平成21年度 交通事故の状況及び交通安全施策の現況
第1編 陸上交通
第1部 道路交通
第1章 道路交通事故の動向
第2節 平成21年中の道路交通事故の状況
第1編 陸上交通
第1部 道路交通
第1章 道路交通事故の動向
第2節 平成21年中の道路交通事故の状況
1 概況
平成21年中の交通事故発生件数は73万6,688件で、これによる死者数は4,914人、負傷者数は91万115人であった(死傷者数は91万5,029人)。
前年と比べると、死者数は241人(4.7%)、発生件数は2万9,459件(3.8%)、負傷者数は3万5,389人(3.7%)減少した(死傷者数は3万5,630人(3.7%)減少)。
交通事故による死者数は9年連続で減少し、昭和27年(死者数4,696人)以来57年ぶりに4千人台となり、ピーク時(昭和45年:1万6,765人)の3割以下となった。また、平成16年に過去最悪を記録した発生件数(95万2,191件)及び負傷者数(118万3,120人)も5年連続で減少し、負傷者数は10年振りに100万人以下となった前年を更に下回ったものの、いまだ多くの尊い命が交通事故の犠牲になっており、依然として憂慮すべき交通情勢にある。
近年、死者数が減少した要因としては、基本的には、道路交通環境の整備、交通安全思想の普及徹底、安全運転の確保、車両の安全性の確保、道路交通秩序の維持、救助・救急体制等の整備等、交通安全基本計画に基づく諸対策を総合的に推進してきたことによるが、定量的に示すことができる主な要因としては、<1>シートベルト着用者率の向上(第1-4図)、<2>高速走行の事故の減少(第1-5図)、<3>飲酒運転等悪質・危険性の高い事故の減少(第1-6図)、<4>法令違反の歩行者の減少(第1-7図)、等が挙げられる。
2 交通死亡事故等の特徴
(1)年齢層別交通事故死者数及び負傷者数
平成21年中の交通事故死者数を年齢層別にみると、65歳以上の高齢者(2,452人)が17年連続で最も多く、全死者数に占める割合は、65歳以上の高齢者の人口構成比(22.7%:総務省統計資料「人口推計(平成21年10月1日現在)」による。)の2倍を超える49.9%となっている。
前年と比べると、60~64歳(13人増)以外の年齢層で減少しており、特に30~39歳(53人減)、65歳以上(47人減)、50~59歳(45人減)が大きく減少した(第1-8図)。
年齢層別の交通事故死者数の推移をみると、近年はすべての年齢層で減少傾向で推移しており、過去10年間では、特に16~24歳の若者の減少傾向が顕著である(第1-9図)。
交通事故負傷者数を年齢層別にみると、30~39歳(17万3,715人)と16~24歳(15万1,079人)が多く、両者で全体の35.7%を占めている。前年と比べると、16~24歳(1万221人減)と50~59歳(9,515人減)が特に減少した(第1-10図)。
(2)状態別交通事故死者数及び負傷者数等
平成21年中の交通事故死者数を状態別にみると、歩行中(1,717人)が最も多く、次いで自動車乗車中(1,600人)となっており、両者で全体の67.5%を占めている。前年と比べると、特に自動車乗車中(110人、6.4%減)及び二輪車乗車中(104人、10.5%減)で減少数(241人)の約88.8%を占める減少となった。(第1-11図)。
交通事故死者数に占める割合が最も多い65歳以上の高齢者について状態別にみると、歩行中がほぼ半数(49.0%)を占め、次いで自動車乗車中(24.1%)、自転車乗用中(18.1%)の順に多い(第1-12図)。
前年と比べると、原付乗車中(41人、20.7%減)が特に減少した。
状態別の交通事故死者数の推移をみると、近年はすべての状態で減少傾向にあり、過去10年間では、特に自動車乗車中の減少が顕著であり、平成20年からは歩行中の死者数を下回っている(第1-13図)。
交通事故負傷者数を状態別にみると、自動車乗車中が56万1,692人と最も多く、全負傷者数の61.7%を占めており、次いで自転車乗用中が15万5,581人(17.1%)となっている(第1-14図)。
(3)状態別・年齢層別の交通事故死者数
平成21年中の状態別の交通事故死者数を年齢層別にみると、次のような特徴がみられる(第1-15図)。
- <1>
- 自動車乗車中については、65歳以上の高齢者が全体の37.0%と最も多くを占めている。
- <2>
- 自動二輪車乗車中については、16~24歳の若者が全体の30.9%と最も多くを占めている。
- <3>
- 原動機付自転車乗車中については、65歳以上の高齢者が全体の43.7%と最も多くを占めている。
- <4>
- 自転車乗用中及び歩行中については、65歳以上の高齢者が、それぞれ全体の64.0%、70.0%と最も多くを占めている。
また、平成21年中の状態別・年齢層別の交通事故死者数を前年と比較すると、50~59歳の自動車乗車中(46人減)と65歳以上の原動機付自転車乗車中(41人減)が特に減少した。その他では、30~39歳の自動車乗車中(37人減)、40~49歳の自動車乗車中(21人減)、65歳以上の自転車乗車中(21人減)等が減少し、逆に50~59歳の自転車乗車中(12人増)、65歳以上の歩行中(11人増)が増加した(第1-16図)。 - (CSV形式:1KB)
(4)男女別・状態別の交通事故死者数
平成21年中の交通事故死者数を男女別にみると、男性は自動車乗車中が36.7%を占め、女性は歩行中が52.4%を占めた。
10年前と比べると、男女とも減少しているが、男性の減少(47.7%減)が顕著である。状態別でみると、特に自動車乗車中が大きく減少しており、男女とも半数以下となった(第1-17図)。
また、年齢層別にみると、65歳以上の女性の歩行中の占める割合と16~24歳の女性の自動車乗車中の占める割合が高い(第1-18図)。
(5)飲酒運転による交通事故発生状況
平成21年中の原付以上運転者(第1当事者)の飲酒運転による交通事故件数は5,725件(構成率0.8%)で、前年と比べると494件(7.9%)減少した。交通死亡事故発生件数は292件(構成率6.1%)で、前年と比べると13件(4.3%)減少した(第1-19図)。
過去10年間の推移をみると、飲酒運転に対する罰則等が強化された14年以降の減少が顕著であり、さらには、18年9月以降の飲酒運転根絶に対する社会的機運の高まりや、19年9月の飲酒運転の厳罰化等により、21年中の交通死亡事故発生件数は10年前の約4分の1(平成11年に比べ76.8%減)に減少した(第1-19図)。
また、飲酒運転による交通事故発生件数を月別にみると、18年9月以降の減少が顕著である。(第1-20図)。
(6)シートベルト着用の有無別死者数
平成21年中の自動車乗車中の交通事故死者数をシートベルト着用の有無別にみると、非着用は716人で、前年に比べて100人(12.3%)減少した(第1-21図)。
過去10年間のシートベルト非着用の交通事故死者数を乗車位置別にみると、シートベルト着用者率の向上に伴い、各席とも非着用の交通事故死者数は減少する傾向にある(第1-22図)。
平成21年中の自動車乗車中の死傷者をシートベルト着用有無別の致死率でみると、非着用者の致死率は着用者の12.9倍と高くなっている(第1-23図)。
(7)チャイルドシート使用の有無別死傷者数
平成21年中の6歳未満幼児の自動車同乗中の死者数は、19人(うちチャイルドシート使用は7人)であり、重傷者数は102人であった(第1-24図)。
チャイルドシートの使用者率(6歳未満幼児の自動車同乗中死傷者に占める使用の死傷者の割合)は70.5%であり、前年と比較すると2.7%上昇し、16年以降漸増傾向にある。
6歳未満幼児の自動車同乗中の致死率及び死亡重傷率をみると、チャイルドシートの使用者率の向上に伴い、10年前に比べ致死率は横ばい傾向にあるが、死亡重傷率は減少する傾向にある(第1-25図)。
平成21年中のチャイルドシート使用有無別の死亡重傷率をみると、正しく使用した場合に比べ、不使用者は4.1倍、不適正使用者は7.1倍であり、致死率をみると、それぞれ13倍、27.3倍となる(第1-26図)。
(8)月別、曜日別、昼夜別交通事故発生状況
平成21年中の交通事故発生状況を月別、曜日別、昼夜別にみると次のとおりである。
- ア
- 月別交通事故発生状況
交通事故発生件数、交通事故死者数ともに12月がピークとなっており、年の後半に多くなる傾向が続いている。また、平成21年中の交通事故死者数は5月、9月、11月を除く月で前年を下回った(第1-27図)。 - (CSV形式:1KB)
- イ
- 曜日別交通死亡事故発生件数
曜日別一日平均交通死亡事故発生件数をみると、金曜日(13.7件)、月曜日(13.6件)、土曜日(13.4件)の順に多い(第1-28図)。 - (CSV形式:1KB)
- ウ
- 昼夜別交通事故発生状況
交通事故全体でみると、夜間の発生が約4分の1(26.2%)であったのに対して、交通死亡事故でみると、夜間の発生が、ほぼ半数(48.7%)であった。昼夜別の交通死亡事故発生件数の推移をみると、平成18年までは夜間の発生が昼間の発生を上回っていたが、平成19年からは昼間の発生が上回っている(第1-29図)。 - (CSV形式:1KB)
(9)道路形状別交通死亡事故発生件数
平成21年中の交通死亡事故発生状況を道路形状別にみると、交差点内が最も多く(37.8%)、次いで一般単路(交差点、カーブ、トンネル、踏切等を除いた道路形状をいう。)(33.1%)、カーブ(15.9%)の順になった(第1-30図)。
(10)第1当事者別の交通死亡事故発生件数
平成21年中の第1当事者(交通事故の当事者のうち、過失が最も重い者又は過失が同程度の場合は被害が最も軽い者をいう。)の交通死亡事故発生件数を車種別にみると、自家用乗用車(50.6%)及び自家用貨物車(19.0%)で全体の約7割を占めている(第1-31図)。
自動車運転者が第1当事者となった交通死亡事故発生件数は、減少傾向で推移している。10年前と比較すると、16~24歳の若者は約3分の1に減少したのに対し、65歳以上の高齢者は横ばいである(第1-32図)。
(11)法令違反別交通事故発生件数
原付以上運転者(第1当事者)法令違反別で交通死亡事故発生件数をみると、安全運転義務違反が57.0%を占め、中でも漫然運転(15.3%)、脇見運転(13.8%)、安全不確認(10.7%)が多い(第1-33図)。
(12)事故類型別交通死亡事故発生件数
平成21年中の交通死亡事故発生件数を事故類型別にみると、車両相互事故が最も多く(43.8%)、以下、人対車両(34.8%)、車両単独(20.7%)の順となっている。さらにその内訳をみると、出会い頭衝突(16.0%)、その他横断中(横断歩道・横断歩道付近以外での横断中)(15.1%)、工作物衝突(13.8%)、正面衝突(11.1%)が多い(第1-34図)。
3 高速自動車国道等における交通事故発生状況
(1)概況
高速自動車国道等(高速自動車国道及び指定自動車専用道路(道路交通法第110条第1項の規定により国家公安委員会が指定する自動車専用道路)をいう。以下同じ。)における平成21年中の交通事故発生状況は、交通事故発生件数1万1,112件(うち交通死亡事故161件)、交通事故死者数178人、交通事故負傷者数1万9,271人であった(第1-35図)。
前年と比較すると、交通事故死者数は15人(7.8%)減少し、交通事故負傷者数は1,148人(6.3%)増加した。
(2)死亡事故率
高速自動車国道等は自動車専用の道路であり、原則として上下線が分離されていることなどから事故率は低く、高速自動車国道についてみれば、平成21年で1億走行台キロ当たりの交通事故発生件数は7.8件である。
しかし、高速自動車国道等は高速走行となるため、わずかな運転ミスが交通事故に結びつきやすく、事故が発生した場合の被害も大きく、関係車両や死者も多数に及ぶ重大事故に発展することが多い。このため、死亡事故率は、その他の道路の約2.3倍である。
(3)事故類型別及び法令違反別発生状況
平成21年中の高速自動車国道等における事故類型別交通事故発生状況は、車両相互の事故が事故全体の85.8%、車両単独事故が12.9%で、車両単独事故の割合がその他の道路(4.7%)に比べ高い。
車両相互の事故では、車線上の停止車への追突が最も多く、次いで走行車への追突の順である。
車両単独の事故では、防護さく等への衝突が最も多く、次いで中央分離帯への衝突の順である。
また、平成21年中の高速自動車国道等における法令違反別発生状況をみると、安全運転義務違反が90.2%を占め、前方不注視(43.2%)、動静不注視(21.5%)、安全不確認(10.9%)、ハンドル操作不適(7.0%)が多い。
(4)昼夜別交通事故発生状況
平成21年中の高速自動車国道等における昼夜別交通事故発生状況をみると、交通事故全体では昼間の発生(69.9%)が夜間の発生(30.1%)の約2.3倍となっているが、交通死亡事故でみると、昼間の発生(54.7%)が夜間の発生(45.3%)の約1.2倍となっており、死亡事故率では夜間(2.2%)が昼間(1.1%)の2倍となっている。