平成21年度 交通事故の状況及び交通安全施策の現況
トピック
高齢者を取り巻く交通情勢
トピック
高齢者を取り巻く交通情勢
○高齢者の関係する交通死亡事故の発生状況
平成21年中の死者数を年齢層別にみると、65歳以上の高齢者(構成率49.9%)が最も多くなっている。最近10年間の死者数の推移を見ても、第1図のとおり75歳以上の年齢層の減少は小さく、10年前と比較した場合、死者数全体では4,092人(45.4%)減少しているのに対し、75歳以上では108人(6.6%)の減少にとどまっている。
また、人口10万人当たりの死者数を比較すると、平成21年中の全年齢平均が3.85人であるのに対し、65歳~74歳で6.09人、75歳以上で11.63人と高齢になるほど死者数が多くなっている。
○高齢者に対する交通安全教育の推進状況
都道府県警察においては、加齢に伴う身体機能の低下が行動に及ぼす影響等を理解してもらうため、高齢者に対する各種教育用機材を積極的に活用した参加・体験・実践型の交通安全教育を実施している。交通安全教育を受ける機会が少ないことなどにより、交通ルール等に関する理解が十分でない高齢者に対しては、歩行者及び自転車利用者の心得等について理解することができる内容の安全教育を実施している。
高齢者に対する交通安全教育の実施に当たっては、高齢者と接する機会の多い民生委員等の福祉関係者を始め、地域の関係機関・団体等と連携し、高齢者宅の訪問指導等により日常的に必要な知識の習得が行われるよう地域ぐるみの支援体制の構築に努めている。さらに、高齢者間の相互啓発による安全意識の高揚を図るため、高齢者自身による交通安全に係るボランティア活動を促進するほか、老人クラブ、老人ホーム等に交通安全部会を設置し、高齢者交通安全指導員(シルバーリーダー)の養成等を促進するなど、老人クラブ等が地域の交通安全活動に主導的役割を果たすようその活性化に努めている。
○高齢者が第1当事者になる交通死亡事故の発生状況
平成21年中の原付以上運転者(第1当事者)による死亡事故件数を年齢層別にみると、65歳以上の高齢者(構成率20.3%)が最も多くなっている。また、最近10年間の推移を見ても、第2図のとおり、若年層の件数が大きく減少しているのに対し、75歳以上では逆に増加しており、10年前と比較した場合、死亡事故全体の件数が3,565件(44.8%)減少しているのに対し、75歳以上の年齢層では、145件(53.5%)増加している。
また、免許保有者10万人当たりの死亡事故件数を比較すると、平成21年中の全年齢平均が5.4件であるのに対し、65歳以上で7.1件、75歳以上で12.8件と高齢になるほど件数が多くなっている。
○高齢運転者に対する交通安全教育の実施状況
都道府県警察においては、高齢者に対し、加齢に伴う身体機能の変化を客観的に把握し、安全に運転するために必要な知識・技能を習得してもらうための講習会や自動車教習所を使用した高齢運転者教室を開催するなどして、高齢運転者の特徴を踏まえた交通安全教育を実施したほか、高齢運転者標識を表示して運転することの重要性を理解させるための広報啓発活動を行った。
○講習予備検査(認知機能検査)
平成21年6月から、更新期間が満了する日における年齢が75歳以上の高齢者は、運転免許証の更新時に、講習予備検査(認知機能検査)を受けることとされた。
この検査は、時間の見当識※1、手がかり再生※2及び時計描画※3という3つの検査項目について、30分程度で実施され、記憶力・判断力の状況等の結果が検査を受けた高齢運転者に通知される。検査の結果は、第1分類(記憶力・判断力が低くなっている)、第2分類(記憶力・判断力が少し低くなっている)及び第3分類(記憶力・判断力に心配ない)の3つに分類され、各分類に応じた高齢者講習を実施する。講習予備検査制度導入後の6か月間で、23万7,823人が講習予備検査を受検し、第1分類と判定された者は5,770人(約2.4%)であった。
※1
検査を受けている時の年月日、曜日及び時間を回答するもの。
※2
一定のイラストを記憶し、採点には関係しない課題を行った後、記憶しているイラストの名称を最初はヒントを与えられることなく回答し、次にヒントを与えられた上で回答するもの。
※3
時計の文字盤を描き、さらに、その文字盤上に指定された時刻を表す針を描くもの。
なお、検査の結果、第1分類と判定され、かつ、運転免許証の更新期間満了日の1年前の日以後に信号無視等の特定の違反行為がある場合には、臨時適性検査として認知症の専門医の診断を受けなければならず、認知症と診断されると、運転免許の取消し又は停止処分がなされる。
○申請による運転免許の取消し(運転免許証の自主返納)
身体機能の低下等を理由に自動車等の運転をやめる際には、運転免許の取消しを申請することが可能であり、運転免許証を返納することができる。また、返納した場合には、申請により運転経歴証明書の交付を受けることができる。21年中の申請による運転免許の取消し件数は5万1,086件(うち70歳以上は4万4,463件)で、運転経歴証明書の交付件数は2万3,048件(うち70歳以上は2万321件)であった。