推進した。平成13年度は、特定交通安全施設等整備事業として事業費28億円をもって30箇所、街路事業として事業費80億円をもって19箇所で事業を実施した。また、大量の自転車等の駐車需要を生じさせる施設について自転車駐車場の設置を義務付ける条例の制定※の促進を図るとともに、道路開発資金等の活用による民営の自転車駐車場整備事業の育成を図った。
さらに、自転車駐車場の整備とあいまって、自転車等利用者の通行の安全を確保するための計画的な交通規制を実施した。
※自転車駐車場の設置を義務付ける条例、いわゆる附置義務条例を制定した地方公共団体は、平成13年6月末現在で97に達している。 - ウ
- 鉄道の駅周辺等における放置自転車等の問題の解決を図るため、自転車等駐車対策協議会の積極的な運営と総合計画の策定の促進を図ること等を通じて、地方公共団体、道路管理者、都道府県警察、鉄道事業者等が適切な協力関係を保持するよう務めた。また、これにより、用地提供について鉄道事業者の積極的な協力が得られるようにし、効率的・総合的な自転車駐車場の整備を推進するとともに、地域の状況に応じ、条例の制定※等による駅前広場及び道路に放置されている自転車等の整理・撤去等の推進を図った。
特に、交通バリアフリー法に基づき、市町村が定める重点整備地区内における特定経路を構成する道路においては、高齢者、身体障害者等の移動の円滑化に資するため、違法駐車行為に係る自転車の取締りの強化、広報啓発活動等の違法駐車を防止する取組及び自転車駐車場の整備を重点的に推進した。
※放置自転車の整理・撤去についての条例を制定した地方公共団体は、平成13年6月末現在で497に達している。 - エ
- 自転車利用者に対し、交通社会における責任の自覚を求めるため、自転車の点検整備、自転車の安全な乗り方、道路交通法(昭和35年法105)その他の法令の遵守、正しい駐車方法等に関する教育及び広報活動を推進した。また、道路交通法その他の法令に定める正しい走行方法、正しい駐車方法について、道路上で明確に理解できるよう走行区分の明確化等の整備を推進した。さらに、関係団体による正しい駐車方法等に関する教育及び広報活動を支援した。
- (5)子供の遊び場等の確保
- ア
- 都市公園の整備
都市における児童の遊び場が不足していることから、路上における遊びや運動による交通事故防止のため、都市公園法(昭和31年法79)に基づき、街区公園、近隣公園、運動公園等の都市公園の整備を実施している。平成13年度は第6次都市公園等整備七箇年計画の第6年度として、都市公園のうち近隣公園等の基幹公園及び緑道の緊急且つ計画的な整備を実施した(第1‐9表)。
また、児童が遊びながら交通知識等を体得できるような各種の施設を設置した交通公園は、全国で191箇所が開設され、一般の利用に供されている。 - イ
- 児童館、児童遊園等の整備
児童館及び児童遊園は、児童福祉法(昭和22年法164)による児童厚生施設であり、児童に健全な遊びを与えてその健康を増進し、情操を豊かにすることを目的としているが、児童の交通事故防止にも資するものである。平成12年10月1日現在、児童館が4,420箇所、児童遊園が4,107箇所それぞれ設置されている。児童遊園は、児童の居住するすべての地域を対象に、その生活圏に見合った設置が進められており、特に児童の遊び場が不足している場所に優先的に設置されている。
このほか、幼児等が身近に利用できる小規模な遊び場(いわゆる「ちびっ子広場」)等が地方公共団体等により設置されている。 - ウ
- 学校等の開放
子供の安全な遊び場の確保のために、小学校、中学校等の校庭、体育施設等の開放を促進した。 - (6)電線類の地中化の推進
- 安全で快適な通行空間の確保、都市景観の向上、都市災害の防止、情報通信ネットワークの信頼性の向上等の観点から電線類の地中化を推進するため、新電線類地中化計画に基づき、電線共同溝(C.C.BOX)等の整備を推進した(平成13年度電線共同溝整備事業費:2,161億円)。