平成26年度 交通事故の状況及び交通安全施策の現況

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第1編 陸上交通

第1部 道路交通

第2章 道路交通安全施策の現況

第5節 道路交通秩序の維持
1 交通指導取締りの状況

(1)交通指導取締りの状況

平成26年中における車両等の道路交通法違反(罰則付違反)の取締り件数は約703万件で,悪質性・危険性の高い違反としては,最高速度違反が約184万件,酒酔い・酒気帯び運転が約2万7千件,無免許運転が約2万4千件等である(第1-39図)。


第1-39図 交通違反取締り(告知・送致)件数(平成26年)

なお,点数告知に係る違反の取締り件数について主なものをみると,座席ベルト装着義務違反が約127万件で,ヘルメット装着義務違反が約1万9千件等である。また,放置違反金納付命令件数が約125万件である。


(2)高速自動車国道等における交通指導取締りの状況

平成26年中の高速自動車国道等における交通違反取締り状況は,第1-15表のとおりである。


第1-15表 高速自動車国道等における交通違反取締り状況
主法令違反別 平成26年 平成25年 対前年比
件数 構成率 件数 構成率 増減数 増減率
 
総数 585,473 100.0 625,281 100.0 -39,808 -6.4
最高速度違反 396,905 67.8 427,493 68.4 -30,588 -7.2
積載違反 1,088 0.2 1,260 0.2 -172 -13.7
車両通行帯違反 82,459 14.1 85,299 13.6 -2,840 -3.3
車間距離不保持 9,033 1.5 11,973 1.9 -2,940 -24.6
酒酔い,酒気帯び運転 299 0.1 382 0.1 -83 -21.7
駐・停車違反 133 0.0 139 0.0 -6 -4.3
無免許,無資格運転 818 0.1 883 0.1 -65 -7.4
その他 94,738 16.2 97,852 15.6 -3,114 -3.2

注 警察庁資料による。


(3)交通反則通告制度の適用状況

平成26年中に反則行為として告知した件数は671万7,978件で,車両等運転者の道路交通法違反(罰則付違反)の取締り件数中に占める比率(反則適用率)は95.5%である。

反則告知件数を成人・少年別にみると,成人は653万2,910件,少年は18万5,068件である。また,行為別にみると,主なものは,最高速度違反が170万7,641件(25.4%),指定場所一時不停止違反が122万6,050件(18.3%)である。


2 交通指導取締りの強化等

(1)一般道路における効果的な指導取締りの強化等

平成25年に有識者懇談会においてとりまとめられた「交通事故抑止に資する取締り・速度規制等の在り方に関する提言」を踏まえ,交通事故実態の分析結果に基づき,死亡事故等重大事故に直結する悪質性・危険性の高い違反及び迷惑性が高く地域住民からの取締り要望の多い違反に重点を置いた指導取締りを推進した。

また,赤色灯を点灯させたパトカー等による警戒活動や通学時間帯,薄暮時間帯における街頭活動を推進したほか,交通事故抑止対策について国民の理解を深めるため,取締りの方針や効果の情報発信に努めるなど,交通事故抑止に資する取組を推進した。

さらに,事業活動に関してなされた放置駐車,過積載運転,過労運転,最高速度違反等の違反及びこれらに起因する事故事件については自動車の使用者等の責任,いわゆる背後責任の追及を図るとともに,自動車の使用制限処分を行うなどこの種の違反の根源的対策を推進したほか,無車検運行,無保険車運行等各種交通関係法令違反についても積極的な取締りに努めた。

また,自転車利用者の交通事故及び自転車利用者による危険・迷惑行為を防止するために,無灯火,二人乗り,一時不停止等に対する指導警告を強化するとともに,制動装置不良自転車(ブレーキがない自転車等)の運転のほか,違反行為により通行車両や歩行者に対する具体的危険を生じさせたり,指導警告に従わず違反行為を繰り返したりするなどの悪質,危険な自転車利用者に対しては,交通切符を適用した検挙措置を講じた。

さらに,警察では,飲酒運転に対する厳正な取締りを行っており,特に,夜間における取締体制を確保し,飲酒運転に係る取締結果や交通事故発生状況を的確に分析した上,飲酒運転が常態的に見られる時間帯・場所に重点を置いた効果的な飲酒運転の取締りを推進した。

また,無免許運転又は飲酒運転を検挙した際は,その周辺者に対する的確な捜査を行い,これらの違反を助長する周辺者に対する取締りを推進した。


(2)高速自動車国道等における指導取締りの強化等

高速自動車国道等における安全で円滑な交通流を確保するため,関係都道府県の高速道路交通警察体制の充実強化を図るとともに,多角的な交通事故分析により交通危険箇所に重点を置いた機動警ら,駐留監視活動等を強化して交通流の整序に努め,悪質性・危険性・迷惑性の高い著しい速度超過,飲酒運転,車間距離不保持,通行帯違反等を重点とした指導取締りを推進した。

また,関係機関・団体と連携し,シートベルト着用の普及啓発活動を推進した。


(3)科学的な指導取締りの推進

交通事故発生状況と指導取締り実施状況を検証するとともに,速度違反自動取締装置を活用するなど,交通事故実態に的確に対応した科学的かつ効率的な指導取締りを推進した。


3 交通事故事件捜査体制の強化

(1)交通事故事件捜査の現況

交通事故に係る自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(平25法86)による危険運転致死傷罪及び過失運転致死傷罪等事件の平成26年中における送致件数は,55万749件である。

なお,平成26年中のひき逃げ事件(交通事故に係る無申告事件を含む。)の発生件数は1万8,064件で,検挙件数は8,158件である(第1-16表)。また,悪質・危険な運転行為による事故については,事案の内容に応じて,危険運転致死傷罪等の適用を視野に入れた適正な交通事故事件捜査を推進した。


第1-16表 ひき逃げ事件の発生・検挙状況
  年別 ひき逃げ・無申告事件の発生・検挙状況
区分   平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年
死亡 発生 161 187 170 156 153
検挙 148 167 167 144 156
検挙率 91.9 89.3 98.2 92.3 102.0
重傷 発生 1,411 1,352 1,412 1,264 1,197
検挙 716 720 765 681 675
検挙率 50.7 53.3 54.2 53.9 56.4
軽傷 発生 19,880 19,164 18,878 17,614 16,714
検挙 8,330 7,960 8,231 7,486 7,327
検挙率 41.9 41.5 43.6 42.5 43.8
合計 発生 21,452 20,703 20,460 19,034 18,064
検挙 9,194 8,847 9,163 8,311 8,158
検挙率 42.9 42.7 44.8 43.7 45.2

注 1 ひき逃げ事件とは、人の死傷を伴う道路上の交通事故に係る救護措置義務違反をいう。
2 無申告事件とは、人の死傷を伴う道路上の交通事故に係る報告義務違反をいう。


(2)適正かつ緻密な交通事故事件捜査の推進

悪質な交通事故事件,事故原因の究明が困難な交通事故事件等について組織的かつ重点的な捜査並びに正確かつ綿密な実況見分及び鑑識活動を行うなど,適正かつ緻密な交通事故事件捜査を推進した。

また,交通事故自動記録装置を始めとする交通事故捜査支援システム等を活用し,科学的捜査を推進した。


4 暴走族対策の強化

近年,暴走族の構成員は減少傾向にあるが,依然として少人数によるゲリラ的な暴走や数グループ合同による集団暴走等を活発に行うとともに,一般人に対する強盗事件等の凶悪事件を引き起こしている。

このような最近の暴走族の実態や,これに対する国民の強い取締り要望にかんがみ,「暴走族対策の強化について」(平成13年2月5日暴走族対策関係省庁担当課長等会議申合せ)に基づき,政府一体となった暴走族対策の推進に努めた。

平成26年末現在,警察が把握している全国の暴走族の総数は,6,830人である。この内訳は爆音を伴う暴走等を集団で行う暴走族(共同危険型)が282グループ,5,656人であり,ローリング,ドリフト走行等の違法な走行により運転技術等を競う暴走族(違法競走型)が1,174人である(第1-17表)。


第1-17表 暴走族の勢力及びい集・走行状況
  平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年
区分  
共同危険型 グループ数 462 405 351 311 282
総人員(人) 7,850 7,193 6,164 5,817 5,656
い集・走行回数(回) 3,112 2,670 3,010 2,710 2,965
参加延べ人員(人) 26,486 22,465 24,826 21,735 21,899
参加延べ車両(台) 18,197 15,882 17,383 15,752 15,796
違法競走型 総人員(人) 1,214 1,316 1,133 1,116 1,174
い集・走行回数(回) 454 253 307 301 166
参加延べ車両(台) 5,026 2,690 2,305 1,703 2,699

注 警察庁資料による。


また,元暴走族等が「旧車會」と称するグループを結成し,景勝地等を目指して,暴走族風に改造した旧型の自動二輪車等を連ねて大規模な集団走行を行う実態が全国各地で確認されている。


(1)暴走族追放気運の高揚及び家庭,学校等における青少年の指導の充実

暴走族追放の気運を高揚させるため,地方公共団体に「暴走族根絶(追放)条例」等の制定を働き掛けるとともに,その運用に協力したほか,報道機関に対する資料提供等による広報活動を積極的に行った。

また,家庭,学校,職場,地域等において,青少年に対し,「暴走族加入阻止教室」を開催するなどの指導等を促進した。さらに,関係団体や暴走族相談員等との連携の下に,暴走族の解体,暴走族への加入阻止,暴走族からの離脱等の支援指導を徹底した。暴走族問題と青少年の非行等問題行動との関連性にかんがみ,青少年育成団体等との連携を図るなど,青少年の健全育成を図る観点から施策を推進した。

学校において,暴走族問題等を取り上げた非行防止教室を開催するとともに,文部科学省と独立行政法人教員研修センターの共催による交通安全教育担当教員等の研修の実施などを通じて,児童生徒等に対する交通安全教育の充実を図った。


(2)暴走行為阻止のための環境整備

暴走族及びこれに伴う群衆のい集場所として利用されやすい施設の管理者に協力を求め,い集させないための施設の管理改善等の環境づくりを推進するとともに,地域における関係機関・団体が連携を強化し,暴走行為等ができない道路環境づくり及び公安委員会による交通規制を積極的に行った。また,事前情報の入手に努め,集団不法事案に発展するおそれがあるときは,早期に暴走族と群衆を隔離するなどの措置を講じた。


(3)暴走族に対する指導取締りの強化

暴走族に対しては,共同危険行為等の禁止違反を始めとする各種法令を活用した取締りを強力に推進したほか,6月には「暴走族取締り強化期間」を実施した。また,暴走行為に使用された車両等を積極的に押収し,暴走族と車両の分離を図るとともに,不正改造等暴走行為を助長する行為に対しても背後責任の追及を行った。平成26年中の暴走族の検挙状況をみると,前年に比べ総検挙件数は24.3%減少し1万3,418件であった(第1-18表)


第1-18表 暴走族による不法事案の検挙状況
  平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年
区分  
総数(件) 28,580 27,553 23,991 17,714 13,418
道路交通法違反 26,508 25,506 22,013 15,799 11,727
うち共同危険行為等禁止違反 240 225 165 148 152
うち騒音関係違反 3,021 3,455 3,280 2,910 1,974
特別法犯 406 380 339 334 280
刑法犯 1,647 1,650 1,622 1,568 1,402
暴力行為等処罰法違反 19 17 17 13 9

注 1 警察庁資料による。
2 「騒音関係違反」とは,道路交通法違反のうち,「近接排気騒音」,「騒音運転等」及び「消音器不備」をいう。
3 「暴力行為処罰法違反」とは,「暴力行為等処罰ニ関スル法律違反」をいう。


(4)暴走族関係事犯者の再犯防止

暴走族関係事犯者の捜査に当たっては,個々の犯罪事実はもとより,組織の実態やそれぞれの被疑者の非行の背景となっている行状,性格,環境等の諸事情を明らかにしつつ,事件の速やかな処理に努めるとともに,グループの解体や暴走族グループから加入者等を離脱させるなど暴走族関係事犯者の再犯防止に努めた。

少年院送致決定を受けた暴走族少年あるいは保護観察に付された暴走族関係事犯少年等の処遇に当たっては,遵法精神のかん養,家庭環境の調整,交友関係の改善指導,暴走族組織からの離脱指導等,再犯・再非行防止に重点を置いた個別処遇に努めた。

なお,平成25年に保護観察に付された者のうち,保護観察開始前に暴走族と関係があった者は1,271人である。

さらに,暴走族問題が地域社会に深くかかわる問題であることに鑑み,都道府県及び市町村に設置されている「暴走族対策会議」の下に,暴走族対策の推進に携わる機関及び団体の代表から構成される「暴走族対策推進幹事会」の設置を働き掛けた。


(5)車両の不正改造の防止

不適切な着色フィルムの貼付,消音器の切断・取り外し等の不正改造車等を排除し,自動車の安全運行を確保するため,「不正改造車を排除する運動」を年間を通じて実施した。特に,平成26年6月を強化月間として,自動車検査のより一層確実な実施に加え,広報活動の一層の推進,関係者への指導徹底,街頭検査の重点化等を行った。

また,道路運送車両法の不正改造行為の禁止及び不正改造車両に対する整備命令に係る規定を的確に運用し,不正改造車の排除に努めた。


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