平成18年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況 平成19年度交通安全施策に関する計画(概要)
I 現況の概要
第1編 陸上交通
第1部 道路交通
第2章 道路交通安全施策の現況
I 現況の概要
第1編 陸上交通
第1部 道路交通
第2章 道路交通安全施策の現況
1 道路交通環境の整備
○ 人優先の安全・安心な歩行空間の整備
地域の協力を得ながら、通学路、生活道路、市街地の幹線道路等において、歩道を積極的に整備するなど、「人」の視点に立った交通安全対策を推進した。
- (1)
- 小学校、幼稚園、保育所及び児童館等に通う児童や幼児の通行の安全を確保するため、通学路等の歩道整備等を積極的に推進した。
このほか、押ボタン式信号機、歩行者用灯器等の整備、立体横断施設の整備、横断歩道等の拡充により、通学路、通園路の整備を図った。 - (2)
- 死傷事故発生割合が高い住居系地区又は商業系地区で、その外縁を幹線道路が構成する「あんしん歩行エリア」について、都道府県公安委員会及び道路管理者が連携して、歩道整備を始めとした面的かつ総合的な事故抑止対策を実施した。また、「あんしん歩行エリア」以外の生活道路においても、歩道を積極的に整備した。
このほか、「生活道路事故抑止対策マニュアル※」を活用するなどして都道府県公安委員会と道路管理者が連携し、自動車の速度の抑制、道路の形状や交差点の存在の運転者への明示、歩車それぞれの通行区分の明示等を進め、歩車が共存する安全で安心な道路空間を創出するための取組を推進するなど、交通事故抑止のための施策を実施した。 - (3)
- 歩行者及び自転車利用者の安全で快適な通行を確保するため、歩行者等の交通事故が発生する危険性の高い区間等について、改築事業等による整備と併せて歩道及び自転車道等の整備を引き続き重点的に実施した。その際、快適な通行空間を十分確保した幅の広い歩道の整備に努めるとともに、既存の道路に歩道等の設置が困難な場合においては、その歩道等の代替として既存の道路と並行した歩行者専用道路、自転車歩行者専用道路等の整備を推進した。
また、高齢者、障害者等の自立した日常生活及び社会生活を確保するため、ユニバーサルデザイン(誰にでも使いやすい設計)の考え方に基づき、駅、公共施設、福祉施設、病院等の周辺を中心に平坦性が確保された幅の広い歩道を積極的に整備した。
このほか、バリアフリー対応型信号機、経過時間表示装置、昇降装置付立体横断施設、歩行者用休憩施設、自転車駐車場、障害者用の駐車ます等を有する自動車駐車場等を整備するとともに、改築事業等と併せた無電柱化を推進した。あわせて、高齢者、障害者等の通行の安全と円滑を図るとともに、高齢運転者の増加に対応するため、信号灯器のLED化、道路標識の高輝度化等を推進した。 - ※生活道路事故抑止対策マニュアル
- 生活道路における交通事故抑止対策を効果的に推進することができるようにするため、その手順や道路交通環境の整備手法等を体系的にまとめたもの。
○ 高度道路交通システムの活用
最先端の情報通信技術(IT)等を用いて、人と道路と車とを一体のシステムとして構築し、安全性、輸送効率及び快適性の向上を実現するとともに、渋滞の軽減等の交通の円滑化を通じて環境保全に大きく寄与することを目的とした高度道路交通システム(ITS)を推進している。そのため、平成8年に策定されたITS全体構想に基づき、産・官・学の連携を図りながら、研究開発、フィールドテスト※、インフラ(社会基盤)の整備等の推進を図った。
※フィールドテスト
実地試験、屋外試験等のこと。
- (1)
- 高度化された交通管制センターを中心に、個々の車両等との双方向通信が可能な光ビーコン※を媒体として、交通流・量を積極的かつ総合的に管理することにより、高度な交通情報提供、車両の運行管理、公共車両の優先通行、交通公害の減少、安全運転の支援、歩行者の安全確保等を図り、交通の安全及び快適性を確保しようとする新交通管理システム(UTMS)の構想に基づき、システムの充実、キーインフラである光ビーコンの整備等の施策の推進を図った。
- ※光ビーコン
- 通過車両を感知して交通量等を測定するとともに、カーナビゲーション装置等と交通管制センターとの情報のやりとりをする路上設置型の赤外線通信装置。
- (2)
- ノンストップ自動料金支払システム(ETC)で導入されている狭域通信(DSRC)システムを利用したあらゆるゲートのスムーズな通過、場所やニーズに応じた地域ガイド、タイムリーな走行支援情報の提供等多様なITSサービスについて、携帯電話、光通信等多様な通信メディアとの連携にも配慮しつつ実現を図った。
2 交通安全思想の普及徹底
○ 高齢者に対する交通安全教育の推進
高齢者同士の相互啓発等により交通安全意識の高揚を図るため、老人クラブ、老人ホーム等における交通安全部会の設置、高齢者交通安全指導員(シルバーリーダー)の養成等を促進し、老人クラブ等が関係団体と連携して、「ヒヤリ地図」の作成等自主的な交通安全活動を展開し、地域・家庭における交通安全活動の主導的役割を果たすよう指導・援助を行った。
内閣府は、平成18年度から、地域における高齢者安全運転の普及を促進するため、シルバーリーダー及び地域活動に影響力のある高齢者を対象とした「参加・体験・実践型の高齢者安全運転普及事業」を実施し、高齢者交通安全教育の継続的な推進役の養成に努めた。また、シルバーリーダーのサブリーダー育成能力を高めること等を目的とする「シルバーリーダー中央研修事業」、交通安全をテーマに三世代が交流する「世代間交流事業」及び交通安全教室に参加しない高齢者を対象にした「高齢者世帯訪問事業」を内容とする「高齢者交通安全意識高揚啓発事業」を実施した。
3 安全運転の確保
○ 高齢運転者対策の充実
年齢が70歳以上の高齢者に義務付けられている高齢者講習は、受講者に実際に自動車等の運転をしてもらうことや運転適性検査器材を用いた検査を行うことにより、運転に必要な適性に関する調査を行い、受講者に自らの身体的な機能の変化を自覚してもらうとともに、その結果に基づいて助言・指導を行うことを内容としており、この講習を受講した者は、更新時講習を受講する必要がないこととされている。平成18年中の高齢者講習の受講者は146万8,374人であった。また、更新時講習では、65歳以上70歳未満の者を対象とした高齢者学級を編成し、高齢運転者の運転特性や交通事故の特徴等を内容とする講習を行うよう努めた。
○ 自動車運送事業者に対する指導監督の充実
新規参入事業者に対する早期監査の実施や行政処分を行った事業者に対するフォローアップ監査の実施等の予防的監査を実施するとともに、関係行政機関との相互通報制度の拡充やタクシー事業場に対する合同監査・監督を実施することとし、また、事業者ぐるみで過労運転や酒気帯び運転を行っていた場合等における行政処分の厳格化を図った。さらに、経営トップから現場までが一丸となった安全を確保する仕組みとして運輸安全マネジメントを導入するとともに、事業者の安全管理体制の構築状況を国が評価する「運輸安全マネジメント評価」を導入した。
4 車両の安全性の確保
○ 車両の安全対策の推進
自動車メーカーによるリコール隠し等の不正行為が発生したことを踏まえ、平成16年に、情報収集体制の強化、監査体制の強化及び技術的検証体制の強化の3つを柱とするリコールに係る不正行為の再発防止対策をまとめた。これまで逐次体制の強化を行い、18年度は道路運送車両法等の改正を行い、独立行政法人交通安全環境研究所にリコール技術検証部を設置し、実車実験等により自動車の不具合の原因を検証することとした。これをもって再発防止のための体制づくりが完了したことから、これらの体制を活用してリコール制度の着実な実施を図った。
また、自動車を高知能化して安全性を格段に高めた先進安全自動車(ASV)について、第4期ASV推進計画を開始し、自動車アセスメントにおいては21車種について衝突安全性能試験を実施した。
このほか、大型車の車輪脱落事故やバスの車両火災事故等の点検・整備等の不良に起因する事故の防止を図るため、自動車点検基準等の関係法令を改正した。また、不正な二次架装による積載量又は乗車定員の水増し等に対応するため、道路運送車両法を改正し、架装メーカー等に対する立ち入り検査等の規定を新設した。
5 救助・救急体制等の整備
○ ドクターヘリ事業の推進
緊急現場、搬送途上における医療の充実を図るため、早期治療の開始と迅速な搬送を行うドクターヘリ(医師等が同乗する救急専用ヘリコプター)事業については、平成18年度末までに、10道県の救命救急センターにドクターヘリが配備された。その運用に当たっては、ドクターヘリが安全に着陸できる区間・場所の情報の共有や「運用マニュアル」の作成、共通の周波数の無線機の整備等関係機関・団体が連携した取組を強化した。