第3編 航空交通 第2章 航空交通安全施策の現況
第4節 航空交通環境の整備

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第3編 航空交通

第2章 航空交通安全施策の現況

第4節 航空交通環境の整備

1 増大する航空需要への対応及びサービスの充実
(1)国内空域の抜本的再編

航空需要の着実な伸びを受け,2025年頃には航空交通量が国内空域の現行の管制処理容量を超過することが見込まれるなか,安全かつ効率的な運航を維持しつつこれに対応するため,国内の航空路空域等の抜本的な再編を行うべく,1管制空域の上下分離,2複数の空港周辺の空域(ターミナル空域)の統合,のために必要となる航空保安システムの整備を行っている。

(2)首都圏・空域における容量拡大

成田国際空港の年間発着枠30万回への拡大等で交通量が増加しており,今後とも需要増が見込まれる。これにより首都圏空域の更なる交通混雑が見込まれることから,これらに対応するため,飛行経路・空域の詳細検討等,具体的な方策の検討を行っている。

(3)統合管制情報処理システム等の整備

増大する航空需要に対応しつつ,管制業務の継続性・処理能力の向上を図るため,データベースの共通化やシステム構成の単純化,管制支援機能の追加を行うなど,既存システムを統合した新たな管制情報処理システムの整備を進めている。

(4)小型航空機運航環境の整備

低高度空域における小型航空機の安定的な運航の実現を図るため,計器飛行方式による,既存航空路の最低経路高度の引き下げ,最低経路高度の低い新たな航空路の設定及びヘリポートへの進入・出発方式の設定について検討を進める。

また,海上部及び山間部における送電線への接触事故等を未然に防止するため,引き続き運航者に対して物件情報の提供を行う。

(5)航空保安職員教育の充実

更なる航空交通需要の増大に伴う空域の容量拡大や航空保安システムの高度化に的確に対応するため,航空保安職員に対し高度な知識及び技量を確実に修得させることを目的として,航空保安大学校等における基礎研修及び専門研修について,研修効率を上げるための研修カリキュラムの見直し,訓練機材の更新及び国際的に標準化された教育手法への移行を進めている。

(6)新技術や新方式の導入

航空機の運航効率の向上や悪天候時における就航率の向上等を図るため,特にGPSを利用した航法精度の高い高規格進入方式(RNP AR)について,平成29年度は,ILSが設置されていない空港・滑走路や,地形等により進入ルートに制約がある計4空港に導入しており,30年度についても積極的に導入を進めていく。また,東京国際空港(羽田空港)において,GPSを利用した精密な進入を可能とする地上型衛星航法補強システム(GBAS)の整備を進めている。

(7)飛行検査体制の充実

老朽化した2機の飛行検査機を更新し,地上型衛星航法補強システム(GBAS)等の新技術を用いた航空保安施設の飛行検査に対応した。また,航空交通の安全に係る研究に協力するため,取得した飛行検査データを研究機関に提供するとともに,飛行検査データを活用した検査品質の向上及び効率化を進めている。

(8)電子地形・障害物データ提供の拡充

航空機運航者の利便性や情報品質の向上を図るため,航空機の運航に必要となる空港周辺の地形や障害物等の基礎的情報をデジタルデータとして提供するとともに,対象となる空港を拡大した。

(9)将来の航空交通システムの構築に向けた取組

国際的な相互運用性を確保しつつ,長期的な航空需要の増加や地球環境問題等に対応するとともに,更なる安全性の向上を図るため,ICAOや諸外国とも協調して,将来の航空交通システムに関する長期ビジョン(CARATS)の推進を実施している。

(10)大都市圏における拠点空港等の整備

「明日の日本を支える観光ビジョン」における訪日外国人旅行者数を2020年に4,000万人,2030年に6,000万人にする目標の達成,首都圏の国際競争力の強化,地方創生,2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の円滑な開催等の観点から,首都圏空港(東京国際空港(羽田空港),成田国際空港(成田空港))の機能強化は必要不可欠であり,両空港を合わせて,ロンドン,ニューヨークに匹敵する世界最高水準の年間約100万回の発着容量とするための取組を進めているところである。

具体的には,羽田空港について,飛行経路の見直し等により,平成32年までに発着容量を約4万回拡大することに取り組んでいる。現在,必要な施設整備や環境対策,落下物対策等を着実に進めるとともに,29年11月から30年2月にかけて,4巡目となる住民説明会を開催したところであり,引き続き,丁寧な情報提供を行い,住民の方々に理解を得られるよう努めていくこととしている。

また,成田空港については,平成32年までに高速離脱誘導路の整備等により発着容量を約4万回拡大するとともに,32年以降を見据え,第3滑走路の整備,夜間飛行制限の緩和等の更なる機能強化について,30年3月に国,千葉県,周辺市町,空港会社からなる四者協議会において合意を得たところであり,合意事項の着実な実施を図ることにより,発着容量を約50万回に拡大する取組を進めていくこととしている。

その他,沖縄県と国内外とを結ぶ人流・物流の拠点として極めて重要な役割を果たしている那覇空港において,更なる沖縄振興を図るため,滑走路増設事業を実施している。福岡空港については,慢性的に発生しているピーク時の航空機混雑を抜本的に解消するため,滑走路増設事業を実施している。また,航空機の安全運航を確保するため,老朽化が進んでいる施設について戦略的維持管理を踏まえた空港の老朽化対策を実施するとともに,地震災害時における空港機能の確保等を図るため,空港の耐震化を着実に推進している。加えて,航空旅客ターミナル施設においては,旅客の安全確保のため,高齢者,障害者等の安全利用に配慮した段差の解消等のバリアフリー化を引続き実施し,総合的・一般的な環境整備を実現するなどの観点からユニバーサルデザイン化を進めている。

2 航空交通の安全確保等のための施設整備の推進
(1)データリンク通信の利用拡大

音声通信により発生する管制官及びパイロットの「言い間違い」や「聞き間違い」によるヒューマンエラーの防止等を図るため,現在洋上空域や地上(出発前)で活用されているデータリンク通信の航空路空域への導入を順次進めている。

(2)航空路監視機能の高度化

航空路空域における更なる安全の確保を図るため,関東/南東北エリア及び中部/近畿/瀬戸内エリアに高精度な新型監視装置である航空路WAMの設置を進めている。

(3)航空保安システムの災害対策の強化

大規模災害発生時に航空保安業務を継続して実施できる体制を確保するとともに,危機管理能力の更なる向上を図るため,統合管制情報処理システムの整備に合わせた適切な危機管理体制の構築を進めている。

3 空港の安全対策等の推進
(1)滑走路誤進入対策の推進

ヒューマンエラーに起因する滑走路誤進入を防止するため,管制指示に対するパイロットの復唱のルール化等管制官とパイロットのコミュニケーションの齟齬の防止や,滑走路占有状態を管制官やパイロットへ視覚的に表示・伝達する滑走路状態表示灯システム(RWSL)の整備等を推進している。

(2)空港の維持管理の着実な実施

滑走路等の諸施設が常に良好な状態で機能するよう,定期的な点検等により劣化・損傷の程度や原因を把握し,老朽化の進んでいる施設について効率的かつ効果的な更新・改良を実施している。

(3)空港における災害対策の強化

ア 災害時の空港機能の確保

災害時に航空輸送上重要な空港等の機能を維持するためには,空港内施設のみならずライフライン施設や道路・鉄道等の交通施設の機能維持が必要となることから,各施設の関係者と協議して,施設機能の早期復旧を図るための計画を策定するなど,災害対策の向上を図っている。具体的には平成26年度の「南海トラフ地震等広域的災害を想定した空港施設の災害対策のあり方 とりまとめ」を踏まえ,各空港における地震・津波に対応する避難計画・早期復旧計画の策定を推進している。

イ 空港施設の耐震性の向上

航空輸送上重要な空港等について,地震被災時における緊急物資輸送拠点としての機能確保,航空ネットワークの維持や背後圏経済活動の継続性確保,さらには運航中の航空機の安全確保を図るため,必要となる基本施設,管制施設等の耐震対策の向上を進めている。

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