平成19年度交通安全施策に関する計画
第1部 陸上交通の安全についての施策
第1章 道路交通の安全についての施策
第6節 救助・救急活動の充実
第1部 陸上交通の安全についての施策
第1章 道路交通の安全についての施策
第6節 救助・救急活動の充実
1 救助・救急体制の整備
- (1)救助体制の整備・拡充
- 交通事故に起因する救助活動の増大及び事故の種類・内容の複雑多様化に対処するため、救助工作車等救助資機材の計画的な整備を推進し、救助活動の円滑な実施を期する。
救急出場件数については、近年高齢化の進展等により増加傾向にあることから、必要な資機材の配備や救急救命士を含む救急隊員の確保を促進し、救急活動の適切な実施を図る。 - (2)集団救助・救急体制の整備
- 大規模道路交通事故等、多数の負傷者が発生する大事故に対処するため、関係機関における連絡体制の整備及び救護訓練の実施等、集団救助・救急体制の構築を推進する。
- (3)心肺そ生法等の応急手当の普及啓発活動の推進
- 指定自動車教習所における教習カリキュラムに応急救護処置に関する教習が盛り込まれていることから、これらが効果的に行われるよう指導者の養成を始めとする体制の整備を図るとともに、講習等が効果的に行われるよう指定自動車教習所等に対して必要な指導、助言を行う。
市町村の消防機関が実施している地域住民及び事業所を対象とした応急手当に関する講習会の開催等の施策については、「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」(平5消防救41)及び「事業所における応急手当の普及啓発の推進について」(平11消防救175)に基づき推進を図るとともに、救急要請受信時における応急手当の指導を推進する。
また、心肺そ生訓練用人形、自動体外式除細動器(AED)トレーナー、応急手当講習テキストなどの普及啓発用資器材の整備等、各消防機関が行う住民に対する応急手当の普及啓発活動に対して支援を行う。
なお、平成16年7月から非医療従事者によるAEDの使用が認められ、「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」が改正されたのを受け、消防機関においてはAEDの内容を取り入れた救命講習の実施を引き続き促進する。
心肺そ生法については、平成18年6月、(財)日本救急医療財団の心肺蘇生法委員会より、新しい日本版救急蘇生ガイドラインが示された。これを踏まえて改正された「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」に基づいた応急手当の普及啓発活動を推進する。
学校では、中学校、高等学校の保健体育科等において心肺そ生法等の応急手当について指導することとしており、この指導を効果的に実施するため、実習やAEDの知識の普及を含む各種講習会を開催する。
(社)日本交通福祉協会では、交通安全の指導に携わる者、運転業務に従事する者を重点に交通事故救命救急法教育講習会等を実施する。 - (4)救急救命士の養成・配置等の促進、ドクターカーの活用促進
- プレホスピタルケア(救急現場及び搬送途上における応急処置)の充実のため、ドクターカー(医師等が同乗する救急用自動車)の活用の促進を図るとともに、全国の消防機関において救急救命士を計画的に配置できるようその養成を図り、救急救命士の処置範囲の拡大により可能となった気管挿管、薬剤投与を円滑に実施するための講習及び実習の実施を推進する。また、医師の指示又は指導・助言の下に救急救命士を含めた救急隊員による応急処置等の質を確保するメディカルコントロール体制の充実を図る。
- (5)救助・救急施設の整備の推進
- 消防機関の救助・救急体制の整備を図るため、緊急消防援助隊に係る救助工作車、高規格の救急自動車、ヘリコプター等の整備に要する費用の補助として平成19年度は、29億2,786万円を計上している。
- (6)消防防災ヘリコプターによる救急業務の推進
- ヘリコプターは、事故の状況把握、負傷者の救急搬送に迅速かつより効果的に活用可能であることから、消防防災ヘリコプターの全国配備を推進するとともに、救急業務等において、ヘリコプターの積極的活用を促進する。
- (7)救助隊員及び救急隊員の教育訓練の充実
- 交通事故等に起因する救急・救助活動の増大及び事故の種類、内容の複雑多様化に対応するため、救助隊員・救急隊員の資質の向上に努める。
- (8)高速自動車国道等における救急業務実施体制の整備
- 東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社、本州四国連絡高速道路株式会社(以下「高速道路株式会社」という。)及び関係市町村は共に通信連絡体制等の充実を図るなど連携を強化するとともに、高速道路株式会社は高速自動車国道等のインターチェンジ所在市町村等に財政措置を講じ、当該市町村においても、救急業務実施体制の整備を促進する。
また、高速道路株式会社及び関係市町村は、救急業務に必要な施設の整備、従業者に対する教育訓練の実施等を推進する。 - (9)緊急通報システムの拡充及び現場急行支援システムの整備等
- 交通事故等緊急事態発生時における負傷者の早期救出及び事故処理の迅速化のため、新交通管理システム(UTMS)の構想等に基づき、人工衛星を利用して位置を測定するGPS技術を活用し、自動車乗車中の事故発生時に車載装置・携帯電話を通じてその発生場所の位置情報を通報することなどにより、緊急車両の迅速な現場急行を可能にする緊急通報システム(HELP)の普及を図る。
また、緊急車両が現場に到着するまでのリスポンスタイムの縮減、及び緊急走行時の交通事故防止のため、緊急車両優先の信号制御を行う現場急行支援システム(FAST)の整備を図るとともに、FASTを救急自動車へ導入した場合における、覚知から医療機関への収容までの所要時間の短縮効果などについて、関係機関等と連携しつつ、救命率の向上等の観点から検証を行う。
さらに、救急要請時における地上デジタルテレビ放送等を活用した応急手当指導(口頭指導)の有効性について検証を行う。
2 救急医療体制の整備
- (1)救急医療機関等の整備
- 救急医療体制については、従来体系的な整備を進めており、平成19年度予算には、救急医療施設等の整備・充実を図ることとし、その関連経費を含め、総額89億円を計上している。
救急医療体制の体系的整備の主な内容は、次のとおりである。 - ア
- 救急医療施設の整備
- (ア)
- 初期救急医療施設の整備
休日夜間急患センター及び小児初期救急センターについて、整備を図る。 - (イ)
- 第二次救急医療施設の整備
重症救急患者を受け入れるための、病院群輪番制病院及び共同利用型病院の整備を図るとともに、小児緊急患者を受け入れる小児救急医療支援事業実施病院及び小児救急医療拠点病院の整備を図る。 - (ウ)
- 第三次救急医療施設の整備
重傷及び複数の診療科領域にわたるすべての重篤救急患者の救命医療を担当する救命救急センターの整備を図るとともに、広範囲熱傷、指肢切断、急性中毒等の特殊疾病患者に対応する高度救命救急センターの整備を図る。 - イ
- 救急医療情報システムの整備
救急医療施設の応需情報を常時、的確に把握し、医療施設、消防本部等へ必要な情報の提供を行うとともに、災害時には医療機関の稼働状況、医師・看護師等スタッフの状況等災害医療に係る総合的な情報収集を行う救急医療情報センターの整備を図る。 - ウ
- 救急医療設備の整備
交通事故の被害者救済の充実強化を図るため、全国の医療機関の救急医療機器の整備に関し、自動車損害賠償保障事業特別会計から2億9,000万円の補助金を交付する。 - (2)救急医療担当医師・看護師の養成等
- 医師の卒業前の教育・臨床教育において救急医療に関する教育研修の充実に努めるとともに、看護系大学に対しては、「看護実践能力育成の充実に向けた大学卒業時の到達目標」(平成16年看護学教育の在り方に関する検討会報告)において、「事故の特性に応じた救急処置・援助」に関する実践能力の卒業時の到達度を示しており、関係会議等で引き続き本報告に基づいた教育の充実が行われるよう促す。
- (3)ドクターヘリ事業の推進
- 交通事故等で負傷した患者の救命率の向上や後遺症を軽減させるため、早期治療の開始と迅速な搬送を行うドクターヘリ(医師が同乗する救急専用ヘリコプター)の配備を推進する。
その運用に当たっては、ドクターヘリが安全に着陸できる区間・場所の情報の共有や「運用マニュアル」の作成、共通の周波数の無線機の整備等関係機関・団体が連携した取組を強化する。
3 救急関係機関の協力関係の確保等
救急業務の円滑な実施や救急隊員への教育訓練体制の整備等を図り、消防機関と医療機関、救急医療関係者等との連携を強化し、都道府県及び各地域単位のメディカルコントロール協議会の充実を図る。この協議会において救急救命士等の救急隊員の活動に必要な医師の指示・指導・助言体制の確立や臨床実習等の支援体制の確保を推進する。