平成17年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況
第3編 航空交通
第2章 航空交通安全施策の現況
第1節 航空交通環境の整備

第3編 航空交通

第2章 航空交通安全施策の現況

第1節 航空交通環境の整備

1 交通安全施設の整備

 平成17年度は、航空交通の増大や多様化に対処するとともに、航空交通の安全の確保を図るため、空港及び航空保安施設の整備を進めた。平成17年度の空港及び航空保安施設の整備事業費は3,166億円であった。

(1)航空保安施設の整備
次世代航空保安システム
(ア)
管制施設の整備
(1)
航空衛星システム
洋上空域における航空交通の安全性、効率性及び航空交通容量の拡大を図るため、衛星を利用した新たな航空通信・航法・監視システムの整備を推進している。平成17年2月26日に運輸多目的衛星新1号機(MTSAT-1R)を打ち上げ、運用開始に向けて総合接続試験を進めた。
また、平成18年2月18日には運輸多目的衛星新2号機(MTSAT-2)を打ち上げた。
また、航空交通の需要増に対応し運航効率の向上等を図る航空交通管理センターについて、平成17年10月1日より業務を開始した。
(2)
次期管制システム
羽田再拡張等の空港整備に伴う交通量の増大に対応し、管制処理能力の向上を図るため、次期管制卓・次期管制情報処理システム・次期管制レーダー情報処理システムの整備を進めた。あわせて過密空域における監視機能を強化する改良型2次レーダー(SSRモードS)の整備を推進しており、加世田ARSR(鹿児島県)等3か所で整備を進めた。
現行航空保安システム
平成18年1月末現在の管制施設、保安施設及び通信施設の状況は、次のとおりである(第3‐2表)。
(ア)
管制施設の整備
(1)
航空路監視レーダー
航空交通の安全性の向上と空域の有効利用を図るため、航空路上の航空機を常時監視することができる航空路監視レーダー(ARSR/ORSR)施設網を整備し、平成17年度末までに釧路等20か所においてその運用を行っている。これにより、我が国の高度1万5,000フィート(約4,500メートル)以上の主要航空路を常時レーダー監視できるようになり、安全かつ円滑な航空交通の確保に寄与している。17年度は上品山ARSR(宮城県)等2か所の性能向上を行った(第3‐1図)。
(2)
空港監視レーダー
空港周辺を飛行する航空機を常時監視することができる空港監視レーダー(ASR)の整備を推進しており、函館空港において性能向上を行った。
(3)
管制情報処理システム
航空交通の安全性と管制処理能力の向上を図るため、飛行情報管理システム(FDMS)、航空路レーダー情報処理システム(RDP)及びターミナルレーダー情報処理システム(ARTS)の整備を推進しているが、FDMS、RDP及びARTSについて計算機等の性能向上を行った。
(4)
遠隔対空通信施設
航空交通管制部の管制官が管轄区域内を飛行する航空機と直接交信し、管制承認、管制指示の伝達等を迅速に行うための遠隔対空通信施設(RCAG)については、箱根(神奈川県)等8か所において性能向上を行った。
(イ)
保安施設の整備
(1)
方位・距離情報提供施設
航空機に高精度の方位及び距離情報を提供する超短波全方向式無線標識施設/距離測定装置(VOR/DME)等については、航空交通量の増大に対応するため、新北九州空港等2か所において新設整備を推進したほか、河和(愛知県)において性能向上を行った。また、航空機に方位情報を提供する無指向性無線標識(NDB)については、VOR/DMEの性能向上等により廃止が可能となった木更津(千葉県)等4か所を撤去した。
(2)
計器着陸装置
航空機に滑走路への適正な進入方向と降下経路を指示する計器着陸装置(ILS)については、新北九州空港等3か所において新設整備、青森空港において性能向上を行った。
(3)
航空灯火
航空機の離着陸時における安全性の向上と就航率の向上を図るための進入灯、滑走路灯等の航空灯火については、東京国際空港等34か所において精密進入用灯火、奥尻空港等7か所において夜間着陸用灯火等の新設整備及び改良を行った。
(ウ)
通信施設の整備
航空機の運航に必要な多種多様の情報を伝達・処理するための航空交通情報システムについては、国内航空交通情報処理中継システム(DTAX)及び国際航空交通情報処理中継システム(AFTAX)等の性能向上を行った。
(2)空港の整備
大都市圏拠点空港等の整備
平成18年1月末日現在の公共用飛行場は96か所であり、17年度には次のような整備を行った。
成田国際空港については、増大する国際航空需要に対応するため、2,500メートルの平行滑走路の早期整備に努めるとともに、第1旅客ターミナルビルの改修等空港施設の能力増強を行った。
東京国際空港の沖合展開事業については、第2旅客ターミナル南側部のエプロン整備等を実施した。
また、同空港に4本目の新たな滑走路等を整備する再拡張事業については、新設滑走路等の実施設計、環境影響評価手続等を実施するとともに、PFI手法を活用した国際線地区整備事業については、事業者選定手続きを実施した。
関西国際空港の二期事業については、施設整備を二本目の滑走路の供用に必要不可欠なものに限定して行うこととし、平成17年度は、「限定供用」に必要な施設整備に着手した。
一般空港等については、滑走路の延長等として、継続事業10空港の整備を行ったとともに、新規事業として石垣空港の2,000メートル化に着手した。このほか、各空港において、空港機能を保持するための整備等を行った。
また、航空輸送サービスの質の向上を図り、観光立国の実現等に資するため、空港を核とした観光交流の促進、空港アクセス改善や空港運用の高度化等既存空港の機能の高度化及び空域・航空路の抜本的な再編をはじめとする運航効率の向上等を推進するための「航空サービス高度化推進事業」を行った。
首都圏第3空港については、長期的な視野に立って、引き続き検討を行った。
※PFI
公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う新しい手法。
空港安全技術の強化
国際民間航空機関(ICAO)に定める標準に即した滑走路回転パッドの適用性及び滑走路終端安全区域の改訂に関し、航空機運航の安全に直接かかわる空港安全技術について検討を行った。
(3)空港施設の耐震性の強化
 東京国際空港の誘導路の一部を耐震化したほか、大規模地震発生時に求められる、円滑な緊急救命活動や緊急物資の輸送、航空ネットワークの維持等について「地震に強い空港のあり方検討委員会」を開催し検討した。
第3‐2表 管制施設、保安施設及び通信施設の整備状況
(CSV形式:2KB)ファイルを別ウィンドウで開きます
第3‐1図 航空路監視レーダー配置及び覆域図

2 航空交通管制に係る空域の整備

 航空法(昭27法231)第95条の3の規定(民間訓練試験空域において訓練試験飛行を実施する際には、訓練試験等計画の提出義務及び国土交通大臣に連絡を行った上で、他の航空機の航行に関する情報を受けることを定め、安全の向上を図る)の制定に伴い、民間訓練試験空域を告示で指定し、航空交通管理センターで訓練試験空域使用状況の管理を開始した。
 また、航空機の垂直間隔を短縮する運航方式(RVSM運航方式)の導入に際し、国際民間航空機関(ICAO)の安全管理指針に基づき、空域の安全性検証を実施し、国内のRVSMを導入した。

3 飛行検査の充実

 航空交通の安全を確保するための航空保安施設等が所定の機能を保持しているかについて、飛行検査用航空機により検査を行っており、平成17年度は検査対象施設808局について飛行検査を行った。

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