平成18年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況
第1編 陸上交通
第1部 道路交通
第2章 道路交通安全施策の現況
第4節 車両の安全性の確保

第1編 陸上交通

第1部 道路交通

第2章 道路交通安全施策の現況

第4節 車両の安全性の確保

1 自動車保有台数の推移

 平成18年12月末現在の自動車保有台数は約7,945万台であり、前年に比べて約24万台(0.3%)増加し、自動車1台当たりの人口は1.61人(18年3月末現在)となった。
 自動車保有台数を用途別及び車種別にみると、小型乗用自動車が約2,570万台と最も多数を占め、全自動車台数の32.3%を占めている。これに次いで普通乗用自動車が約1,671万台で21.0%、軽四輪乗用自動車が約1,511万台で19.0%となっており、この3車種で全体の72.4%を占めている。また、対前年増加率では、軽四輪乗用自動車6.4%、軽二輪自動車2.2%などが目立っている(第1-17表)。

第1-17表 用途別及び車種別自動車保有台数

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2 車両の安全性に関する基準等の改善の推進

(1)道路運送車両の保安基準の拡充・強化等
車両の安全対策の推進
 第8次交通安全基本計画を踏まえ、交通政策審議会から「交通事故のない社会を目指した今後の車両安全対策の在り方について」(平成18年6月)が報告され、この中で、(1)車両安全対策により、平成11年と比較して年間死者数を2,000人低減すること、(事故後30日以内の死者)を目標とすること、(2)平成18年と比較して年間負傷者数を平成22年までに2万5,000人、平成27年までに5万人低減すること、(3)平成22年以降も車両安全対策による継続的な死者数低減を図るため、事故を未然に防止する予防安全対策の普及・拡大に取り組むこと、等が目標として示されている。この達成のため「低減目標を設定→対策の実施→効果評価」という車両安全対策のサイクルを総合的かつ分野ごとに繰り返し行いつつ、安全対策を立案・実施した。
具体的には、「事故分析部会」において、事故の全体的な特徴・傾向を把握する「全体俯瞰」並びに事故件数の突出している追突及び出会い頭の事故についてより詳細な分析を行った。また、「安全基準検討会」において、今後の予防安全対策(事故の発生以前に作動し、事故の防止又は事故被害の軽減を図る技術を用いた安全対策のこと。)の普及・拡大に向け、ドライブレコーダー等を用いて予防安全技術の効果評価を進めること等、今後の安全基準等の方向性について交通政策審議会報告を踏まえた検討を行った。さらに、これら安全対策の推進に当たっては、平成19年2月に自動車安全シンポジウムを開催し、広く一般から意見を聴取した。
道路運送車両の保安基準の拡充・強化
車両の安全対策の基本である自動車の構造・装置等の安全要件を定める道路運送車両の保安基準について、ISO-FIXに適合するチャイルドシート固定器具の義務付け、後部座席中央3点式シートベルトの義務付け、大型車と乗用車の正面衝突時にもぐり込みを防止する前部もぐり込み防止装置や大型後部反射器の安全基準の拡充・強化を行った。 
なお、保安基準の拡充・強化の推進に当たっては、保安基準が自動車の国際的な流通を阻害することがないよう国際的に連携して検討を進めた。
※ISO-FIX
チャイルドシートの誤着用を防止し、使いやすさを向上するため、チャイルドシートを自動車に取り付ける方法の共通化(ISO規格化)を図った取付機構をいう。
(2)先進安全自動車の開発・普及の促進
 エレクトロニクス技術等の先進技術により、自動車を高知能化して、安全性を格段に高めた先進安全自動車(ASV)について、産・学・官の連携の下で第3期ASV推進計画における検討を通じて開発・普及の促進を図った。また、実用化されたASV技術の本格的な普及と情報交換型安全運転支援システムの一部実用化を目指し、平成18年度から第4期ASV推進計画を開始した。
(3)車両の安全性等に関する日本工業規格の整備
 工業標準化法(昭24法185)に基づいて制定された自動車関係の日本工業規格のうち、新技術への対応及び国際規格との整合を図るため、「高度道路交通システム-低速域周辺障害物警報-性能要件及びその試験手順」等4件の工業標準の制定を行った。あわせて、既存規格の規定水準の向上を図るため「自動車部品-ブレーキシューアッセンブリ及びディスクブレーキパッド-せん断試験方法」等2件の日本工業規格の改正を行った。

3 自動車アセスメント情報の提供等

(1)概要
 自動車アセスメントは、自動車ユーザーが安全な車選びをしやすい環境を整えるとともに、自動車メーカーの安全な自動車の開発を促すことによって、安全な自動車の普及を促進しようとするものである。市販されている自動車の衝突安全性能試験の結果等を公表するとともに、エアバッグ等安全装置の装備状況等の情報を提供している。また、チャイルドシートについても安全性能試験を実施し、チャイルドシートアセスメントとして公表している。
(2)自動車アセスメントの充実
 自動車アセスメントは、平成7年度から自動車事故対策センター(現、独立行政法人自動車事故対策機構)が運輸省(国土交通省)の指導の下、安全情報提供のために開始したものであり、11年度までに67車種についての前面衝突試験及びブレーキ性能試験を実施するとともに、エアバッグ、チャイルドシート等の安全装置の取扱上の注意事項について公表してきた。11年度には、側面衝突試験を追加し試験内容の充実を図るとともに、より公正・中立な立場で行うため、運輸省が主体的に実施することとした。
 平成12年度からはオフセット前面衝突試験を追加し、フルラップ前面衝突試験、側面衝突試験と合わせて、3つの衝突試験による衝突安全性能総合評価を実施し、また、15年度から歩行者頭部保護性能試験を開始し、その結果を公表している。18年度は、21車種について衝突安全性能試験を実施した。ここ7か年では計153車種について試験を実施し、乗用車の国内新車販売台数の約8割をカバーしている。
 このほか、自動車の安全装置の正しい使用方法等の一般情報や車種ごとの安全装置の装備状況について自動車ユーザーに情報提供するとともに実用化された先進安全自動車(ASV)技術について紹介を行っている。
※オフセット前面衝突試験
運転席と助手席にダミーを乗せた試験者を、時速64kmでアルミハニカムに運転席の一部を前面衝突させる実験。
※フルラップ前面衝突試験
運転席と助手席にダミーを乗せた試験者を、時速55kmでコンクリート製の障壁(バリア)に正面衝突させる試験。
(3)チャイルドシートアセスメントの推進
 チャイルドシートアセスメントは、自動車アセスメント事業の一環として、信頼できる安全性能評価を公表して安全なチャイルドシートを選択できるようにしてほしい、との要望を受け、平成13年度から実施しているものであり、前面衝突試験と使用性評価試験を実施し、その結果を公表している。18年度には7製品について試験を実施し、開始以降の6か年で57機種について試験を実施している。

4 自動車の検査及び点検整備の充実

(1)自動車の検査の充実
自動車検査の実施状況
自動車の安全確保と公害の防止を図るため、自動車検査独立行政法人と連携して、道路運送車両法(昭26法185)に基づき、自動車(軽自動車及び小型特殊自動車を除く。)の新規検査、継続検査及び構造等変更検査を行っており、平成17年度の検査実施車両は約2,781万台であった(第1-18表)。
自動車検査施設の整備
自動車検査施設については、自動車ユーザーが受検しやすいよう音声誘導装置付検査機器の設置、自動車の新技術・新機構に対応した検査機器を導入している。
軽自動車の検査の実施状況
軽自動車検査協会において、平成17年度に約1,095万台の軽自動車(二輪の軽自動車を除く。)の検査を実施した。
(2)型式指定制度の充実
 自動車の型式指定等に当たっては、保安基準への適合性及び生産過程における品質管理体制等の審査を独立行政法人交通安全環境研究所と連携して実施し、自動車の安全性の増進等を図っている。
 また、装置の安全性の増進等及び自動車の型式指定等の合理化を図るため、道路運送車両法に基づく自動車の装置についての型式指定制度を設けており、毎年、その対象品目の拡大を図っている。平成19年1月現在で58品目が対象となっており、このうち52品目については、車両等の型式認定相互承認協定に基づく相互承認が可能となっている。
(3)自動車点検整備の充実
自動車点検整備の推進
自動車ユーザーの保守管理意識の高揚と点検整備の適切な実施の推進を図るため、平成18年9月、10月を強化月間として「自動車点検整備推進運動」を全国的に展開した。
また、大型車の車輪脱落事故やバスの車両火災事故等の点検・整備等の不良に起因する事故の防止を図るため、年末年始輸送の安全総点検や整備管理者研修等を通じて関係者に対し指導を行うとともに、自動車点検基準(昭26運輸省令70)等の関係法令を改正した(平成19年4月1日施行)。
不正改造車の排除
道路交通に危険を及ぼすなど社会的問題となっている不適正な着色フィルムの貼付、消音器の切断・取り外し等の不正改造車や過積載を目的とした不正改造車等を排除し、自動車の安全運行を確保するため、関係機関の支援及び自動車関係団体の協力の下に平成18年6月を強化月間とした「不正改造車を排除する運動」を全国的に展開し、広報活動の推進、関係者への指導、街頭検査等を強化することにより、不正改造防止について、自動車使用者及び自動車関係事業者等の意識の高揚を図った。
また、不正な二次架装による積載量又は乗車定員の水増し等に対応するため、道路運送車両法(昭26法185)を平成18年5月に改正し、架装メーカー等に対する立入検査等の規定を新設した。
※不正な二次架装
自動車の一部部品を取り付けない又は取り外した状態で新規検査を受検し、自動車検査証の交付を受けた後に、当該部品を取り付けて使用者に納車する行為。
自動車分解整備事業の適正化、近代化
点検整備に対する自動車ユーザーの理解と信頼を得るため、自動車分解整備事業者に対し、整備料金、整備内容の適正化について、その具体的な実施事項の推進を指導した。また、自動車分解整備事業者における設備の近代化や経営管理の改善等への支援を行った。
自動車の新技術への対応等整備技術の向上
自動車新技術の採用・普及、車社会の環境の変化に伴い、自動車を適切に維持管理するためには、自動車整備業がこれらの変化に対応していく必要があることから、実態調査等を通じ自動車整備業の現状について把握し、今後、自動車整備業が自動車の新技術及び多様化するユーザーニーズに対応していくための技術の高度化等について検討した。
また、整備主任者を対象とした技術研修の実施等により整備要員の技術の向上を図った。
さらに、新技術が採用された自動車の整備や自動車ユーザーに対する自動車の正しい使用についての説明等のニーズに対応するため、一級自動車整備士制度を活用することとし、平成18年度は1,211名(累計3,166名)が一級小型自動車整備士技能検定に合格した(平成18年度3月末)。
第1-18表 自動車検査実施状況
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5 リコール制度の充実・強化

 リコール制度は、自動車製作者等が、自動車等の構造、装置又は性能が基準に適合しない又は適合しなくなるおそれがあり、かつ、その原因が設計又は製作の過程にあると認める場合に、国土交通大臣に届け、当該自動車を回収し、無料で修理する制度であり、自動車製作者等が適切な改善措置を講じない場合、国土交通大臣は必要な改善措置を講ずるよう勧告等を行う。
 自動車メーカーによるリコール隠し等の不正行為が発生したことを踏まえ、平成16年に、情報収集体制の強化、監査体制の強化及び技術的検証体制の強化の3つを柱とするリコールに係る不正行為の再発防止対策をまとめた。これまで逐次体制の強化を行い、18年度は道路運送車両法等の改正を行い、独立行政法人交通安全環境研究所にリコール技術検証部を設置し、実車実験等により自動車の不具合の原因を検証することとした。これをもって再発防止のための体制づくりが完了したことから、これらの体制を活用してリコール制度の着実な実施を図った。
 なお、18年度のリコール届出件数は300件(国産車203件、輸入車97件)、対象自動車台数は696万8,245台であった。

6 自転車の安全性の確保

 自転車の安全な利用を確保し、自転車事故の防止を図るため、駆動補助機付自転車(人の力を補うため原動機を用いるもの)及び普通自転車に係る型式認定制度を運用しており、平成18年には、駆動補助機付自転車20台、普通自転車20台を型式認定した。
 この型式認定制度は、型式認定を受けた駆動補助機付自転車等に型式認定番号等を表示させ、また、基準適合(TS)マークを貼付することができることとし、当該駆動補助機付自転車等が道路交通法等に規定されている基準に適合したものであることを外観上明確にして、利用者の利便を図るとともに、基準に適合した駆動補助機付自転車等を普及させることにより、交通の安全と推進を図るものである。
 また、自転車利用者が定期的に点検整備や正しい利用方法等の指導を受ける気運を醸成するとともに、自転車の安全性向上を目的とする各種マーク制度(BAAマーク、SGマーク)や自転車事故による被害者の救済に資するため各種保険の普及に努めた。
 さらに、夜間における交通事故の防止を図るため、灯火の取付けの徹底と反射器材の普及促進を図り、自転車の被視認性の向上を図った。

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