平成20年度 交通事故の状況及び交通安全施策の現況
第1編 陸上交通
第1部 道路交通
第2章 道路交通安全施策の現況
第5節 道路交通秩序の維持

第1編 陸上交通

第1部 道路交通

第2章 道路交通安全施策の現況

第5節 道路交通秩序の維持

1 交通の指導取締りの状況

(1)交通の指導取締りの状況

 平成20年中における車両等の道路交通法違反(罰則付違反)の取締り件数は約818万件で、悪質性・危険性の高い違反としては、最高速度違反が約250万件、酒酔い・酒気帯び運転が約5万件、無免許運転が約4万件等である(第1-36図)。

第1-36図 交通違反取締り(送致・告知)件数(平成20年)

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 なお、点数告知に係る違反の取締り件数について主なものをみると、座席ベルト装着義務違反が約237万件で、ヘルメット装着義務違反が約4万2千件等である。また、放置違反金納付命令件数が約225万件である。

(2)高速自動車国道等における交通指導取締りの状況

 平成20年中の高速自動車国道等における交通違反取締り状況は、第1-17表のとおりである。

第1-17表 高速自動車国道等における交通違反取締り状況

(3)交通反則通告制度の適用状況

 平成20年中に反則行為として告知した件数は766万6,210件で、車両等運転者の道路交通法違反(罰則付違反)の取締り件数中に占める比率(反則適用率)は93.8%である。
 反則告知件数を成人・少年別にみると、成人は737万2,848件、少年は29万3,362件である。また、行為別にみると、主なものは、最高速度違反が226万6,306件(29.6%)、携帯電話使用等違反が119万789件(15.5%)である。

2 交通の指導取締りの強化等

(1)一般道路における効果的な指導取締りの強化等

 交通事故を防止するとともに、交通渋滞及び交通公害を緩和するためには、街頭監視活動及び白バイ、パトカー等による機動警ら活動を強化する必要がある。このため、部門間の連携や、人員の効率的配置により、交通指導取締り体制の確保に努め、交通機動隊等による機動力を生かした効果的な指導取締りを推進した。
 また、悪質・危険な違反の取締りを効果的に推進するため、取締り関係装備資器材の充実整備に努めた。
 さらに、事業活動に関してなされた放置駐車、過積載運転、過労運転、最高速度違反等の違反及びこれらに起因する事故事件については自動車の使用者等の責任、いわゆる背後責任の追及を図るとともに、自動車の使用制限処分を行うなどこの種の違反の根源的対策を推進したほか、無車検運行、無保険車運行等各種交通関係法令違反についても積極的な取締りに努めた。
 また、自転車利用者の交通事故及び自転車利用者による危険・迷惑行為を防止するために、無灯火、二人乗り、一時不停止及び歩道通行者に危険を及ぼす違反等に対して、積極的な指導警告を行い、これに従わない悪質・危険な自転車利用者に対しては、検挙措置を講じた。
 さらに、警察では、飲酒運転に対する厳正な取締りを行っており、特に、夜間における取締体制を確保し、飲酒運転に係る取締結果や交通事故発生状況を的確に分析の上、飲酒運転が常態的に見られる時間帯・場所に重点を置いた効果的な飲酒運転の取締りを推進した。
 また、飲酒運転を検挙した際は、運転者の捜査にとどまることなく、車両等の使用者、飲酒場所、同乗者、飲酒の同席者等に対し的確な捜査を行い、車両等提供、酒類提供及び要求・依頼しての同乗に対する罰則規定の確実な適用や教唆行為等の確実な立件に努めるなど、飲酒運転を助長する周辺者に対する取締りを推進した。

(2)高速自動車国道等における指導取締りの強化等

 高速自動車国道等における安全で円滑な交通流を確保するため、関係都道府県の高速道路交通警察体制の充実強化を図るとともに、多角的な交通事故分析により交通危険箇所に重点を置いた機動警ら、駐留監視活動等を強化して交通流の整序に努め、悪質性、危険性、迷惑性の高い著しい速度超過、飲酒運転、車間距離不保持、通行帯違反等を重点とした指導取締りを推進した。
 また、平成20年6月に後部座席におけるシートベルト着用義務化を内容とする改正道路交通法(平19法90)が施行されたことを踏まえ、後部座席を含めたシートベルト装着義務違反の指導取締りを推進した。
さらに、大型貨物自動車を中心とした指定通行帯等の通行帯違反を重点とした指導取締りを強化した。

(3)科学的な指導取締りの推進

 交通事故発生状況と指導取締り実施状況を検証するとともに、速度違反自動取締装置を活用するなど、交通事故実態に的確に対応した科学的かつ効率的な指導取締りを推進した。

3 交通犯罪捜査及び交通事故事件捜査体制の強化

(1)交通犯罪捜査の現況

 交通事故に係る自動車運転過失(業過)致死傷等事件の平成20年中における送致件数は、71万4,977件である。
 なお、平成20年中のひき逃げ事件(交通事故に係る無申告事件を含む。)の発生件数は2万3,745件で、検挙件数は1万78件である。また、悪質・危険な運転行為による事故については、事案の内容に応じて、危険運転致死傷罪の適用も視野に入れながら、適正な交通事故捜査を推進した。

(2)専従捜査体制の強化等

 悪質な交通事故事件、事故原因の究明が困難な交通事故事件等について組織的かつ重点的な捜査並びに正確かつ綿密な実況見分及び鑑識活動を行う体制を整備するとともに、交通事故事件捜査の基本たる実況見分等に係る教養の強化を図った。

(3)初動捜査体制及び科学的捜査体制の強化

 事故処理車、捜査用車等の現場での初動捜査に必要な車両の整備に努めるとともに、交通事故自動記録装置等の効果的な活用に努めた。

4 暴走族対策の強化

 近年、暴走族の構成員は減少傾向にあるが、依然として爆音暴走や数グループの合同暴走等を活発に行うとともに、凶悪事件等を引き起こしている。
 このような最近の暴走族の実態や、これに対する国民の強い取締り要望にかんがみ、「暴走族対策の強化について」(平成13年2月5日暴走族対策関係省庁担当課長等会議申合せ)に基づき、政府一体となった暴走族対策の推進に努めた。
 平成20年末現在、警察が把握している全国の暴走族の総数は、1万1,516人である。この内訳は爆音を伴う暴走等を集団で行う暴走族(共同危険型)が638グループ、9,985人であり、ローリング、ドリフト走行等の違法な走行により運転技術等を競う暴走族(違法競走型)が1,531人である(第1-18表)。

第1-18表 暴走族の勢力及びい集・走行状況

 最近の暴走族の傾向としては、グループの小規模化が進む一方、暴力団を後ろ盾としたり、連合組織を形成するなどの傾向がみられ、その活動範囲も複数の都府県にまたがるなど広域化しており、グループ内のトラブルによる殺人事件や一般人に対する傷害致死事件を敢行するなど、凶悪事件も発生している。また、構成員に占める成人の割合が増加して少年を上回っている。さらに、元暴走族等が「旧車會」と称するグループを結成し、景勝地等を目指して、暴走族風に改造した旧型の自動二輪車等を連ねて大規模な集団走行を行う実態が全国各地で確認されている。

(1)暴走族追放気運の高揚及び家庭、学校等における青少年の指導の充実

 暴走族追放の気運を高揚させるため、地方公共団体に「暴走族根絶(追放)条例」等の制定を働き掛けるとともに、その運用に協力したほか、報道機関に対する資料提供等による広報活動を積極的に行った。
 また、家庭、学校、職場、地域等において、青少年に対し、「暴走族加入阻止教室」を開催するなどの指導等を促進した。さらに、関係団体や暴走族相談員等との連携の下に、暴走族の解体、暴走族への加入阻止、暴走族からの離脱等の支援指導を徹底した。暴走族問題と青少年の非行等問題行動との関連性にかんがみ、青少年育成団体等との連携を図るなど、青少年の健全育成を図る観点から施策を推進した。
 学校教育においては、生徒一人ひとりの能力、適性等に応じた適切な教育が実施できるように学校・家庭・地域社会の連携と適切な役割分担を進めていく中で、教育課程の編成・実施について徹底するとともに、交通安全教育担当教員等の研修(文部科学省と独立行政法人教員研修センターの共催)の充実を図るなど生徒に対する交通安全教育の充実を図った。

(2)暴走行為をさせないための環境づくり

 暴走族及びこれに伴う群衆のい集場所として利用されやすい施設の管理者に協力を求め、い集させないための施設の管理改善等の環境づくりを推進するとともに、地域における関係機関・団体が連携を強化し、暴走行為等ができない道路環境づくり及び公安委員会による交通規制を積極的に行った。また、事前情報の入手に努め、集団不法事案に発展するおそれがあるときは、早期に暴走族と群衆を隔離するなどの措置を講じた。

(3)暴走族に対する指導取締りの強化

 暴走族に対しては、共同危険行為等の禁止違反を始めとする各種法令を活用した取締りを強力に推進したほか、6月には「暴走族取締り強化期間」を実施した。また、暴走行為に使用された車両等を積極的に押収し、暴走族と車両の分離を図るとともに、不正改造等暴走行為を助長する行為に対しても背後責任の追及を行った。平成20年中の暴走族の法令別検挙状況をみると、前年に比べ総検挙件数は4.0%減少したが、共同危険行為等の禁止違反の検挙件数は、過去最高の307件で6.6%増加した(第1-19表)。

第1-19表 暴走族による不法事案の検挙状況

(4)暴走族関係事犯者の再犯防止

 暴走族関係事犯者の捜査に当たっては、個々の犯罪事実はもとより、組織の実態やそれぞれの被疑者の非行の背景となっている行状、性格、環境等の諸事情を明らかにしつつ、事件の速やかな処理に努めるとともに、グループの解体や暴走族グループから加入者等を離脱させるなど暴走族関係事犯者の再犯防止に努めた。
 少年院送致決定を受けた暴走族少年あるいは保護観察に付された暴走族関係事犯少年の処遇に当たっては、遵法精神のかん養、家庭環境の調整、交友関係の改善指導、暴走族組織からの離脱指導等、再犯防止に重点を置いた個別処遇及び集団処遇に努めた。
 なお、平成20年末現在で保護観察に付されている者のうち、暴走族関係事犯者として把握されている者は2,469人である。
 さらに、暴走族問題が地域社会に深くかかわる問題であることにかんがみ、都道府県及び市町村に設置されている「暴走族対策会議」の下に、暴走族対策の推進に携わる機関及び団体の代表から構成される「暴走族対策推進幹事会」の設置を働き掛けた。

(5)車両の不正改造の防止

 不適切な着色フィルムの貼付、消音器の切断・取り外し等の不正改造車等を排除し、自動車の安全運行を確保するため、「不正改造車を排除する運動」を年間を通じて実施した。特に、平成20年6月を強化月間として、自動車検査のより一層確実な実施に加え、広報活動の一層の推進、関係者への指導徹底、街頭検査の重点化等を行った。
 また、道路運送車両法の不正改造行為の禁止及び不正改造車両に対する整備命令に係る規定を的確に運用し、不正改造車の排除に努めた。

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