平成16年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況、平成17年度 交通安全施策に関する計画(概要)
I 現況の概要
第1編 陸上交通
第1部 道路交通
第3章 平成16年度の主な道路交通安全施策

I 現況の概要

第1編 陸上交通

第1部 道路交通

第3章 平成16年度の主な道路交通安全施策

1 道路交通環境の整備

  • 交通安全施設等整備事業の推進
    平成16年度は、社会資本整備重点計画に基づき、交通安全施設等の整備を強力に推進した。
(1)
死傷事故発生率が高く、又は死傷事故が多発している交差点・単路として平成15年に指定した「事故危険箇所」について、平成19年度までに対策実施箇所の死傷事故を約3割抑止することを目指し、都道府県公安委員会及び道路管理者が連携して集中的な事故抑止対策を推進している。また、事故危険箇所等を対象として、「交通事故対策・評価マニュアル」を作成し、科学的な事故対策を進めるとともに、事故対策データベースを構築した。
※「交通事故対策・評価マニュアル」
事故多発地点緊急対策事業等これまでの事故対策の結果をもとに、対策の立案から評価までの手順や留意点等を体系的にまとめたもの
(2)
死傷事故発生割合が高い住居系地区又は商業系地区として平成15年に指定した「あんしん歩行エリア」について、平成19年度までにエリア内の死傷事故を約2割抑止、うち歩行者・自転車事故は約3割抑止することを目指し、都道府県公安委員会及び道路管理者が連携して、面的かつ総合的な事故抑止対策を実施した。
(3)
高齢者、身体障害者等の自立した日常生活及び社会生活を確保するため、駅、公共施設等の周辺を中心に平坦性が確保された幅の広い歩道、バリアフリー対応型信号機等を整備するとともに、無電柱化、信号灯器のLED化、高齢運転者に見やすい道路標識・道路標示の整備を図った。
  • 高度道路交通システムの整備
    最先端の情報通信技術(IT)等を用いて、人と道路と車とを一体のシステムとして構築し、安全性、輸送効率等の向上を実現するため、平成8年に策定されたITS全体構想に基づき、研究開発、フィールドテスト、インフラの整備等を推進を図った。
※フィールドテスト
実地試験、屋外試験などのこと
※インフラ
交通、通信、公共施設など、社会等の基盤として整備される施設のこと
(1)
渋滞情報等の道路交通情報をリアルタイムに(即時に)カーナビゲーション装置へ提供する道路交通情報通信システム(VICS)の整備を推進した結果、VICS対応の車載機は、平成16年7月末に1,000万台を突破した。
(2)
交通流・量を積極的かつ総合的に管理することにより、交通の安全及び快適性を確保しようとする新交通管理システム(UTMS)の構想に基づき、システムの充実、光ビーコンの整備等の施策の推進を図った。
また、平成16年10月18日から24日の間で開催された「第11回ITS世界会議愛知・名古屋2004」において、新たな信号制御方式等の実証実験を行い、世界各国に紹介し、ITSへの関心を高めた。
※光ビーコン
通過車両を感知して交通量等を測定するとともにカーナビゲーション装置等と交通管制センターとの情報のやり取りをする路上設置型の赤外線通信装置
(3)
ITS仕様の次世代の道路(スマートウェイ)、自動車と道路側システムの間を結ぶ高度な情報通信(スマートゲートウェイ:知能通信)及び高速走行する自動車(スマートカー)に関する技術の三位一体となった研究開発を行い、早期実現・普及を促進している。

2 交通安全思想の普及徹底

  • 高齢者に対する交通安全教育
    運転免許証を持たない、老人クラブに加入していない等の交通安全教育を受ける機会のなかった高齢者に対し、地方公共団体等と連携して、事故多発路線に居住する高齢者を重点とした家庭訪問による個別指導、医師等と連携した交通事故防止のワンポイントアドバイス等地域ぐるみで高齢者の交通安全指導が行われるように努めた。
     また、高齢者同士の相互啓発等により交通安全意識の高揚を図るため、老人クラブ、老人ホーム等における交通安全部会の設置、高齢者交通安全指導員(シルバーリーダー)の養成等を積極的に促進し、老人クラブ等が関係団体と連携して「ヒヤリ地図」の作成、高齢運転者の実技講習及び最近普及している電動車いすの安全利用に係る講習会等自主的な交通安全活動を展開できるよう指導・援助を行った。
    シルバーリーダーについては、参加・体験・実践型の高齢者交通安全教育の継続的な推進役の養成を目的とする「市民参加型の高齢者交通安全学習普及事業」と、新たにシルバーリーダーのサブリーダー育成能力を高めること等を目的とする「シルバーリーダー中央研修事業」を実施した。また、交通安全をテーマに3世代が交流する「世代間交流事業」及び交通安さらに、家庭において適切な助言等が行われるよう、交通安全母親活動等、交通安全普及啓発活動等の促進に努めた。
  • シートベルト及びチャイルドシートの正しい着用の徹底
    各種交通安全教室、交通安全運動等の機会をとらえ、シートベルトの着用効果、正しい利用方法について広報啓発・指導に努めた。
     また、チャイルドシートについては、しっかり取り付けられていないものも多く見受けられることから、春・秋の全国交通安全運動等の機会に普及促進キャンペーンや産婦人科、幼稚園、保育所等における取付講習会を開催した。

3 安全運転の確保

  • 高齢運転者対策の充実
    年齢70歳以上の高齢者に義務付けられている高齢者講習は、受講者に実際に自動車等の運転をしてもらうことや、運転適性検査器材を用いた検査を行うことにより、運転に必要な適性に関する調査を行い、受講者に自らの身体的な機能の変化を自覚してもらうとともに、その結果に基づいて助言・指導を行うことを内容としている。平成16年中の高齢者講習の受講者は126万3,372人であった。

4 車両の安全性の確保

  • リコール制度の充実
    自動車不具合情報ホットラインを活用したユーザーからの不具合情報に加え、警察やJAF等関連機関からの事故情報の収集等、情報収集体制を強化するとともに疑義あるメーカーに重点的に監査に入るなど、監査の強化を図っている。さらに、リコール調査員室を設置し、実証的な検証体制を整備した。

5 道路交通秩序の維持

  • 暴走族に対する指導取締りの強化
    暴走族に対し、共同危険行為等の禁止違反を始めとする各種法令を活用した取締りを強力に推進したほか、6月には「暴走族取締り強化期間」を実施した。
     なお、道路交通法の一部を改正する法律(平16法90)が施行(平成16年11月)され、暴走族による集団暴走行為について、迷惑を被ったり、危険に遭った人がいなくても罰則の対象となったほか、消音器不備に対する罰則の引き上げ、騒音運転等に対する罰則の新設がおこなわれたことから、これら違反の取締りを強化した。

6 救助・救急体制等の整備

  • 救急救命士の養成
    医師の指示の下に、搬送途上において心肺機能停止状態の患者に対して行う静脈路確保及び気道確保等の救急救命処置を行う救急救命士は、平成16年12月末現在で、2万7,365人が資格を取得しており、搬送途上の医療の確保が図られている。
  • 緊急通報システムの拡充
    交通事故等緊急事態発生時における負傷者の早期救出及び事故処理の迅速化のため、新交通管理システム(UTMS)の構想等に基づき、GPS技術を活用することにより、自動車乗車中の事故発生時等に携帯電話等を通じてその発生場所等の情報を即時かつ正確に緊急通報し、救命率の向上等を図る緊急通報システム(HELP)の普及を図った。
     また、緊急車両が現場に到着するまでのリスポンスタイムの縮減及び緊急走行時の交通事故防止のため、緊急車両優先の信号制御等を行う現場急行支援システム(FAST)の整備を図った。

7 損害賠償の適正化と被害者対策の推進

  • 交通事故被害者等の心情に配慮した対策の推進
    国民が互いに支え合う、安全で安心できる交通社会を形成することを目的として、(1)支援担当者用のテキスト及びビデオの作成、(2)被害者の精神的回復を目的とした自助グループの立ち上げ支援及び、(3)海外の先進的組織への専門家の派遣を内容とする交通事故被害者支援事業を実施した。

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