平成16年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況
第2編 海上交通
第1章 海難等の動向
第2編 海上交通
第1章 海難等の動向
1 近年の海難等の状況
我が国の周辺海域において、海難に遭遇した船舶（以下「海難船舶」という。）の隻数の推移をみると、第2次交通安全基本計画期間（昭和51年から55年まで）の年平均隻数では3,232隻であったものが、平成16年では、2,883隻となっており、約1割減少している（第2-1図）。これを用途別にみると、漁船の海難は1,382隻（全体の43％）であったものが、995隻まで減少したものの、依然として全体の約35％を占めており、また、貨物船の海難は864隻（27％）であったものが405隻（14％）まで減少した。
一方、モーターボート、ヨット等のプレジャーボート※及び遊漁船（以下「プレジャーボート等」という。）の海難は376隻（12％）であったものが、1,126隻まで増加し、全体の39％を占めるに至っている。
このほか、タンカーの海難は、199隻だったものが104隻に減少し、旅客船の海難についても75隻だったものが62隻まで減少した（第2-2図）。
このような海難船舶の状況から、ふくそう海域における情報提供・航行管制システムの整備を始め、海難防止思想の普及、民間団体の海難防止活動の展開、気象・海象情報の提供の充実等の各種安全対策を計画的に推進してきた成果が認められる反面、プレジャーボート等の海難の増加については、近年の国民の余暇志向の高まりに伴い、マリンレジャーが急速かつ広範に国民に普及し、運航のための初歩的な知識・技能の不足した運航者の増加が、その背景にあるものと考えられる。
また、船舶からの海中転落者数の推移をみると、第２次交通安全基本計画期間の年平均人数では313人であったものが、平成16年では213人となっており、約3割減少している（第2-3図）。
海難による死亡・行方不明者の数は、第２次交通安全基本計画期間の年平均で426人であったものが、平成16年では174人となっており、約6割減少している。
また、船舶からの海中転落による死亡・行方不明者の数は、第2次交通安全基本計画期間の年平均で268人であったものが、平成16年では143人となっており、約5割減少している。
※プレジャーボート
モーターボート、ヨット、水上オートバイ等個人がレジャーに用いる小型船舶。スポーツ又はレクリエーションに用いられるヨット、モーターボート等の船舶の総称
2 平成16年中の海難等及び海難救助の状況
- （1）海難等の状況
- ア
- 海難船舶等の状況
平成16年の海難船舶は、2,883隻、308万総トンであり、次のような特徴がみられる。 - （ア）
- 用途別状況
船舶の用途別では、プレジャーボート等が1,126隻（39％）で最も多く、次いで漁船が995隻（34％）、貨物船が405隻（14％）、タンカーが104隻（4％）、旅客船が62隻（2％）、その他が191隻（7％）となっている。 - （イ）
- 海難種類別状況
海難種類別では、衝突が1,007隻（35％）、次いで機関故障が377隻（13％）、乗揚が333隻（12％）等となっている。 - （ウ）
- 距岸別状況
距岸別では、港内が954隻（33％）、港内を除く3海里未満が1,382隻（48％）、3海里以上12海里未満で発生した海難が374隻（13％）となっており、12海里未満で発生した海難が全体の94％と大半を占めている。 - （エ）
- 海難原因別状況
海難原因別では、見張り不十分が656隻（23％）、操船不適切が373隻（13％）、気象・海象不注意が165隻（6％）等運航の過誤によるものが全体の62％を占め、これに機関取扱不良271隻（9％）等を加えた人為的要因に起因するものが全体の73％を占めている。
また、船舶からの海中転落者数は213人で、これを船舶の用途別にみると、漁船が139人（65％）で最も多く、次いでプレジャーボート等が38人（18％）、貨物船が15人（7％）となっている。 - イ
- 死亡・行方不明者の発生状況
平成16年における海難による死亡・行方不明者数は174人（前年より12人増加）であり、このうち44％が漁船、30％が貨物船によるものであった。
また、船舶からの海中転落による死亡・行方不明者数は、143人（前年より7人増加）であり、このうち69％が漁船、13％がプレジャーボート等によるものであった。
なお、第7次交通安全基本計画においては、年間の海難及び船舶からの海中転落による死亡・行方不明者数を平成17年までに200人以下とすることを目指しており、平成16年は317人（15年は298人）であった。 - （2）海難救助の状況
- ア
- 海難船舶等の救助状況
平成16年は、海難船舶2,883隻の中で自力入港した979隻を除いた1,904隻のうち、1,545隻が救助され、救助率（自力入港を除く海難船舶隻数に対する救助された隻数の割合）は81％であった。海上保安庁は、巡視船艇延べ3,535隻、航空機延べ937機及び特殊救難隊員延べ268人を出動させ、海難船舶526隻を救助した。また、それ以外の海難船舶についても、巡視船艇・航空機による捜索、救助手配等を行っており、合わせると1,169隻の海難船舶（全体の41％）に対して救助活動を行った（第2-4図）。 - イ
- 人命の救助状況
平成16年は、海難船舶の乗船者1万3,973人の中で自力救助の8,438人を除いた5,535人のうち5,361人が救助され、救助率（自力救助を除く海難船舶の乗船者に対する救助された人数の割合）は97％であった。
また、船舶からの海中転落者213人の中で自力救助の23人を除いた190人のうち47人が救助され、救助率（自力救助を除く海中転落者に対する救助された人数の割合）は25％であった。 
- （CSV形式：1KB）
3 平成16年中のプレジャーボート等の海難等及び海難救助の状況
- （1）海難等の状況
- 平成16年のプレジャーボート等の海難船舶隻数は1,126隻であり、前年より75隻増加した。これに伴う死亡・行方不明者数は33人であり、前年より1人減少した。
この1,126隻についてみると、次のような特徴がみられる。 - ア
- 船型別状況
船型別では、モーターボートが746隻（66％）、ヨットが90隻（8％）、水上オートバイが83隻（7％）、遊漁船が143隻（13％）となっている（第2-5図）。 - イ
- 海難種類別状況
海難種類別では、衝突が251隻（22％）、次いで機関故障が218隻（19％）、運航阻害が130隻（12％）、乗揚が114隻（10％）、転覆が98隻（9％）、推進器障害が90隻（8％）となっている（第2-6図）。 - ウ
- 海難原因別状況
海難原因別では見張り不十分が184隻（16％）、機関取扱不良が166隻（15％）、操船不適切が115隻（10％）、気象・海象不注意が80隻（7％）等の人為的要因に起因するものが71％を占めている（第2-7図）。
また、プレジャーボート等からの海中転落者数は38人で前年より5人減少した。このうち、死亡・行方不明者数は18人で前年より8人減少した。 - （2）海難救助の状況
- 平成16年は、プレジャーボート等の海難船舶1,126隻の中で自力入港した195隻を除いた931隻のうち769隻が救助され、救助率は83％であった。海上保安庁は、巡視船艇延べ1,095隻、航空機延べ218機及び特殊救難隊員延べ69人を出動させ、372隻を救助した。また、それ以外の海難船舶についても、巡視船艇・航空機による捜索、救助手配等を行っており、合わせると616隻の海難船舶（プレジャーボート等の海難船舶全体の55％）に対して救助活動を行った。
- （CSV形式：1KB）
- （CSV形式：1KB）
- （CSV形式：1KB）