平成14年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況
第1編 陸上交通 第1部 道路交通
第2章 道路交通安全施策の現況
第3節 安全運転の確保

第1編 陸上交通

第1部 道路交通

第2章 道路交通安全施策の現況

第3節 安全運転の確保
1 運転免許保有者数及び運転免許試験の実施状況

(1)運転免許保有者数

 平成14年12月末現在の運転免許保有者数は、前年に比べて約98万人(1.3%)増加して約7,653万人となった。このうち、男性は約35万人(0.8%)増加して約4,449万人、女性は男性の増加数を上回る約64万人(2.0%)増加して約3,204万人となり、その構成比は男性58.1%、女性41.9%となった(第1-8表)。
 また、年齢層別の増加数では、65歳以上の高齢者が約61万人(7.9%)増加し、増加数の約62%を占めている。
 運転免許の取得可能な16歳以上の人口に占める運転免許保有者数の割合は、70.9%(男性85.1%、女性57.5%)となり、年齢層別では、30~34歳の年齢層が94.0%(男性98.5%、女性90.2%)で最も多く、次いで35~39歳の年齢層となっている(第1-27図)。
 運転免許の種類別保有者数は、第一種普通免許保有者が約6,642万人で全体の86.8%を占めており、対前年増加率も1.6%と高くなっている(第1-9表)。
 身体障害者の運転免許については、運転できる車両の限定の条件が付されているものが延べ28万8,896件、補聴器使用の条件が付されているものが延べ4万7,037件となっている。
 なお、平成14年中の国外運転免許証の交付件数は38万1,448件で、前年に比べ438件(0.1%)減少した。また、外国の行政庁の運転免許を有する者については、一定の条件の下に運転免許試験のうち技能試験及び学科試験を免除することとされており、14年の当該免除に係る我が国の運転免許の件数は2万9,727件に上っている。

表1-8 運転免許保有者数の推移

図1-27 年齢層別・男女別運転免許保有状況

表1-9 種類別運転免許保有者数

(2)運転免許試験の実施状況

身体障害者標識

運転免許試験の概況
平成14年中の運転免許試験の受験者数は429万4,528人で、前年に比べて17万2,087人(3.9%)減少した。また、合格者数は280万5,279人で、前年に比べて14万2,587人(4.8%)減少した。
このうち、普通免許の受験者数は253万1,317人(合格者数183万6,022人)で、前年に比べ4.3%減少(合格者5.9%減少)、大型二輪免許及び普通二輪免許については48万963人(合格者数37万2,848人)で、前年に比べ3.2%減少(合格者1.6%減少)、原付免許については57万6,347人(合格者数33万2,667人)で、前年に比べ6.6%減少(合格者7.3%減少)した(第1-28図)。
障害のある人等の運転免許取得
身体障害者に対しては、安全運転を確保するために必要な範囲で条件を付して運転免許を与えることとしており、運転免許試験を受けようとする場合は、事前に運転適性相談に応じ適切な助言を行うこととしている。また、平成14年6月の改正道路交通法の施行により、障害のある人等に係る運転免許の欠格事由が廃止され、運転への支障の有無を個別に判断することとされたことを踏まえ、障害のある人等に対する運転適性相談活動の一層の充実を図っている。
図1-28 運転免許試験の概況
2 運転者教育等の充実

(1)運転免許を取得しようとする者に対する教育の充実

自動車教習所における教習の充実
(ア)
指定自動車教習所における教習の充実
平成14年末現在における指定自動車教習所数は1,484箇所で、これらの指定自動車教習所で技能検定に従事している技能検定員は1万7,933人、学科又は技能の教習に従事している教習指導員は3万7,359人である。
一方、平成14年中に指定自動車教習所を卒業した者は196万7,027人で、前年に比べ1万3,949人(0.7%)減少したが、新たに運転免許(原付免許等を除く。)を受けた者の94.7%を占めている。このように指定自動車教習所における教習は、初心運転者教育の中心的役割を果たしている。
指定自動車教習所は、常に教習水準の向上を図るとともに、適正な運営により、安全運転に必要な技能と知識はもとより社会的責任を身に付けた健全な交通社会人としての運転者を養成するものでなければならない。そのため、各都道府県公安委員会では、指定自動車教習所の管理者及び教習指導員等に対する定期的な講習や研修を通じ、その資質及び能力の向上を図るとともに、教習及び技能検定等について定期又は随時の検査を行うこととしているほか、教習施設及び教習資器材等の整備等についても指導を行っている。
また、交通状況の変化に迅速、的確に対応するため、常に教習内容を見直し、その充実に努めている。
さらに、平成14年道路交通法施行令改正により、大型第二種免許及び普通第二種免許について、体系的教育の導入及び免許取得機会の拡大の観点から、指定自動車教習所における教習及び技能検定制度が導入された(14年6月1日施行)。
(イ)
指定自動車教習所以外の自動車教習所における教習水準の向上
公安委員会では、指定自動車教習所以外の届出自動車教習所に対して必要な助言等を行い、教習水準の維持向上を図っている。また、特定届出自動車教習所に対しても、教習の課程の指定を受けた教習の適正な実施等を図るため、指導等を行っている。
取得時講習の充実
普通免許、大型二輪免許又は普通二輪免許を受けようとする者は、普通車講習、大型二輪車講習又は普通二輪車講習のほか、応急救護処置講習の受講が義務付けられている。
普通車講習、大型二輪車講習及び普通二輪車講習は、運転に係る危険の予測等安全な運転に必要な技能及び知識について、応急救護処置講習は、気道確保、人工呼吸、心臓マッサージ等に関する知識について行われている。平成14年には、普通車講習を2万1,461人、大型二輪車講習を806人、普通二輪車講習を4,079人、応急救護処置講習を2万2,773人が受講した。
また、原付免許を受けようとする者に対しては、原付の運転に関する実技訓練等を内容とする原付講習が義務付けられており、平成14年には32万9,007人が受講した。
さらに、平成14年6月の改正道路交通法の施行により、第二種免許取得者の水準の向上の観点から、大型第二種免許又は普通第二種免許を受けようとする者に対しても、応急救護処置講習及び大型旅客車講習又は普通旅客車講習が義務付けられ、4,400人が大型旅客車講習を、8,876人が普通旅客車講習を受講している。

(2)運転者に対する再教育等の充実

図1-29 自動車等による死亡事故発生件数(第1当事者)の免許取得経過年数別内訳

初心運転者対策の推進
運転免許取得後の経過年数別に交通死亡事故件数の内訳をみると、運転免許取得後の経過年数の短い者(大部分が若者)が死亡事故を引き起こしているケースが多く、再教育が必要なことを示唆している(第1-29図)。
このため、初心運転者期間制度を設けており、普通免許、大型二輪免許、普通二輪免許又は原付免許を受けてから1年に達する日までの間を初心運転者期間とし、この期間中にこれらの免許を受けた者が、違反行為をして法令で定める基準に該当することとなったときは、公安委員会の行う初心運転者講習を受講できることとするとともに、この講習を受講しなかった者及び受講後更に違反行為をして政令で定める基準に該当することとなった者は、初心運転者期間経過後に公安委員会の行う再試験を受けなければならないこととしている。
初心運転者講習は、少人数のグループ編成による個別参加型の形態で行われ、路上訓練や運転シミュレーターを活用した危険の予知、回避訓練を取り入れるなど実践的な内容となっている。
運転者に対する各種の再教育の充実
(ア)
更新時講習
運転免許証の更新を受けようとする者が受けなければならない更新時講習は、更新の機会を捉えて定期的に教育を行うことにより、安全な運転に必要な知識を補い、運転者の安全意識を高めることを目的としている。受講対象者の区分に応じ、一般運転者講習と優良運転者等講習とに分かれていたが、平成14年6月の改正道路交通法の施行により、優良運転者、一般運転者、違反運転者又は初回更新者の区分に応じて講習を行うこととされた。
各講習では、視聴覚教材等を効果的に活用するなど工夫するとともに、一般運転者、違反運転者及び初回更新者の講習では、運転適性診断を実施し、診断結果に基づいた安全指導を行っている。平成14年には、優良運転者講習を341万7,473人、一般運転者講習を173万4,127人、違反運転者講習を262万2,079人、初回更新者講習を68万8,344人が受講した。
さらに、更新時講習では、高齢者、若者、二輪車等受講者の態様に応じた特別学級を編成し、受講者層の交通事故実態等について重点的に取り上げるなど、講習の充実を図っている。平成14年には、20万2,520人がこの特別学級による講習を受講した。
また、一定の基準に適合する講習(特定任意講習)を受講した者は、更新時講習を受講する必要がないこととされている。特定任意講習では、地域、職種等が共通する運転者を集め、その態様に応じた講習を行っており、平成14年には、1万4,155人が受講した。
(イ)
取消処分者講習
取消処分者講習は、運転免許の取消し等の処分を受けた者を対象に、その者に自らの危険性を自覚させ、その特性に応じた運転の方法を助言・指導することにより、これらの者の運転態度の改善を図ろうとするものである。運転免許の取消し等の処分を受けた者が免許を再取得しようとする際には、この講習の受講が受験資格となっている。講習は、受講者が受けようとしている免許の種類に応じ、四輪運転者用講習と二輪運転者用講習に分かれている。講習に当たっては、心理的・性格適性検査に基づくカウンセリング、グループ討議、自動車等の運転や運転シミュレーターの操作に基づく指導を行うなど個別的、具体的な指導を行い、運転時の自重・自制を促している。平成14年中の取消処分者講習の受講者は2万9,255人であった。
(ウ)
停止処分者講習
停止処分者講習は、運転免許の効力の停止又は保留等の処分を受けた者を対象に、その者の申出により、その者の危険性を改善するための教育として行われるものである。受講者については、講習終了後の考査の成績によって、行政処分の期間が短縮されることとなっている。講習は、行政処分の期間に応じて短期講習、中期講習、長期講習に分かれ、二輪学級、飲酒学級、速度学級等受講者の態様に応じた特別学級を編成するなどして、その充実を図っている。講習では、道路交通の現状、交通事故の実態に関する講義、自動車等の運転や運転シミュレーターの操作に基づく指導等を行っている。平成14年中の停止処分者講習の受講者は78万4,546人であった。
(エ)
違反者講習
違反者講習は、軽微違反行為(3点以下の違反行為)をして一定の基準(累積点数で6点になるなど)に該当することになった者に対し義務付けられているもので、受講した者については、運転免許の効力の停止等の行政処分を行わないこととしている。講習では、講習を受けようとする者からの申出により、運転者の資質の向上に資する活動の体験を含む課程又は自動車等の運転シミュレーターを用いた運転について必要な適性に関する調査に基づく個別指導を含む課程を選択することができることとしている。運転者の資質の向上に資する活動としては、歩行者の安全通行のための通行の補助誘導、交通安全の呼びかけ、交通安全チラシの配布等の広報啓発等が行われている。平成14年中の違反者講習の受講者は22万5,486人であった。
(オ)
自動車教習所における交通安全教育
自動車教習所は、地域住民のニーズに応じ、地域住民に対する交通安全教育を行っており、地域における交通安全教育機関としての役割を果たしている。具体的には、運転免許を受けている者を対象として、運転の経験や年齢等の区分に応じたいわゆるペーパードライバー教育、高齢運転者教育等の交通安全教育を行っている。こうした教育のうち、一定の基準に適合するものについては、その水準の向上と免許取得者に対する普及を図るため、都道府県公安委員会の認定を受けることができ、平成14年12月末現在、8,145件が認定されている。

(3)二輪車安全運転対策の推進

普通二輪車講習及び大型二輪車講習
普通二輪免許を受けようとする者は普通二輪車講習を、大型二輪免許を受けようとする者は大型二輪車講習を受講することが義務付けられている。講習は、二輪車の運転に係る危険の予測等安全な運転に必要な技能及び知識について行うこととしている。
二輪車に係る特別学級の推進
取消処分者講習、停止処分者講習において、二輪免許を保有する者を対象とした特別学級の編成を推進し、二輪車の交通事故の特徴や安全な二輪車の運転方法等を内容とする講習を行っている。
二輪免許交付時講習
主に二輪免許を新規取得した青少年層を対象として、免許証が交付される間における待ち時間を活用した二輪車の安全運転に関する講習を行っている。
二輪運転者講習に対する協力
警察では、各都道府県の二輪車安全運転推進委員会が(社)二輪車安全普及協会の協力を得て行っている二輪車安全運転講習及び原付等安全講習に対し、講師として警察官等を派遣するなどの協力を行っている。

(4)高齢運転者対策の充実

高齢者講習

高齢者講習等
高齢者は、一般的に身体機能の低下が認められるが、これらの機能の変化を必ずしも自覚しないまま運転を行うことが事故の一因となっていると考えられる。このため、免許証の更新を受けようとする高齢者には、高齢者講習の受講が義務付けられており、更新期間が満了する日における年齢が75歳以上の者が受講対象とされていたが、平成14年6月の改正道路交通法の施行により、70歳以上の者に拡大された。
高齢者講習は、受講者に実際に自動車等の運転をしてもらうことや運転適性検査器材を用いた検査を行うことにより、運転に必要な適性に関する調査を行い、受講者に自らの身体的な機能の変化を自覚してもらうとともに、その結果に基づいて助言・指導を行うことを内容としており、この講習を受講した者は、更新時講習を受講する必要がないこととされている。平成14年中の高齢者講習の受講者は74万8,080人であった。
なお、特定任意高齢者講習を受講した者は高齢者講習を受講する必要がないとされている。さらに、コースにおける自動車等の運転をすることにより、加齢に伴って生ずる身体の機能の低下が自動車等の運転に著しい影響を及ぼしているかどうかについて、公安委員会の確認を受け、当該影響がない旨の確認書(チャレンジ講習受講結果確認書)の交付を受けた者は、簡易な特定任意高齢者講習を受ければよいこととされている。
もみじマーク
更新時講習における高齢者学級の編成
更新時講習では、65歳以上70歳未満の者を対象とした高齢者学級を編成し、高齢運転者の運転特性や交通事故の特徴等を内容とする講習を行っている。
高齢運転者標識
高齢運転者の安全を確保するためには、周囲の運転者が高齢者に思いやりのある運転をすることが重要であることから、70歳以上の者が運転する普通自動車が高齢運転者標識を付けているときは、他の車両が幅寄せをしたり、割り込みをしたりすることが禁止されている。

(5)シートベルト及び乗車用ヘルメットの正しい着用の徹底

 関係機関・団体と連携し、各種講習・交通安全運動等あらゆる機会を通じて、シートベルト及び乗車用ヘルメットの着用効果の啓発等着用推進キャンペーンを行うとともに、着用義務違反に対する街頭での指導取締りの充実を図っている。

(6)自動車安全運転センターの業務の充実

 自動車安全運転センターは、道路の交通に起因する障害の防止及び運転免許を受けた者等の利便の増進に資することを目的として、次のような業務を行っている。

交通事故証明業務
交通事故当事者等の求めに応じて、交通事故の発生日時、場所、当事者の住所、氏名等を記載した交通事故証明書を交付している。
運転経歴証明業務
運転者の求めに応じて運転経歴証明書を交付し、運転者の利便を図っている。運転経歴証明書は、企業等における安全運転管理を進める上での有効な資料としての利用価値が高いことから、運転経歴証明書の活用による具体的な安全運転管理の進め方についての手引書を配布するなど、その活用を推進している。
また、運転経歴証明書のうち、無事故・無違反証明書又は運転記録証明書の交付申請をした者(過去1年以上の間、無事故・無違反で過ごした者に限る。)に対して、証明書に加えSD(SAFE DRIVER)カードを交付し、安全運転者であることを賞揚するとともに、安全運転を促している。
累積点数通知業務
交通違反等の累積点数が運転免許の停止処分又は違反者講習を受ける直前の水準に達した者に対して、その旨を通知し安全運転の励行を促している。
安全運転研修業務
安全運転中央研修所では、高速周回路、中低速周回路、模擬市街路及び基本訓練コースのほか、スキッドパン、モトクロス、トライアルコース等の特殊な訓練コースを備えており、実際の道路交通現場に対応した安全運転の実践的かつ専門的な知識、技能についての体験的研修を行い、安全運転教育について専門的知識を有する交通安全指導者や高度な運転技能と知識を有する職業運転者、安全運転についての実践的な能力を身に付けた青少年運転者の育成を図っている。平成14年度には、延べ6万156人の研修を実施した。
調査研究業務
高速自動車国道における自動二輪車の交通管理の在り方に関する調査研究等、自動車等の安全な運転に必要な技能及び交通事故の防止等に関する調査研究を行った。

(7)事業用自動車の運転者教育の充実

 自動車運送事業者及び運行管理者の運転者に対する指導・監督の指針を示し、運転者に対し事業用自動車の運行の特性や事故の事例等を踏まえた参加・体験・実践的な指導・監督を行うよう、また、初任、高齢及び重大事故惹起運転者に対しては、それぞれの特性に応じた特別の指導を行うよう義務付けている。
 特に、平成14年は、事業用自動車の運転者による飲酒運転等悪質・危険な運転の防止を図るため、運転者に対する指導・監督を徹底するよう指導を行った。

(8)自動車事故対策センターによる自動車運送事業等に従事する運転者に対する適性診断の充実

 自動車事故対策センターでは、事業用自動車の運転者に対して適正診断を行い、運転行動の特性を心理学的・生理学的側面から診断するとともに、その結果に基づく助言・指導を行っている。また、特に運転行動の改善を図るために、初任、高齢及び重大事故惹起運転者に義務付けられている国土交通大臣が認定した特別な適性診断を実施した。

(9)交通事犯被収容者に対する教育活動等の充実

表1-10 交通事故犯受刑者の収容施設への年次別新収容人員

交通事犯受刑者に対する教育活動
交通事犯受刑者のうち禁錮受刑者については、交通事犯以外の犯罪による受刑歴がないこと、刑期がおおむね3月以上であることなど一定の基準を満たす者を、交通事犯禁錮受刑者の収容施設に収容し、可能な限り一般の社会生活に近い環境の下で、円滑な社会復帰と再犯防止を図るため、人命尊重を基調とした遵法精神、責任観念その他の徳性をかん養すること及び自主自立の精神を体得させることを目的とした教育活動を実施している。
また、交通事犯懲役受刑者についても、一定の基準に基づき指定された収容施設に収容し、禁錮受刑者に対する処遇に準じた処遇を試行している。
これらの交通事犯受刑者収容施設では、生活指導、職業に関する指導等の充実を図るとともに、運転適性があり、かつ、出所後、自動車運転に関する業務に就くことを希望する者に対しては、徹底した交通道徳教育を実施するほか、交通法規、自動車構造を始めとする専門学科の教育及び運転技術の実習を行うなど、体系的な交通安全教育の実施に努めた(第1-10表)。
交通事犯少年に対する教育活動
平成14年中に少年院送致決定を受けて少年院に新たに収容された少年のうち、非行名が「道路交通法」となっている少年は、788人(速報値)であり、新収容者全体の13.2%を占めている。
各少年院においては、交通事犯少年に対して、対象者の個別的な問題性に応じた適切な教育及び指導を行い、人命尊重の精神と遵法精神のかん養に重点を置いた交通安全教育を実施するとともに、将来の生活設計を確立させるための進路指導、職業指導等の充実を図るなど、再非行防止のための教育活動を実施した。
交通事犯少年に対する資質鑑別
少年鑑別所においては、交通事犯少年の特性の的確な把握、より適切な交通鑑別方式の在り方等について、専門的立場からの研究を活発化するとともに、CRT運転適性検査や法務省式運転態度検査等の活用により、交通事犯少年に対する資質鑑別の一層の適正・充実化を図った。

(10)交通事犯者に対する保護観察の充実

 平成13年において、交通事犯により保護観察に付された者は3万4,192人であり、これらの者に対しては、遵法精神のかん養、安全運転態度の形成等を目的とした個別処遇を中心とする交通保護観察を実施した。また、家庭裁判所において交通事犯により保護観察に付された少年のうち、事犯の内容が比較的軽微な少年に対しては、集団処遇を中心とした特別な処遇を短期間に集中して行う交通短期保護観察を実施した。

(11)悪質危険な運転者の早期排除等

運転免許の拒否及び保留
運転免許試験に合格した者が、過去に無免許運転等の交通違反をしたり、交通事故を起こしたことがあるときは、点数制度によって免許を拒否し又は6月を超えない範囲で免許を保留することとされている。
平成14年中における新規免許の拒否件数は606件で、保留件数は3,445件であった。
なお、平成14年6月の改正道路交通法の施行により、一定の病気にかかっている者等については、免許を拒否し、又は6月を超えない範囲で免許を保留することができることとされた。
運転免許の取消し及び停止
運転免許を受けた者が、免許取得後に交通違反を犯し又は交通事故を起こしたときは点数制度により、また、精神病、麻薬中毒等一定の事由に該当することとなったときには点数制度によらず、その者の免許を取り消し又は6月を超えない範囲で免許の効力を停止する処分を行うこととされている(第1-11表)。
なお、平成14年6月の改正道路交通法の施行により、一定の病気にかかっている者等については、免許を取り消し、又は6月を超えない範囲で免許の効力を停止することができることとされた。
重大違反唆し等行為に対する措置
暴走行為を指揮した暴走族のリーダーのように自ら運転していないものの、運転者を唆して共同危険行為等重大な道路交通法違反をさせた者に対しても、運転免許の取消し等を行っている。
表1-11 運転免許の取消し、停止件数
3 運転免許制度の改善

(1)運転免許制度の改善

 技能試験については、従来は普通免許のみ路上試験が導入されていたが、平成14年6月の改正道路交通法の施行により、大型第二種免許及び普通第二種免許にも導入された。

優良運転者に係る免許証の有効期間の特例
継続して免許を有する期間が5年以上であり、かつ、5年間無違反である者を優良運転者と定義し、優良運転者については免許証の有効期間を5年としているが、平成14年6月の改正道路交通法の施行により、運転行動に大きな問題があったとは認められない一般運転者についても、有効期間を5年に延長することとされた。また、有効期間の末日についても、更新期間を従来の誕生日までの1か月間から誕生日をはさんだ2か月間に延長するため、誕生日から起算して1月を経過する日とされた。
第二種免許の範囲の見直し
平成14年6月の改正道路交通法の施行により、無償旅客自動車運送事業については、第二種免許を不要とすることとされた。また、自動車運転代行業については、16年6月19日までに第二種免許を義務付けることとされた。
(2)運転免許業務運営の合理化
運転免許証の偽変造防止、プライバシーの保護、交通警察業務の合理化・効率化等を図る観点から、高度なセキュリティ機能を有する電子技術を応用した運転免許証のICカード化及び運転免許行政のIT化に向けて、ICカード運転免許証の規格、活用方策、システム構成等の検討を行った。
なお、運転免許証のICカード化を可能とするための規定を整備した、改正道路交通法が平成14年6月から施行されている。
4 安全運転管理の推進

 安全運転管理者及び副安全運転管理者に対する講習を充実するなどにより、これらの者の資質及び安全意識の向上を図るとともに、事業所内で交通安全教育指針に基づいた交通安全教育が適切に行われるよう指導した。
 また、安全運転管理者等の未選任事業所の一掃を図り、企業内の安全運転管理体制を充実強化し、安全運転管理業務の徹底を図った。

(1)安全運転管理者等の現況

 安全運転管理者は、道路交通法により、自動車を5台以上使用する又は乗車定員11人以上の自動車を1台以上使用する事業所等において選任が義務付けられており、また、自動車を20台以上使用する事業所には、その台数に応じ、副安全運転管理者を置くことが義務付けられている(第1-12表)。
 安全運転管理者・副安全運転管理者の年齢別構成では40歳代と50歳代が多く、職務上の地位別構成では、安全運転管理者については課長以上が約半数を占め、副安全運転管理者についても課長以上が約4割を占めている(第1-13表)。

表1-12 安全運転管理者等の年次別推移

表1-13 年齢層別及び職務の上の地位別正・副安全運転管理者数

(2)安全運転管理者等に対する講習の実施状況

 都道府県公安委員会は安全運転管理者の資質の向上を図るため、毎年1回、自動車及び道路交通に関する法令の知識、安全運転に必要な知識、安全運転管理に必要な知識等を内容とした講習を実施している。
 平成13年度における安全運転管理者講習は2,297回実施され、全受講対象者の97.9%に当たる33万7,612人が受講し、また、副安全運転管理者講習は延べ1,685回実施され、全受講対象者の98.3%に当たる5万3,282人が受講した(第1-14表)。

表1-14 正・副安全運転管理者講習の年度別実施状況

(3)安全運転管理者協議会等に対する指導育成

 企業等における自主的な安全運転管理を推進するとともに、安全運転管理者等の資質の向上を図るため、安全運転管理者等の組織化、自主的な研究会の開催、自動車安全運転センター安全運転中央研修所における研修の実施、無事故無違反運動等に対する指導育成等を行っている。
 都道府県ごとに組織されている安全運転管理者協議会に対しては、安全運転管理者等研修会の開催、事業所に対する交通安全診断等の実施を始め、交通安全教育資料及び機関誌(紙)の発行等について積極的に指導したほか、同協議会の自主的活動の促進を図っている。また、同協議会は、全国交通安全運動等を推進するとともに、職域における交通安全思想の普及活動に努めている。

5 自動車運送事業者等の行う運行管理の充実

(1)運行管理者制度の充実

 事業用自動車の運行の安全に関する責任体制の明確化と運行管理業務の適正化を目的に、自動車運送事業者に対し、運行管理者を選任することを義務付け、乗務割の作成、運転者に対する指導監督等の業務を行わせている。
 鉄道事業法等の一部を改正する法律(平14法77)の施行(平成15年4月)により、貨物自動車運送事業に対する営業区域規制が撤廃されることに対応し、運行管理の一層の充実を図るため、貨物自動車運送事業輸送安全規則(平2運輸省令22)等を改正し、運行が長期間にわたる場合の点呼の強化、運行指示書の作成、携行の義務付け、総運行期間の制限等を行った。

(2)自動車運送事業者等に対する指導監督の充実

 運行管理体制、運行管理の実施状況について道路運送法等の遵守を確保し、適正な運行の維持を図るため、違法性の高い事業者に対する重点的な監査を行うとともに、違反があった場合には、車両の使用停止、事業の停止、許可の取り消し等の行政処分を行い、結果を公表している。
 平成14年度は飲酒運転等に対する行政処分基準の強化及び鉄道事業法等の一部を改正する法律の施行に合わせた行政処分基準の強化を行った。

(3)事故情報の多角的分析の実施

 事業用自動車の事故に関する情報の充実を図るため、自動車事故報告規則(昭26運輸省令104)に基づく事故情報の収集・分析に加え、自動車運送事業に係る事故要因分析のための情報収集・分析を充実・強化した。分析等の結果については、自動車運送事業者に対する指導等に活用した。

(4)運行管理者等に対する指導講習の充実

 運行管理業務の更なる充実を図るため、運行管理者等に対する国土交通大臣が認定した講習の実施機関である自動車事故対策センターにおいて、新たに運行管理業務を行おうとする者に対する基礎講習、既に運行管理者として選任されている者等に対する一般講習、重大な事故を惹起した営業所の運行管理者に対する特別講習を行った。

6 交通労働災害の防止等

(1)交通労働災害の防止

 全産業で発生した労働災害のうち死亡災害についてみると、交通事故による死亡者は、全体の死亡者数の30.6%を占め、特に陸上貨物運送事業では、事業の特性から交通事故によるものが72.2%を占めている(第1-15表)。
 交通労働災害防止のためのガイドライン(平6労働省通達)を事業場に周知徹底するとともに、ガイドラインに基づく対策が効果的に実施されるよう、陸上貨物運送事業労働災害防止協会等と連携して、交通労働災害防止指導員により事業場に対する個別指導等を実施し、事業場における交通労働災害防止のための管理体制の確立、無理のない走行計画の策定など自動車等の適正な走行管理等の推進を図った。また、交通労働災害防止担当管理者及び自動車運転業務従事者に対する教育の推進を図った。

表1-15 労働災害による死者数中交通事故による死者数の占める割合の推移

(2)運転者の労働条件の適正化

表1-16 自動車運転者を使用する事業場に対する監督指導結果

自動車運転者の労働条件確保のための監督指導等
自動車運転者の労働時間等の労働条件の向上を図り、もって交通事故の防止に資するため、労働基準法(昭22法49)等の関係法令及び自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(平元労働省告示7)の遵守を図るため、自動車運転者を使用する事業場に対し、監督指導を実施した。(第1-16表
相互通報制度等の活用
交通関係行政機関が、相互通報制度等を活用し、連携を密にすることにより、各機関が協力して自動車運送事業者等の労務管理及び運行管理の適正化を図った。
労務管理改善指導の推進
民間有識者を自動車労務改善推進員として委嘱し、改善基準の徹底等労務管理に関する事項について指導・援助を行った。
7 道路交通に関する情報の充実

(1)道路交通情報の充実

 多様化する道路利用者のニーズにこたえるため、道路利用者に対し必要な道路交通情報を提供することにより、安全かつ円滑な道路交通を確保するとともに、光ファイバーネットワーク、マイクロエレクトロニクス等の新たな情報技術を活用しつつ、交通監視カメラ、路側通信システム、車両感知器、道路標識、交通情報板等の既存の情報収集・提供体制の充実を図った。
 また、平成14年5月に道路管理者に対して道路情報の提供に関する指針が通達され、6月には予測交通情報を提供する事業者の届出制、不正確又は不適切な予測交通情報を提供した事業者に対する是正勧告措置等を規定した改正道路交通法及び交通情報を提供する際に事業者が遵守すべき事項を定めた交通情報の提供に関する指針が施行された。
 さらに、高度道路交通システム(ITS)の一環として、運転者に渋滞状況等の道路交通情報を提供する道路交通情報通信システム(VICS)の整備・拡充を図ることにより、交通の分散を図り、交通渋滞を解消し、交通の安全と円滑化を推進した。
 都道府県公安委員会では、車両感知器等の情報収集装置、各種情報提供装置の整備等交通管制センターの高度化等により、交通情報収集・提供機能の充実を図った。また、交通管制センターを中心として、各種警察活動や他機関との情報交換を通じて広範な交通情報を収集するとともに、フリーパタン式交通情報板等の効果的運用、(財)日本道路交通情報センター及び報道機関との連携強化等を図ることにより、一般道路利用者のニーズに応じた情報を提供し、交通流の適切な配分・誘導に努めた。さらに、行楽期における大渋滞、台風及び地震等による大規模な交通障害に際しては、交通実態を把握し、適切な交通規制及びう回路の設定を行うほか、広報活動、交通情報の提供等の措置を講じた。加えて、新交通管理システム(UTMS)の構想に基づき、システムの充実、キーインフラである光ビーコンの整備等の施策の推進を図った。
 道路管理者においては、道路標識の整備に努めるとともに、道路パトロールの強化、道路モニター制度の活用、交通監視カメラ、車両感知器、気象観測装置等の情報収集装置の整備及び路上工事等の情報を収集するシステムの開発を図った。また、他機関との情報交換等により、道路の危険箇所、交通状況等の道路情報を迅速かつ的確に収集し、これらの情報を道路情報板、路側通信、トンネル内ラジオ再放送施設、テレビ、ラジオ、新聞等により広く一般に提供するとともに、一般からの電話照会への対応やファクシミリによる情報サービス等を行うほか、道路管理者相互の連絡体制を強化して道路情報の効果的利用が図られるよう努めた。
 また、一般の道路利用者に必要な道路交通情報をより一元的かつ広域的に提供するため、(財)日本道路交通情報センターの情報提供サービスの向上を図るよう指導した。

(2)危険物輸送に関する情報提供の充実等

 危険物の輸送中の事故による大規模な災害を未然に防止するため、関係省庁が密接な連携の下に各省庁において危険物の運送事業者に対し、適正な運行計画の策定等の運行管理の徹底、関係法令の遵守、異常・事故発生時の応急措置を記したイエローカード(緊急連絡カード)の携行等を指導し、危険物輸送上の安全確保の徹底を図った。
 また、事故発生時、早期に対策を実施するために危険物の性質、特性、取扱要領について、必要な時に容易に検索できるシステムを構築し、運用した。

(3)気象情報等の充実

 道路交通に影響を及ぼす台風、大雨、大雪等の自然現象について、的確に実況監視を行い、適時適切な予報・警報等を発表・伝達して、事故の防止及び被害の軽減に努めた。

気象監視体制の整備
(ア)
静止気象衛星業務の整備
気象業務の改善等を図るため静止気象衛星「ひまわり5号(GMS-5)」の運用を行うとともに、5号の後継機となる運輸多目的衛星新1号(平成15年夏打上げ予定)及び新2号(16年度打上げ予定)を製作している。
(イ)
気象レーダー観測業務の整備
秋田レーダー及び室戸岬レーダーの更新を行い、気象レーダー観測網の充実を図った。
(ウ)
地上気象業務等の整備
気象の観測精度の向上を図り、的確に気象現象を把握するため、地上気象観測装置5台の更新を行った。また、集中豪雨等の局地的現象を的確に捉えるとともに、数値予報の精度向上を図るために、ウィンドプロファイラを6台新規に整備した。
(エ)
洪水予報対象河川の拡大
平成13年7月の水防法等の改正を受け、従来の国土交通大臣が指定する河川の洪水予報に加えて、都道府県知事が指定し、気象庁と都道府県が共同で洪水予報を行う初めての河川として、14年5月に愛知県の新川、6月に岐阜県の長良川、宮川、15年3月に静岡県の太田川、原野谷川が指定された。
地震・津波・火山監視業務の整備
(ア)
地震・津波監視業務の整備
地震・津波に関する的確な防災情報を提供するため、地方公共団体が整備した震度計のデータの地震情報への活用を推進し、防災情報の充実を図るとともに、津波予報区を全国66に細分化し、予想される津波の高さをメートル単位の具体的な数値で発表する津波予報を実施している。また、沖縄気象台の地震津波監視システム(ETOS)の改良更新など、監視体制を強化した。一方、関係機関の地震に関するデータに加え、地震に関する基盤的調査観測網のデータを収集し、その成果を防災情報等に活用するとともに、地震調査研究推進本部地震調査委員会に提供するなど、観測体制の連携を強化した。
(イ)
火山監視業務の整備
平成14年3月から火山監視・情報センターを全国4箇所に設置して、三宅島(東京都)などの火山活動の的確な監視、火山活動に関する情報の迅速かつ的確な発表、国や地方自治体の防災対策を行う機関への迅速な伝達体制の強化を図った。
気象知識の普及等
気象・地象・水象の知識の普及など気象情報の利用方法等に関する講習会等の開催、広報資料の配布等を行ったほか、防災機関の担当者を対象に予報、警報等の伝達等に関する説明会を開催した。

(4)災害発生時における情報提供の充実

 災害発生時において、道路の被災状況や道路交通状況を迅速かつ的確に収集・分析・提供し、復旧対策の早期立案や緊急交通路、緊急輸送路等の確保及び道路利用者等への道路交通情報の提供等に資するため、地震計、交通監視カメラ、車両感知器、道路交通に関する情報提供装置・通信施設、道路管理情報システム等の整備を推進するとともに、大規模な地震や火山噴火、豪雨・豪雪等の災害に関し、インターネット等ITを活用した道路の点検結果や被災状況等の災害情報等の提供を推進した。
 また、大規模な災害や交通障害発生時における各種警察活動を支援するため、交差点間を大容量ネットワークで接続する光伝送交差点支援システムを整備した。

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