第1編 陸上交通 第1部 道路交通 第2章 道路交通安全施策の現況
第4節 車両の安全性の確保
第1編 陸上交通
第1部 道路交通
第2章 道路交通安全施策の現況
第4節 車両の安全性の確保
1 自動車保有台数の推移
令和3年12月末現在の自動車保有台数は約8,257万台であり,前年に比べて10万台(約0.1%)増加し,自動車1台当たりの人口は1.5人(令和3年10月末現在)である(第1-41図)
自動車保有台数を用途別及び車種別にみると,軽四輪乗用自動車が約2,299万台と最も多数を占め,全自動車台数の27.8%を占めている。そのほか普通乗用自動車が約2,026万台で24.5%,小型乗用自動車が約1,892万台で22.9%となっており,この3車種で全体の75.3%を占めている。また,対前年増加率では,普通乗用自動車1.7%が目立っている(第1-14表)。
用途別・車種別 | 令和2年 | 令和3年 | 対前年比 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
台数 | 構成率 | 台数 | 構成率 | 増減数 | 増減率 | ||
台 | % | 台 | % | 台 | % | ||
貨物用計 | 14,470,812 | 17.5 | 14,489,448 | 17.5 | 18,636 | 0.1 | |
乗合用 | 普通車 | 108,999 | 0.1 | 106,083 | 0.1 | -2,916 | -2.7 |
乗合用計 | 225,029 | 0.3 | 218,329 | 0.3 | -6,700 | -3.0 | |
乗用 | 普通車 | 19,922,382 | 24.2 | 20,256,088 | 24.5 | 333,706 | 1.7 |
乗用計 | 62,194,774 | 75.4 | 62,164,868 | 75.3 | -29,906 | 0.0 | |
特種(殊)用途用 | 普通車 | 1,109,840 | 1.3 | 1,119,972 | 1.4 | 10,132 | 0.9 |
特種(殊)用途用計 | 1,779,024 | 2.2 | 1,793,939 | 2.2 | 14,915 | 0.8 | |
二輪車 | 小型二輪車 | 1,765,874 | 2.1 | 1,821,946 | 2.2 | 56,072 | 3.2 |
二輪車計 | 3,802,039 | 4.6 | 3,898,507 | 4.7 | 96,468 | 2.5 | |
総計 | 82,471,678 | 100.0 | 82,565,091 | 100.0 | 93,413 | 0.1 |
2 車両の安全性に関する基準等の改善の推進
(1)道道路運送車両の保安基準の拡充・強化等
ア 車両の安全対策の推進
第11次交通安全基本計画(計画年度:令和3~7年度)を踏まえ,交通政策審議会陸上交通分科会自動車部会において,今後の車両の安全対策のあり方,車両の安全対策による事故削減目標等について審議され,令和3年6月,報告書が取りまとめられた。報告書では「歩行者・自転車等利用者の安全確保」,「自動車乗員の安全確保」,「社会的背景を踏まえて重視すべき重大事故の防止」及び「自動運転関連技術の活用・適正利用促進」を今後の車両安全対策の柱とするとともに,令和12年までに,車両安全対策により,令和2年比で,年間の30日以内交通事故死者数を1,200人削減,重傷者数11,000人削減するとの目標が掲げられた。
また,高齢運転者の事故防止対策として,65歳以上を対象としたサポカー補助金(令和2年3月~3年11月で140万台導入)等による「安全運転サポート車」(サポカー)の普及促進,衝突被害軽減ブレーキの装着義務化等により,先進的な安全技術を搭載した自動車の普及促進に取り組み,その結果,新車乗用車における衝突被害軽減ブレーキ等の先進安全技術の搭載割合は9割を達成した。
イ 道路運送車両の保安基準の拡充・強化
自動車の安全性の向上を図るため,国際連合欧州経済委員会の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)において策定した国際基準を国内に導入することを通じ,乗用車等の衝突被害軽減ブレーキの要件の対車両及び対歩行者から対自転車への拡充,バックカメラ等の後退時車両直後確認装置の装備義務化など,保安基準の拡充・強化を図った。
(2)先進安全自動車(ASV)の開発・普及の促進
産学官の連携により,先進技術を搭載した自動車の開発と普及を促進し,交通事故削減を目指す「先進安全自動車(ASV)推進プロジェクト」では,第7期ASV推進検討会を立ち上げ,「自動運転の高度化に向けたASVの更なる推進」を基本テーマとして,令和3年度から令和7年度までの5年間で,①既存のASV技術の正しい理解・利用のための効果的な普及戦略の検討,②運転者が明らかに誤った操作を行った場合等であっても,システムが安全操作を行う安全技術のあり方の検討,③通信や地図を活用した協調型の安全技術の実用化と普及に向けた共通仕様の検討,④自動運転車においてシステムが負うべき責任の範囲の整理についての検討等に取り組むことを決定した。
また,バス,トラック等の安全対策として,歩行者まで検知可能な衝突被害軽減ブレーキ,車線逸脱警報装置,ドライバー異常時対応システム等ASV装置に対する補助を継続して実施するとともに,従来より実施している衝突被害軽減ブレーキ,車両安定性制御装置,車線逸脱警報装置及び側方衝突警報装置搭載車両に対する税制特例措置を講じた。
(3)高齢運転者による事故が相次いで発生している状況を踏まえた安全対策の推進
ペダルの踏み間違いなど運転操作ミス等に起因する高齢運転者による事故が発生していることや,高齢化の進展により運転者の高齢化が今後も加速していくことを踏まえ,「安全運転サポート車」(サポカー)の普及促進に取り組むとともに,令和3年11月以降の国産新車乗用車から順次衝突被害軽減ブレーキの装着義務化を進める等により,先進的な安全技術を搭載した自動車の性能向上と普及促進に取り組んだ。
3 自動運転車の安全対策・活用の推進
(1)自動運転車に係る安全基準の策定
自動運転車の国際基準の策定に向けて,国連WP29における議論を官民をあげて主導し,令和3年11月には,高速道路等における渋滞時等において作動する車線維持機能に限定した自動運転機能に係る安全基準の適用対象を大型車まで拡大する改正案について国連WP29において合意を得たほか,より高度な自動運転を実現するため,車線変更,高速度域に対応した自動運転機能等について検討を進めた。
(2)安全な無人自動運転移動サービス車両の実現に向けた取組の促進
高齢者等の事故防止や移動手段の確保などに資する無人自動運転移動サービスの実現に向けて,車両の安全性を確保するための技術開発・実証実験を推進したほか,自動運転車を活用したサービスの実現を目指す事業者が実証実験を安全に行い,事業化につなげられるよう,自動運転車が公道で直面し得るリスク要因に対する対応等をまとめた「セーフティアセスメント」のガイドラインの策定を進めた。
(3)自動運転車に対する過信・誤解の防止に向けた取組の推進
自動運転車について,ユーザーが過信・誤解することのないよう,運転者が一部の動的運転タスクを実行するレベル1,レベル2の自動運転機能を搭載した自動車については「運転支援車」と表記することとし,自動運転システムが全ての動的運転タスクを実行するレベル3以上についても,ユーザーが各レベルを正しく理解できるようレベルごとの呼称を定めた。
さらに,自動運転関連用語の基本的な意味を理解してもらうことを目的として「新聞,雑誌等でよく使われている自動運転関連用語の概説」を策定した。
(4)自動運転車に係る電子的な検査の導入や審査・許可制度の的確な運用
令和6年10月より開始される「OBD検査※」の導入に向けて,検査の合否判定に必要なシステムの開発など,環境整備を進めた。また,レベル4の自動運転技術に対する審査手法を構築するため,シミュレーション等を活用した安全性評価手法等の策定のための調査を実施した。さらに,通信を活用して自動車の電子制御装置に組み込まれたソフトウェアをアップデートすることが可能となっていることに対応するため,引き続き自動車の特定改造等の許可制度に基づき,更新するプログラムの内容,配信する事業者のサイバーセキュリティ等について審査を実施した。
(5)自動運転車の事故に関する原因究明及び再発防止に向けた取組の推進
自動運転車の事故の原因を究明するための調査分析及び再発防止に向けた提言を行うことを目的として令和2年度から開催された「自動運転車事故調査委員会」において,自動運転の実証実験中に発生した事故についての調査分析を行ったほか,自動運転車の事故調査に資する知見の収集を行った。
4 自動車アセスメント情報の提供等
自動車アセスメントは,市販されている自動車やチャイルドシートの安全性能評価試験を行い,その結果を公表することで,ユーザーが安全な自動車等を選択できる環境をつくり,安全な自動車等の普及を図ることを目的としている。令和3年度は,13車種を対象に,衝突安全性能評価と予防安全性能評価を統合した,「自動車の安全性能の総合評価」の結果を公表した。さらに,対自転車の衝突被害軽減ブレーキについて,評価試験方法等を策定した。
5 自動車の検査及び点検整備の充実
(1)自動車の検査の充実
ア 自動車検査の実施状況
自動車の安全確保と公害の防止を図るため,独立行政法人自動車技術総合機構と連携して,道路運送車両法に基づき,自動車(軽自動車及び小型特殊自動車を除く。)の新規検査,継続検査及び構造等変更検査を行っており,令和2年度の検査実施車両は約2,568万台であった(第1-15表)。また,不正改造車の排除等を目的とした街頭検査を行っており,令和2年度の検査実施車両は,約13万5,000台であった。
検査の種類 | 平成28年度 | 平成29年度 | 平成30年度 | 令和元年度 | 令和元2年度 | |||||
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件数 | 構成率 | 件数 | 構成率 | 件数 | 構成率 | 件数 | 構成率 | 件数 | 構成率 | |
件 | % | 件 | % | 件 | % | 件 | % | 件 | % | |
計 | 25,899,473 | 100.0 | 25,173,249 | 100.0 | 25,620,004 | 100.0 | 25,250,985 | 100.0 | 25,684,157 | 100.0 |
イ 自動車検査施設の整備
自動車検査施設については,自動車ユーザーが受検しやすいよう音声誘導装置付検査機器及び映像式受検案内表示システムを導入している。また,より確実な自動車検査を行うため,車両画像取得装置等の自動車検査の高度化施設を整備し活用している。
ウ 軽自動車の検査の実施状況
軽自動車検査協会において,令和2年度に約1,458万台の軽自動車(二輪の軽自動車を除く。)の検査を実施した。
(2)型式指定制度の充実
自動車の型式指定等に当たっては,保安基準への適合性及び生産過程における品質管理体制等の審査を独立行政法人自動車技術総合機構交通安全環境研究所と連携して実施し,自動車の安全性の増進等を図っている。
また,政府のデジタル化の方針に沿って技術進展等に対応した完成検査※の改善・合理化の促進に関する検討を進め,令和3年11月には省令等を改正し,人工知能(AI)等を活用した完成検査を可能とした。
(3)自動車点検整備の充実
ア 自動車点検整備の推進
自動車ユーザーの保守管理意識の高揚と点検整備の適切な実施の推進を図るため,令和3年9月,10月を強化月間として「自動車点検整備推進運動」を全国的に展開した。
また,大型車の車輪脱落事故やバスの車両火災事故,車体腐食による事故等の点検・整備等の不良に起因する事故の防止を図るため,事故の発生状況の取りまとめ,公表や点検・整備等の実施に当たって注意すべき事項の周知徹底を行った。特に,大型車のホイール・ナット脱落等による車輪脱落事故が増加していることを踏まえ,「大型車の車輪脱落事故防止キャンペーン」を令和3年10月から令和4年2月まで実施し,適切なタイヤ交換作業及び一定距離走行後の増し締めの確実な実施等について周知徹底を行った。
イ 不正改造車の排除
道路交通に危険を及ぼし,環境悪化の原因となるなど社会的問題となっている,消音器の切断・取り外し,車体からの車輪のはみ出し等の不正改造車等を排除するため,関係機関の支援及び自動車関係団体の協力の下に「不正改造車を排除する運動」を全国的に展開した。特に,令和3年6月(沖縄は10月)を強化月間として,広報活動の一層の推進,関係者への指導徹底等により,自動車ユーザー及び自動車関係事業者等の不正改造防止に係る意識の更なる高揚を図るとともに,街頭検査の重点的実施等により,不正改造車の排除を徹底した。
また,不正改造を行った自動車特定整備事業者に対する立入検査の実施等を厳正に行った。
ウ 自動車特定整備事業の適正化及び生産性向上
整備事業者の適正な事業運営を確保することで自動車ユーザーの安全・安心を担保するため,法令違反行為を行った自動車特定整備事業者及び指定自動車整備事業者に対し,処分基準に基づく行政処分を適切に実施し,各地方運輸局等において公示するとともに,国土交通省ネガティブ情報検索サイトを通じて処分の統一的な公表を実施している。
また,認証を受けずに特定整備を行っている事業者を排除し,道路運送車両の安全確保を図るため,毎年7月を「未認証行為の調査・確認・指導のための強化月間」と定め,情報の収集及び収集した情報に基づく指導等を推進した。
さらに,事業者における中小企業等経営強化法(平11法18)に基づく「経営力向上計画」の認定取得を促進し,税制面や金融面の支援を受けることによる経営管理の改善や生産性の向上等を図った。
エ 自動車の新技術への対応等整備技術の向上
自動車特定整備事業者は,自動車の点検整備を適切に実施するため,自動車への新技術の採用等の車社会の環境の変化に対応することが求められている。このため,整備主任者を対象とした技術研修等の実施により,自動車の新技術及び多様化するユーザーニーズに対応していくための技術の向上や高度化を図っている。また,自動車特定整備事業者の整備技術の高度化等への支援を行った。
また,「自動車整備技術の高度化検討会」を開催し,自動車技術の進化に適切に対応するため,ユーザーに代わって自動車を保守する自動車整備士の資格体系の見直しなどについて検討を行い,取りまとめた。
さらに,令和2年4月1日に施行された道路運送車両法の一部を改正する法律(令元法14)により,高度な整備技術を有するものとして国が認証を与えた整備工場(認証工場)でのみ作業が可能な整備の範囲を拡大することで,自動車の使用者が安心して整備作業を整備工場に委託できる環境作りを進めている。具体的には,これまで「対象装置の取り外しを行う整備(分解整備)」がその対象だったのに対し,対象装置に「自動運行装置」を加えるとともに,取り外しは行わずとも制動装置等の作動に影響を及ぼすおそれがある作業を対象に含め,特定整備と改称した。
加えて,新技術が採用された自動車の整備や自動車ユーザーに対する自動車の正しい使用についての説明等のニーズに対応するため,一級自動車整備士制度を活用している。なお,令和2年度には1,572名が一級小型自動車整備士技能検定に合格した(令和3年3月末までの累計1万8,728名)
オ ペーパー車検等の不正事案に対する対処の強化
指定自動車整備事業者は,国の検査を代行し自動車の安全・環境基準への適合性を確保する車検制度の根幹に関わることから,引き続き監査等を厳正に実施し,法令遵守の指導を徹底していく。
6 リコール制度の充実・強化
自動車のリコールの迅速かつ着実な実施のため,自動車メーカー等及びユーザーからの情報収集に努め,自動車メーカー等のリコール業務について監査等の際に確認・指導するとともに,安全・環境性に疑義のある自動車については独立行政法人自動車技術総合機構交通安全環境研究所において現車確認等による技術的検証を行った。加えて,リコール改修を促進するため,ウェブサイトやソーシャル・メディアを通じたユーザーへの情報発信を強化した。
また,不具合情報の収集を強化するため,「自動車不具合情報ホットライン」(www.mlit.go.jp/RJ/)について周知活動を積極的に行った。
さらに,国土交通省に寄せられた不具合情報や事故・火災情報等を公表し,ユーザーへの注意喚起が必要な事案や適切な使用及び保守管理,不具合発生時の適切な対応を促進するために必要な事項について,ユーザーへの情報提供を実施した。
なお,令和3年度のリコール届出件数は369件,対象台数は425万7,931台であった。
7 自転車の安全性の確保
自転車の安全な利用を確保し,自転車事故の防止を図るため,駆動補助機付自転車(人の力を補うため原動機を用いるもの)及び普通自転車に係る型式認定制度を運用しており,令和3年度には,駆動補助機付自転車を108型式,普通自転車を84型式認定した。
この型式認定制度は,型式認定を受けた駆動補助機付自転車等に型式認定番号等を表示させ,また,基準適合品であることを示す標章(TSマーク)を貼付することができることとし,当該駆動補助機付自転車等が道路交通法等に規定されている基準に適合したものであることを外観上明確にして,利用者の利便を図るとともに,基準に適合した駆動補助機付自転車等を普及させることにより,交通の安全の推進を図るものである。
また,自転車利用者が定期的な点検整備や正しい利用方法等の指導を受ける気運を醸成するため,関係団体は全国各地の学校等で自転車の安全点検促進活動や安全利用講習を実施するとともに,近年,歩行者との事故等自転車の利用者が加害者となる事故に関し,高額な賠償額となるケースもあり,こうした賠償責任を負った際の支払原資を担保し,被害者の救済の十全を図るため,損害賠償責任保険等への加入を促進した。
さらに,薄暮の時間帯から夜間における交通事故の防止を図るため,灯火点灯の徹底と反射材用品等の取付けの促進により,自転車の被視認性の向上を図った。
加えて,BAAマークを始めとする各種マーク制度(SBAA PLUSマーク,幼児2人同乗基準適合車マーク,TSマーク,SGマーク,JISマーク)を活用した安全性の高い自転車の供給・普及のため自転車技士※及び自転車安全整備士※に関する制度を後援した。