平成19年度交通安全施策に関する計画
第1部 陸上交通の安全についての施策
第1章 道路交通の安全についての施策
第1節 道路交通環境の整備

第1部 陸上交通の安全についての施策

第1章 道路交通の安全についての施策

第1節 道路交通環境の整備

1 人優先の安全・安心な歩行空間の整備

 地域の協力を得ながら、通学路、生活道路、市街地の幹線道路等において、歩道を積極的に整備するなど、「人」の視点に立った交通安全対策を推進する。

(1)通学路等の歩道整備等の推進
 小学校、幼稚園、保育所及び児童館等に通う児童や幼児の通行の安全を確保するため、通学路等の歩道整備等を積極的に推進する。
 このほか、押ボタン式信号機、歩行者用灯器等の整備、立体横断施設の整備、横断歩道等の拡充により、通学路、通園路の整備を図る。
(2)生活道路における交通安全対策の推進
 死傷事故発生割合が高い住居系地区又は商業系地区で、その外縁を幹線道路が構成する「あんしん歩行エリア」について、都道府県公安委員会及び道路管理者が連携して、歩道整備を始めとした面的かつ総合的な事故抑止対策を実施する。
 都道府県公安委員会においては、交通規制、交通管制及び交通指導取締りの融合に配意した施策を推進する。具体的には、エリア内の生活道路を中心に、信号灯器のLED化、道路標識・道路標示の高輝度化、路側帯の設置・拡幅等の安全対策を、また、外周幹線道路を中心に信号機の高度化、光ビーコン、交通情報板等によるリアルタイム(即時)の交通情報提供等の交通流円滑化対策を実施するほか、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平18法91。以下「バリアフリー新法」という。)の重点整備地区内の主要な生活関連経路を構成する道路を中心に、音響信号機、高齢者等感応信号機、歩行者と車両の通行を時間的に分離して歩行者と自動車との事故を防止する歩車分離信号機等のバリアフリー対応型信号機の整備等を推進する。
 道路管理者においては、歩道の整備、歩行空間のバリアフリー化等により、安心して移動できる歩行空間ネットワークを整備する経路対策、ハンプ、クランク等車両速度を抑制する道路構造等により、歩行者や自転車の通行を優先するゾーンを形成するゾーン対策、外周幹線道路の通行を円滑化し、エリア内への通過車両を抑制するため、交差点の改良等の外周道路対策を推進する。
 また、「あんしん歩行エリア」以外の生活道路においても、歩道を積極的に整備する。このほか、「生活道路事故抑止対策マニュアル」を活用するなどして都道府県公安委員会と道路管理者が連携し、自動車の速度の抑制、道路の形状や交差点の存在の運転者への明示、歩車それぞれの通行区分の明示等を進め、歩車が共存する安全で安心な道路空間を創出するための取組を推進するなど、交通事故抑止のための施策を実施する。
※光ビーコン
通過車両を感知して交通量等を測定するとともにカーナビゲーション装置等と交通管制センターとの情報のやり取りをする路上設置型の赤外線通信装置。
※バリアフリー
高齢者や障害者等が社会生活をしていく上で障壁となっているもの(段差等)がない状態。
※ハンプ
車両の低速走行等を促すための道路に設ける盛り上がり(凸部)のこと。
※生活道路事故抑止対策マニュアル
生活道路における交通事故抑止対策を効果的に推進することができるようにするため、その手順や道路交通環境の整備手法等を体系的にまとめたもの。
(3)バリアフリー化を始めとする歩行空間等の整備
歩行者及び自転車利用者の安全で快適な通行を確保するため、歩行者等の交通事故が発生する危険性の高い区間等について、改築事業等による整備と併せて歩道及び自転車道等の整備を引き続き重点的に実施する。その際、快適な通行空間を十分確保した幅の広い歩道の整備に努めるとともに、既存の道路に歩道等の設置が困難な場合においては、その歩道等の代替として既存の道路と並行した歩行者専用道路、自転車歩行者専用道路等の整備を推進する。
また、通過車両の進入を抑え、歩行者等の安全確保と生活環境の改善を図るため、コミュニティ道路、歩車共存道路等の整備を推進するとともに、道路標識の高輝度化・大型化・可変化・自発光化、標示板の共架、設置場所の統合・改善、道路標示の高輝度化等(以下「道路標識の高輝度化等」という。)を行い、見やすく分かりやすい道路標識・道路標示とするなど視認性の向上を図る。
※コミュニティ道路
歩車分離を図るとともに自動車の走行速度を低減させる道路構造を採用することで、安全で快適な歩行空間の形成を図った道路。車道をジグザグにする「クランク」や車道の一部を盛り上げる「ハンプ」等を整備する。
※歩車共存道路
歩道等の設置が困難な場所において、ハンプや狭さく等を組み合わせることにより車の速度を抑制し、歩行者等の安全な通行を確保する道路。
高齢者、障害者等の自立した日常生活及び社会生活を確保するため、ユニバーサルデザイン(誰にでも使いやすい設計)の考え方に基づき、駅、公共施設、福祉施設、病院等の周辺を中心に平坦性が確保された幅の広い歩道を積極的に整備する。
このほか、バリアフリー対応型信号機、経過時間表示装置、昇降装置付立体横断施設、歩行者用休憩施設、自転車駐車場、障害者用の駐車ます等を有する自動車駐車場等を整備するとともに、改築事業等と併せた無電柱化を推進する。併せて、高齢者、障害者等の通行の安全と円滑を図るとともに、高齢運転者の増加に対応するため、信号灯器のLED化、道路標識の高輝度化等を推進する。
また、駅前等の交通結節点において、エレベーター等の設置、スロープ化や建築物との直結化が図られた立体横断施設、交通広場等の整備を推進し、歩きたくなるような安全で快適な歩行空間を積極的に確保する。
特に、バリアフリー新法の重点整備地区内の主要な生活関連経路を構成する道路においては、公共交通機関等のバリアフリー化と連携しつつ、誰もが歩きやすい幅の広い歩道、道路横断時の安全を確保する機能を付加したバリアフリー対応型信号機等の整備が面的かつネットワークとして行われるよう配慮する。
また、交差点等に設置する通信装置と高齢者、障害者等が所持する携帯端末等との双方向通信により、安全な通行に必要な情報の提供や信号機の青時間の延長を行う歩行者等支援情報通信システム(PICS)の整備を推進し、高齢者、障害者等の安全な移動を支援する。
さらに、バリアフリー歩行空間が有効に利用されるよう、高齢者を始めとする歩行者等に対して、視覚障害者誘導用ブロック、歩行者用の案内標識、バリアフリーマップ等により、公共施設の位置や施設までのバリアフリー経路等を適切に案内する。
※スロープ
傾斜、勾配などのこと。
放置車両に係る使用者責任の拡充と確認事務の民間委託による執行力の確保を主な内容とする新たな違法駐車対策法制の下で、横断歩道、バス停留所付近の違法駐車等の悪質性、危険性、迷惑性の高い駐車違反に対する取締りを強化する。
また、高齢者、障害者等の円滑な移動を阻害する要因となっている歩道や視覚障害者誘導用ブロック上等の自動二輪車等の違法駐車についても、放置自転車等の撤去を行う市区町村と連携を図りつつ積極的な取締りを推進する。
冬期の安全で快適な歩行空間を確保するため、中心市街地や公共施設周辺等における除雪の充実や消融雪施設の整備等の冬期バリアフリー対策を推進する。

2 道路ネットワークの整備と規格の高い道路の利用促進

 基本的な交通の安全を確保するため、高規格幹線道路から居住地域内道路に至るネットワークによって適切に機能が分担されるよう道路の体系的整備を推進するとともに、他の交通機関との連携強化を図る道路整備を推進する。また、一般道路に比べて安全性が高い高規格幹線道路の利用促進を図る。

(1)適切に機能分担された道路網の整備
自動車、自転車、歩行者等の異種交通を分離し、交通流の純化を促進するため、高規格幹線道路から居住地域内道路に至るネットワークを体系的に整備するとともに、歩道や自転車道等の整備を積極的に推進する。
一般道路に比較して死傷事故率が低く安全性の高い高規格幹線道路、地域高規格道路等の整備を推進し、より多くの交通量を分担させることによって道路ネットワーク全体の安全性を向上させる。
通過交通の排除と交通の効果的な分散により、都市部における道路の著しい混雑、交通事故の多発等の防止を図るため、バイパス及び環状道路等の整備を推進する。
幹線道路で囲まれた居住地域内や歩行者等の通行の多い商業地域内等においては、通過交通をできる限り幹線道路に転換させるなど道路機能の分化により、生活環境を向上させるため、補助的な幹線道路、区画道路、歩行者専用道路等の系統的な整備、区画道路におけるコミュニティ道路や歩車共存道路等の交通安全施設の整備等を総合的に実施する。
国民のニーズに応じた効率的な輸送体系を確立し、道路混雑の解消等円滑な交通流が確保された良好な交通環境を形成するため、道路交通、鉄道、海運、航空等複数の交通機関の連携を図るマルチモーダル施策を推進し、鉄道駅等の交通結節点、空港、港湾の交通拠点へのアクセス道路の整備等を実施する。
(2)改築による道路交通環境の整備
 交通事故の多発等を防止し、安全かつ円滑・快適な交通を確保するため、次の方針により道路の改築事業を強力に推進する。
歩行者及び自転車利用者の安全と生活環境の改善を図るため、歩道等を設置するための既存道路の拡幅、小規模バイパスの建設と併せた道路空間の再配分、自転車の通行を歩行者や車両と分離するための自転車道の設置などの道路交通の安全に寄与する道路の改築事業を積極的に推進する。
交差点及びその付近における交通事故の防止と交通渋滞の解消を図るため、交差点のコンパクト化、立体交差化等を推進する。
一般道路の新設・改築に当たっては、交通安全施設についても併せて整備することとし、道路標識、中央帯、車両停車帯、道路照明、防護さく等の整備を図る。また、歩行者の安全を確保するため必要がある場合には、スロープや昇降装置の付いた立体横断施設の整備を図る。
道路の機能と沿道の土地利用を含めた道路の利用実態との調和を図ることが交通の安全の確保に資することから、交通流の実態を踏まえつつ、沿道からのアクセスを考慮した副道等の整備、植樹帯の設置、路上駐停車対策等の推進を図る。
商業系地区等における歩行者及び自転車利用者の安全で快適な通行空間を確保するため、これらの者の交通量や通行の状況に即して、幅の広い歩道、自転車道、コミュニティ道路、歩車共存道路、車両の通行を禁止又は制限したショッピングモール等の整備を推進する。
交通混雑が著しい都心地区、鉄道駅周辺地区等において、人と車の交通を体系的に分離するとともに、歩行者空間の拡大を図るため、地区周辺の幹線道路、ペデストリアンデッキ、交通広場等の総合的な整備を推進する。
※ペデストリアンデッキ
歩行者を保護するために車道と分離し立体的に設置した歩行者路。
歴史的街並みや史跡等卓越した歴史的環境の残る地区において、歴史的地区をう回する幹線道路の整備や、地区内の観光交通と生活交通の分離等の体系的な整備を推進することにより、歩行者や自転車利用者等の安全の確保を図る。
(3)高規格幹線道路等の利用促進
 一般道路に比べて安全性が高い高規格幹線道路等へ交通の転換を促進し、死傷事故の減少を図る。そのため、高規格幹線道路等のネットワークの整備の推進、ノンストップ自動料金支払システム(ETC)を活用したサービスの拡充、インターチェンジの増設等を実施し、高規格幹線道路等をより利用しやすい環境の整備を推進する。

3 交通安全施設等整備事業の推進

 平成19年度は、社会資本整備重点計画に基づき、都道府県公安委員会及び道路管理者が連携し、事故実態の調査・分析を行いつつ、次の方針により計画的かつ重点的に歩道整備を始めとした交通安全施設等整備事業を推進することにより、交通環境を改善し、交通事故の防止と交通の円滑化を図る。
 特定交通安全施設等整備事業としては、公安委員会所管分約307億円、道路管理者所管分約3,193億円を計上し事業を推進する。
 さらに、地方単独事業についても、交通安全対策特別交付金を活用するなどして交通安全対策等の一層の充実を図る。
 なお、事業の実施に当たっては、(財)交通事故総合分析センターの活用を図りながら、交通事故の科学的な調査・分析を重点的に実施し、効果的な交通安全対策の実施に努める。

(1)歩行者等の安全通行の確保
 死傷事故発生割合の高い地区を「あんしん歩行エリア」として指定の上、歩道整備を始めとした面的かつ総合的な事故抑止対策を実施し、エリア内の死傷事故の抑止を図る。また、バリアフリー新法の重点整備地区内の主要な生活関連経路を構成する道路において、バリアフリー対応型信号機の整備や歩道の段差、勾配等の改善等歩行空間のバリアフリー化を推進する。
(2)幹線道路等における交通の安全と円滑の確保
 死傷事故発生率が高く、又は死傷事故が多発している交差点・単路を事故危険箇所として選定の上、歩道を含めた交通安全施設等を集中的に整備し、対策実施箇所の死傷事故の抑止を図る。また、大都市圏等の特に違法駐車が著しい幹線道路において、カラー舗装による駐停車禁止区域の明示、違法駐車抑止システム等の整備等によるハード・ソフト一体となった駐車対策を推進する。
(3)IT化の推進による安全で快適な道路交通環境の実現
 信号機の高度化等により、死傷事故の抑止、対策実施箇所における通過時間の短縮等を図る。また、光ビーコンの整備拡充、交通管制センターの高度化等の新交通管理システム(UTMS)の推進を図るとともに、情報収集・提供環境の拡充等により、道路交通情報提供の充実等を推進する。

4 効果的な交通規制の推進

 道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、道路網全体の中でそれぞれの道路の社会的機能、道路の構造、交通安全施設の整備状況、交通流・量の状況等地域の実態等に応じ、既存の交通規制を見直すなど、規制内容をより合理的なものにするよう努め、効果的な交通規制を行う。

(1)地域の特性に応じた交通規制
 主として通過交通の用に供される道路については、駐停車禁止、転回禁止、指定方向外進行禁止、進行方向別通行区分等交通流を整序化するための交通規制を、また、主として地域交通の用に供される道路については、一方通行、指定方向外進行禁止等を組み合わせ、通過交通を抑制するなど、良好な生活環境を維持するための交通規制を、さらに、主として歩行者及び自転車利用者の用に供される道路については、歩行者用道路、車両通行止め、路側帯の設置・拡幅等歩行者及び自転車利用者の安全を確保するための交通規制を強化する。
 特に、生活の場である住居系地区等においては、歩行者等の安全の確保に重点を置いた交通規制を実施し、「あんしん歩行エリア」の形成を図る。
(2)安全で機能的な都市交通確保のための交通規制
 安全で機能的な都市交通を確保するため、計画的に都市部における交通規制を推進し、交通流・量の適切な配分・誘導を図る。また、路線バス、路面電車等大量公共輸送機関の安全・優先通行を確保するための交通規制を積極的に推進する。
(3)幹線道路における交通規制
 幹線道路については、交通の安全と円滑化を図るため、道路の構造、交通安全施設の整備状況、交通の状況等を勘案しつつ、速度規制及び追越しのための右側部分はみ出し通行禁止規制等について見直しを行い、その適正化を図る。
(4)高速自動車国道等における交通規制
 新規供用の高速自動車国道等については、道路構造、交通安全施設の整備状況等を勘案し、安全で円滑な交通を確保するため、適正な交通規制を実施するとともに、既供用の高速自動車国道等については、交通流の変動、道路構造の改良状況、安全施設の整備状況、交通事故の発生状況等を総合的に勘案して、交通実態に即した合理的な交通規制となるように必要な見直しを推進する。
 特に、交通事故多発区間においては、大型貨物自動車等の通行区分規制、追越しのための右側部分はみ出し通行禁止規制、速度規制等の必要な安全対策を推進する。
 また、交通事故、異常気象等の交通障害発生時においては、その状況に応じ、臨時交通規制を迅速かつ的確に実施し、二次障害の防止を図る。

5 地域住民等と一体となった道路交通環境の整備

 道路交通の安全は道路利用者の生活、経済・社会活動に密接に関係するため、対策の立案に当たって地域住民や道路利用者の意見を十分反映させる必要がある。
 また、地域によって道路環境や道路利用の実態及び交通の状況が異なることから、地域の実情を踏まえた道路交通環境の整備を行う。

(1)道路交通環境整備への住民参加の促進
 安全な道路交通環境の整備に当たっては、道路を利用する人の視点を生かすことが重要であることから、地域住民や道路利用者の主体的な参加の下に交通安全施設等の点検を行う交通安全総点検を積極的に推進するとともに、道路利用者等が日常感じている意見について、「標識BOX」、「信号機BOX」、「道の相談室」等を活用して取り入れ、道路交通環境の整備に反映する。
 また、交通の安全は、住民の安全意識により支えられることから、安全で良好なコミュニティ(地域社会)の形成を図るために、交通安全対策に関して住民が計画段階から実施全般にわたり積極的に参加できるような仕組みをつくり、行政と市民の連携による交通安全対策を推進する。
 さらに、安全な道路交通環境の整備に係る住民の理解と協力を得るため、事業の進ちょく状況、効果等について積極的に公表する。
※標識BOX
はがき、インターネット等を利用して、運転者等から道路標識等に関する意見を受け付けるもの。
※信号機BOX
はがき、インターネット等を利用して、運転者等から信号機に関する意見を受け付けるもの。
(2)総合的・集中的な対策の実施
 外周を幹線道路に囲まれているなど、まとまりのある住区や中心市街地、商店街の街区などにおいて、地域住民の主体的参加の下、地域の課題について創意工夫や合意形成を図りながら、歩道の整備、一般車両の地区内への流入抑制、無電柱化や緑化等の総合的な取組を実施し、人優先の安全・安心な賑わいのあるまちやみちを実現する「くらしのみちゾーン」の形成を促進するため、意欲のある市町村や自ら実践しようとする住民団体等に対し、合意形成支援等のソフト面を含めた支援を行う。中心市街地等においては、一般車両の利用を制限し、歩行者・自転車とバスや路面電車等の公共交通機関の利便性を高め、まちの賑わいを創出する「トランジットモール」についても導入に向けた社会実験等の取組に対し支援を行う。
 また、歩行者優先の道路、歩行空間のバリアフリー化、無電柱化、自転車利用環境の整備などの施策を展開していくため、人にやさしい街・みちづくりのためのモデル地区を構築する。

6 効果的で重点的な事故対策の推進

 特に交通の安全を確保する必要がある道路について、社会資本整備重点計画に基づき、交通安全施設等を重点的に整備することとし、安全かつ円滑・快適な交通環境の確立を図る。そのため、交通事故対策の重点化を図るとともに、科学的分析に基づき、歩道整備等の事故対策の立案を推進する。

(1)交通事故対策の重点実施
 幹線道路における交通事故が特定の区間に集中していることから、より効果的・効率的に交通事故を削減するため、「優先度明示方式」により、死傷事故率等や歩行者事故等特定の事故の発生割合の高い区間を抽出し、歩道整備等の交通事故対策を重点的に実施する。
※優先度明示方式
効果的・効率的に事業を進めるため、対策の必要性を示す客観的データを課題の高い順に並べて優先的に対策を実施すべき箇所を明示する方式。
(2)事故危険箇所対策の推進
 死傷事故率が高く、又は死傷事故が多発している交差点・単路を指定した「事故危険箇所」について、都道府県公安委員会及び道路管理者が連携して歩道整備を始めとした集中的な事故抑止対策を推進する。
 事故危険箇所においては、信号機の新設・高度化、歩車分離式信号の運用、道路標識の高輝度化等、歩道等の整備、交差点改良、視距の改良、付加車線等の整備、中央帯の設置、バス路線等における停車帯の設置及び防護さく、区画線等の整備、道路照明・視線誘導標等の設置等の対策を推進する。
(3)科学的分析に基づく事故対策の推進
 事故危険箇所等において、科学的分析に基づく事故対策を推進するため、「交通事故対策・評価マニュアル」及び「交通事故対策事例集」を個別の事故対策の立案・実施及び評価に活用していくとともに、実施された事故対策の情報を蓄積し、「交通事故対策・評価マニュアル」及び「交通事故対策事例集」にフィードバックし、その充実を図る。
※交通事故対策・評価マニュアル
事故多発地点緊急対策事業等これまでの事故対策の結果を基に、対策の立案から評価までの手順や留意点等を体系的にまとめたもの。
※交通事故対策事例集
事故多発地点のうち557か所における事故要因分析結果、事故対策事例を収集し、道路特性や事故類型ごとに、事故要因並びにそれに対応した事故対策について分析し、その結果を事例集としてまとめたもの。
(4)連絡会議等の活用
 「道路交通環境安全推進連絡会議」やその下で開催される「アドバイザー会議」を活用し、学識経験者のアドバイスを受けつつ施策の企画、評価、進行管理等に関して協議を行い、的確かつ着実に安全な道路交通環境の実現を図る。
(5)交通安全施設等の整備
道路の構造及び交通の実態を勘案して、交通事故が発生する危険性が高い場所等に信号機を設置する。既存の信号機については、交通状況の変化に合理的に対応できるように、集中制御化、系統化、速度感応化、多現示化、右折感応化等の高度化を推進する。特に、幹線道路で夜間等横断交通が極めて少なくなる場所については、信号機の閑散時半感応化、閑散時押ボタン化を推進する。
道路の構造、交通の状況等に応じた交通の安全を確保するために、道路標識の高輝度化等の交通安全施設等の整備を推進するほか、交通事故発生地点を容易に把握し、速やかな事故処理及び的確な事故調査が行えるようにするとともに、自動車の位置や目的地までの距離を容易に確認できるようにするためのキロポスト(地点標)の整備を推進する。また、見通しの悪いカーブで、対向車が接近してくることを知らせる対向車接近システムの整備を推進するとともに、幹線道路の単路における速度超過による事故を防止するための高速走行抑止システムを整備する。さらに、依然として多発している夜間死亡事故に対処するため、道路照明・視線誘導標等の設置による夜間事故対策を推進する。
(6)地域に応じた安全の確保
 交通の安全は、地域に根ざした課題であることから、沿道の地域の人々のニーズや道路の利用実態、交通流の実態等を把握し、その特性に応じた道路交通環境の整備を行う。
 また、積雪寒冷特別地域においては、冬期の安全な道路交通を確保するため、冬期積雪・凍結路面対策として適時適切な除雪や凍結防止剤散布の実施、交差点等における消融雪施設等の整備、流雪溝、チェーン着脱場等の整備を推進する。
 さらに、安全な道路交通の確保に資するため、気象、路面状況等を収集し、道路利用者に提供する道路情報提供装置等の整備を推進する。
(7)交通事故多発地域における重点的交通規制
 交通事故の多発する地域、路線等においては、最高速度の指定、追越しのための右側部分はみ出し通行禁止等の効果的な交通規制を重点的に実施する。
(8)重大事故の再発防止
 社会的に大きな影響を与える重大事故が発生した際には、速やかに当該箇所の道路交通環境等事故発生の要因について調査するとともに、発生要因に即した所要の対策を早急に講ずることにより、当該事故と同様な事故の再発防止を図る。

7 高速自動車国道等における事故防止対策の推進

 高速自動車国道等においては、緊急に対処すべき交通安全対策を総合的に実施する観点から、交通安全施設等の整備を計画的に進めるとともに、渋滞区間における道路の拡幅等の改築事業、適切な道路の維持管理、道路交通情報の提供等を積極的に推進し、安全水準の維持、向上を図る。

(1)事故削減に向けた総合的施策の集中的実施
 安全で円滑な自動車交通を確保するため、対策を実施すべき箇所について、雨天、夜間等の事故誘発要因の詳細な分析を行い、これに基づき中央分離帯強化型防護さく、高機能舗装、高視認性区画線の整備等を重点的に実施するとともに、道路構造上往復に分離されていない二車線の区間(暫定供用区間)については、対向車線へのはみ出しによる重大事故を防止するため高視認性ポストコーン、高視認性区画線の設置による簡易分離施設の視認性の向上、凹凸型路面標示の設置、簡易分離施設の高度化、中央分離帯の設置等分離対策の強化を図る。
 また、事故発生後の救助・救急活動を支援する緊急開口部の整備等も併せて実施するとともに、高速自動車国道におけるヘリコプターによる救助・救急活動を支援する。
(2)安全で快適な交通環境づくり
 過労運転やイライラ運転を防止し、安全で快適な自動車走行に資するより良い走行環境の確保を図るため、本線拡幅やインターチェンジの改良、事故や故障による停車車両の早期撤去等による渋滞対策、高速バス利用の利便性の向上、休憩施設の混雑解消等を推進する。あわせて、多様化する道路利用者のニーズにこたえるため、ファックス、インターネット等広く普及している情報通信を活用して即時に道路交通情報提供を行う利用者サービスの向上等を推進する。
(3)高度情報技術を活用したシステムの構築
 道路利用者の多様なニーズにこたえ、道路利用者へ適切な道路交通情報等を提供する道路交通情報通信システム(VICS)等の整備・拡充を図るとともに、渋滞の解消及び利用者サービスの向上を図るため、高速自動車国道等の有料道路の料金所で一旦停止することなく、自動的に料金の支払いを可能にするETC等の高度道路交通システム(ITS)の整備を推進する。

8 高度道路交通システムの活用

 最先端の情報通信技術(IT)等を用いて、人と道路と車とを一体のシステムとして構築し、安全性、輸送効率及び快適性の向上を実現するとともに、渋滞の軽減等の交通の円滑化を通じて環境保全に寄与することを目的としたITSを引き続き推進する。そのため、ITS全体構想に基づき、産・官・学が連携を図りながら、研究開発、フィールドテスト、インフラ(社会基盤)の整備、普及及び標準化に関する検討等の一層の推進を図るとともに、ITS世界会議等における国際情報交換、国際標準化等の国際協力を積極的に進める。

※フィールドテスト

実地試験、屋外試験等のこと。

(1)道路交通情報通信システムの整備
 安全で円滑な道路交通を確保するため、リアルタイム(即時)な渋滞情報、所要時間、規制情報等の道路交通情報を提供するVICSの整備・拡充を推進するとともに、情報提供の充実及び対応車載機の普及を図る。
 また、より高精度な道路交通情報の収集・提供のため、光ビーコン、5.8GHzDSRC等のインフラの整備を推進するとともに、インフラからの情報を補完するものとして、VICS車載機を活用した自動車からの情報(プローブ情報)の収集等について産・官・学の連携の下、実現を図る。
(2)新交通管理システムの推進
 高度化された交通管制センターを中心に、個々の車両等との双方向通信が可能な光ビーコンを媒体として、交通流・量を積極的かつ総合的に管理することにより、高度な交通情報提供、車両の運行管理、公共車両の優先通行、交通公害の減少、安全運転の支援、歩行者の安全確保等を図り、交通の安全及び快適性を確保しようとするUTMSの構想に基づき、システムの充実、キーインフラである光ビーコンの整備等の施策の推進を図る。
(3)交通事故防止のための運転支援システムの推進
 ITSの高度化により交通の安全を高めるため、自動車単体では対応できない事故への対策として、IT新改革戦略に基づき、インフラ協調による安全運転支援システムの実現に向けて、産・官・学が連携し研究開発等を行う。
 また、交通管制システムのインフラ等を利用して、運転者に対し、周辺の交通状況等をカーナビゲーション装置を通じて視覚・聴覚情報により提供することで、危険要因に対する注意を促し、ゆとりを持った運転ができる環境を創り出すことにより、交通事故の防止等を図る安全運転支援システム(DSSS)のモデル事業を引き続き実施する。
 さらに、ITを活用し、道路と車両が連携し、ドライバーへ適切に情報を提供することによる注意喚起等により、交通事故を低減し、安全で快適な自動車の走行を支援する走行支援道路システム(AHS)については、狭域通信(DSRC)システム等を利用した障害物情報提供システム、前方情報提供システム、合流支援システム等の事故削減に効果的なシステム構築のための検証を首都高速道路等で行う。
 加えて、交通事故の低減を図るべく、先進安全自動車(ASV)推進計画において、車両が相互に自車の速度、位置等の情報を交換して利用し、安全運転を支援する技術(車車間通信)等の実用化に取り組む。
(4)スマートウェイの推進
 ETCで導入されているDSRCシステムを利用したあらゆるゲートのスムーズな通過、場所やニーズに応じた地域ガイド、タイムリーな走行支援情報の提供等多様なITSサービスについて、携帯電話、光通信等多様な通信メディアとの連携にも配慮しつつ実現を図る。
(5)道路運送事業に係る高度情報化の推進
 環境に配慮した安全で円滑な自動車の運行を実現するため、道路運送事業においてITS技術を活用し、公共交通機関の利用促進や物流の効率化を進める。

9 円滑・快適で安全な道路交通環境の整備

 安全な道路交通環境の実現に当たっては、道路を円滑・快適に利用できることが必要である。このため、交通管制システムの充実・高度化、信号機の高度化等により、交通の円滑化を図るとともに、休憩場所の提供や分かりやすい道路標識等の整備を進めるほか、道路の使用及び占用の適正化等によって、道路交通の円滑化を図る。

(1)円滑・快適で安全な道路交通環境の整備
交通に関する情報の収集、分析及び伝達並びに信号機、道路標識及び道路標示の操作その他道路における交通の規制を広域的かつ総合的に行うため、交通管制エリアの拡大等交通管制システムの充実・高度化を図る。
幹線道路において、交通の変動実態を的確に把握し、予想される変動に対応した信号制御を行うため、系統化、閑散時押ボタン化・半感応化、多現示化、右折感応化等の信号機の高度化を図る。また、交通流の変動にきめ細かに対応した信号制御等を可能とする交通管制システムの推進を図る。
過労運転に伴う事故防止や近年の高齢運転者等の増加に対応して、都市間の一般道路において追越しのための付加車線や「道の駅」などの休憩施設等の整備を積極的に推進する。
分かりやすく使いやすい道路交通環境を整備し、安全で円滑な交通の確保を図るため、交通監視カメラ、各種車両感知器等の整備、道路・交通等に関する情報(異常気象に関する情報や都市間のルート選択に資する情報を含む。)を迅速かつ的確に提供する道路情報提供装置、交通情報板、路側通信設備等の整備、時間別・車種別等の交通規制の実効を図るための視認性・耐久性に優れた大型固定標識及び路側可変標識の整備並びに利用者のニーズに即した系統的で分かりやすい案内標識及び中央線変移システムの整備を推進する。特に、主要な幹線道路の交差点及び交差点付近において、ルート番号等を用いた案内標識の設置を推進するとともに、地図を活用した多言語表記の実施等により、国際化の進展への対応に努める。また、VICSの整備・拡充を積極的に推進する。
(2)道路の使用及び占用の適正化等
道路の使用及び占用の適正化
工作物の設置、工事等のための道路の使用及び占用の許可に当たっては、道路の構造を保全し、安全かつ円滑な道路交通を確保するために適正な運用を行うとともに、許可条件の履行、占用物件等の維持管理の適正化について指導する。また、道路使用状況を正確に把握することにより、道路使用による道路交通への影響を最小限にとどめるため、道路使用許可に係る事務の電子化を進める。
不法占用物件の排除等
道路交通に支障を与える不法占用物件等については、実態把握、強力な指導取締りによりその排除を行い、特に市街地について重点的にその是正を実施する。
さらに、道路上から不法占用物件等を一掃するためには、沿道住民を始め道路利用者の自覚に待つところが大きいことから、不法占用等の防止を図るための啓発活動を沿道住民等に対して積極的に行い、「道路ふれあい月間」等を中心に道路の愛護思想の普及を図る。
なお、道路工事調整等を効果的に行うため、図面を基礎として、デジタル地図を活用し、データ処理を行うコンピュータ・マッピング・システムの段階的な活用の拡大を図る。
道路の掘り返しの規制等
道路の掘り返しを伴う占用工事については、工事時期の平準化及び工事に伴う事故・渋滞を防止するため、施工時期や施工方法を調整する。
さらに、掘り返しを防止する抜本的対策として共同溝等の整備(平成19年度事業費204億円)を推進する。
(3)自転車利用環境の総合的整備
都市構造に応じた都市交通としての自転車の役割と位置付けを明確にしつつ、自転車を歩行者、自動車と並ぶ交通手段の一つとして、安全かつ円滑に利用できる自転車利用空間をネットワークとして整備して自転車と歩行者の安全を確保するなど、総合的な自転車利用環境を整備する必要がある。このため、自転車や歩行者、自動車の交通量に応じて歩行者、自動車とも分離された自転車道等、路肩のカラー舗装化や自転車が走行可能な幅の広い歩道である自転車歩行者道の設置、自転車専用通行帯の交通規制の実施、普通自転車歩道通行可の交通規制の見直し、普通自転車の歩道通行部分の指定等により自転車走行空間を整備する。
自転車等の駐車対策については、その総合的かつ計画的な推進を図ることを目的として、自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律(昭55法87)による施策を総合的に推進する。
このため、自転車等駐車対策協議会の設置、総合計画の策定を促進するとともに、自転車等の駐車需要の多い地域及び今後駐車需要が著しく多くなることが予想される地域を中心に路外・路上の自転車駐車場の整備を推進するため、交通安全施設等整備事業、都市計画街路事業等による自転車等の駐車場整備事業を拡充し推進する。また、大量の自転車等の駐車需要を生じさせる施設について自転車駐車場の設置を義務付ける条例の制定の促進を図るとともに、道路開発資金等の活用による民営の自転車駐車場整備事業の育成を図る。さらに、民間事業者が整備する駐輪施設を地方公共団体とともに国が支援することで、更なる駐輪対策を図る。
さらに、自転車駐車場の整備とあいまって、自転車等利用者の通行の安全を確保するための計画的な交通規制を実施する。
鉄道の駅周辺等における放置自転車等の問題の解決を図るため、自転車等駐車対策協議会の積極的な運営と総合計画の策定の促進を図ること等を通じて、地方公共団体、道路管理者、都道府県警察、鉄道事業者等が適切な協力関係を保持する。また、効率的・総合的な自転車駐車場の整備を推進するとともに、地域の状況に応じ、条例の制定等による駅前広場及び道路に放置されている自転車等の整理・撤去等の推進を図る。
特に、バリアフリー新法に基づき、市町村が定める重点整備地区内における主要な生活関連経路を構成する道路においては、高齢者、障害者等の移動等の円滑化に資するため、自転車の違法駐車に対する取締りの強化、広報啓発活動等の違法駐車を防止する取組及び自転車駐車場の整備を重点的に推進する。
交通の安全を確保し、併せて余暇活動の増大に対応した歴史や自然に親しめる大規模自転車道の整備を推進する。

10 交通需要マネジメントの推進

 依然として厳しい道路交通渋滞を緩和し、道路交通の円滑化を図るため、バイパス・環状道路の整備や交差点の改良等の交通容量の拡大策、交通管制の高度化等に加えて、パークアンドライドの推進、情報提供の充実、相乗りの促進、時差通勤・通学、フレックスタイム制(自由勤務時間制)の導入等により、道路利用の仕方に工夫を求め、輸送効率の向上や交通量の時間的・空間的平準化を図る交通需要マネジメント(TDM)を推進する。併せて、広報・啓発活動を行い、その定着化を図る。

※パークアンドライド

都心部へ乗り入れる自家用自動車による交通混雑を緩和するため、郊外の鉄道駅・バスターミナル等の周辺に駐車場を整備し、自動車を駐車(パーク)させ、鉄道・バス等公共交通機関への乗換え(ライド)を促すシステム。

(1)公共交通機関利用の促進
 道路交通混雑が著しい一部の道路について、バス専用・優先レーンの設定、ハイグレードバス停、バス感応式信号機、公共車両優先システム(PTPS)の整備、パークアンドバスライドやコミュニティバスの導入等バスの利用促進を図るための施策を推進するとともに、これらの施策を関係省庁が連携して総合的に実施するオムニバスタウン構想を推進する。
 また、路面電車、モノレール等の公共交通機関の整備を支援し、鉄道、バス等の公共交通機関への転換による円滑な道路交通の実現を図る。
 さらに、鉄道、バス事業者による運行頻度・運行時間の見直し、乗り継ぎ改善等によるシームレスな公共交通の実現を図ること等により、利用者の利便性の向上を図るとともに、鉄道駅・バス停までのアクセス(交通手段)確保のために、パークアンドライド駐車場、自転車道、駅前広場等の整備を促進し、交通結節機能を強化する。
※ハイグレードバス停
バス停の機能を高度化したもので、バス接近表示器(バスロケーションシステム)や上屋、ベンチ等を整備したもの。
※オムニバスタウン構想
バスが有する社会的意義を最大限に発揮した「バスを中心とするまちづくり」に向けた市町村の取組を促進し、安全で暮らしやすい地域の実現を図ろうとするもの。
※シームレス
「継ぎ目のない」の意味。公共交通分野におけるシームレス化とは、乗り継ぎ等の交通機関の「継ぎ目」の交通ターミナル内の歩行や乗降に際しての「継ぎ目」をハード・ソフト両面にわたって解消することにより、出発地から目的地までの移動を全体として円滑かつ利便性の高いものとすること。
(2)自動車利用の効率化
 乗用車の平均乗車人数の増加及び貨物自動車の積載率の向上等により効率的な自動車利用を推進するため、自動車相乗りの促進、共同配送システムの構築、車両運行管理システム(MOCS)の導入等による物流の効率化等の促進を図る。
(3)交通需要の平準化
 交通需要のピーク時間帯の交通を分散するため、時差通勤・通学及びフレックスタイム制の導入を促進するとともに、道路交通情報の充実を図る。

11 総合的な駐車対策の推進

 道路交通の安全と円滑を図り、都市機能の維持及び増進に寄与するため、交通の状況や地域の特性に応じた総合的な駐車対策を推進する。

(1)秩序ある駐車の推進
道路環境、交通実態、駐車需要等の変化に対応したきめ細かな駐車規制の見直しを引き続き推進するとともに、地域住民等の合意に基づく具体的な要望意見については、積極的な検討を行う。また、物流の必要性に配意するとともに、必要に応じて時間制限駐車区間規制を実施する。
駐車規制からの除外対象となる車両のうち、身体障害者等で歩行が困難な者が使用中の車両に掲出するための標章については、車両を特定して交付する方法から身体障害者等本人に対して交付する方法に改め、福祉タクシー等に乗車する場合にも使用することができるよう見直しを行う。
駐車許可については、申請者の負担軽減の観点から、審査の迅速化及び夜間休日における申請受理窓口の整備等を図る。
違法な駐停車が交通渋滞等交通に著しい迷惑を及ぼす交差点においては、違法駐車抑止システム等の整備を促進し、駐停車等をしようとしている自動車運転者に対して音声で警告を与えることにより、違法な駐停車を抑制して交通の安全と円滑化を図る。
都市部の交通渋滞を緩和するため、特に違法駐車が著しい幹線道路において、きめ細かな駐車規制の実施や駐車対策のための各種システムの整備を進めるほか、違法駐車防止指導員や広報啓発指導員を配置して指導・広報・啓発を行い、悪質性、危険性、迷惑性の高い違法駐車に対する取締りを強化する。
(2)新たな違法駐車対策法制による違法駐車対策の推進
 平成18年6月1日から施行された新たな違法駐車対策法制の下、取締り活動ガイドラインに従って、重点を指向した取締りの推進、駐車監視員による放置車両の確認等に関する事務の適切かつ円滑な運用、放置違反金制度による使用者責任の追及、悪質な運転者の責任追及の徹底等により、地域の駐車秩序の改善を図る。
(3)駐車場等の整備
 路上における無秩序な駐車を抑制し、安全かつ円滑な道路交通を確保するため、駐車規制及び違法駐車の取締りの推進と併せ、次の施策により駐車場の整備と有効利用を推進する。
駐車場整備計画の調査を推進し、自動車交通が混雑する地区等において、駐車場整備地区の指定を促進するとともに、当該地区において計画的、総合的な駐車対策を行うため、駐車場整備計画の策定を推進する。
大規模な建築物に対し駐車場の整備を義務付ける附置義務条例の制定の促進等を行うとともに、各種補助制度、融資制度や税制上の優遇措置等を活用した民間駐車場の整備や、戦略的中心市街地商業等活性化支援事業及び少子高齢化等対応中小商業活性化事業による助成により、商店街等で商店街振興組合等が行う駐車場の整備を促進する。
また、都市機能の維持・増進を図るべき地区及び交通結節点等重点的に駐車場の整備を図るべき地域において、交通安全施設等整備事業や有料融資事業(無利子貸付制度)等を活用した公共駐車場の整備を積極的に推進する。
既存駐車場の有効利用を図るため、駐車場案内システム・駐車誘導システム整備と高度化を推進する。また、郊外部からの過剰な自動車流入を抑止し、都心部での交通の混雑を回避するため、パークアンドライドの普及のための駐車場等の環境整備を推進する。
(4)違法駐車締め出し気運の醸成・高揚
 違法駐車の排除及び自動車の保管場所の確保等に関し、国民への広報・啓発活動を行うとともに、関係機関・団体との密接な連携を図り、地域交通安全活動推進委員の積極的な活用等により、住民の理解と協力を得ながら違法駐車締め出し気運の醸成・高揚を図る。
(5)ハード・ソフト一体となった駐車対策の推進
 特に違法駐車が著しく安全で円滑な道路交通が阻害されている都市内の道路において、交通安全施設としての駐車場、路上駐車施設、荷さばき停車帯、駐車場案内システム、駐車誘導システム、違法駐車抑止システムの整備やカラー舗装による駐停車禁止区域の明示、きめ細かな駐車規制の実施、違法駐車の取締り、積極的な広報・啓発活動等総合的な駐車対策を推進する。

12 災害に備えた道路交通環境の整備

(1)災害に備えた道路の整備
 地震、津波、豪雨・豪雪等の自然災害が発生した場合において、安全で信頼性の高い道路ネットワークを確保する必要がある。
 このため、大規模地震発生時に被災地の救援活動や緊急物資輸送に不可欠な緊急輸送道路等の橋梁の耐震補強を推進する。
 津波に対しては、津波による人的被害を最小化するため、道路利用者への早期情報提供、迅速な避難を行うための避難路の整備及び津波浸水域を回避する高規格幹線道路等の整備を推進する。
 豪雨等の異常気象時においても安全で信頼性の高い道路ネットワークを確保するため、道路の斜面対策や地域の孤立を防ぐ生命線となるバイパス等の整備を推進するとともに、冬期の安全で安心な生活を支え、地域間の交流・連携を強化するため、道路の除雪・防雪・凍雪害防止事業を推進する。
 また、地震等の災害発生時に、有効な「道の駅」の防災拠点化を推進する。
(2)災害に強い交通安全施設等の整備
 地震、豪雨、豪雪等による災害が発生した場合においても安全な道路交通を確保するため、交通管制センター、交通監視カメラ、各種車両感知器、交通情報板等の交通安全施設の整備及び通行止め等の交通規制を迅速かつ効果的に実施するための道路災害の監視システムの開発・導入、交通規制資機材の整備を推進するとともに、災害発生時の停電に起因する信号機の機能停止による混乱を防止するため、予備電源として自動起動型信号機電源付加装置の整備を推進する。
 また、オンライン接続された各都道府県警察の交通管制センターから詳細な交通情報をリアルタイムで警察庁に収集し、それを災害時の広域的な交通管理に活用できるよう、警察庁において広域交通管制システムの運用を的確に行う。
(3)災害発生時における交通規制
 災害発生時は、必要に応じて緊急交通路を確保し、それに伴う混乱を最小限に抑えるため、被災地への車両の流入抑制等の交通規制を迅速かつ的確に実施する。
 また、災害対策基本法(昭36法223)による通行禁止等の交通規制を的確かつ迅速に行うため、信号制御により被災地への車両の流入を抑制するとともに、う回指示・広報を行い、併せて、災害の状況や交通規制等に関する情報を提供する交通情報板等の整備を推進する。
(4)災害発生時における情報提供の充実
 災害発生時において、道路の被災状況や道路交通状況を迅速かつ的確に収集・分析・提供し、復旧や緊急交通路、緊急輸送路等の確保及び道路利用者等への道路交通情報の提供等に資するため、地震計、交通監視カメラ、道路監視カメラ、車両感知器、道路交通に関する情報提供装置・通信施設、道路管理情報システム等の整備を推進するとともに、インターネット等ITを活用した道路・交通に関する災害情報等の提供を推進する。

13 交通安全に寄与する道路交通環境の整備

(1)道路法に基づく通行の禁止又は制限
 道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため、道路の破損、欠壊又は異常気象等により交通が危険であると認められる場合及び道路に関する工事のためやむを得ないと認められる場合には、道路法(昭27法180)に基づき、迅速かつ的確に通行の禁止又は制限を行う。また、危険物を積載する車両の水底トンネル等の通行の禁止又は制限及び道路との関係において必要とされる車両の寸法、重量等の最高限度を超える車両の通行の禁止又は制限に対する違反を防止するため、必要な体制の拡充・強化を図る。
※水底トンネル等
水底トンネル及びこれに類するトンネルで国土交通省令で定めるもの。水際にあるトンネルで当該トンネルの路面の高さが水面の高さ以下のもの。
(2)子どもの遊び場等の確保
 子どもの遊び場の不足を解消し、路上遊戯等による交通事故の防止に資するとともに、都市における良好な生活環境を形成するため、住区基幹公園、都市基幹公園等の整備を推進する。
 また、繁華街、小住宅集合地域、交通頻繁地域等、子どもの遊び場等の環境に恵まれない地域又はこれに近接する地域を優先的に、児童館及び児童遊園の整備を促進するとともに、小学校、中学校等の校庭及び体育施設、社会福祉施設の園庭等の開放の促進を図る。
(3)無電柱化の推進
 安全で快適な通行空間の確保、都市景観の向上、都市災害の防止、情報通信ネットワークの信頼性の向上等の観点から無電柱化を一層推進するため、「無電柱化推進計画」に基づき、幹線道路に加えて、非幹線道路を含めた面的な無電柱化を推進する。また、コスト縮減に一層取り組むとともに、バリアフリー化の促進のための制度や民間活力を有効活用すること等により、重点的かつ効率的な無電柱化の推進を図る(平成19年度電線共同溝整備事業費:約1,678億円)。

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