II 計画の概要 第1部 陸上交通の安全についての施策
第1章 道路交通の安全についての施策

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第1部 陸上交通の安全についての施策

第1章 道路交通の安全についての施策

1 道路交通環境の整備

道路交通環境の整備については,これまでも警察庁や国土交通省等の関係機関が連携し,幹線道路と生活道路の両面で対策を推進してきたところであり,いずれの道路においても一定の事故抑止効果が確認されている。

しかし,我が国の歩行中・自転車乗用中の死者数の割合は主な欧米諸国と比較して約2~3倍となっているなど,歩行者や自転車が多く通行する生活道路における安全対策をより一層推進する必要がある。このため,今後の道路交通環境の整備に当たっては,自動車交通を担う幹線道路等と歩行者中心の「暮らしのみち」(生活道路)の機能分化を進め,暮らしのみちの安全の推進に取り組むこととする。

また,少子高齢化が一層進展する中で,子供を事故から守り,高齢者や障害者が安全にかつ安心して外出できる交通社会の形成を図る観点から,安全・安心な歩行空間が確保された人優先の道路交通環境整備の強化を図っていくものとする。

そのほか,道路交通の円滑化を図ることによる交通安全の推進に資するため,道路利用の仕方に工夫を求め,輸送効率の向上や交通量の時間的・空間的平準化を図る交通需要マネジメント(TDM)施策を総合的に推進するとともに,最先端のIT等を用いて,人と道路と車とを一体のシステムとして構築し,安全性,輸送効率及び快適性の向上を実現するとともに,渋滞の軽減等の交通の円滑化を通じて環境保全に寄与することを目的とした高度道路交通システム(ITS)の開発・普及等を推進する。

高速道路における逆走防止対策を一層推進する。

※TDM:Transportation Demand Management

  1. 生活道路等における人優先の安全・安心な歩行空間の整備
  2. 高速道路の更なる活用促進による生活道路との機能分化
  3. 幹線道路における交通安全対策の推進
  4. 交通安全施設等整備事業の推進
  5. 歩行空間のユニバーサルデザイン化
  6. 無電柱化の推進
  7. 効果的な交通規制の推進
  8. 自転車利用環境の総合的整備
  9. 高度道路交通システムの活用
  10. 交通需要マネジメントの推進
  11. 災害に備えた道路交通環境の整備
  12. 総合的な駐車対策の推進
  13. 道路交通情報の充実
  14. 交通安全に寄与する道路交通環境の整備

2 交通安全思想の普及徹底

交通安全教育指針(平10国家公安委員会告示15)等を活用し,幼児から成人に至るまで,心身の発達段階やライフステージに応じた段階的かつ体系的な交通安全教育を行うとともに,高齢化が進展する中で,高齢者自身の交通安全意識の向上を図るほか,他の世代に対しても高齢者の特性を知り,その上で高齢者を保護し,また,高齢者に配慮する意識を高めるための啓発指導を強化する。さらに,自転車を使用することが多い小学生,中学生及び高校生に対しては,交通社会の一員であることを考慮し,自転車利用に関する道路交通の基礎知識,交通安全意識及び交通マナーに係る教育を充実させる。

  1. 段階的かつ体系的な交通安全教育の推進
  2. 効果的な交通安全教育の推進
  3. 交通安全に関する普及啓発活動の推進
  4. 交通の安全に関する民間団体等の主体的活動の推進
  5. 住民の参加・協働の推進

3 安全運転の確保

安全運転を確保するためには,運転者の能力や資質の向上を図ることが必要であるため,運転者のみならず,これから運転免許を取得しようとする者までを含めた運転者教育等の充実に努める。特に,今後大幅に増加することが予想される高齢運転者に対する教育等の充実を図る。

また,平成29年3月12日に施行された「道路交通法の一部を改正する法律」(平27法40)の円滑な運用を図るなどし,高齢運転者対策を推進し,交通事故の更なる抑止を図る。

今後の自動車運送事業の変化を見据え,企業・事業所等が交通安全に果たすべき役割と責任を重視し,企業・事業所等の自主的な安全運転管理対策の推進及び安全対策の充実を図るとともに,関係機関とも連携の上,交通労働災害防止のためのガイドラインの普及等を図るための取組を進める。加えて,全国交通安全運動や年末年始の輸送等安全総点検なども活用し,安全対策を推進する。また,貸切りバスの安全・安心な運行の確保を図るため,平成28年1月15日に発生した軽井沢スキーバス事故を踏まえてとりまとめた85項目に及ぶ「安全・安心な貸切バスの運行を実現するための総合的な対策」を着実に実施する。

さらに,「事業用自動車総合安全プラン2020」に基づく安全対策の推進等により,事業用自動車の安全な運行の確保を図る。

また,事業者が社内一丸となった安全管理体制を構築・改善し,国がその実施状況を確認する運輸安全マネジメント制度については,運輸審議会答申(平成29年7月)を踏まえて事業者の取組の深化を促進するとともに,運輸安全マネジメント評価を充実強化する。また,平成33年度までにすべての貸切バス事業者の安全管理体制を確認することとしており,30年度においても重点的に貸切バス事業者への評価を行う。

  1. 運転者教育等の充実
  2. 運転免許制度の改善
  3. 安全運転管理の推進
  4. 自動車運送事業者の安全対策の充実
  5. 交通労働災害の防止等
  6. 道路交通に関連する情報の充実

4 車両の安全性の確保

近年,交通事故死者数は減少傾向にあるものの,平成29年中には3,694人が亡くなるなど,依然として多くの命が交通事故で失われている。第10次交通安全基本計画(計画年度:平成28~32年度)においては,32年までに交通事故死者数を2,500人以下とする目標が設定されている。この交通事故削減目標の達成に向けて,「安全基準等の拡充・強化」,「先進安全自動車(ASV)推進計画」,「自動車アセスメント」の3つの施策を有機的に連携させ,車両安全対策の推進に取り組む。

高齢運転者の交通事故防止の観点から,衝突被害軽減ブレーキ等の先進安全技術を搭載した安全運転サポート車(サポカーS)等の普及を図る。

さらに,自動車が使用される段階においては,自動車にはブレーキ・パッド,タイヤ等走行に伴い摩耗・劣化する部品や,ブレーキ・オイル,ベルト等のゴム部品等走行しなくても時間の経過とともに劣化する部品等が多く使用されており,適切な保守管理を行わなければ,不具合に起因する事故等の可能性が大きくなることから,自動車の適切な保守管理を推進する必要がある。このため自動車使用者による点検整備を引き続き推進するとともに,大型車に対してスペアタイヤ等の定期点検を新たに義務づける。

  1. 車両の安全性に関する基準等の改善の推進
  2. 自動車アセスメント情報の提供等
  3. 自動車の検査及び点検整備の充実
  4. リコール制度の充実・強化
  5. 自転車の安全性の確保

5 救助・救急活動の充実

交通事故による負傷者の救命を図り,また,被害を最小限にとどめるため,高速自動車国道を含めた道路上の交通事故に即応できるよう,救急医療機関,消防機関等の救急関係機関相互の緊密な連携・協力関係を確保しつつ,救助・救急体制及び救急医療体制の整備を図る。

特に,負傷者の救命率・救命効果の一層の向上を図る観点から,救急現場又は搬送途上において,医師,看護師,救急救命士,救急隊員等による一刻も早い救急医療,応急処置等を実施するための体制整備を推進する。

  1. 救助・救急体制の整備
  2. 救急医療体制の整備
  3. 救急関係機関の協力関係の確保等
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