第2編 海上交通 第2章 海上交通安全施策の現況
第7節 救助・救急活動の充実

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第2編 海上交通

第2章 海上交通安全施策の現況

第7節 救助・救急活動の充実

1 海難情報の早期入手体制の強化

海上保安庁では,海難情報を早期に入手し,迅速かつ的確な救助活動を行うため,全国12か所の陸上通信所や行動中の巡視船艇により,海上における遭難及び安全に関する世界的な制度(GMDSS)に対応した遭難周波数を24時間聴守するとともに,コスパス・サーサット捜索救助衛星システムにより衛星経由で遭難信号を入手するなど,遭難情報に即応する体制を整えている。

また,広く一般国民や船舶等から海上における事件・事故に関する情報を入手するため,緊急通報用電話番号「118番」の有効活用及び緊急通報時に携帯電話のGPS機能を「ON」にすることで緊急通報位置情報システムにより遭難位置を早期に把握することができ,迅速な救助につながることの周知,啓発を行った。

防衛省は,海上保安庁との電気通信の協力に関する協定に基づき,相互の連絡体制の強化を図っている。また,艦艇・航空機では状況の許す限り,遭難周波数を聴守した。

2 迅速的確な救助勢力の体制充実・強化
(1)救助勢力の早期投入

海難等の発生に備え即応体制を確保するとともに,大型台風の接近等により大規模な海難の発生が予想される場合には,非常配備体制をとり,海難等が発生した際の救助勢力の早期投入を図った。

実際に海難等が発生した場合には,巡視船艇,航空機を現場に急行させるとともに,精度の高い漂流予測を実施し,関連する情報を速やかに収集・分析して捜索区域,救助方法等を決定するなど,迅速かつ的確な救助活動の実施を図った。

事案即応体制及び業務執行体制の一層の強化のため,巡視船艇・航空機の代替整備等を行い,速力,夜間捜索能力等の向上に努め,現場海域への到達時間や捜索に要する時間を短縮するなど救助勢力の充実・強化を図った。

防衛省・自衛隊は,災害派遣による救助等を迅速に行うため,FAST-Force(初動対処部隊)として,航空機及び艦艇を常時即応できる態勢を整えている。

(2)海難救助体制の充実強化

船舶交通のふくそう状況,気象・海象の状況等を勘案し,海難の発生のおそれがある海域において,巡視船艇・航空機を効率的に運用した。

また,転覆船や火災船からの人命救助等,専門的な救助技術・知識が要求される海難に適切に対応するため,救助・救急資器材の充実に努めるとともに,特殊救難隊をはじめ機動救難士や潜水士の訓練・研修を行うなど,救助・救急体制の充実強化を図った。

このほか,全国各地で実施されている民間救助組織の救助訓練の指導を行うなど,民間救助体制の強化を図った。

(3)救急救命処置の質的向上

海上保安庁では,救急救命士について,実施できる救急救命処置範囲の拡大・高度化が進められている中,救急救命士の知識・技能を向上させ,かつ,実施する救急救命処置の質を医学的・管理的観点から保障するため,海上保安庁メディカルコントロール協議会において事後検証や救急処置基準の見直し等を行い,救急救命処置の更なる質的向上を推進した。

また,洋上における傷病者の救急体制を一層充実させるため,消防機関の救急隊員と同様の研修を修了した特殊救難隊及び機動救難士等を「救急員」として指名し,消防機関の救急隊員と同様の範囲内で応急処置を実施して,適切に救急救命士を補助することが可能となる「救急員制度」を創設した。

(4)洋上救急体制の充実

洋上の船舶上で傷病者が発生し,医師による緊急の加療が必要な場合に,海上保安庁の巡視船艇・航空機等により医師等を急送し,傷病者を引き取り,陸上の病院に搬送する洋上救急制度により,平成30年は26件の要請を受け,巡視船艇11隻,航空機28機,特殊救難隊等44人を派遣した。

また,医師等が騒音・振動のある巡視船艇・航空機内でも適切に医療活動ができるよう,洋上救急制度の事業主体である(公社)日本水難救済会,協力医療機関と連携し,全国13の拠点で慣熟訓練を実施した。

(5)海難救助体制の連携

「1979年の海上における捜索及び救助に関する国際条約」(SAR条約)に基づき,北西太平洋の広大な海域における捜索救助活動を迅速かつ的確に行うため,ワークショップへの参加,合同訓練等を通じて捜索救助機関との連携・協力を深めた。特に,平成30年10月には,「日本国政府と中華人民共和国政府との間の海上における捜索及び救助についての協力に関する協定」(日中SAR協定)が締結され,海上捜索救助分野における日中協力に関する法的枠組みが構築されたことにより,関係当局によるこれまで以上に円滑かつ効率的な捜索救助活動が可能となった。さらに,東南アジア諸国等に対して,海上における捜索救助体制の整備のための研修に講師を派遣し,知見の共有を図るとともに,相互理解の促進を図った。

また,SAR条約に基づいた任意の相互救助システムである「日本の船位通報制度(JASREP)」を運用し,平成30年には,2,197隻の船舶が参加した。

沿岸部での小型船舶等に対する海難救助については,水難救済会等と協力・連携し,海難救助活動を行った。

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