特集 「道路交通安全政策の新展開」―第11次交通安全基本計画による対策―
特集 「道路交通安全政策の新展開」―第11次交通安全基本計画による対策―
はじめに
昭和45年6月に交通安全対策基本法(昭45法110)が制定され,これに基づき,46年度以降,10次・50年にわたる交通安全基本計画を作成し,国,地方公共団体,関係民間団体等が一体となって陸上,海上及び航空交通の各分野において交通安全対策を強力に実施してきた。
その結果,昭和45年に1万6,765人が道路交通事故で死亡し「交通戦争」と呼ばれた時期と比較すると,令和2年中の死者数は2,839人と約6分の1にまで減少し,現行の交通事故統計となった昭和23年以降で最少となるとともに,初めて3,000人を下回った。
これは,国,地方公共団体,関係民間団体のみならず国民を挙げた長年にわたる努力の成果であると考えられる。
しかしながら,第10次交通安全基本計画(平成28年3月11日中央交通安全対策会議決定)に定める「令和2年までに24時間死者数を2,500人以下とし,世界一安全な道路交通を実現する」という目標を達成することはできなかった。いまだに道路交通事故による死傷者数が37万人を超え,道路交通事故件数は依然として高い状態で推移しており,事故そのものを減少させることが求められている。また,高齢化の進展への適切な対処とともに,子育てを応援する社会の実現が強く要請される中,時代のニーズに応える交通安全の取組が今,一層求められている。
令和3年3月29日に内閣総理大臣を会長とする中央交通安全対策会議において決定された第11次交通安全基本計画では,これまで実施してきた各種施策の深化はもちろんのこと,交通安全の確保に資する先端技術を積極的に取り入れた新たな時代における対策に取り組み,これにより究極的には交通事故のない社会の実現への大きな飛躍と世界をリードする交通安全社会を目指すこととしている。
本特集では,道路交通事故の発生状況や近年の事故の特徴等について概説するとともに,第11次計画において掲げている新たな目標を達成していくため,今後,国,地方公共団体,関係民間団体等が一体となって行っていく取組について記述している。
今回の特集が国民の皆様の交通安全に関する理解と関心を深めるとともに,悲惨な交通事故の根絶に向けた取組の一助となることを願っている。