平成16年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況
第1編 陸上交通
第1部 道路交通
第2章 道路交通安全施策の現況
第4節 車両の安全性の確保

第1編 陸上交通

第1部 道路交通

第2章 道路交通安全施策の現況

第4節 車両の安全性の確保

1 車両保有台数の推移

(1)自動車保有台数の推移
 平成16年12月末現在の自動車保有台数は約7,809万台であり、前年に比べて51万台(0.7%)増加し、自動車1台当たりの人口は1.64人(16年3月末現在)となった(第1-30図)。
 自動車保有台数を用途別及び車種別にみると、小型乗用自動車が約2,640万台と最も多数を占め、全自動車台数の33.8%を占めている。これに次いで普通乗用自動車が約1,630万台で20.9%、軽四輪乗用自動車が約1,330万台で17.0%となっており、この3車種で全体の71.7%を占めている。また、対前年増加率では、軽四輪乗用自動車6.5%、軽三輪貨物自動車3.6%等が目立っている(第1-17表)。
(2)原動機付自転車保有台数の推移
 平成16年4月1日現在の原動機付自転車保有台数は約1,008万台となり、前年に比べて16万台(1.6%)減少している。第1種原動機付自転車が全原動機付自転車の86.7%に上っているが、台数は前年に比べて2.0%減少、第2種原動機付自転車は0.9%増加している。
(3)自転車保有台数の推移
 平成16年末の自転車保有台数は約8,632万台であり、前年に比べて約39万台(0.5%)増加している。(第1-31図
第1-30図 自動車保有台数の推移
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第1-17表 用途別及び車種別自動車保有台数
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第1-31図 自転車保有台数の推移
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2 車両の安全性に関する基準等の改善の推進

(1)道路運送車両の保安基準の拡充・強化等
車両の安全対策の推進
今後の自動車の安全対策による交通事故死者数の低減目標やその推進の在り方等が盛り込まれた運輸技術審議会答申「安全と環境に配慮した今後の自動車交通政策のあり方について」(平成11年6月)を踏まえ、事故原因や事故時における自動車の構造・装置、乗員被害等の状況を交通事故総合分析センターを活用して詳細に調査・分析し、自動車事故の実態を的確に把握するとともに、自動車使用の態様の変化、新技術の開発状況、諸外国の自動車安全対策の動向等を勘案し、安全対策を立案・実施している。具体的には、産・学・官が参加する「事故分析部会」、「安全基準検討会」等で安全対策に係る方針、対策の具体的な内容、対策の事前効果予測・事後効果評価、対策を体系的に実施するための長期計画等について検討し、この検討結果を踏まえ安全対策を推進している。
さらに、同検討会等での検討結果を公表し、安全対策の策定過程の透明性を確保するとともに関係者からの意見を踏まえて適宜対策の内容の見直しを行うため、平成16年11月に自動車安全シンポジウムを開催した。
道路運送車両の保安基準の拡充・強化
車両の安全対策の基本である自動車の構造・装置等の安全要件を定める道路運送車両の保安基準について、事故分析部会・安全基準検討会の検討結果を踏まえつつ、事故を未然に防ぐための予防安全対策、万が一事故が発生した場合においても乗員、歩行者等の保護を行うための被害軽減対策のそれぞれの観点から、適切に拡充・強化を図っている。
なお、保安基準の拡充・強化の推進に当たっては、保安基準が自動車の国際的な流通を阻害することがないよう国際的に連携して検討を進めている。
(2)先進安全自動車の開発、普及等
 エレクトロニクス技術や情報通信技術(IT)などの新技術により、自動車を高知能化して、安全性を格段に高めるとともに、高度道路交通システム(ITS)技術の自動車としての受皿となる先進安全自動車(ASV)について、産・学・官により構成される「先進安全自動車(ASV)推進検討会」における検討を通じて開発・普及の推進を図った。
 ASVのシステムのうち実用化段階にあるものについては、順次安全上のガイドラインを策定するなど整備を図った。また、ユーザーへの情報提供、優遇措置、社会的受容性の向上、効果分析等の普及方策について検討を進めている。
 さらに、自律型運転支援技術では防止することができないような事故類型について分析し、これらを未然に防止するため、高信頼化された通信技術を用いて多様な道路環境の下において自動車と自動車等の間で情報交換を行う情報交換型運転支援技術の開発を行っている。
(3)車両の安全性等に関する日本工業規格の整備
 工業標準化法(昭24法185)に基づいて制定された自動車関係の日本工業規格のうち、新技術への対応及び国際規格との整合を図るため、4件の工業標準の制定を行った。併せて、既存規格の規定水準の向上を図るため、自動車ブレーキ関係の用語を規定する「自動車―ブレーキ用語」等7件の日本工業規格の改正を行った。
 また、運転支援装置の開発に供するため、「自動車―走行支援システムのドライバ受容性評価方法」の標準仕様書(TS)の公表を行った。

3 自動車アセスメント情報の提供等

(1)概要
 自動車アセスメントは、自動車ユーザーが安全な車選びをしやすい環境を整えるとともに、自動車メーカーの安全な自動車の開発を促すことによって、安全な自動車の普及を促進しようとするものである。市販されている自動車の衝突安全性能試験の結果等を公表するとともに、エアバッグ等安全装置の装備状況等の情報を提供している。また、チャイルドシートについても安全性能試験を実施し、チャイルドシートアセスメントとして公表している。
(2)自動車アセスメントの充実
 自動車アセスメントは、平成7年度より自動車事故対策センター(現、独立行政法人自動車事故対策機構)が運輸省(国土交通省)の指導の下、安全情報提供のために開始したものであり、11年度までに67車種についての前面衝突試験及びブレーキ性能試験を実施するとともに、エアバッグ、チャイルドシート等の安全装置の取扱上の注意事項について公表してきた。11年度には、側面衝突試験を追加し試験内容の充実を図るとともに、より公正・中立な立場で行うため、運輸省が主体的に実施することとした。
 平成12年度からはオフセット前面衝突試験を追加し、フルラップ前面衝突試験、側面衝突試験と合わせて、三つの衝突試験による衝突安全性能試験を実施し、その結果を公表している。16年度は、21車種について衝突安全性能試験を実施した。ここ5ヵ年では計112車種について試験を実施し、乗用車の国内新車販売台数の約8割をカバーしている。
(3) チャイルドシートアセスメントの推進
 チャイルドシートアセスメントは、自動車アセスメント事業の一環として、信頼できる安全性能評価を公表して安全なチャイルドシートを選択できるようにしてほしい、との要望を受け、平成13年度から実施しているものであり、前面衝突試験と使用性評価試験を実施し、その結果を公表している。15年度には7製品について試験を実施し、開始以降の3ヵ年で31機種について試験を実施している。
※オフセット前面衝突試験
運転席と助手席にダミーを乗せた試験車を、時速64kmでアルミハニカムに運転席の一部を前面衝突させる試験
※フルラップ前面衝突試験
運転席と助手席にダミーを乗せた試験車を、時速55kmでコンクリート製の障壁(バリア)に正面衝突させる試験

4 自動車の検査及び点検整備の充実

(1)自動車の検査体制の充実
自動車検査の実施状況
自動車の安全確保と公害の防止を図るため、自動車検査独立行政法人と連携して、道路運送車両法(昭26法185)に基づき、自動車(二輪の軽自動車及び小型特殊自動車を除く。)の新規検査、継続検査及び構造等変更検査を行っており、平成15年度の検査実施車両は約2,834万台であった(第1-18表)。
自動車検査施設の整備
自動車検査施設については、自動車ユーザーが受検しやすいよう音声誘導装置付き検査機器の設置、自動車の新技術・新機構に対応した検査機器を導入している。
軽自動車の検査の実施状況
軽自動車検査協会において、平成15年度に約1,026万台の軽自動車(二輪の軽自動車を除く。)の検査を実施した。
(2)型式指定制度の充実
 自動車の型式指定等に当たっては、保安基準への適合性及び生産過程における品質管理体制等の審査を独立行政法人交通安全環境研究所と連携して実施し、自動車の安全性の増進等を図っている。
 また、装置の安全性の増進等及び自動車の型式指定等の合理化を図るため、道路運送車両法に基づく自動車の装置についての型式指定制度を設けており、毎年、その対象品目の拡大を図っている。平成16年12月現在で46品目が対象となっており、このうち38品目については、車両等の型式認定相互承認協定に基づく相互承認が可能となっている。
(3)自動車点検整備の充実
自動車点検整備の推進
自動車ユーザーの保守管理意識の高揚と点検整備の適切な実施の推進を図るため、「自動車点検整備推進運動」を全国的に展開するとともに、整備管理者研修、自動車運送事業者監査等を通じて関係者に対し指導を行い、車両故障に起因する事故防止を図った。
また、自動車ユーザーによる自動車の保守管理及び整備工場における自動車の点検整備を適切に実施する上で参考となるよう、継続検査の前に整備が必要と判断された箇所の調査結果を公表する等適切な情報の提供を図った。
不正改造車の排除
道路交通に危険を及ぼすなど社会的問題となっている暴走族の不正改造車や過積載を目的とした不正改造車等を排除し、自動車の安全運行を確保するため、関係機関の支援及び自動車関係団体の協力の下に「不正改造車を排除する運動」を全国的に展開し、広報活動の推進、関係者への指導、街頭検査等を強化することにより、不正改造防止について、自動車使用者及び自動車関係事業者等の意識の高揚を図った。
また、不正改造行為の禁止及び不正改造車両に対する整備命令制度の強化を盛り込んだ改正道路運送車両法(平成15年4月施行)の適確な運用に努めた。
自動車分解整備事業の適正化、近代化
点検整備に対する自動車ユーザーの理解と信頼を得るため、自動車分解整備事業者に対し、整備料金、整備内容の適正化について、その具体的な実施事項の推進を指導した。また、自動車分解整備事業者における設備の近代化や経営管理の改善等への支援を行った。
自動車の新技術への対応等整備技術の向上
自動車新技術の採用・普及、車社会の環境の変化に伴い、自動車を適切に維持管理するためには、自動車整備業がこれらの変化に対応していく必要があることから、実態調査等を通じ自動車整備業の現状について把握し、今後、自動車整備業が自動車の新技術及び多様化するユーザーニーズに対応していくための技術の高度化等について検討した。
また、整備主任者等を対象とした新技術研修の実施等により整備要員の技術の向上を図った。
さらに、新技術が採用された自動車の整備や自動車ユーザーに対する自動車の正しい使用についての説明等のニーズに対応するため、一級自動車整備士制度を活用することとし、平成16年度は431名(累計956名)が一級小型自動車整備士技能検定に合格した。
第1-18表 自動車検査実施状況
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5 リコール制度の充実

 リコール制度は、自動車製作者等が、自動車等の構造、装置又は性能が基準に適合しない又は適合しなくなるおそれがあり、かつ、その原因が設計又は製作の過程にあると認める場合に、国土交通大臣に届け、当該自動車を回収し、無料で修理する制度であり、自動車製作者等が適切な改善措置を講じない場合、国土交通大臣は必要な改善措置を講ずるよう勧告等を行う。また、後付けされたタイヤ及びチャイルドシートに対する後付装置リコール制度が平成16年1月1日に施行された。
 また、今般、自動車メーカーによる不正行為が発覚したことに鑑み、今後このような事態が再発しないよう、自動車不具合情報ホットラインを活用したユーザーからの不具合情報に加え、警察やJAF等関連機関からの事故情報の収集等、情報収集体制を強化するとともに疑義あるメーカーに重点的に監査に入るなど、監査の強化を図っている。
 さらに、リコール調査員室を設置し、より実証的な検証体制を整備した。
 なお、平成16年度のリコール届出件数は438件(国産車331件、輸入車107件)、対象自動車台数は756万5,409台であった。

6 自転車の安全性の確保

(1)自転車安全整備制度の拡充
 自転車安全整備制度は、自転車安全整備店で自転車安全整備技能検定に合格した自転車安全整備士が、使用中の自転車の点検整備を行った場合には、点検整備済(TS)マークを貼付して、法令に定められた基準に適合する普通自転車である旨を明示するとともに、点検整備の機会を利用して自転車の正しい利用方法等について助言指導を行うことによって、自転車の安全利用を図り交通の安全を図ろうとするものである。
 平成16年12月末現在、自転車安全整備士は6万1,296人、自転車安全整備店は1万3,146店となっている。
 平成16年度には、整備不良自転車の一掃を図るため、街頭において整備不良自転車に対する警告、指導等を行った。さらに、地方公共団体、学校、自転車商組合等関係団体の協力を得て、学童及び一般利用者の点検整備意識の高揚及び自転車の安全な通行方法に関する周知徹底を図るため、各種の広報媒体等を通じて制度の普及啓発に努めた。
 また、自転車利用者の間に自転車の点検整備を受ける気運を醸成するとともに、自転車利用者の負傷時の際の救済に資するため、点検整備を受けた普通自転車に貼付する点検整備済TSマークに傷害保険及び損害賠償保険が附帯されている。
 平成16年末現在、保険金支払対象事故の発生件数は、傷害保険163件、賠償責任保険6件となっている。
(2)型式認定制度の普及推進
 駆動補助機付自転車(人の力を補うため原動機を用いるもの)及び普通自転車(以下「駆動補助機付自転車等」という。)については、製造業者等の申請により、道路交通法等に規定されている基準に適合しているかどうかにつき国家公安委員会の認定を受けることができる。
 この型式認定制度は、当該認定を受けた駆動補助機付自転車等に型式認定番号を表示させ、また、基準適合(TS)マークを貼付することができることとし、当該駆動補助機付自転車等が基準に適合したものであることを外観上明確にして、利用者の利便を図るとともに、基準に適合した駆動補助機付自転車等を普及させることにより、交通の安全の推進を図るものであり、平成16年には、駆動補助機付自転車が39台、普通自転車39台を型式認定した。

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