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高齢運転者の交通事故防止対策について

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高齢運転者による交通死亡事故が相次いで発生したことを踏まえ,平成28年11月15日に関係閣僚会議が開催され,総理から以下3点について,取り得る対策を早急に講じるとともに,政府一丸となって対策に取り組むよう指示があった。

○ 認知症対策を強化した改正道路交通法の円滑な施行に万全を期すこと

○ 自動車の運転に不安を感じる高齢者の移動手段の確保など社会全体で高齢者の生活を支える体制の整備を進めること

○ 更なる対策の必要性について,専門家の意見を聞きながら,検討を進めること

これを受け,政府は,高齢運転者による交通事故防止について,関係行政機関における更なる対策の検討を促進し,その成果等に基づき早急に対策を講じるため,平成28年11月に,交通対策本部の下に関係省庁局長級を構成員とする「高齢運転者交通事故防止対策ワーキングチーム」を設置して検討を進めてきた。これに基づき,29年6月30日に全体的な取りまとめを行うとともに,交通対策本部において,同年7月7日,取りまとめた取組を緊急かつ強力に推進することを決定し,政府一体となって各種取組を推進している。

高齢運転者による交通事故防止に向けて(概要)。1.改正道路交通法の円滑な施行、2.高齢者の移動手段の確保など社会全体で生活を支える体制の整備、3.高齢運転者の特性も踏まえたさらなる対策について示している

〈取組の推進状況〉

平成30年4月26日,第5回目のワーキングチームを開催し,交通対策本部の決定を踏まえた取組の推進状況についてフォローアップを行った。政府一丸となって各種施策を推進した結果,29年中の80歳以上の高齢運転者による死亡事故死者数は,242人となり,本部決定における当面の目標である「29年中に250人以下」を達成した。29年度中における主な取組の推進状況は以下のとおりである。

1 改正道路交通法の円滑な施行

高齢運転者対策をその内容とする改正道路交通法は平成29年3月12日から施行されたところ,臨時認知機能検査,医師の診断,高度化された高齢者講習等が適切に運用され,改正法は円滑に実施されている。

○医師会等関係団体への協力要請等により,平成29年末現在で約5,700人の医師の協力体制を確保した。

○一部の府県警察において,認知機能検査で認知症のおそれがある(第1分類)と判定された者の要望に応じ,生活支援等について相談できるよう地方公共団体福祉部局に必要な情報を提供する制度を運用しているほか,その他の一部の県警察においても,同種制度の構築に向け,地方公共団体福祉部局と協議を実施している。

2 高齢者の移動手段の確保など社会全体で高齢者の生活を支える体制の整備

○公共交通機関の利用促進を図るため,平成30年1月から3月にかけて,配車アプリを活用し,タクシーを相乗りで割安に利用できるサービス(「相乗りタクシー」)の実証実験を実施した。

○自家用有償運送の活用に資する手続きの合理化・効率化を図るため,検討プロセスをガイドライン化した。また,市町村が主体となる自家用有償運送について,持込み車両の使用や区域運行を可能とするなど活用の円滑化を図った。

○介護保険制度に基づいて実施される移動支援サービスについて,その対象者や助成の範囲を明確化したほか,第7次介護保険事業計画の作成に資するよう,実施可能なモデルの情報提供を行い,同サービスの普及・拡大を図った。また,こうした福祉分野と交通分野とで連携した取組を促進するため,地方公共団体内部における周知を図った。

高齢者の移動手段の確保など社会全体で高齢者の生活を支える体制の整備。協議体、協議会等が市町村レベルで連携するイメージを示している

3 高齢者の特性も踏まえた更なる対策

(1) 有識者会議の提言を踏まえた今後の方策

運転免許の申請取消(自主返納)件数。75歳以上で特に増加傾向にある

○都道府県警察における運転適性相談窓口の役割を拡充し,運転適性相談を充実・強化し,安全な運転の継続に必要な助言・指導を行ったり,運転免許証の自主返納を促進したりした。また,医療系専門職員の配置の促進や地域包括支援センター等地方公共団体福祉部局との情報共有・連携体制の構築など,高齢運転者の特性等に応じたきめ細かな対策を推進した。

○80歳以上の運転リスクが特に高い者への実車試験の導入や「安全運転サポート車」限定免許の導入といった高齢者の特性等に応じたきめ細かな運転免許制度の更なる見直しに向けた検討を進めている。

(2) 「安全運転サポート車」(サポカーS)の普及啓発

「安全運転サポート車」(サポカーS)のリーフレット。イメージ

○官民を挙げて,「安全運転サポート車(サポカーS)」の広報活動を積極的に展開したほか,先進安全技術の体験機会の拡大を図った。

○衝突被害軽減ブレーキについて,国際連合欧州経済委員会の自動車基準調和世界フォーラムの場において国際基準の策定に向けた検討を行うとともに,基準の策定に先立ち,国による性能認定制度を創設した。また,ペダル踏み間違い時加速抑制装置について,自動車アセスメントにおける30年度中の評価開始に向けて検討を行った。

○平成30年1月から,ASV割引(衝突被害軽減ブレーキ搭載車の保険料を9%割引)を導入した。また,損害保険会社各社から顧客への適切な周知の促進を図った。

(3) 高速道路における逆走対策の一層の推進

○民間企業等から提案のあった27の新技術を活用した逆走対策技術の効果等について,平成29年7月より実道での検証を開始し,30年度からその実用化を目指す。

テーマI 道路側での逆走車両への注意喚起。○道路上の物理的・視覚的対策
テーマII 道路側で逆走を発見し、その情報を収集する技術。○路側カメラ、3Dレーザーセンサー等の路側機器・路側センサーの活用。○道路管制センターとの連動等
テーマIII 車載機器による逆走車両への注意喚起。○カーナビにより、ドライバーに対し警告。○自動車側で逆走を発見し、その情報を収集する技術等

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