第3編 航空交通 第2章 航空交通安全施策の現況
第3節 航空機の安全な運航の確保
第3編 航空交通
第2章 航空交通安全施策の現況
第3節 航空機の安全な運航の確保
1 運輸安全マネジメント制度の充実・強化
平成18年10月より導入した「運輸安全マネジメント制度」により,事業者が社内一丸となった安全管理体制を構築・改善し,国がその実施状況を確認する運輸安全マネジメント評価を27年において19者に対して実施した。
2 航空運送事業者等に対する監督体制の強化
航空会社の事業形態が複雑化・多様化する状況を踏まえ,抜き打ちを含む厳正な立入検査を行うことにより航空会社における安全性の現状や将来のリスクを把握するなど体系的な監査を実施するほか,年末年始の輸送等安全総点検により,事業者の安全意識の向上を図った。また,専門的かつ的確な監査の実現を図るため,監査担当職員等の研修の充実等を図っている。
3 航空安全情報を通じた予防的安全対策の推進
事故や重大なトラブル等の発生を未然に防止するため,事故,重大インシデントや機材不具合・ヒューマンエラー等の航空安全に係る情報の収集及び分析を通じた安全性向上のために必要な対策の策定等を行うとともに,安全上のトラブル情報等を関係者間で共有することにより,予防的安全対策を推進している。
4 航空従事者の技量の充実等
安全を確保しつつ航空ネットワークの充実等を図るためには,操縦士の安定的な供給を確保することが必要である。このため,乗員政策等検討合同小委員会とりまとめ(平成26年7月)を踏まえて,即戦力となる操縦士の確保,民間養成機関の供給能力拡充,航空大学校のさらなる活用,航空会社による自社養成の促進等,操縦士の養成・確保に向けた取組を促進している。その中で,航空機加齢乗員の年齢上限については,医学面及び技能面において慎重な検討を行った結果,現行の64歳(65歳未満)から67歳(68歳未満)への引き上げが可能との結論に至り,従来より厳しい条件を付した上で,平成27年度から65歳以上の乗員の活用を図っている。(平成27年4月23日適用)
加えて,公共性の高いドクターヘリや消防・防災ヘリ等の操縦士の需要が増大する中で,ヘリコプター操縦士の養成・確保が重要な課題となっていることから,関係省庁で検討を進め,平成27年7月に検討結果をとりまとめたところ。今後,このとりまとめを踏まえ,民間事業者や関係省庁と連携して,ヘリコプター操縦士についても養成・確保の促進を図っていくこととしている。
また,航空機乗組員の身体検査を行う医師(指定医)及び医療機関等に対する講習会の内容の充実,立入検査の強化等により,さらなる能力水準の向上・平準化を図るとともに,航空会社の健康管理部門への監査・指導の強化等により航空会社の健康管理体制の強化を図っている。
さらに,航空運送事業者に対し,航空従事者に安全に関する情報を周知徹底させ,安全意識の高揚を図るよう指導している。
5 外国航空機の安全の確保
我が国に乗り入れている外国航空機に対する立入検査(ランプ・インスペクション)の充実・強化を図るとともに,外国航空機による我が国内での事故や重大インシデント等が発生した際には,必要に応じて,関係国の航空安全当局に対して原因の究明と再発防止を要請している。また,諸外国の航空安全当局との連携を図るために航空安全に係る情報交換に努めている。なお,平成27年度は,40か国の99社を対象に696回のランプ・インスペクションを実施した。
6 小型航空機等に係る安全対策の推進
近年の小型航空機の航空事故における原因としては,操縦操作や判断が不適切なもの,気象状態の把握や判断が不適切なもの,出発前の確認が不適切なもの等人為的な要因によるものが多い。このような小型航空機の事故の防止を図るため,法令及び安全関係諸規程の遵守,無理のない飛行計画による運航,的確な気象情報の把握,操縦士の社内教育訓練の充実等を内容とする事故防止の徹底を指導するとともに,近年の事故事例等も踏まえ小型航空機対策を様々な視点からきめ細かく進めて行く。さらに平成26年度から,操縦者に対して,操縦等を行う日前の2年間のうちに,離着陸時の操縦や非常時の操作等の操縦技能及び知識が維持されているかどうかの審査を義務付ける特定操縦技能の審査制度が施行されており,当該制度の適切な運用を図っている。また,小型航空機を運航することの多い自家用操縦士に対しては,操縦士団体等が開催する安全講習会への参加を呼びかけるとともに,講師の派遣等小型航空機操縦士を対象とした講習会への積極的な支援を行っている。また,超軽量動力機,パラグライダー,スカイダイビング,滑空機,熱気球等のスカイレジャーの愛好者に対し,(一財)日本航空協会,関係スポーツ団体等を通じた安全教育の充実,航空安全に係る情報提供など,スカイレジャーに係る安全対策を行っている。
7 危険物輸送の安全対策の推進
医療技術等の発展等に伴う放射性物質等の航空輸送の増加及び需要の高まり等による危険物の航空輸送の増加及び輸送物質の多様化に対応するため,国際民間航空機関(ICAO)及び国際原子力機関(IAEA)における国際的な危険物輸送に関する安全基準の整備に基づき,所要の国内基準の整備を図った。
また,危険物の安全輸送に関する講習会等を通じて知識の普及を図るとともに,航空運送事業者等については危険物輸送従事者に対する社内教育訓練の実施及び危険物の適切な取扱いの徹底を図るよう指導した。
8 無人航空機の普及に向けた対応
昨今,急速に普及しているドローンなどの無人航空機は,空撮や農薬散布,インフラ点検等の様々な分野で利用が広がっており,今後も一層の利活用が期待されている一方,落下事故など,安全上の課題も発生していた。そのため,無人航空機を飛行させる空域及び飛行の方法等,無人航空機に関する必要最小限の交通ルールを緊急的に導入する航空法の一部改正法が平成27年9月に成立し,同年12月に施行されている。具体的には,人口集中地区での飛行や夜間・目視外での飛行について,許可・承認の審査を適切に行うことで無人航空機の安全確保を図っている。
9 航空交通に関する気象情報等の充実
ア 気象情報等の充実
悪天による航空交通への影響を軽減し,航空機の運航・航空交通流管理を支援する航空気象情報の高度化を図るため,東京国際空港・関西国際空港において,航空機の離着陸に多大な影響を及ぼす低層ウィンドシアー(大気下層の風の急激な変化)を検知する空港気象ドップラーレーダーの更新整備を行った。また,平成27年7月7日に静止気象衛星「ひまわり8号」の運用を開始し,衛星観測の頻度が上がったことにより,航空機の火山灰被害を防止・軽減する火山灰情報のより迅速な提供が可能となった。
イ 運航情報等の充実
空港情報(使用滑走路,進入方式等),飛行中の航空機から報告があった情報等について体系的に整理・蓄積したデータベース等を利用して,運航者及び関係機関に対して航空機の運航に必要な情報の提供を行っている。