平成17年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況
第2編 海上交通
第2章 海上交通安全施策の現況
第7節 救助・救急体制の整備
第2編 海上交通
第2章 海上交通安全施策の現況
第7節 救助・救急体制の整備
1 海難情報の収集処理体制の整備
海上保安庁では、海難情報を早期に入手し、迅速かつ的確な救助活動を行うため、全国20か所の陸上通信所や行動中の巡視船艇により、海上における遭難及び安全に関する世界的な制度(GMDSS)に対応した遭難周波数を24時間聴守するとともに、衛星経由で遭難情報の入手が可能なコスパス・サーサット捜索救助衛星システムの地上施設の運用を行うなど、遭難情報に即応する体制を整えている。
また、広く一般国民や船舶等から海上における事件・事故に関する情報を入手するため、緊急通報用電話番号「118番」の一層の周知、定着を図った。
一方、防衛庁は、海上保安庁との協定に基づき、同庁と必要な情報の交換を行った。また、艦艇・航空機では状況の許す限り、遭難周波数を聴取した。
2 海難救助体制の充実・強化及び海難救助技術の向上
- (1)SAR条約への対応
- 1979年の海上における捜索及び救助に関する国際条約(SAR条約)は、沿岸国が自国の周辺海域において適切な捜索救助業務を行うための国内制度を確立するとともに、関係国間の協力により、究極的には、世界の海に空白のない捜索救助体制を作り上げることを目的としている。我が国は、同条約に基づき、国内的な体制の整備を行う一方、隣接国とのSAR協定の締結により国際的な協力体制の確立に努めており、現在、米国、ロシア及び韓国とそれぞれSAR協定を締結している。
また、近隣諸国等の要請に応じて、海上における捜索救助体制の整備のため、研修員の受け入れ、専門家の派遣等の技術協力を積極的に推進している。
さらに、海運・水産関係者に対して、コンピュータの利用により多数の船舶の位置等の情報を把握することにより、海難が発生した場合に捜索救助活動を効果的に行うことができる日本の船位通報制度(JASREP)への参加を促進し、制度の有効活用を図った。平成17年には延べ2,486隻の船舶が参加した。 - (2)救命胴衣の着用率の向上
- 救命胴衣の着用が海難及び船舶からの海中転落による死亡・行方不明者の減少に大きく寄与していることから、救命胴衣着用推進モデル漁協、同マリーナの指定拡充等により救命胴衣着用率の向上を図った。また、救命胴衣の常時着用のほか、携帯電話等の連絡手段の確保、緊急通報用電話番号「118番」の有効活用を三つの基本とする自己救命策確保キャンペーンを強力に推進した。
- (3)巡視船艇・航空機等の整備
- 海上保安庁は、事案即応体制及び業務執行体制の一層の強化を図るため、巡視船艇・航空機の代替整備を進めており、平成17年度は、継続分を含め、1000トン型巡視船1隻、2000トン型巡視船(ヘリ甲板付高速高機能)3隻、1000トン型巡視船(高速高機能)2隻及び20メートル型巡視艇5隻並びに新型ジェット飛行機1機、飛行機2機及びヘリコプター3機を整備した。
防衛庁は、人名救助等のための派遣にも役立たせることができるように、航空基地及び艦艇基地に航空機又は艦艇を緊急に発進できる態勢で常時待機させている。
警察では、警察用船舶のほか、船舶無線・各種水難救助資器材等の整備充実を図った。 - (4)海難救助技術の向上
- 船舶交通のふくそう状況、気象・海象の状況等を勘案し、海難の発生のおそれがある海域において、巡視船艇・航空機を効率的に運用した。
また、転覆船や火災船からの人命救助等、高度な救助技術・知識が要求される特殊な海難や救急救命処置を要する傷病者の救助に対応するため、特殊救難隊及び救難強化巡視船による特殊救難体制の充実・強化を図ったほか、救急救命士の養成を継続するなど、救急救命体制の充実・強化を図った。
さらに、海上で発生した傷病者等に迅速かつ的確に対処するため、ヘリコプターに同乗し、つり上げ救助、潜水作業及び救急救命処置等を行う機動救難士を福岡、函館、美保、鹿児島航空基地に加え、関西空港海上保安航空基地に配置し、人命救助即応体制の充実・強化を図った。
このほか、(社)日本水難救済会に対する救助用物品の無償貸与や、全国各地で実施されている民間の救助訓練の指導を行うなど、民間救助体制の強化を図った。
3 洋上救急体制の充実
洋上で発生した傷病者に対し、医師、看護師の迅速かつ円滑な出動を行い、適切な医療活動を行うため、(社)日本水難救済会が事業主体となって実施している洋上救急事業について、その適切な運営を図るための指導及び協力を行うとともに、関係団体と協力し、医療機関の参加を促進した。平成17年は34件の要請を受け、医師・看護師等67人を派遣した。
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