第1編 陸上交通 第2部 鉄道交通 第1章 鉄道交通事故の動向

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第1編 陸上交通

第2部 鉄道交通

第1章 鉄道交通事故の動向

1 近年の運転事故の状況

鉄道交通における運転事故は,長期的には減少傾向にあり,平成12年に936件であったものが,22年には874件,令和2年には518件で,前年比14.4%減であった(第1-40図)。

※運転事故
列車衝突事故,列車脱線事故,列車火災事故,踏切障害事故,道路障害事故,鉄道人身障害事故及び鉄道物損事故をいう。なお,軌道の運転事故は,鉄道運転事故と同様に定義する。

第1-43図 運転事故の件数と死傷者数の推移。負傷者数、死者数、運転事故件数。平成17年を除き、いずれも減少傾向にある

事故種類別にみると,令和2年は踏切障害が172件(33.2%),人身障害310件(59.8%),道路障害22件(4.2%)であった(第1-29表)。

第1-29表 事故種類別の運転事故の発生状況 (令和2年)
列車事 その他の事故
列車衝突 列車脱線 列車火災 踏切障害 道路障害 人身障害
数(件) 1 10 0 11 172 22 310 3 507 518
0.2% 1.9% 0.0% 2.1% 33.2% 4.2% 59.8% 0.6% 97.9% 100.0%
死傷者(人) 0 6 0 6 122 6 313 441 447
(0) (1) (0) (1) (75) (1) (168) (244) (245)
注 1
( )内は,死亡者で死傷者の内数である。
2
踏切障害とは,踏切道において列車又は車両が道路を通行する人又は車両等と衝突し,又は接触した事故のうち列車事故に至らなかったもの。
3
道路障害とは,踏切道以外の道路において,列車又は車両が道路を通行する人又は車両等と衝突し,又は接触した事故のうち列車事故に至らなかったもの。
4
人身障害とは,列車又は車両の運転により人の死傷を生じた事故をいう(列車事故,踏切障害及び道路障害を除く)。
5
物損とは,列車又は車両の運転により500万円以上の物損を生じた事故をいう(列車事故,踏切障害,道路障害及び人身障害を除く)。

運転事故による死者数は245人で前年比0.8%減であり,乗客の死者数はゼロであった(第1-40図及び第1-29表)。平成17年に発生したJR東日本羽越線列車脱線事故以降,運転事故による乗客の死者は発生していない。

また,運転事故による死者数は,平成27年と比較して減少し,乗客の死者数ゼロと併せ,第10次交通安全基本計画の目標を達成した。

2 令和2年中の列車事故の状況

列車事故(運転事故のうち列車衝突事故,列車脱線事故及び列車火災事故をいう。)は,11件(運転事故件数の2.1%)であり,前年比3件減であった(第1-29表)。

3 令和2年中の踏切事故の状況

踏切事故は,踏切保安設備の整備等により,長期的には減少傾向にある。令和2年は173件で前年比16.8%減であり,平成27年の241件から約3割減少し,第10次交通安全基本計画の目標(約1割削減)を達成した。踏切事故による死者数は76人で前年比17.4%減であった(第1-41図)。

※踏切事故
列車事故のうち,踏切道において,列車又は車両が道路を通行する人又は車両等と衝突し,又は接触した事故及び踏切障害事故をいう。

第1-41図 踏切事故の件数と死傷者数の推移。負傷者数、死者数、踏切事故件数。平成17年を除き、いずれも減少傾向にある

衝撃物別にみると,自動車と衝突した事故が41.6%,歩行者と衝突した事故が46.8%であった(第1-42図)。

第1-42図 衝撃物別踏切事故発生件数(令和2年)。自動車、二輪車、自転車等、歩行者。自動車、歩行者で9割近くを占めている

また,第1種踏切道での事故件数が87.3%を占めているが,踏切道100か所当たりでは第1種踏切道が第3,4種踏切道の合計件数より少なくなっている(第1-30表)。

第1-30表 踏切道種別の踏切事故発生件数 (令和2年)
踏切道 踏切道数 件数 構成率
(踏切道)
100か所当たり
の事故件数
  か所
第1種 29,717 151 90.0 0.51
第2種
第3種 684 2 2.1 0.29
第4種 2,603 20 7.9 0.77
33,004 173 100.0 0.52
(参考)
第3,4種 計
3,287 22 10.0 0.67
注 1
国土交通省資料による。
2
踏切道種別は,次による。
第1種  自動遮断機が設置されている踏切道又は踏切保安係が遮断機を操作している踏切道
第3種  遮断機はないが警報機が設置されている踏切道
第4種  踏切保安係もおらず,遮断機も警報機も設置されていない踏切道
第2種については,現在設置されているものはない。
3
踏切道数は,令和元年度末の数字である。
4
100か所当たり件数とは,踏切道100か所当たりの踏切事故件数である。
4 人身障害事故の発生状況

令和2年の人身障害事故は310件で前年比10.4%減,死者数は168人で前年比9.8%増,このうちホームから転落して又はホーム上で,列車と接触して死傷する事故(ホーム事故)は,2年は116件で前年比40件(25.6%)減であり,ホーム事故による死者数は19人で前年比9人(32.1%)減であった(第1-43図及び第1-29表)。

第1-43図 ホーム事故の件数と死傷者数の推移。負傷者数、死者数、ホーム事故。増加を続けた後、近年は減少傾向にある

なお,ホーム事故は,酔客による事故件数が47.4%を占めている。

5 令和2年中の鉄道交通における重大事故の発生状況

令和2年に死傷者が10名以上又は脱線車両が10両以上生じた重大事故はなかった。

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