第1部 陸上交通の安全についての施策
第1章 道路交通の安全についての施策
第4節 車両の安全性の確保
近年,交通事故死者数は減少傾向にあるものの,令和4年中には2,610人が亡くなるなど,依然として多くの命が交通事故で失われている。第11次交通安全基本計画(計画年度:令和3~令和7年度)においては,令和7年までに交通事故死者数を2,000人以下とする目標が設定されている。この交通事故削減目標の達成に向けて,「安全基準等の拡充・強化」,「先進安全自動車(ASV)推進計画」,「自動車アセスメント」の3つの施策を有機的に連携させ,車両安全対策の推進に取り組む。
先進安全自動車(ASV)について,事故分析を基に車両の開発・普及の促進を一層進めるとともに,先進技術に関する理解醸成の取組を推進する。また,高齢運転者による事故を踏まえ,サポカーポータルサイトでサポカーの機能の情報発信を行うほか,EV・PHEV等の購入補助による新車への買い換え促進や広報動画等の活用を通じて,後付け装置も含めたサポカーの普及啓発に引き続き取り組むとともに,車両安全対策を推進する。
さらに,交通安全の飛躍的向上に資する自動運転の実用化に向けて,より高度な自動運転機能に係る基準策定,遠隔監視のみの自動運転移動サービスの実現とサービスの全国展開に向けた技術開発・実証実験等の取組を推進する。
加えて,自動車が使用される段階においては,自動車にはブレーキ・パッド,タイヤ等走行に伴い摩耗・劣化する部品や,ブレーキ・オイル,ベルト等のゴム部品等走行しなくても時間の経過とともに劣化する部品等が多く使用されており,適切な保守管理を行わなければ,不具合に起因する事故等の可能性が大きくなることから,自動車の適切な保守管理を推進する必要がある。このため自動車使用者による点検整備を引き続き推進する。
自動車の保守管理は,一義的には,自動車使用者の責任の下になされるべきであるが,自動車は,交通事故等により運転者自身の生命,身体のみでなく,第三者の生命,身体にも影響を与える危険性を内包しているため,自動車検査により,各車両の安全性の確保を図る。
また,令和6年10月より開始される「OBD検査」の導入に向けた,検査の合否判定に必要なシステムの開発など,引き続き環境整備を進める。
自動運転など,新技術の安全を確保するため,自動運転車の型式指定審査及びソフトウェアアップデートに係る許可制度の的確な運用等に努める。
また,自動車のリコールの迅速かつ着実な実施のため,自動車メーカー等及びユーザーからの情報収集に努め,自動車メーカー等のリコール業務について監査等の際に確認・指導するとともに,安全・環境性に疑義のある自動車については独立行政法人自動車技術総合機構交通安全環境研究所において現車確認等による技術的検証を行う。
さらに,自動車メーカーの垣根を越えた装置の共通化・モジュール化が進む中,複数の自動車メーカーによる大規模なリコールが行われていることから,自動車製作者等からの情報収集を推進する。
自転車の安全性を確保するため,関係団体が実施している自転車の安全性向上を目的とする各種マーク制度(BAAマーク,幼児2人同乗基準適合車マーク,SBAA PLUSマーク,TSマーク,SGマーク,JISマーク)の普及に努めるとともに,近年,歩行者との事故等自転車の利用者が加害者となる事故に関し,高額な賠償額となるケースもあり,こうした賠償責任を負った際の支払原資を担保し,被害者の救済の十全を図るため,損害賠償責任保険等への加入を促進する。
- 車両の安全性に関する基準等の改善の推進
- 自動運転車の安全対策・活用の推進
- 自動車アセスメント情報の提供等
- 自動車の検査及び点検整備の充実
- リコール制度の充実・強化
- 自転車の安全性の確保