平成25年度　交通事故の状況及び交通安全施策の現況

第2編　海上交通

第1章　海難等の動向

1　近年の海難等の状況

我が国の周辺海域において，交通安全基本計画の対象となる海難に遭遇した船舶（以下「海難船舶」という。）の隻数の推移をみると，第２次交通安全基本計画期間（昭和51～55年度）の年平均隻数では3,232隻であったものが，平成25年では，2,285隻となっており，約３割減少した（第2-1図）。

これを用途別にみると，漁船の海難は1,382隻（全体の43％）であったものが，636隻（28％）まで減少し，貨物船の海難は864隻（27％）であったものが263隻（12％）まで減少した。

一方，モーターボート，ヨット等のプレジャーボート^※及び遊漁船（以下「プレジャーボート等」という。）の海難は376隻（12％）であったものが，1,088隻まで増加し，全体の48％を占めるに至った。

このほか，タンカーの海難は，199隻であったものが74隻まで減少し，旅客船の海難については75隻であったものが42隻まで減少した（第2-2図）。

このような海難船舶の状況から，船舶自動識別装置（AIS）※を活用した次世代型航行支援システムの運用を始め，海難防止思想の普及，民間団体の海難防止活動の展開，気象・海象情報の提供の充実等の各種安全対策を計画的に推進してきた成果が認められる反面，プレジャーボート等の海難の増加については，近年の国民の余暇志向の高まりに伴い，マリンレジャーが急速かつ広範に国民に普及し，運航のための初歩的な知識・技能の不足した運航者の増加が，その背景にあるものと考えられる。

また，交通安全基本計画の対象となる船舶からの海中転落者数の推移をみると，第２次交通安全基本計画期間の年平均人数では313人であったものが，平成25年では177人となっており，４割以上の減少となった（第2-3図）。

海難による死者・行方不明者の数は，第２次交通安全基本計画期間の年平均で426人であったものが，平成25年では98人となっており，８割の減少となった（第2-1図）。

また，船舶からの海中転落による死者・行方不明者の数は，第２次交通安全基本計画期間の年平均で268人であったものが，平成25年では100人となっており，６割以上の減少となった。

平成26年１月，広島県大竹市阿多田島沖で，海上自衛隊輸送艦「おおすみ」と小型船「とびうお」の衝突事故が発生し，「とびうお」の乗組員４名が海に投げ出されたため，「おおすみ」及び海上保安庁等が救助活動を実施した。

当該事故の原因について，運輸安全委員会による調査及び海上保安庁による捜査を進めている。

2　平成25年中の海難等及び海難救助の状況

（1）海難等の状況

ア　海難船舶等の状況

平成25年の海難船舶は，2,285隻，211万総トンであり，次のような特徴がみられる。

(ア)　用途別状況

船舶の用途別では，プレジャーボート等が1,088隻（48％），漁船が636隻（28％），貨物船が263隻（12％），タンカーが74隻（３％），旅客船が42隻（２％），その他が182隻（８％）である。

(イ)　海難種類別状況

海難種類別では，衝突が675隻（30％），機関故障が356隻（16％）等である。

(ウ)　距岸別状況

距岸別では，港内が875隻（38％），港内を除く３海里未満が1011隻（44％），３海里以上12海里未満で発生した海難が287隻（13％）等となっており，12海里未満で発生した海難が全体の95％と大半を占めた。

(エ)　海難原因別状況

海難原因別では，見張不十分が481隻（21％），操船不適切が307隻（13％），船体機器整備不良が210隻（９％）等運航の過誤によるものが全体の65％を占め，これに機関取扱不良289隻等を加えた人為的要因に起因するものが全体の80％を占めた。

また，船舶からの海中転落者数は177人で，これを船舶の用途別にみると，漁船が91人（51％）で最も多く，次いでプレジャーボート等が49人（28％），一般船舶が37人（21％）である。

イ　死者・行方不明者の発生状況

平成25年における，海難による死者・行方不明者数は98人（前年より12人増）であり，このうち52％が漁船，23％がプレジャーボート等によるものである。

また，船舶からの海中転落による死者・行方不明者数は，112人（前年より２人減少）であり，このうち57％が漁船，18％がプレジャーボート等によるものである。

（2）海難救助の状況

ア　海難船舶等の救助状況

平成25年は，海難船舶2,285隻の中で自力入港した725隻を除いた1,560隻のうち，1,352隻が救助され，救助率（自力入港を除く海難船舶隻数に対する救助された隻数の割合）は87％であった。海上保安庁は，巡視船艇延べ2,086隻，航空機延べ551機及び特殊救難隊員延べ186人を出動させ，海難船舶546隻を救助した。また，それ以外の海難船舶についても，巡視船艇・航空機による捜索，救助手配等を行っており，合わせると1,526隻の海難船舶（全体の67％）に対して救助活動を行った（第2-4図）。

イ　人命の救助状況

平成25年は，海難船舶の乗船者10,062人の中で自力救助の5,948人を除いた4,114人のうち4,038人が救助され，救助率（自力救助を除く海難船舶の乗船者に対する救助された人数の割合）は98％であった。

また，船舶からの海中転落者177人の中で自力救助の16人を除いた161人のうち61人が救助され，救助率（自力救助を除く海中転落者に対する救助された人数の割合）は38％であった。海上保安庁は，巡視船艇延べ328隻，航空機延べ173機を出動させ，海中転落者（自力救助を除く。）８人を救助した。

3　平成25年中のプレジャーボート等の海難等及び海難救助の状況

（1）海難等の状況

平成25年のプレジャーボート等の海難船舶隻数は1,088隻であり，前年より45隻増加した。これに伴う死者・行方不明者数は23人であり，前年より11人増加した。

この1,088隻についてみると，次のような特徴がみられる。

ア　船型別状況

船型別では，モーターボートが724隻（67％），遊漁船が76隻（７％），ヨットが108隻（10％），水上オートバイが90隻（８％），手漕ぎボートが90隻（８％）である（第2-5図）。

イ　海難種類別状況

海難種類別では，機関故障が225隻（21％），衝突が199隻（18％），運航阻害が170隻（16％），乗揚が148隻（14％），推進器障害が92隻（８％），浸水が61隻（６％），転覆が48隻（４％），安全阻害が39隻（４％）等である（第2-6図）。

ウ　海難原因別状況

海難原因別では見張り不十分が195隻（18％），機関取扱不良が182隻（17％），船体機器整備不良が153隻（14％），操船不適切が115隻（11％），気象・海象不注意が79隻（７％）等の人為的要因に起因するものが全体の82％を占めた（第2-7図）。

また，プレジャーボート等からの海中転落者数は49人で前年より２人増加した。このうち，死者・行方不明者数は19人で前年より１人減少した。

（2）海難救助の状況

平成25年は，プレジャーボート等の海難船舶1,088隻の中で自力入港した200隻を除いた888隻のうち800隻が救助され，救助率は90％であった。海上保安庁は，巡視船艇延べ880隻，航空機延べ209機及び特殊救難隊員延べ71人を出動させ，406隻を救助した。また，それ以外の海難船舶についても，巡視船艇・航空機による捜索，救助手配等を行っており，合わせると839隻の海難船舶（プレジャーボート等の海難船舶全体の77％）に対して救助活動を行った。