平成17年度において実施すべき交通安全施策に関する計画
第1部 陸上交通の安全に関する施策
第1章 道路交通の安全に関する施策
第4節 車両の安全性の確保

第1部 陸上交通の安全に関する施策

第1章 道路交通の安全に関する施策

第4節 車両の安全性の確保

1 車両の安全性に関する基準等の改善の推進

(1)道路運送車両の保安基準の拡充・強化等
車両の安全対策の推進
自動車の安全対策による交通事故死者数の低減目標やその推進の在り方等が盛り込まれた運輸技術審議会答申「安全と環境に配慮した今後の自動車交通政策のあり方について」(平成11年6月)を踏まえ、事故原因や事故時における自動車の構造・装置、乗員被害等の状況を交通事故総合分析センターを活用して詳細に調査・分析し、自動車事故の実態を的確に把握するとともに、自動車使用の態様の変化、新技術の開発状況、諸外国の自動車安全対策の動向等を勘案し、具体的な安全対策を立案・実施する。
このため、産・学・官が参加する「事故分析部会」、「安全基準検討会」等で、これらの安全対策に係る方針、対策の具体的な内容、対策の事前効果予測・事後効果評価、対策を体系的に実施するための長期計画等について検討する。
さらに、シンポジウムを開催するなどして、その検討結果を公表し、安全対策の策定過程の透明性を確保するとともに、関係者からの意見を踏まえて適宜対策の内容の見直しを行う。
道路運送車両の保安基準の拡充・強化
車両の安全対策の基本である自動車の構造・装置等の安全要件を定める道路運送車両の保安基準について、事故分析部会、安全基準検討会の検討結果を踏まえつつ、事故を未然に防ぐための予防安全対策、万が一事故が発生した場合においても乗員、歩行者等の保護を行うための被害軽減対策のそれぞれの観点から、適切に拡充・強化を図る。
なお、保安基準の拡充・強化の推進に当たっては、保安基準が自動車の国際的な流通を阻害することがないよう国際的に連携して検討を進める。
(2)先進安全自動車の開発、普及等
 エレクトロニクス技術や情報通信技術(IT)などの新技術により、自動車を高知能化して安全性を格段に高めるとともに、高度道路交通システム(ITS)技術の自動車としての受皿となる先進安全自動車(ASV)の開発・普及の促進を図る。
 具体的には、ASVのシステムのうち実用化段階にあるものについては、順次安全上のガイドラインを策定するなど整備を図るとともに、普及促進のための環境整備を図るため、ユーザーへの情報提供、優遇措置、社会的受容性の向上、効果分析及び実用化への指針などについて検討を進める。
 さらに、自律型運転支援技術では防止することができないような事故類型について分析し、これらを未然に防止するため、高信頼化された通信技術を用いて多様な道路環境の下において自動車と自動車の間等で情報交換を行う情報交換型運転支援技術について、実用化のための仕様の検討を行うとともに、機能確認のための実験によりデータの収集を行う。
 さらに、大型トラックの安全性を格段に向上させるために、大型トラックへのASV技術活用の実証研究を行う。
(3)車両の安全性等に関する日本工業規格の整備
 工業標準化法(昭24法185)に基づいて制定された自動車関係の日本工業規格のうち、既存規格の規定水準の向上及び国際規格との整合を図るため、平成17年度に制定を予定しているものは2規格、改正については「非鉱油系液圧ブレーキホースアセンブリ」等4規格である。
 また、「短距離障害物警報システム」等8件の工業標準原案の作成を予定している。

2 自動車アセスメント情報の提供等

 自動車の安全装置の正しい使用方法等の一般情報、衝突安全性能等に関する車種ごとの安全性に関する比較情報等を公正中立な立場で取りまとめ、これを自動車ユーザーに定期的に提供する自動車アセスメント事業を積極的に推進する。具体的には、自動車の衝突安全性能の総合評価及び歩行者頭部保護性能・制動性能の評価並びにチャイルドシートの安全性能比較評価を行い公表することで、ユーザーが安全な車選びをしやすい環境の整備を推進するとともに、メーカー等におけるより安全な製品の開発促進を図る。
 このほか、自動車の安全装置の正しい使用方法等の一般情報も拡充し、充実した自動車アセスメント情報をユーザーに提供する。

3 自動車の検査及び点検整備の充実

(1)自動車の検査体制の充実
 道路運送車両の保安基準の拡充・強化に合わせた検査体制の整備を推進することにより、道路運送車両法(昭26法185)に基づく新規検査等の自動車検査を自動車検査独立行政法人と連携して確実に実施する。また、街頭検査体制の充実・強化を図ることにより、不正改造車両の排除等を推進していく。
 さらに、指定自動車整備事業制度の適正な運用・活用を図るため、事業者に対する指導監督を強化する。加えて、軽自動車の検査については、その実施機関である軽自動車検査協会における検査の一層の効率化を図るとともに、検査体制の充実を図る。
(2)型式指定制度の充実
 自動車の安全性の増進等を図るため、新型の自動車や装置の保安基準への適合性等の審査を独立行政法人交通安全環境研究所と連携して実施する。
(3)自動車点検整備の充実
自動車点検整備の推進
自動車ユーザーの保守管理意識の高揚と点検整備の適切な実施の推進を図るため、「自動車点検整備推進運動」を全国的に展開するとともに、整備管理者研修、自動車運送事業者監査等を通じて関係者に対し車両管理の指導を行い、車両故障に起因する事故の防止を図る。
また、自動車ユーザーによる自動車の保守管理及び整備工場における自動車の点検整備を適切に実施する上で参考となるよう、継続検査の前に整備が必要と判断された箇所の調査結果を公表する等適切な情報の提供を図る。
不正改造車の排除
道路交通に危険を及ぼすなど社会的問題となっている暴走族の不正改造車や過積載を目的とした不正改造車等を排除し、自動車の安全運行を確保するため、関係機関の支援及び自動車関係団体の協力の下に「不正改造車を排除する運動」を全国的に展開し、広報活動の推進、関係者への指導、街頭検査等を強化することにより、不正改造防止について、自動車使用者及び自動車関係事業者等の認識を高める。
また、不正改造行為の禁止及び不正改造車両に対する整備命令制度の強化を盛り込んだ改正道路運送車両法(平成15年4月施行)の的確な運用に努める。
自動車分解整備事業の適正化、近代化
点検整備に対する自動車ユーザーの理解と信頼を得るため、自動車分解整備事業者に対し、整備料金、整備内容の適正化について、その具体的な実施事項の推進を指導する。また、自動車分解整備事業者における設備の近代化や経営管理の改善等への支援を行う。
自動車の新技術への対応等整備技術の向上
自動車新技術の採用・普及、車社会の環境の変化に伴い、自動車を適切に維持管理するためには、自動車整備業がこれらの変化に対応していく必要があることから、実態調査等を通じ自動車整備業の現状について把握し、今後、自動車整備業が自動車の新技術及び多様化するユーザーニーズに対応していくための技術の高度化等について検討する。
また、整備主任者等を対象とした新技術研修の実施等により整備要員の技術の向上を図る。
さらに、新技術が採用された自動車の整備や自動車ユーザーに対する自動車の正しい使用についての説明等のニーズに対応するため、一級自動車整備士制度を活用する。

4 リコール制度の充実

 設計等に起因する基準不適合自動車について、リコールに係る不正行為の再発を防止するため、メーカーからの定期報告の義務づけ、自動車不具合情報ホットラインのユーザーへのPR等情報収集体制の強化、疑義あるメーカーへの集中監査、ディーラー監査の充実等監査体制の強化、安全性に疑義のある自動車に対して交通安全環境研究所等において現車確認、試験を実施するなど技術的検証体制を強化することにより、リコールの迅速かつ確実な実施を図り、自動車等の安全確保について製作者等の指導監督の徹底に努める。

5 自転車の安全性の確保

 自転車の安全な利用を確保し、自転車事故の防止を図るため、駆動補助機付自転車(人の力を補うため原動機を用いるもの)及び普通自転車に係る型式認定制度を活用する。また、自転車利用者に対し定期的に自転車安全整備店において点検整備を受ける気運を醸成するとともに、点検整備の確保及び自転車の正しい利用方法等の指導を目的とした自転車安全整備制度の拡充を図り、併せて付帯保険により被害者の救済に資することを目的とするTSマークの普及に努める。さらに、夜間における交通事故の防止を図るため、灯火の取付けの徹底と反射器材の普及促進を図り、自転車の被視認性の向上を図る。

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