第1編 陸上交通 第1部 道路交通 第2章 道路交通安全施策の現況
第4節 車両の安全性の確保

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第1編 陸上交通

第1部 道路交通

第2章 道路交通安全施策の現況

第4節 車両の安全性の確保
1 自動車保有台数の推移

平成27年12月末現在の自動車保有台数は約8,130万台であり,前年に比べて29万台(0.4%)増加し,自動車1台当たりの人口は1.6人(27年10月末現在)である(第1-40図)。


第1-40図 自動車保有台数の推移

自動車保有台数を用途別及び車種別にみると,小型乗用自動車が約2,155万台と最も多数を占め,全自動車台数の26.5%を占めている。そのほか普通乗用自動車が約1,794万台で22.1%,軽四輪乗用自動車が約2,150万台で26.5%となっており,この3車種で全体の75.0%を占めている。また,対前年増加率では,軽四輪乗用自動車2.5%が目立っている(第1-13表)。

第1-13表 用途別及び車種別自動車保有台数 (各年12月末現在)
用途別・車種別 平成27年 平成26年 対前年比
台数 構成率 台数 構成率 増減数 増減率
   
貨物用 普通車 2,316,208 2.8 2,294,449 2.8 21,759 0.9
小型四輪車 3,552,373 4.4 3,581,884 4.4 -29,511 -0.8
小型三輪車 1,022 0.0 1,021 0.0 1 0.1
被けん引車 162,350 0.2 159,863 0.2 2,487 1.6
軽四輪車 8,634,637 10.6 8,748,653 10.8 -114,016 -1.3
軽三輪車 1,233 0.0 1,239 0.0 -6 -0.5
貨物用計 14,667,823 18.0 14,787,109 18.3 -119,286 -0.8
乗合用 普通車 110,096 0.1 108,545 0.1 1,551 1.4
小型車 119,293 0.1 118,399 0.1 894 0.8
乗合用計 229,389 0.3 226,944 0.3 2,445 1.1
乗用 普通車 17,935,861 22.1 17,714,352 21.9 221,509 1.3
小型車 21,547,823 26.5 21,975,294 27.1 -427,471 -1.9
軽四輪車 21,504,199 26.5 20,978,424 25.9 525,775 2.5
乗用計 60,987,883 75.0 60,668,070 74.9 319,813 0.5
特種(殊)用途用 普通車 1,053,063 1.3 1,042,640 1.3 10,423 1.0
小型車 147,002 0.2 146,654 0.2 348 0.2
大型特殊車 338,508 0.4 334,870 0.4 3,638 1.1
軽四輪車 160,404 0.2 158,418 0.2 1,986 1.3
特種(殊)用途用計 1,698,977 2.0 1,682,582 2.0 16,395 1.0
二輪車 小型二輪車 1,657,263 2.0 1,636,922 2.0 20,341 1.2
軽二輪車 2,056,119 2.5 2,007,927 2.5 48,192 2.4
二輪車計 3,713,382 4.6 3,644,849 4.5 68,533 1.9
総計 81,297,454 100.0 81,009,554 100.0 287,900 0.4

注 1 国土交通省資料による。
2 特種用途自動車とは,緊急車,冷蔵・冷凍車のように特殊の目的に使用されるものをいい,大型特殊自動車とは,除雪車,ブルドーザー等のように特殊の構造を有するものをいう。


2 車両の安全性に関する基準等の改善の推進

(1)道路運送車両の保安基準の拡充・強化等

ア 車両の安全対策の推進

第10次交通安全基本計画(計画年度:平成28~32年度)の策定にあわせ,平成27年10月より交通政策審議会陸上交通分科会自動車部会技術安全ワーキンググループを設置し,歩行者,自転車及び高齢者の死亡事故が多いことや障害者が被害者となる事故の発生など最近の交通事故の状況,社会の変化,新技術の動向等を踏まえつつ,今後の車両の安全対策について検討を行った。

イ 道路運送車両の保安基準の拡充・強化

自動車の安全性の向上を図るため,電柱等との側面衝突(ポール側突)時の乗員保護要件やバッテリー式電気二輪自動車等の安全基準等10項目の国際基準を国内に導入した。また,燃料電池二輪自動車に関する安全基準を世界に先駆けて策定した。


(2)車両の安全性等に関する日本工業規格の整備

工業標準化法(昭24法185)に基づく自動車関係の日本工業規格について,JIS D 0808「高度道路交通システム―前方車両衝突軽減システム―操作,性能及び検証要求事項」を制定した。


3  先進安全自動車(ASV)の開発・実用化・普及の促進,自動走行システムの安全確保

先進技術を利用してドライバーの安全運転を支援する先進安全自動車(ASV)の開発・実用化・普及を促進すべく,平成23年度より開始した第5期先進安全自動車(ASV)推進計画をとりまとめ,産学官連携の下,ドライバー異常時対応システムや次世代の通信利用型安全運転支援システムに関するガイドラインを策定した。

また,衝突被害軽減ブレーキ,車両安定性制御装置,車線逸脱警報装置等ASV装置に対する補助を継続して実施するとともに,平成24年度より実施している衝突被害軽減ブレーキ搭載車両に対する税制特例措置について,27年度税制改正において対象車両の拡充を行った他,車両安定性制御装置搭載車両に対する特例措置を新たに講じた。

一方,自動走行システムの安全基準について国際的に議論すべく,国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)傘下の自動運転分科会及びWP29のブレーキ・走行装置分科会(GRRF)傘下の自動操舵専門家会議において,それぞれ英国及びドイツとの共同議長として,自動運転に関するセキュリティガイドラインや高速道路での自動運転を可能とする自動操舵の技術基準の策定活動を主導した。さらに国内においても,府省連携施策である「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」に基づき,通信利用型運転支援システムの実用化に向けた実証実験やドライバーとシステムの安全かつ円滑な意思疎通の方法等の自動運転の実用化に向けた取組を推進するとともに,「自動走行ビジネス検討会」において,15年程度先を見据えた自動走行システムの目指すべき方向性とその実現のための課題について整理を行った。


4 自動車アセスメント情報の提供等

自動車アセスメントは,市販されている自動車やチャイルドシートの安全性能評価試験を行い,その結果を公表することで,ユーザーが安全な自動車等を選択できる環境をつくり,安全な自動車等の普及を図ることを目的としている。平成26年度より,衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報装置など予防安全技術の評価を開始し,27年度には,後方視界情報提供装置の評価を開始した。27年度においては,総合安全性能評価11車種及び予防安全性能評価43車種の自動車並びに6機種のチャイルドシートの安全性能評価結果を公表した。


5 自動車の検査及び点検整備の充実

(1)自動車の検査の充実

ア 自動車検査の実施状況

自動車の安全確保と公害の防止を図るため,自動車検査独立行政法人(平成28年4月1日以降は独立行政法人自動車技術総合機構)と連携して,道路運送車両法(昭26法185)に基づき,自動車(軽自動車及び小型特殊自動車を除く。)の新規検査,継続検査及び構造等変更検査を行っており,平成26年度の検査実施車両は約2,535万台であった(第1-14表)。また,不正改造車の排除等を目的とした街頭検査を行っており,26年度の検査実施車両は,約13万台であった。


第1-14表 自動車検査実施状況
検査の種類 平成26年度 平成25年度 平成24年度 平成23年度 平成22年度
件数 構成率 件数 構成率 件数 構成率 件数 構成率 件数 構成率
 
新規検査 4,151,476 16.4 4,544,653 17.7 4,323,141 16.6 4,108,974 15.9 4,029,777 15.3
継続検査 21,129,078 83.4 21,122,536 82.1 21,602,844 83.1 21,658,151 83.8 22,267,168 84.4
構造等変更検査 63,938 0.3 65,132 0.3 68,637 0.3 70,700 0.3 78,948 0.3
整備不良車両の整備確認 1,386 0.0 1,567 0.0 1,711 0.0 2,054 0.0 2,169 0.0
25,345,878 100.0 25,733,888 100.0 25,996,333 100.0 25,839,879 100.0 26,378,062 100.0

注 1 国土交通省資料による。
2 整備不良車両の整備確認とは,道路運送車両法第54条及び第54条の2(整備命令等)並びに道路交通法第63条の規定による整備不良車両に必要な整備がなされたことの確認である。
3 軽自動車は除く。


イ 自動車検査施設の整備

自動車検査施設については,自動車ユーザーが受検しやすいよう音声誘導装置付検査機器及び映像式受検案内表示システムを導入している。また,より確実な自動車検査を行うため,車両画像取得装置等の自動車検査の高度化施設を整備し活用している。

ウ 軽自動車の検査の実施状況

軽自動車検査協会において,平成26年度に約1,362万台の軽自動車(二輪の軽自動車を除く。)の検査を実施した。


(2)型式指定制度の充実

自動車の型式指定等に当たっては,保安基準への適合性及び生産過程における品質管理体制等の審査を独立行政法人交通安全環境研究所(平成28年4月1日以降は独立行政法人自動車技術総合機構)と連携して実施し,自動車の安全性の増進等を図っている。


(3)自動車点検整備の充実

ア 自動車点検整備の推進

自動車ユーザーの保守管理意識の高揚と点検整備の適切な実施の推進を図るため,平成27年9月,10月を強化月間として「自動車点検整備推進運動」を全国的に展開した。

また,大型車の車輪脱落事故やバスの車両火災事故等の点検・整備等の不良に起因する事故の防止を図るため,「自動車点検整備推進運動」の強化月間を含む9月,10月,11月に,平成19年度から新たに実施した大型車の重点点検等の取組を引き続き実施し,大型車やバスの点検・整備等の実施に当たって注意すべき事項の周知徹底を行った。

イ 不正改造車の排除

道路交通に危険を及ぼし,環境悪化の原因となるなど社会的問題となっている不適切な着色フィルムの貼付,消音器の切断・取り外し等の不正改造車等を排除するため,関係機関の支援及び自動車関係団体の協力の下に「不正改造車を排除する運動」を全国的に展開した。特に,平成27年6月を強化月間として,広報活動の一層の推進,関係者への指導徹底等し,自動車使用者及び自動車関係事業者等の不正改造防止に係る意識の更なる高揚を図るとともに,街頭検査の重点的実施等により,不正改造車の排除を徹底した。

また,不正な二次架装による積載量又は乗車定員の水増し等を排除するため,架装メーカー等に対する立入検査の実施,不正を行った者に対する警告書の交付等を厳正に行うとともに,関係者と協力し,再発防止及び改修の推進に努めた。


※ 不正な二次架装
 自動車の一部部品を取り付けない又は取り外した状態で新規検査を受検し,自動車検査証の交付を受けた後に,当該部品を取り付けて使用者に納車する行為。

ウ 自動車分解整備事業の適正化,近代化

点検整備に対する自動車ユーザーの理解と信頼を得るため,法令違反行為を行った自動車分解整備事業者及び指定自動車整備事業者に対し,処分基準に基づく行政処分を適切に実施し,各地方運輸局等において公示するとともに,平成19年10月からは国土交通省ネガティブ情報検索サイトを通じて処分の統一的な公表を実施している。

また,認証を受けずに分解整備を行っている事業者を排除し,道路運送車両の安全確保を図るため,平成19年以降毎年7月を「未認証行為の調査・確認・指導のための強化月間」と定め,情報の収集及び収集した情報に基づく指導等を推進した。

さらに,自動車分解整備事業者における設備の近代化等への支援を行った。

エ 自動車の新技術への対応等整備技術の向上

整備事業者は,自動車の点検整備を適切に実施するため,自動車への新技術の採用等の車社会の環境の変化に対応することが求められている。このため,整備主任者を対象とした技術研修等の実施により,自動車の新技術及び多様化するユーザーニーズに対応していくための技術の向上や高度化を図っている。

また,平成25年に取りまとめた「自動車整備技術の高度化検討会」を平成27年9月に再開し,これまでの排ガス関連を中心とした装置に加えて,新技術が用いられている安全装置に対する整備環境及び人材育成体制の強化を図るための検討を行っている。

さらに,新技術が採用された自動車の整備や自動車ユーザーに対する自動車の正しい使用についての説明等のニーズに対応するため,一級自動車整備士制度を活用している。なお,平成26年度には1,291名が一級小型自動車整備士技能検定に合格した(平成27年3月末までの累計11,767名)。


6  リコールの迅速かつ着実な実施,ユーザー等への注意喚起

自動車のリコールの迅速かつ着実な実施のため,自動車メーカー等及びユーザーからの情報収集に努め,自動車メーカー等のリコール業務について監査等の際に確認・指導するとともに,安全・環境性に疑義のある自動車については独立行政法人交通安全環境研究所(平成28年4月1日以降は独立行政法人自動車技術総合機構)において現車確認等による技術的検証を行った。平成27年6月には,道路運送車両法を改正し,リコールの実施に必要な報告徴収・立入検査の対象に装置メーカーを追加した。

また,ユーザーからの不具合情報の収集を強化するため,「自動車不具合情報ホットライン別ウィンドウで開きます」について周知活動を積極的に行った。

さらに,国土交通省に寄せられた不具合情報や事故・火災情報等を公表し,ユーザーへの注意喚起が必要な事案や適切な使用及び保守管理,不具合発生時の適切な対応を促進するために必要な事項について,ユーザーへの情報提供を実施した。なお,27年度のリコール届出件数は368件及び対象自動車台数は1,899万台であった。


7 自転車の安全性の確保

自転車の安全な利用を確保し,自転車事故の防止を図るため,駆動補助機付自転車(人の力を補うため原動機を用いるもの)及び普通自転車に係る型式認定制度を運用しており,平成27年度には,駆動補助機付自転車を60型式,普通自転車を57型式認定した。

この型式認定制度は,型式認定を受けた駆動補助機付自転車等に型式認定番号等を表示させ,また,基準適合品であることを示す標章(TSマーク)を貼付することができることとし,当該駆動補助機付自転車等が道路交通法等に規定されている基準に適合したものであることを外観上明確にして,利用者の利便を図るとともに,基準に適合した駆動補助機付自転車等を普及させることにより,交通の安全と推進を図るものである。

また,自転車利用者が定期的な点検整備や正しい利用方法等の指導を受ける気運を醸成するため,関係団体は全国各地の学校等で自転車の安全点検促進活動や安全利用講習を実施するとともに,近年,歩行者との事故等自転車の利用者が加害者となる事故が発生していることに鑑み,こうした賠償責任を負った際の支払原資を担保し,被害者の救済の十全を図るため,損害賠償責任保険等への加入を促進した。

さらに,夜間における交通事故の防止を図るため,灯火装置の取付けの徹底と反射器材の普及促進を図り,自転車の被視認性の向上を図った。

加えて,BAAマークをはじめとする各種マーク制度(SBAAマーク,SBAA PLUSマーク,幼児2人同乗基準適合車マーク,TSマーク,SGマーク,JISマーク)を活用した安全性の高い自転車の供給・普及のため自転車技士及び自転車安全整備士に関する制度を後援した。

※自転車技士
 (一財)日本車両検査協会が,BAA及びSBAAマーク等表示自転車の最終組立工程における組立整備を行うための技術審査に合格した者に付与する称号。なお,自転車技士は,工業標準化法によるJISマーク表示自転車の点検調整等及び(一財)製品安全協会によるSGマーク表示自転車の最終組立工程における組立整備も行う。
※自転車安全整備士
 (公財)日本交通管理技術協会が,自転車安全整備技能検定合格者に付与する称号。自転車安全整備士は,自転車の点検整備を行い,道路交通法令の基準に適合する普通自転車に点検整備済TSマークを貼付するとともに,利用者に対して自転車の交通ルールや正しい乗り方について指導する。

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