トピックス
創設から10年が経過した運輸安全マネジメント制度の強化・拡充
I 背景
運輸安全マネジメント制度は,運輸事業者に安全統括管理者の選任と安全管理規定の制定を義務付け,経営トップのリーダーシップの下,会社全体が一体となった安全管理体制を構築することを促し,国土交通省が運輸事業者の取組状況を確認し,必要な助言等(「運輸安全マネジメント評価」)を行う制度であり,JR福知山線列車脱線事故等の教訓を基に,平成18年10月に導入された。
制度創設からこれまでの間,国土交通省は全国で延べ約7,500回以上の運輸安全マネジメント評価を実施しており,各運輸事業者において,安全に対する意識の向上,体制強化の取組が着実に進行している(例えば,トラック事業者の死傷事故件数は,事業者全体で約1割減少したのに対し,運輸安全マネジメント制度の適用対象の事業者においては約3割減少するなど,効果が現れている。)。
他方で,制度創設から10年が経過し,自動車輸送分野における取組の一層の展開の必要性,未だ取組の途上にある事業者への対応と取組の深化を促進する必要性,効果的な評価実施のための国の体制強化の必要性等から,運輸審議会に諮問し,平成29年7月に同制度の今後のあり方について答申を得た。
II 運輸審議会の答申を踏まえた主な取組
上述の運輸審議会の答申を踏まえ,運輸安全マネジメント制度の一層の強化・拡充を図るために進めている主な取組は以下のとおり(同答申の概要は図1を参照)。
1 自動車輸送分野における措置
○ 平成28年1月に発生した軽井沢スキーバス事故を契機とした,貸切バス事業者に対する安全性の確保の要請の高まりを踏まえ,貸切バス事業者への運輸安全マネジメント評価を重点的に実施し,33年度までにすべての貸切バス事業者の安全管理体制を確認する。
○ トラック事業者,タクシー事業者に対する運輸安全マネジメント制度の適用範囲を,保有車両台数300両以上の事業者から同200両以上の事業者に拡大した(関係規則の一部改正省令を平成30年4月1日より施行)。
2 すべての交通モード共通の措置
○ 今日的な課題への対応
今日的な課題である人材不足から生じる高齢化,輸送施設等の老朽化,自然災害,テロ・感染症等への対応について,経営トップの認識を高め,組織全体としての対応の促進を図るため,平成29年7月に「運輸事業者における安全管理の進め方に関するガイドライン」を改正した。
また,平成29年10月に実施した「運輸事業の安全に関するシンポジウム2017」においても,今日的課題への対応方針や,課題解決に向けて行政や関係者に期待したいこと等について,行政,有識者,事業者のそれぞれの立場から討論を行った。
○ 安全統括管理者会議の創設
同業他社,あるいは交通モードの垣根を越えて,運輸事業者の安全統括管理者や安全管理部門同士が交流を深めるため,「横の連携」の場づくりを目指し,安全統括管理者会議(安全統括管理者フォーラム)を創設した。平成29年10月に第1回を開催し,109名の安全統括管理者が参加した。
○ 国土交通大臣表彰制度の創設
運輸事業者における安全文化の構築・定着,継続的な見直し・改善に向けた取組を強力に支援するため,国土交通大臣表彰を創設した。平成29年10月に開催された第1回国土交通大臣表彰では,中小事業者に対する運輸安全マネジメント制度の普及啓発に貢献した,「運輸安全マネジメント普及・啓発推進協議会」が表彰された。