平成20年度 交通事故の状況及び交通安全施策の現況
第2編 海上交通
第2章 海上交通安全施策の現況
第4節 船舶の安全性の確保
第2編 海上交通
第2章 海上交通安全施策の現況
第4節 船舶の安全性の確保
1 船舶の安全基準等の整備
船舶の安全性確保のため、国際海事機関(IMO)において海上人命安全条約(SOLAS条約)等に基づいて国際的な安全基準が定められるとともに、我が国では船舶安全法(昭8法11)及びその関係省令において関連の構造・設備等の基準を規定している。
SOLAS条約等については船舶のより一層の安全性向上のため、IMOにおいて随時見直しが行われているが、我が国は、世界有数の造船・海運国としてIMOにおける審議に積極的に参画しており、技術革新等に対応した合理的な国際基準の策定に向け、主導的な役割を果たしている。
平成20年度は、国際的な構造基準(GBS)の策定や船舶長距離識別追跡システム(LRIT)について蓄積している技術的な知見やデータを活かしIMOに条約改正案を提案するなどの貢献を行った。
また、国内においては、腐蝕による船体折損事故防止のためのバラストタンクの塗装基準の導入、船舶の衝突・座礁等による転覆事故の防止のための損傷時復原性基準の強化、沿岸から遠く離れた海域で船舶の救助等が容易になるよう船舶長距離識別追跡システム装置を義務化する等の国内法令化を進めた。
2 重大海難の再発防止
近年、我が国近海において、水中翼型超高速船が航行中に流木や鯨類と衝突する事故が起きており、より安全な運航を確保することが重要となっている。
これらの状況に鑑み、平成19年10月に「高速船の座席・シートベルトの安全性に関する調査検討会」を設置し、(独)海上技術安全研究所の協力を得てダミー人形を用いた衝撃試験を行うと共に、様々な分野の専門家を交え技術的な検討を行った。
現在、その結果を踏まえ、水中翼型を含む高速旅客船を対象に、シートベルト設置の義務化等を図るべく、関係国内法令を整備中である。
3 危険物の安全審査体制の整備
我が国における危険物の海上輸送に関する安全規制を的確に実施するため、IMOが定めた国際的な安全基準を国内法令に取り入れており、2009年1月1日に基準が変更された危険化学品のばら積運送のための船舶の構造及び設備に関する国際規則(改正IBCコード)及び国際海上危険物規程(改正IMDGコード)を取り入れた危険物船舶運送及び貯蔵規則の確実な運用に努めている。また、IMO等における安全基準の策定にあたり、我が国も国際的な海上輸送安全の確保に寄与すべく、積極的に参加している。
4 船舶の検査体制の充実
安全・環境問題の意識の高まりや、近年の技術革新等により、船舶に係る安全環境規制は、一層強化・複雑化してきている。船舶検査の品質を維持向上しつつ船舶検査を的確に実施するため、ISO9001に準拠した品質管理システムを活用し(平成18年認証取得)、船舶検査執行体制の充実を図っている。
5 旅客船事業者等による船舶の安全管理体制の構築の普及促進
海上における人命の安全の観点から、一定の船舶及びそれを管理する会社に対して、総合的な安全管理体制を確立するための国際安全管理規則(ISMコード)の適用が義務付けられているところ、我が国においては規則上強制化されていない内航船舶に対しても申請者が任意に構築した安全管理システムを認証するスキームを制度化して運用している。特に、旅客船事業者には、『ISMマニュアル(見本)』を用いて、任意のISM認証取得に関する啓蒙活動を実施するなどヒューマンエラーに起因する海難事故等の防止を図っている。
6 外国船舶の監督の推進
海上人命安全条約等に基づき、我が国に入港する外国船舶に対して船舶の構造・設備基準及び乗組員の資格要件等に関する外国船舶監督を実施した。
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