平成13年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況
第3編 航空交通 第2章 航空交通安全施策の現況

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第3編 航空交通

第2章 航空交通安全施策の現況

第1節 航空交通環境の整備

1 交通安全施設の整備

 第7次空港整備七箇年計画(平成8~14年度、総投資規模3兆6,000億円)では、航空交通の増大や多様化に対処するとともに、航空交通の安全の確保を図るため,空港の整備及び航空保安施設の整備に、合わせて3兆630億円を充てることとしている。同七箇年計画に基づく13年度の空港及び航空保安施設の整備事業費は5,097億円であった。

(1)航空保安施設の整備
次世代航空保安システム
(a)
航空衛星システム
洋上空域における航空交通の安全性、効率性及び航空交通容量の拡大を図るため、衛星を利用した新たな航空通信・航法・管制システムの整備を推進している。平成13年度は運輸多目的衛星(MTSAT)新1、2号機製造及び新1号機打ち上げ用ロケットの製造等を推進するとともに、新2号機用地上システムの整備に着手した。
また、将来の航空交通の需要増に対応し運航効率の向上等を図るために航空交通管理センターの整備を進めた。
(b)
次期管制システム
航空交通の安全性を確保しつつ、航空衛星システム等の導入に対応するため、現行の管制システムの性能向上(次期管制卓・次期管制情報処理システム・次期管制レーダー情報処理システム)の整備を進めた。あわせて過密空域における監視機能強化のため改良型二次レーダー(SSRモードS)を導入することとし、山田ARSR(千葉県)など3箇所の整備に着手した。
次現行航空保安システム
平成14年1月末現在の管制施設、保安施設及び通信施設の状況は、次のとおりである(第3‐2表)。
(a)
管制施設の整備
(1)
航空路監視レーダー
航空交通の安全性の向上と空域の有効利用を図るため、航空路上の航空機を常時監視することができる航空路監視レーダー(ARSR/ORSR)施設網を整備し、平成13年度末までに釧路など20箇所においてその運用を行なっている。これにより、我が国の高度1万5,000フィート(約4,500メートル)以上の主要航空路を常時レーダー監視できるようになり、安全且つ円滑な航空交通の確保に寄与している。平成13年度は男鹿ORSR(秋田県)の整備を完了するとともに八重岳ARSR(沖縄県)など8箇所の性能向上を行なった(第3‐1図)。
(2)
空港監視レーダー
空港周辺を飛行する航空機を常時監視することができる空港監視レーダー(ASR)の整備を推進しており、中部国際空港など7箇所において新設及び性能向上を行なった。
(3)
管制情報処理システム
航空交通の安全性と管制処理能力の向上を図るため、飛行計画情報処理システム(FDP)、航空路レーダー情報処理システム(RDP)及びターミナルレーダー情報処理システム(ARTS)の整備を推進しているが、FDP及びRDPについては計算機等の性能向上を、また、ARTSについては東京国際空港など7箇所において新設及び性能向上を行なった。
(4)
航空交通流管理センター
全国の航空交通流を一元的に制御する航空交通流管理センターを整備運用しているが、平成13年度は航空交通流管理システムの性能向上等を行なった。
(5)
遠隔対空通信施設
航空交通管制部の管制官が管轄区域内を飛行する航空機と直接交信し、管制承認、管制指示の伝達等を迅速に行うための遠隔対空通信施設(RCAG)については、稚内(北海道)など4箇所において性能向上を行なった。
(6)
管制施設の多重化等の整備
大規模自然災害時における航空機の安全運航を確保するため、抜本的な管制施設等の多重化等の整備を行なった。
(b)
保安施設の整備
(1)
方位・距離情報提供施設
航空機に高精度の方位及び距離情報を提供する方位・距離情報提供施設(VOR/DME)等については、航空交通量の増大に対応するため、大島空港など6箇所において新設整備を推進したほか、いわき(福島県)など21箇所において性能向上を行なった。
(2)
計器着陸装置
航空機に滑走路への適正な進入方向と降下経路を指示する計器着陸装置(ILS)については、大島空港など2箇所において新設整備、福岡空港など10箇所において性能向上を行なった。
(3)
航空灯火
航空機の離着陸時における安全性の向上と就航率の向上を図るための進入灯、滑走路灯等の航空灯火については、東京国際空港等31箇所において精密進入用灯火、大島空港など9箇所において夜間着陸用灯火等の新設整備及び改良を行なった。
(c)
通信施設の整備
(1)
航空交通情報システム
航空機の運航に必要な多種多様の情報を伝達・処理するための航空交通情報システムについては、国内航空交通情報処理中継システム(DTAX)及び国際航空交通情報処理中継システム(AFTAX)等の性能向上を行なった。
(2)
 飛行援助施設
航空需要の増加及び運航形態の多様化による、ユーザーニーズの増加に対応するため、航空機の運航形態や拠点空港を考慮し、飛行フェーズに合わせた情報提供と運航支援体制を図る飛行援助センターの整備を推進しており、平成13年度には、新千歳・那覇において運用を開始した。
(2)空港の整備
大都市圏拠点空港等の整備
平成14年1月末日現在の公共用飛行場は94箇所であり、13年度には次のような整備を行なった。
新東京国際空港については、第1旅客ターミナルビル等の既存施設の能力増強を図るとともに、平成14年初夏のサッカーワールドカップ開催に間に合うよう2,180メートルの暫定並行滑走路の工事を推進し、14年4月18日より供用を開始した。
東京国際空港については、東旅客ターミナルビルの平成15年度末の供用開始を目指し、地盤改良、エプロン新設等を行なった。
関西国際空港については、平行滑走路等を整備する2期事業を推進するとともに、既存施設の能力増強等を行なった。
中部国際空港については、平成17年の開港を目指し、護岸・埋立工事等の進捗を図るとともに、旅客ターミナルビル等の工事に着手した。
一般空港については、15空港において滑走路の新設・延長事業を実施した(うち新規事業は与那国空港、美保飛行場)。
その他60空港において滑走路、誘導路、エプロン等の基本施設の改良、航空保安施設等の整備を行なった。なお、ヘリポート・コミューター空港等の整備については、調布飛行場、東京ヘリポートの整備を行なった。
首都圏第3空港については、東京国際空港の再拡張案が他の候補と比較して、既存ストックの活用、アクセス等の旅客利便等の観点から大きな優位性があるため、これを優先して推進することとされ、東京港における船舶航行や港湾機能の確保の課題につき、関係者と鋭意調整を行なった結果、新たな滑走路は現B滑走路と平行に設けることを決定した。
空港安全技術の強化
空港内の工事に伴う安全確保、飛行場標識施設等の高規格化、オーバーラン等した航空機に対する安全対策等、航空機運航の安全に直接かかわる空港安全技術について基準等の強化を図った。
(3)空港・航空保安施設の耐震性の強化
空港・航空保安施設の耐震性の強化については、空港・航空保安施設耐震性検討委員会の最終取りまとめ(平成8年4月)に基づき、既存施設の耐震補強(庁舎等の点検・診断・改修等)及び管制施設の多重化(管制機能の代替・非常レーダー用レーダー等の整備)等の整備を進めた。
なお、平成13年度は東京国際空港B滑走路において、阪神・淡路大震災規模の地震にも耐えることができるように液状化現象を防ぐための地盤改良を行なった。

第3‐2表 管制施設、保安施設及び通信施設の整備状況

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第3‐1図 航空路監視レーダー配置及び履域図

2 航空交通管制に係る空域の整備

 増加が予想される航空交通を安全且つ効率的に処理するために、航空交通量が多い航空路のふくそう緩和を図るための複線化等に係る検討を行い、新たな経路の設定を行なった。また、広域航法(RNAV)による飛行経路の評価については、平成13年度も引き続き行なった。

航空交通管制に係る安全対策の強化
平成13年1月の日本航空907便の事故の発生を踏まえ、より適正な管制業務の実施により、航空の安全を確保するため、以下の安全対策を着実かつ速やかに実施することとしている。
(1)管制業務実施体制の強化
航空管制官に対する訓練・研修体制の充実を図るため、航空保安大学校岩沼分校を同岩沼研修センターに改組して、研修機関としての体制を強化し、訓練教官及び訓練監督者を養成する研修コースを平成14年度より創設することにより、訓練手法の系統化・高度化と高い資質を持った訓練教官の育成を図る。
(2)管制支援システムの整備
航空管制官が時間的な余裕をもって管制指示を出すことができるようにするため、平成13年度から航空路レーダー情報処理システム(RDP)及びターミナルレーダー情報処理システム(ARTS)における異常接近警報装置の機能の向上を図っている。
また、航空機に搭載されている航空機衝突防止装置(TCAS)の回避指示によるパイロットの回避操作を航空管制官が的確に把握できるようにするため、平成14年度から16年度において、TCAS の回避情報を管制卓のレーダー画面に表示するよう整備を図る。
さらに、平成19年度から20年度において、到着順位付け機能、到着機・通過機レーダー誘導アドバイス機能を有する次期管制システムの導入を図る。
(3)抜本的な空域・航空路の再編
航空路における交通量の集中を緩和するため、平成13年度から段階的に、広域航法(RNAV)を活用して経路の複線化、一方通行化を推進する。
管制業務の負荷を軽減し安全性の向上を図るとともに、管制効率の向上を図るため、平成15年度から段階的に、航空交通管制部(札幌、東京、福岡、那覇)の管轄区域を再編する。
管制業務の負荷を軽減し安全性の向上を図るとともに、運航効率の向上を図るため、平成14年度から段階的に、広域レーダー進入管制業務を展開する。
大都市圏拠点空港の整備に対応した経路の確保及び運航の効率化を図るため、平成14年度から16年度において、主要ターミナル空域(関東、関西)を再編する。
民間航空の効率的な運航を実現するとともに、安全性の向上を図るため、空域・航空路の再編に関し、関係機関との調整を積極的に行う。
管制業務の円滑な実施及び負荷の軽減を図るため、平成17年度を目標年次として、航空交通流管理機能、新洋上管制機能及び空域管理機能を有するATM センター(仮称)を設置する。

航空管制

我が国における航空交通の安全対策の強化

3 飛行検査の充実

 航空交通の安全を確保するための航空保安施設等が所定の機能を保持しているかについて、飛行検査用航空機により検査を行なっており、平成13年度は検査対象施設779局について飛行検査を行なった。

第2節 航空機の安全な運航の確保

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