平成18年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況
第3編 航空交通
第2章 航空交通安全施策の現況
第1節 航空交通環境の整備

第3編 航空交通

第2章 航空交通安全施策の現況

第1節 航空交通環境の整備

1 航空保安システムの整備と提供サービスの充実

(1)次世代航空保安システム
航空衛星システム
洋上空域における航空交通の安全性、効率性及び航空交通容量の拡大を図るため、衛星を利用した新たな航空通信・航法・監視システムの整備を推進している。平成18年7月6日の運輸多目的衛星(MTSAT)新1号機(MTSAT-1R)運用開始に併せ、洋上空域の管制間隔短縮を実施した。
また、航空交通の需要増に対応し運航効率の向上等を図るため航空交通管理センターにおいて航空交通管理機能の拡充を進めた。
次期管制システム
羽田再拡張等の空港整備に伴う交通量の増大に対応し、管制処理能力の向上を図るため、次期管制卓・次期管制情報処理システム・次期レーダー情報処理システムの整備を進めた。
併せて過密空域における監視機能を強化する改良型2次レーダー(SSRモードS)の整備を推進しており、八丈島ORSR(東京都)等2か所で整備を進めた。
航空交通管理(ATM)システム
航空交通の安全と効率性を向上させるため、平成18年2月16日に空域管理(ASM)システム、航空交通量管理(ATFM)システム及び洋上管制システムから構成される航空交通管理(ATM)システムを航空交通管理センターに整備した。また、ATMシステムによる航空会社への情報提供や、主要管制機関における航空交通管理調整席の配置を行うなどにより協調的意思決定(CDM)の導入を図った。
(2)現行航空保安システム
 平成19年1月末現在の管制施設、保安施設及び通信施設の状況は、次のとおりである(第3-2表)。
管制施設の整備
(ア)
航空路監視レーダー
航空交通の安全性の向上と空域の有効活用を図るため、航空路上の航空機を常時監視することができる航空路監視レーダー(ARSR/ORSR)施設網を整備し、平成18年度末までに釧路等20か所においてその運用を行っている。これにより、我が国の高度1万5,000フィート(約4,500メートル)以上の主要航空路を常時レーダー監視できるようになり、安全かつ円滑な航空交通の確保に寄与している。18年度は加世田ARSR(鹿児島県)において性能向上を行った(第3-1図)。
(イ)
空港監視レーダー
空港周辺を飛行する航空機を常時監視することができる空港監視レーダー(ASR)の整備を推進しており、東京国際空港等4か所の性能向上を行った。
(ウ)
管制情報処置システム
航空交通の安全性と管制処理能力の向上を図るため、飛行情報管理システム(FDMS)、航空路監視レーダー情報処理システム(RDP)及びターミナルレーダー情報処理システム(ARTS)の整備を推進しているが、FDMS、RDP及びARTSについて計算機等の性能向上を行った。
(エ)
遠隔対空通信施設
航空交通管制部の管制官が管轄区域内を飛行する航空機と直接交信し、管制承認、管制指示の伝達等を迅速に行うための遠隔対空通信施設(RCAG)については、上品山(宮城県)等8か所において性能向上を行った。
保安施設の整備
(ア)
方位・距離情報提供施設
航空機に高精度の方位及び距離情報を提供する超短波全方向式無線標識施設/距離測定装置(VOR/DME)等については、航空交通量の増大に対応するため、御宿(千葉県)等6か所の性能向上を行った。
また、航空機に方位情報を提供する無指向性無線標識(NDB)については、VOR/DMEの性能向上等により廃止が可能となった函館(北海道)等7か所を撤去した。
(イ)
計器着陸装置
航空機に滑走路への適正な進入方向と降下経路を指示する計器着陸装置(ILS)については、隠岐空港等2か所において新設整備、庄内空港において性能向上を行った。
(ウ)
航空灯火
航空機の離着陸時における安全性の向上と就航率の向上を図るための進入灯、滑走路灯等の航空灯火については、東京国際空港等38か所において精密進入用灯火、奥尻空港等9か所において夜間着陸用灯火等の新設整備及び改良を行った。
通信施設の整備
航空機の運航に必要な多種多様の情報を伝達・処理するための航空交通情報システムについては、国内航空交通情報処理中継システム(DTAX)等の性能向上を行った。
(3)航空交通サービスの充実
RNAV運航環境の整備
運航効率の向上、空域容量の拡大のため、平成18年度は、新たにRNAVルート10経路を設定し、計60経路に拡大した。また、空港周辺におけるRNAV経路は、4経路を運用中である。
航空情報(AIS)センターの設置
今後主流となるRNAVは、機上で衛星測位や電子演算処理が行われ飛行することから、これらの航空技術等に適切に対応し、かつ国際的な品質基準に適合した航空情報の電子化を進めるとともに、これら情報の品質管理体制、情報提供体制の強化を図るため、AISセンターを平成19年度に設置することとし、必要な整備を進めている。
小型航空機の安全対策
管制官が配置されていない新島空港や徳之島空港等のITVカメラより得られる情報を基に、飛行援助センターより当該空港を利用する小型航空機等に対し、滑走路状況、障害物、地上の航空機の動静等の情報提供を開始した。また、ヘリコプターについては、悪天候下における消防防災活動を円滑に実施することを目的としてIFR飛行の可能性を検討するため、福島空港-新潟空港間で低高度の実証飛行を実施した。
さらに、海上部及び山間部における送電線への接触事故等を未然に防止するため、特定された地区の航空障害物件への航空障害標識の適切な設置を促すとともに運航者に対して物件情報の提供を実施している。
飛行検査の充実
航空交通の安全を確保するための航空保安施設等が所定の機能を保持しているかについて、飛行検査用航空機により検査を行っており、平成18年度は検査対象施設823局について飛行検査を行った。
第3-2表 管制施設、保安施設及び通信施設の整備状況
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第3-1図 航空路監視レーダー配置及び覆域図

2 空域の整備等

(1)空域の容量拡大
洋上空域
太平洋上の混雑空域の一部において、MTSATを活用することにより管制間隔の短縮を図り、上空の受入容量を拡大することにより、安全かつ効率的な運航環境を拡大した。
国内航空路
航空機の効率的運航を促進するため、航空路再編(スカイハイウェイ計画)実施計画に従ってRNAVルートを10経路新設した。
空港周辺空域
羽田空港の再拡張事業等による交通量の増加により、関東の上空空域の更なる交通混雑が見込まれることから、RNAV及び新システム等の導入による関東空域の再編を行うための計画的検討を実施した。
(2)空域の有効活用
 米軍、自衛隊との連携を強化し、自衛隊訓練試験空域、米軍空域を訓練等に使用していない場合に民間航空機が飛行するための調整を開始し、訓練空域を通過する航空路を設定するとともに、管制官の指示に基づき訓練空域等を民間航空機が飛行することが可能となった。
 航空会社に交通状況を共有するための専用端末を設置し、航空機が混雑空域を迂回する等、航空機の遅延削減のための調整を実施した。

3 空港の整備

 成田国際空港については、増大する国際航空需要に対応するため、北伸による平行滑走路の2,500メートル化の整備に着手するとともに、旅客ターミナルビルの改修等空港施設の能力増強を行った。
 東京国際空港の沖合展開事業については、第2旅客ターミナル南側部のエプロン整備等を実施した。
 また、同空港に新たに4本目の滑走路等を整備する再拡張事業について、平成19年3月30日に本格着工するとともに、PFI手法を活用した国際線地区整備事業に係る事業者選定手続及び事業契約を実施し、各事業者が実施設計を行っている。
 また、既存施設の空港能力、利便性、安全性を図る機能向上事業について、高速脱出誘導路等の整備を行った。
 関西国際空港の二期事業については、施設整備を2本目の滑走路の供用に必要不可欠なものに限定して行うこととし、平成18年度は、17年度に引き続き限定供用に必要な施設整備を行った。
 一般空港等については、滑走路の延長等として、継続事業7空港の整備を行ったほか、各空港において、空港機能を保持するための整備等を行った。
 また、航空輸送サービスの質の向上を図り、国際競争力の強化、観光立国の実現等に資するため、「航空サービス高度化推進事業」を実施し、就航率の向上等既存空港の機能の高度化や空域・航空路の抜本的な再編等運航効率の向上を推進するとともに、重点戦略の展開、物流機能の高度化、ユニバーサルデザインの推進、空港を核とした観光交流の促進に取り組んだ。

4 空港・航空保安施設の災害対策の強化

 東京国際空港の誘導路の一部を耐震化したほか、大規模地震発生時に求められる、円滑な緊急救命活動や緊急物資の輸送、航空ネットワークの維持、具体的な耐震対策等について「地震に強い空港のあり方検討委員会」を開催し検討した。また、安全な空港運用への活用のため、一部の空港に多機能型地震計の導入を行った。

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