平成22年度 交通事故の状況及び交通安全施策の現況
第1編 陸上交通
第1部 道路交通
第2章 道路交通安全施策の現況
第3節 安全運転の確保
第1編 陸上交通
第1部 道路交通
第2章 道路交通安全施策の現況
第3節 安全運転の確保
1 運転免許保有者数及び運転免許試験の実施状況
(1)運転免許保有者数
平成22年12月末現在の運転免許保有者数は、前年と比べて約20万人(0.2%)増加して約8,101万人となった。このうち、男性は約5万人(0.1%)減少して約4,549万人、女性は約25万人(0.7%)増加して約3,552万人となり、その構成率は男性56.1%、女性43.9%となった(第1-7表)。
また、年齢層別の増加数では、65歳以上の高齢者が約28万人(2.2%)増加した。
運転免許の取得可能な16歳以上の人口に占める運転免許保有者数の割合は、73.7%(男性85.8%、女性62.5%)となり、年齢層別では、35~39歳の年齢層が95.3%(男性98.2%、女性92.3%)で最も多く、次いで40~44歳の年齢層となった(第1-35図)。
運転免許の種類別保有者数は、第一種中型免許(旧法普通免許に相当する8トン限定中型免許を含む。)保有者が約6,774万人で全体の83.6%を占めた(第1-8表)。
障害者の運転免許については、運転できる車両に限定の条件が付されているものが延べ30万4,796件、補聴器使用の条件が付されているものが延べ5万4,814件となった。
なお、平成22年中の国外運転免許証の交付件数は27万3,464件で、前年に比べ1万3,124件(5.0%)増加した。また、外国等の行政庁等の運転免許を有する者については、一定の条件の下に運転免許試験のうち技能試験及び学科試験を免除することとされており、22年の当該免除に係る我が国の運転免許の件数は2万7,329件に上り、増減率で12.7%減となった。
(2)運転免許試験の実施状況
- ア
- 運転免許試験の概況
平成22年中の運転免許試験の受験者数は298万3,036人で、前年に比べて7万5,481人(2.5%)減少した。
また、合格者数は212万6,592人で、前年に比べて1万3,184人(0.6%)減少した。
このうち、普通免許の受験者数は179万1,487人(合格者数123万4,435人)で、前年に比べ0.7%増加(合格者1.4%増加)、大型二輪免許及び普通二輪免許については38万5,354人(合格者数32万2,685人)で、前年に比べ1.0%減少(合格者1.4%増加)、原付免許については32万6,053人(合格者数19万538人)で、前年に比べ7.1%減少(合格者5.0%減少)した(第1-36図)。 - (CSV形式:1KB)
- イ
- 障害者等の運転免許取得
障害者に対しては、安全運転を確保するために必要な条件を付して運転免許を与えることとしており、運転免許試験を受けようとする場合は、事前に運転適性相談に応じ適切な助言を行うこととしている。
また、障害者等の運転免許の取得については、運転への支障の有無を個別に判断する必要があることから、障害者等に対する運転適性相談活動の充実を図った。
聴覚障害者については、平成20年6月からワイドミラーの装着を条件に、普通自動車免許を取得することができることとされており、平成22年末の運転免許保有者数は、409人となった。
2 運転者教育等の充実
(1)運転免許を取得しようとする者に対する教育の充実
- ア
- 自動車教習所における教習の充実
- (ア)
- 指定自動車教習所における教習の充実
平成22年末現在における指定自動車教習所数は1,377か所で、これらの指定自動車教習所で技能検定に従事している技能検定員は1万8,927人、学科又は技能の教習に従事している教習指導員は3万3,349人である。
一方、平成22年中に指定自動車教習所を卒業した者は156万5,812人で、前年に比べ1万3,397人(0.8%)減少したが、指定自動車教習所の卒業者で22年中に運転免許試験に合格した者の数は、全合格者(原付免許等を除く。)の96.3%を占めた。
指定自動車教習所は、常に教習水準の向上を図るとともに、適正な運営により、安全運転に必要な技能と知識はもとより社会的責任を身に付けた健全な交通社会人としての運転者を養成するものでなければならない。そのため、都道府県公安委員会では、指定自動車教習所の教習指導員、技能検定員等に対する定期的な講習や研修を通じ、その資質及び能力の向上を図るとともに、教習及び技能検定等について定期又は随時の検査を行うこととしているほか、教習施設及び教習資器材等の整備等についても指導を行っている。
また、交通状況の変化に迅速、的確に対応するため、常に教習内容の充実に努めている。 - (イ)
- 指定自動車教習所以外の自動車教習所における教習水準の向上
都道府県公安委員会では、指定自動車教習所以外の届出自動車教習所に対して必要な助言等を行い、教習水準の維持向上を図った。
また、特定届出自動車教習所に対しても、教習の課程の指定を受けた教習の適正な実施等を図るため、指導等を行った。 - イ
- 取得時講習の充実
大型免許、中型免許、普通免許、大型二輪免許、普通二輪免許、大型第二種免許、中型第二種免許又は普通第二種免許を受けようとする者は、大型車講習、中型車講習、普通車講習、大型二輪車講習、普通二輪車講習、大型旅客車講習、中型旅客車講習及び普通旅客車講習のほか、応急救護処置講習の受講が義務付けられている。
大型車講習、中型車講習、普通車講習、大型二輪車講習、普通二輪車講習、大型旅客車講習、中型旅客車講習及び普通旅客車講習は、運転に係る危険の予測等安全な運転に必要な技能及び知識について、応急救護処置講習は、気道確保、人工呼吸、心臓マッサージ等に関する知識について行われた。
都道府県公安委員会では、これらの講習の水準が維持され、講習が適正に行われるよう、講習実施機関に対し指導を行った。
平成22年には、大型車講習を412人、中型車講習を520人、普通車講習を1万3,808人、大型二輪車講習を468人、普通二輪車講習を2,012人、大型旅客車講習を1,294人、中型旅客車講習を60人、普通旅客車講習を2,196人、第一種応急救護処置講習を1万4,026人、第二種応急救護処置講習を3,512人が受講した。
また、原付免許を受けようとする者に対しては、原付の運転に関する実技訓練等を内容とする原付講習が義務付けられており、平成22年には18万3,572人が受講した。
(2)運転者等に対する再教育等の充実
- ア
- 初心運転者対策の推進
運転免許取得後の経過年数別に交通死亡事故件数の内訳をみると、運転免許取得後の経過年数の短い者(大部分が若者)が死亡事故を引き起こしているケースが多く、再教育が必要であることを示唆している(第1-37図)。 - (CSV形式:1KB)
- このため、初心運転者期間制度を設けており、普通免許、大型二輪免許、普通二輪免許又は原付免許を受けてから1年に達する日までの間を初心運転者期間とし、この期間中にこれらの免許を受けた者が、違反行為をして法令で定める基準に該当することとなったときは、都道府県公安委員会の行う初心運転者講習を受講できることとするとともに、この講習を受講しなかった者及び受講後更に違反行為をして法令で定める基準に該当することとなった者は、初心運転者期間経過後に都道府県公安委員会の行う再試験を受けなければならないこととしている。
初心運転者講習は、少人数のグループ編成で行われ、路上訓練や運転シミュレーター※を活用した危険の予知、回避訓練を取り入れるなど実践的な内容となっている。 - ※運転シミュレーター
- 運転者の適性を判断するための模擬運転装置。
- イ
- 運転者に対する各種の再教育の充実
- (ア)
- 更新時講習
運転免許証の更新を受けようとする者が受けなければならない更新時講習は、更新の機会をとらえて定期的に教育を行うことにより、安全な運転に必要な知識を補い、運転者の安全意識を高めることを目的としている。この講習は、受講対象者の違反状況等に応じ、優良運転者、一般運転者、違反運転者又は初回更新者の区分により実施している。
各講習では、視聴覚教材等を効果的に活用するなど工夫するとともに、一般運転者、違反運転者及び初回更新者の講習では、運転適性診断を実施し、診断結果に基づいた安全指導を行った。平成22年には、優良運転者講習を932万6,244人、一般運転者講習を327万2,484人、違反運転者講習を402万9,017人、初回更新者講習を112万2,824人が受講した。
さらに、更新時講習では、高齢者等受講者の態様に応じた特別学級を編成し、受講者層の交通事故実態等について重点的に取り上げるなど、講習の充実を図っている。平成22年には、9万5,942人がこの特別学級による講習を受講した。
また、一定の基準に適合する講習(特定任意講習)を受講した者は、更新時講習を受講する必要がないこととされている。特定任意講習では、地域、職種等が共通する運転者を集め、その態様に応じた講習を行っており、平成22年には、8,782人が受講した。 - (イ)
- 取消処分者講習
取消処分者講習は、運転免許の取消し等の処分を受けた者を対象に、その者に自らの危険性を自覚させ、その特性に応じた運転の方法を助言・指導することにより、これらの者の運転態度の改善を図ろうとするものである。運転免許の取消し等の処分を受けた者が免許を再取得しようとする際には、この講習の受講が受験資格となっている。講習は、受講者が受けようとしている免許の種類に応じ、四輪運転者用講習と二輪運転者用講習に分かれている。講習に当たっては、運転適性検査に基づくカウンセリング、グループ討議、自動車等の運転や運転シミュレーターの操作に基づく指導を行うなど個別的、具体的な指導を行い、運転時の自重・自制を促している。平成22年中の取消処分者講習の受講者は3万70人であった。また、飲酒運転者に対するより効果的な取消処分者講習の導入のため、飲酒行動の改善等のためのカリキュラムとして新たに、AUDIT※、ブリーフ・インターベンション※等を盛り込んだモデル事業を行った。 - ※AUDIT
- 世界保健機構がスポンサーになり、数か国の研究者によって作成された「アルコール使用障害に関するスクリーニングテスト」。面接又は質問紙により、その者が危険・有害な飲酒習慣を有するかどうかなどを判断する。
- ※ブリーフ・インターベンション
- 飲酒行動等の人の特定行動に変化をもたらすことを目的とした短時間のカウンセリング
- (ウ)
- 停止処分者講習
停止処分者講習は、運転免許の効力の停止又は保留等の処分を受けた者を対象に、その者の申出により、その者の危険性を改善するための教育として行われるものである。受講者については、講習終了後の考査の成績によって、行政処分の期間が短縮されることとなっている。講習は、行政処分の期間に応じて短期講習、中期講習、長期講習に分かれ、二輪学級、飲酒学級、速度学級等受講者の違反状況等に応じた特別学級を編成するなどして、その充実を図っている。講習では、道路交通の現状、交通事故の実態に関する講義、自動車等の運転や運転シミュレーターの操作に基づく指導等を行っている。平成22年中の停止処分者講習の受講者は38万9,892人であった。 - (エ)
- 違反者講習
違反者講習は、軽微違反行為(3点以下の違反行為)をして一定の基準(累積点数で6点になるなど)に該当することになった者に対し義務付けられているもので、受講した者については、運転免許の効力の停止等の行政処分を行わないこととしている。
講習では、講習を受けようとする者からの申出により、運転者の資質の向上に資する活動の体験を含む課程又は自動車等の運転シミュレーターを用いた運転について必要な適性に関する調査に基づく個別指導を含む課程を選択することができることとしている。運転者の資質の向上に資する活動としては、歩行者の安全通行のための通行の補助誘導、交通安全の呼びかけ、交通安全チラシの配布等の広報啓発等が行われている。平成22年中の違反者講習の受講者は16万9,786人であった。 - (オ)
- 自動車教習所における交通安全教育
自動車教習所は、地域住民のニーズに応じ、地域住民に対する交通安全教育を行っており、地域における交通安全教育センターとしての役割を果たしている。具体的には、運転免許を受けている者を対象として、運転の経験や年齢等の区分に応じたいわゆるペーパードライバー教育、高齢運転者教育等の交通安全教育を行っている。こうした教育のうち、一定の基準に適合するものについては、その水準の向上と免許取得者に対する普及を図るため、都道府県公安委員会の認定を受けることができ、平成22年12月末現在、1万707件が認定されている。
(3)二輪車安全運転対策の推進
- ア
- 普通二輪車講習及び大型二輪車講習
普通二輪免許を受けようとする者は普通二輪車講習を、大型二輪免許を受けようとする者は大型二輪車講習を受講することが義務付けられている。 - イ
- 二輪車に係る特別学級の推進
取消処分者講習、停止処分者講習等において、二輪免許を保有する者を対象とした特別学級の編成を推進し、二輪車の交通事故の特徴や安全な二輪車の運転方法等を内容とする講習を行った。 - ウ
- 二輪免許交付時講習
主に二輪免許を新規取得した青少年層を対象として、免許証が交付される間における待ち時間を活用した二輪車の安全運転に関する講習を行った。 - エ
- 二輪運転者講習に対する協力
警察では、各都道府県の二輪車安全運転推進委員会が二輪車安全普及協会の協力を得て行っている二輪車安全運転講習及び原付安全運転講習に対し、講師として警察官等を派遣するなどの協力を行った。
(4)高齢運転者対策の充実
- ア
- 高齢者講習等
高齢者は、一般的に身体機能の低下が認められるが、これらの機能の変化を必ずしも自覚しないまま運転を行うことが事故の一因となっていると考えられる。このため、運転免許証の有効期間が満了する日における年齢が70歳以上の高齢者には、更新期間が満了する日前6月以内に高齢者講習を受講することが義務付けられている。
高齢者講習は、受講者に実際に自動車等の運転をしてもらうことや運転適性検査器材を用いた検査を行うことにより、運転に必要な適性に関する調査を行い、受講者に自らの身体的な機能の変化を自覚してもらうとともに、その結果に基づいて助言・指導を行うことを内容としており、この講習を受講した者は、更新時講習を受講する必要がないこととされている。平成22年中の高齢者講習の受講者は204万428人であった。
また、運転免許証の更新期間が満了する日における年齢が75歳以上の者については、運転免許証の更新期間が満了する日前6月以内に、講習予備検査(認知機能検査)を受けなければならないこととされており、検査の結果に基づく高齢者講習が行われている。平成22年中の講習予備検査(認知機能検査)の受検者は118万5,886人であった。
なお、一定の基準に適合する講習(特定任意高齢者講習)を受講した者は高齢者講習を受講する必要がないこととされている。さらに、コースにおける自動車等の運転をすることにより、加齢に伴って生ずる身体の機能の低下が自動車等の運転に著しい影響を及ぼしているかどうかについて、都道府県公安委員会の確認を受け、当該影響がない旨の確認書(チャレンジ講習受講結果確認書)の交付を受けた者は、簡易な特定任意高齢者講習を受ければよいこととされている。 - イ
- 更新時講習における高齢者学級の編成
更新時講習では、65歳以上70歳未満の者を対象とした高齢者学級を編成し、高齢運転者の運転特性や交通事故の特徴等を内容とする講習を行うよう努めた。 - ウ
- 高齢運転者標識(高齢者マーク)の表示促進
高齢運転者の安全意識を高めるため、高齢者マークの積極的な表示の促進を図った。 - エ
- 申請による運転免許の取消し等
高齢運転者が身体機能の低下などを理由に自動車等の運転をやめる際には、本人の申請により運転免許を取り消し、運転免許証を返納することができる。
また、返納した場合には、申請により運転経歴証明書を交付している。平成22年中の申請による運転免許の取消件数は6万5,605件(うち70歳以上は5万5,524件)で、運転経歴証明書の発行件数は2万5,771件(うち70歳以上は2万2,163件)であった。
(5)シートベルト、チャイルドシート及び乗車用ヘルメットの正しい着用の徹底
シートベルト、チャイルドシート及び乗車用ヘルメットの正しい着用を図るため、関係機関・団体と連携し、各種講習・交通安全運動等あらゆる機会を通じて、着用効果の啓発等着用徹底キャンペーンを積極的に行うとともに、着用義務違反に対する街頭での指導取締りの充実を図った。
(6)自動車安全運転センターの業務の充実
自動車安全運転センターは、道路の交通に起因する障害の防止及び運転免許を受けた者等の利便の増進に資することを目的として、次のような業務を行った。
- ア
- 安全運転研修業務
安全運転中央研修所では、高速周回路、中低速周回路、模擬市街路及び基本訓練コースのほか、スキッドパン※、モトクロス※、トライアル※コース等の特殊な訓練コースを備えており、実際の道路交通現場に対応した安全運転の実践的かつ専門的な知識、技能についての体験的研修を行い、安全運転教育について専門的知識を有する交通安全指導者や高度な運転技能と知識を有する職業運転者、安全運転についての実践的な能力を身に付けた青少年運転者の育成を図っている。平成22年度には、延べ5万2,106人の研修を実施した。 - ※スキッドパン
- スリップを体験するための特殊路面。
- ※モトクロス
- 自然な地形や自然に類似した路面状況で行われるモーター・サイクル競技。
- ※トライアル
- 自然の障害物等を適切な技術を用いて乗り越え、失点の少なさを競うモーター・サイクル競技。
- イ
- 少年交通安全研修業務
安全運転中央研修所の附属交通公園では、幼児及び小・中学校の児童・生徒を対象とし、歩行者及び自転車利用者としての適正な交通の方法等について参加・体験型の交通安全研修を行い、交通安全意識の啓発を図っている。平成22年度には、1万6,258人の研修を実施した。 - ウ
- 交通事故証明業務
交通事故当事者等の求めに応じて、交通事故の発生日時、場所、当事者の住所、氏名等を記載した交通事故証明書を交付した。 - エ
- 運転経歴証明業務
運転者の求めに応じて運転経歴証明書を交付し、運転者の利便を図った。運転経歴証明書は、企業等における安全運転管理を進める上での有効な資料としての利用価値が高いことから、運転経歴証明書の活用による具体的な安全運転管理の進め方についての手引書を配布するなど、その活用を推進した。
また、運転経歴証明書のうち、無事故・無違反証明書又は運転記録証明書の交付申請をした者(過去1年以上の間、無事故・無違反で過ごした者に限る。)に対して、証明書に加えSD(SAFE DRIVER)カードを交付し、安全運転者であることを賞揚するとともに、安全運転を促した。 - オ
- 累積点数通知業務
交通違反等の累積点数が運転免許の停止処分又は違反者講習を受ける直前の水準に達した者に対して、その旨を通知し安全運転の励行を促した。 - カ
- 調査研究業務
加齢に伴う職業ドライバーの運転技能の変化に関する調査研究、交通事故・違反特性とその後の事故率の関係とその活用方法に関する調査研究を行った。
(7)自動車運転代行業の指導育成等
平成22年末現在、全国で8,705業者が都道府県公安委員会の認定を受けて営業を行っている。自動車運転代行業に従事する従業員数は8万5,855人、使用されている随伴用自動車の台数は2万9,685台である。
自動車運転代行業の業務の適正な運営を図るため、平成20年2月に警察庁と国土交通省が連携し、運転代行サービスの利用環境を改善するための施策を「運転代行サービスの利用環境改善プログラム」として取りまとめ、これに盛り込まれた施策を実施した。
(8)独立行政法人自動車事故対策機構等による自動車運送事業等に従事する運転者に対する適性診断の充実
事業用自動車の運転者の運転行動の改善を図るため、独立行政法人自動車事故対策機構等において適性診断の受診が義務付けられている初任、高齢及び重大事故惹起運転者に対し、適性診断を実施した。
(9)悪質危険な運転者の早期排除等
- ア
- 運転免許の拒否及び保留
運転免許試験に合格した者が、過去に無免許運転等の交通違反をしたり、交通事故を起こしたりしたことがあるときは、点数制度によって免許を拒否し又は6月を超えない範囲で免許を保留することとされている。平成22年中における新規免許の拒否件数(点数制度によるものに限る。)は180件で、保留件数は866件であった。 - イ
- 運転免許の取消し及び停止
運転免許を受けた者が、運転免許取得後に交通違反を犯し又は交通事故を起こしたときは点数制度により、また、特定の病気、麻薬中毒等一定の事由に該当することとなったときには点数制度によらず、その者の運転免許を取り消し又は6月を超えない範囲で運転免許の効力を停止する処分を行うこととされている。
また、暴走行為を指揮した暴走族のリーダーのように自ら運転していないものの、運転者を唆して共同危険行為等重大な道路交通法違反をさせた者に対しても、運転免許の取消し等を行っている(第1-9表)。
3 運転免許制度の改善
運転免許証更新申請等に係る国民の負担軽減の観点から、更新申請書に添付する免許用写真の省略等、運転免許手続における簡素合理化を推進した。
また、障害のある運転免許取得希望者に対する利便性の向上を図るため、受験者である障害者が持ち込んだ車両による技能試験の実施、運転適性相談活動の充実等、障害者に配意した施策を推進した。
4 安全運転管理の推進
安全運転管理者及び副安全運転管理者に対する講習を充実するなどにより、これらの者の資質及び安全意識の向上を図るとともに、事業所内で交通安全教育指針に基づいた交通安全教育が適切に行われるよう安全運転管理者等を指導した。
また、安全運転管理者等の未選任事業所の一掃を図り、企業内の安全運転管理体制を充実強化し、安全運転管理業務の徹底を図った。
さらに、事業活動に関してなされた道路交通法違反等についての使用者等への通報制度を十分活用するとともに、使用者、安全運転管理者等による下命、容認違反等については、使用者等の責任追及を徹底し適正な管理を図った。
事業活動に伴う交通事故防止を更に促進するため、映像記録型ドライブレコーダー等、安全運転の確保に資する車載機器等を効果的に活用した交通安全教育や安全運転管理の手法等について周知を図った。
(1)安全運転管理者等の現況
安全運転管理者は、道路交通法により、自動車を5台以上使用する又は乗車定員11人以上の自動車を1台以上使用する事業所等において選任が義務付けられており、また、自動車を20台以上使用する事業所には、その台数に応じ、副安全運転管理者を置くことが義務付けられている(第1-10表)。
安全運転管理者・副安全運転管理者の年齢別構成では40歳代と50歳代が多く、職務上の地位別構成では、安全運転管理者については課長以上が約半数を占め、副安全運転管理者についても課長以上が4割以上を占めた(第1-11表)。
(2)安全運転管理者等に対する講習の実施状況
都道府県公安委員会は安全運転管理者の資質の向上を図るため、毎年1回、自動車及び道路交通に関する法令の知識、安全運転に必要な知識、安全運転管理に必要な知識等を内容とした講習を実施した。
平成21年度における安全運転管理者講習は2,327回実施され、全受講対象者の98.7%に当たる32万6,057人が受講し、また、副安全運転管理者講習は延べ1,923回実施され、全受講対象者の98.5%に当たる5万9,563人が受講した(第1-12表)。
(3)安全運転管理者協議会等に対する指導育成
企業等における自主的な安全運転管理を推進するとともに、安全運転管理者等の資質の向上を図るため、安全運転管理者等の組織への加入促進、自主的な検討会の開催、自動車安全運転センター安全運転中央研修所における研修の実施、無事故無違反運動等に対する指導育成等を行った。
都道府県ごとに組織されている安全運転管理者協議会に対しては、安全運転管理者等研修会の開催、事業所に対する交通安全診断等の実施を始め、交通安全教育資料及び機関誌(紙)の発行等について積極的に指導したほか、同協議会の自主的活動の促進を図っている。また、同協議会は、全国交通安全運動等を推進するとともに、職域における交通安全思想の普及活動に努めた。
5 自動車運送事業者の安全対策の充実
事業用自動車の事故削減に向けた取組を一層進めるべく「今後10年間で事業用自動車の死者数・人身事故件数を半減」、「飲酒運転ゼロ」を目標として平成21年3月に策定した「事業用自動車総合安全プラン2009」に基づき、各種取り組みを進めているところである。
また、本プランの目標を確実に達成するため、PDCAサイクルに沿った定期的・継続的なチェックを実施し、毎年、関係者間で施策の進捗状況、目標の達成状況等を確認するとともに、交通事故の要因分析も踏まえつつ、必要な場合には新たな施策を検討していく。
(1)自動車運送事業者等に対する指導監督の充実
事故削減、事後チェック機能の強化及び事業用自動車の輸送の安全の向上を図るため、自動車運送事業の監査方針、行政処分基準等を改正し、自動車事故報告規則(昭和26年運輸省令第104号)に基づく自動車事故報告書に記載された内容に法令違反の疑いがある事業者等を監査端緒に明確化及び点呼におけるアルコール検知器の備えに対する処分基準の創設等を行った。(H23.4.1施行)
(2)安全運転の確保に資する機器の普及促進の充実
自動車運送事業者における交通事故防止のための取り組みを支援する観点から、デジタル式運行記録計等の運行管理の高度化に資する機器の導入に対する補助制度を創設した。
(3)運輸安全マネジメント制度の充実
平成18年10月より導入した「運輸安全マネジメント制度」により、事業者が経営トップから現場まで一丸となって安全管理体制を構築し、国がその実施状況を確認する運輸安全マネジメント評価を22年12月末までに延べ487社に対して実施した。
(4)自動車運送事業者に係る事故の要因分析の実施
事業用自動車の事故について、運行管理その他事業運営等の要因の把握や交通事故発生傾向の分析を行う観点から、自動車運送事業に係る交通事故要因分析検討会を開催し、平成22年に発生した社会的影響の大きい重大事故等のミクロ調査・分析を行った。さらに、バス火災事故調査小委員会を設置し、事故の原因究明及びその結果を踏まえた同種事故の再発防止策について重点的に検討を行った。
(5)運行管理者等に対する指導講習の充実
運行管理者等に対する指導講習について、平成21年度に引き続き、模擬点呼の実施や運送事業者の事故防止に関する取組事例の紹介等講習内容の充実を図るとともに、視聴覚機材の活用等による効果的な講習を実施し、過労運転・過積載の防止等運行の安全を確保するための指導の徹底を図った。
(6)貨物自動車運送事業安全性評価事業の促進
貨物自動車運送適正化事業実施機関では、貨物自動車運送事業者について、利用者がより安全性の高い事業者を選択できるようにするとともに、事業者全体の安全性向上に資するため、平成15年度から、事業者の安全性を正当に評価・認定し、公表する「貨物自動車運送事業安全性評価事業」を実施している。22年12月現在、15,217事業所に対して「安全性優良事業所」の認定を行っている。
6 交通労働災害の防止等
(1)交通労働災害の防止
全産業で発生した労働災害のうち死亡災害についてみると、道路上の交通事故による死亡者は、全体の死亡者数の23.3%を占め、特に陸上貨物運送事業では事業の特性から道路上の交通事故によるものが57.1%を占めた(第1-13表)。
都道府県労働局、労働基準監督署、関係団体を通じて、平成20年4月に改正した「交通労働災害防止のためのガイドライン」に基づき、自動車運転者の睡眠時間の確保に配慮した適正な労働時間等の管理及び走行管理の実施等の対策を積極的に推進するよう、関係事業者に対し周知徹底することにより、交通労働災害防止対策の推進を図った。
(2)運転者の労働条件の適正化等
- ア
- 自動車運転者の労働条件確保のための監督指導等
自動車運転者の労働時間等の労働条件の向上を図り、もって交通労働災害の防止に資するため、自動車運転者を使用する事業場に対し、監督指導を実施し(第1-14表)、労働基準法(昭22法49)等の関係法令及び自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(平元労働省告示7)の遵守を図った。 - イ
- 相互通報制度等の活用
交通関係行政機関が、相互通報制度等を活用し、連携をより一層密にすることにより、協力して自動車運送事業者等の労務管理及び運行管理の適正化を図った。 - ウ
- 自主的労務管理の推進
事業主自らが労務管理の改善意欲を高めることにより、業界及び各事業場の自主的な労務改善が行われるよう自動車労務改善推進員(民間有識者に委嘱)を中心として指導を行った。
7 道路交通に関する情報の充実
(1)道路交通情報の充実
多様化する道路利用者のニーズに応えるため、道路利用者に対し必要な道路交通情報を提供することにより、安全かつ円滑な道路交通を確保するとともに、光ファイバーネットワーク等の新たな情報技術を活用しつつ、交通監視カメラ、路側通信システム、車両感知器、交通情報板等の既存の情報収集・提供体制の充実を図った。
また、予測交通情報を提供する事業者の届出制、不正確又は不適切な予測交通情報を提供した事業者に対する是正勧告措置等を規定した道路交通法(昭35法105)及び交通情報を提供する際に事業者が遵守すべき事項を定めた交通情報の提供に関する指針(平14国家公安委員会告示12)に基づき、事業者に対する指導・監督を行い、交通情報提供事業の適正化を図るなどにより、警察や道路管理者により収集された道路交通情報を活用した民間事業者による正確かつ適切な道路交通情報の提供を促進した。
さらに、ITSの一環として、運転者に渋滞情報等の道路交通情報を提供するVICSの整備・拡充を積極的に図ることにより、交通の分散を図り、交通渋滞を解消し、交通の安全と円滑化を推進した。加えて、高度化された交通管制センターを中心に、個々の車両等との双方向通信が可能な光ビーコンを媒体とし、高度な交通情報提供、車両の運行管理、公共車両の優先、交通公害の減少、安全運転の支援、歩行者の安全確保等を図ることにより交通の安全及び快適性を確保しようとするUTMSの構想に基づき、システムの充実、キーインフラである光ビーコンの整備等の施策の推進を図った。
(2)危険物輸送に関する情報提供の充実等
危険物の輸送中の事故による大規模な災害を未然に防止するため、関係省庁の密接な連携の下に、危険物の運送業者に対し適正な運行計画の作成等、運行管理の徹底、関係法令の遵守、異常・事故発生時の応急措置を記したイエローカード(緊急連絡カード)の携行及び容器イエローカードの添付等を指導し、危険物輸送上の安全確保の徹底を図った。
また、危険物運搬車両の交通事故により危険物の流出事故等が発生した場合に、安全かつ迅速に事故の処理等を行うため、危険物災害等情報支援システムの登録データを更新し、消防機関に対し、危険物の物性及び応急措置等の情報提供を行った。
(3)気象情報等の充実
道路交通に影響を及ぼす台風、大雨、大雪、津波等の自然現象について、的確に実況監視を行い、適時適切な予報・警報等を発表・伝達して、事故の防止及び被害の軽減に努めた。
- ア
- 気象監視体制の整備
平成22年7月1日に運輸多目的衛星新1号「ひまわり6号」から運輸多目的衛星新2号「ひまわり7号」への運用切替を行った。また、静止地球環境観測衛星「ひまわり8号及び9号」の製造に平成21年度から着手し、順調に整備を進めている(平成26年度及び平成28年度打ち上げ予定)。 - イ
- 気象情報の高度化
- (ア)
- 激しい突風等に対する情報提供と降水に関する気象情報の高度化
局地的な激しい気象現象に伴う突風や雷に係る分布図形式の短時間予測情報として、「雷ナウキャスト」と「竜巻発生確度ナウキャスト」の提供を開始した。
また、従来からある降水分布に係る短時間予測情報「降水ナウキャスト」の発表を、10分間隔から5分間隔に短縮した。 - (イ)
- 市町村を対象区域とした気象警報等の発表
気象警報・注意報について、警戒の必要な市町村を明確にし、効果的な防災対応につながるよう、市町村を対象区域として発表することとした。 - (ウ)
- 道路情報提供装置等の整備
安全な通行を確保するため、道路の積雪状況や路面状況等を収集し、道路利用者に提供する道路情報提供装置等を整備した。 - ウ
- 地震・津波・火山監視業務の整備
- (ア)
- 地震・津波監視業務の整備
緊急地震速報の迅速化や精度向上のため、島しょ部等に新設した地震観測点の活用を行った。
地震・津波に関する防災情報については、津波情報に活用する国土交通省港湾局及び気象庁が管理している検潮所や、国土交通省港湾局が設置した全地球測位システム(GPS)波浪計の数を増やし、津波による災害の発生が予想された際は津波警報・津波注意報を的確・迅速に発表した。
さらに、関係機関や基盤的調査観測網によるデータを収集し、その成果を防災情報等に活用するとともに、地震調査研究推進本部地震調査委員会に提供するなど、観測・提供体制の連携を進め、地震防災に資する地震調査研究の推進に努めた。 - (イ)
- 火山の情報の充実
平成21年度から22年度にかけて47の火山の観測施設整備を進め、関係機関のデータの共有化などにより火山監視体制の強化等を行った。また、全国4か所の火山監視・情報センターにおいて、活動が活発な霧島山(新燃岳)・桜島・浅間山を始めとした全国の活火山を監視し、迅速かつ適切な噴火警報等の発表に努めた。
噴火時等にとるべき防災対応を分かりやすく示すために、火山活動の状況を「避難」や「入山規制」等の必要な防災対応を踏まえて5段階に区分した噴火警戒レベルを、29火山に導入した(平成23年4月現在)。 - エ
- 気象知識の普及等
気象・地象・水象の知識の普及など気象情報の利用方法等に関する講習会等の開催、広報資料の配布等を行ったほか、防災機関の担当者を対象に予報、警報等の伝達等に関する説明会を開催した。
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