第29回沖縄振興開発金融公庫運営協議会(現地懇談会)
平成15年6月11日(水)14:00~16:00
沖縄公庫本店4階役員会議室
2 委員の出席状況について
3 内閣府審議官あいさつ
4 政策金融機関をめぐる最近の動向について
5 平成14年度事業実績について
6 平成15年度事業計画等について
7 質疑応答等
8 沖縄の雇用・失業問題について
9 沖縄県経済の現状と見通しについて
10 閉会
1 開会の辞
○塚越委員長 それでは、ただいまから第29回沖縄振興開発金融公庫運営協議会を開催いたします。本日は、御多忙の中を御出席いただきまして大変ありがとうございました。本日のこれからの論議を含め、その成果を今後の運営に十分反映させてまいりたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
2 委員の出席状況について
○塚越委員長 それでは、まず委員の出欠状況について御報告をいたします。大城惟宏委員につきましては御都合により欠席でございます。津田廣喜委員につきましては、谷口財務省大臣官房政策金融課長が代理出席されております。それから、稲嶺惠一委員につきましては牧野副知事が代理出席されておられます。
なお、本日は内閣府の武田沖縄振興局長は欠席されております。誠に残念でございますが、国会要務の関係で出席することができなくなったということでございます。
議題に入ります前に、内閣府を代表して大坪内閣府審議官にごあいさつをお願いしたいと思います。大坪審議官、よろしくお願いいたします。
3 内閣府審議官あいさつ
○大坪内閣府審議官内閣府審議官をしております大坪でございます。本日は、御多用のところをこの運営協議会に御出席いただきまして大変ありがとうございます。また、日ごろ内閣府の業務、あるいは公庫の業務につきましてさまざまな観点で御支援、御指導を賜っておりますことを、厚くこの場を借りて御礼申し上げる次第でございます。
私は、実はこの運営協議会の委員でもあるわけでございますが、内閣府におきます沖縄問題の責任者の立場もございますので、その両方の部分でごあいさつをさせていただきたいと思う次第でございます。
御案内のとおり、沖縄の振興につきましては昨年制定されました沖縄振興計画に基づきまして、自立的経済の構築に向けました産業の振興、雇用の安定、職業能力の開発、科学技術の振興、国際交流の協力の推進などにつきまして総合的な取組みを進めてきているところでございます。現在のこの振興計画は、観光・リゾート産業の振興を一番の大きな目標としているわけでございますが、それに次ぐものといたしましては情報産業、情報通信産業振興を大きな位置付けとしているわけでございます。
実はその2つの振興に絡む話といたしまして、昨日北谷町の美浜メディアステーションにおきまして沖縄デジタルアーカイブの運用開始の式典がございました。今日の新聞に記事が出ておりますので御覧になられた方も多いかと思いますけれども、このアーカイブは沖縄の自然、歴史、文化、こういうものをデジタル的に蓄積をしましてインターネットあるいはDVDのようなデジタル技術をもって公表、公開するというものでございます。これを見ていただいた方が沖縄について関心を強く持ち、沖縄の方へ足を運ぶというようなことを実は期待をしている次第でございます。
このような最近の新たな技術の活用によりまして、沖縄の振興というものを図っていきたい。これを一つのケーススタディ的に考えている次第でございます。そういう意味で沖縄の振興に非常に役立つだろうということで、内閣府としまして昨年できる限りの御支援を申し上げたというようなものでございます。これを含めまして、さまざまな観点での沖縄の振興の施策が今、動き出しているような状況にあるわけでございます。
こうした中で、去る4月1日に沖縄振興特別措置法の一部改正法が成立しております。この法律では、沖縄にあります事業所におきまして発電の用に供します石炭にかかる石油・石炭税を免除すること、それから宮古島、石垣島、久米島と羽田との間の路線を航行する飛行機に積み込まれます航空機燃料にかかる燃料税の軽減措置の延長を行うことが定められておるわけでございます。
また、観光の振興につきましては先般のイラク戦争の影響によりまして、沖縄県への入域観光客数の減少がみられましたので、沖縄特別振興対策調整費を活用いたしまして沖縄体験滞在型観光強化キャンペーンや修学旅行生、学校対策事業等を実施しましたほか、国際会議等各種会議の沖縄開催の推進につきまして、各省庁の連絡会議において申合せをするようなことをした次第でございます。
実は、この国際会議の関係につきましては今週、内閣府が音頭取りをしまして、各省庁のこういう会議の関係職員20人ぐらいが今こちらに現地入りしております。そういう国際会議の申合せをしたわけでございますが、担当する職員が沖縄のことを知らないのではやはりひとつ問題ではないかと、ともかく沖縄を知ってもらおうということで声を掛けましたところ、ほとんどの省庁が職員を出したというような経緯がありまして、今週2班に分けて今、沖縄の各地を勉強中という状況にあるわけでございます。
先ほど申し上げましたデジタルアーカイブの活用、あるいはこういう各省庁の職員との連携、こういうようなことを通じまして観光の振興ということを更に進めていきたいと考えている次第でございます。
次に、沖縄科学技術大学院大学につきましては、去る4月11日に予定地については恩納村を前提に基本計画を策定することを決定しまして、基本構想の具体化を進めるための評議会は、議長にフリードマン・マサチューセッツ工科大学教授、副議長にブレナー・ソーク研究所教授に御就任いただき、先般5月1日に第1回の評議会を開催し研究分野や組織体制などについて議論したところでございます。今後は評議会での議論を踏まえまして、今年度中に基本計画を策定することとしております。
更に、普天間飛行場の移設・返還につきましては昨年7月、代替移設協議会の合意を得まして普天間飛行場代替移設の基本計画が策定され、今年1月には建設段階に対応する協議機関として代替施設建設協議会が発足したところでございます。今後この協議会を中心に、引き続き沖縄県及び名護市などの地元地方公共団体と緊密に協議しつつ、環境影響評価を始めとします所要の手続を適切に進め、普天間飛行場代替施設の基本計画の着実な推進に取り組んでいくことといたしております。
沖縄公庫の関係でございますが、先月15日に創立31周年を迎えたところでございます。申すまでもなく、沖縄公庫は沖縄振興計画に基づきます政府の沖縄振興策と一体となって、これを資金供給面から支援する役割を担っておりまして、低利かつ安定的な長期資金の供給等を通じて沖縄の産業経済の発展に貢献してまいりました。
しかしながら、沖縄の経済は沖縄の置かれた特殊な諸事情にも起因して、復帰後30年余を経た今日におきましても全国に比べてなお低位な状況にあり、現状におきましても全国的な景気の低迷を受けて長期間低調裡に推移しております。沖縄公庫は民業補完という基本原則を踏まえながら、沖縄の金融情勢全体に配慮しつつ業務を行っておりますけれども、例えば平成13年9月の米国におきます同時多発テロに対応した観光関連業者への低利緊急特別貸付の実施、14年度から開始したベンチャー企業等に対する出資など、沖縄のその時々の資金需要の動向に応じた的確な業務運営には特に心懸けているところでございます。他方、沖縄公庫は平成13年12月の特殊法人等整理合理化計画や、昨年12月の経済財政諮問会議決定に基づきまして、各政策金融機関に共通いたします諸改革を継続的に進める必要がありますほか、沖縄独自の特利制度や産業開発資金、住宅資金の貸付制度の在り方など、沖縄の特殊事情を十分踏まえて解決すべきさまざまな課題を抱えております。
私どもといたしましては、沖縄公庫の業務の見直しに当たりましては沖縄の金融の実情を踏まえつつ、政府の沖縄施策と一体となって沖縄の振興開発を図るという機能が損なわれることのないよう、各方面の理解を得ながら対応してまいりたいと考えておりますので、皆様の御支援をお願いいたします。
この現地懇談会は、地元沖縄におきまして公庫の営業の様子を御覧いただきながら幅広く御意見を賜るということで昭和50年6月に第1回を開催して以来、毎年1回開催してきており今回で29回目となります。皆様の貴重な御意見は今後の公庫の業務運営に十分生かしてまいりたいと考えておりますので、忌憚のない御意見を賜りますようよろしくお願い申し上げる次第でございます。どうかよろしくお願いいたします。
○塚越委員長 どうもありがとうございました。
4 政策金融機関をめぐる最近の動向について
○塚越委員長 それでは、これから議事に入ります。本日の議題につきましては、お手元の資料にございますように「政策金融機関を巡る最近の動向について」及び「平成14年度事業実績について」並びに「平成15年度事業計画等について」ということでございます。そのほかに、「沖縄の雇用・失業問題について」を野崎委員から、また「沖縄県経済の現状と見通しについて」を内田委員から御説明いただくことにしております。議事次第はお手元の資料の「第29回沖縄振興開発金融公庫運営協議会(現地懇談会)議事次第」にあるとおりでございます。
なお、皆様からの御質問、御意見をいただく時間は後ほど用意してございますので、その折によろしくお願いいたします。
それでは、まず政策金融機関をめぐる最近の動向につきまして、沖縄振興局の馬渕参事官から御説明をお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
○馬渕参事官 沖縄振興局の馬渕でございます。よろしくお願いいたします。
前回の運営協議会で御説明した内容と多少変わります。今回2点ほど新たに御報告をしようと思っております。お手元の最初の資料で4ページ立てのものでございますが、そこに資料を付けております。
御説明する第1点は、政府金融機関等による公的資金の供給に関する政策評価が取りまとめられたということでございます。2点目は、沖縄公庫の行います住宅ローンに関する証券化支援業務、この関係の法律が成立、施行されたということの2点でございます。
それでは、お手元の資料の第1ページを御覧ください。第1点目は、政策金融機関等による公的資金の供給に関する評価でございます。これは、総務省行政評価局というところが法律に基づいてやっておるところでございまして、おおよそ1年以上かけまして取りまとめをしたということで、6月6日金曜日に片山総務大臣から閣議において概要の報告がなされております。その概要報告の概要を取りまとめたものが1ページでございます。この政策評価の観点でございますが、4.のところで、政府金融機関等による公的資金の供給における「民間金融の補完機能の発現状況」と「資金供給手法としての効率性」、この2つについて統一的評価を行い、関係行政の今後の在り方の検討に資するといった目的で行われたものでございます。その内容でございますが、政策評価の取りまとめ結果として3点ほどそこに書いてございます。それから、意見として2点ほど付け加えております。
まず取りまとめの結果の方でございます。行政評価局の政策評価としての結論でございますが、1.政策金融機関については一定程度民間金融を補完している状況にあると推定されるというまとめになっております。それから2点目につきまして、貸出の対象等によっては民間金融機関との競合が生じる場合もあると推定される。それから、金融資本市場に負の影響を与える可能性もあると、こういう結論になっております。この2点目につきましては行政評価局の方でいろいろヒアリングをしたようでございますが、政策金融機関の役割について肯定的な見方と否定的な見方があったということを聞いております。
肯定的な見方をされたのは借り手、あるいは信用金庫、信用組合といったような金融機関でございまして、それなりの棲み分けとか、それなりの協調がなされているといった評価であったと聞いております。
それから、否定的な見方については都市銀行、地方銀行の方で見られたということで、その否定的な見方は2つの要素からなっております。1つは、政策金融機関はリスクに見合って金利設定を行うということを非常に困難にしているということ。それからもう一点は、借り手が資本市場から長期資金調達をする意欲を弱めているのではないかという見方もあるということで、ここに書いてありますような金融資本市場に負の影響を与える可能性もあるといったまとめになっているようでございます。
それから3番目でございますが、部分保証など市場機能や民間金融機関を活用した、より間接的な資金供給手法においても、貸出の対象等によっては一定の効率性を確保できる可能性がある。こういった結論になっております。
それを踏まえて意見でございますが、第1点目は民間金融機関の機能回復強化の状況を踏まえながら、中長期的な観点から政府金融機関等に係る貸出残高の縮減を図ること。2点目は、市場機能や民間金融機関を活用した間接的な手法を十分考慮し、個々の政策目的や証券化の可能性など、当該貸出しが有する性質に応じ、最適な資金供給の選択を行っていくこと。この2点が全体の意見ということになっております。
この意見の部分は2ページ目に付けております、昨年の12月13日に経済財政諮問会議で決定されました「政策金融改革について」という取りまとめペーパーの内容と非常に重なるものでございます。2ページ目を見ていただきますと、そこに「2.政策金融のあるべき姿の実現」ということで(1)(2)(3)と載せておりますが、(1)の「対象分野の厳選」というものがその結論の意見の2番目に当たるのかなということです。それから、(2)の「規模の縮減」というものが意見のところの1番目に当たるのかなと、こういった感じでございまして非常に諮問会議の決定と類似しておるということでございます。
それで、私どもとしましては、こういった政策評価の取りまとめが行われたこと、それから、昨年の12月の諮問会議の決定ということで、いずれもこれは尊重しなければなりませんので、今後公庫の新しい来年度の予算を組む際等にも当然尊重してそれを予算に反映する努力をしていかなければならないといった考え方であります。
それから、この行政評価局の政策評価の取りまとめについては、各政策金融機関についての個別の言及はございませんでした。ただ、昨年12月に諮問会議の決定では沖縄公庫については2点ばかり個別の主要検討課題ということで宿題をいただいたということでございます。これが御説明することの第1点でございます。
それから、3ページを御覧いただきたいと思います。「住宅ローンに関する証券化支援事業の受託に伴う法令改正について」ということで、これは先に4ページを見ていただいた方が話が簡単かもしれません。
4ページの図は前回の運営協議会でも御報告させていただきましたが、住宅金融公庫が証券化支援業務ということで、いわゆる民間金融機関の住宅ローン債権について買取型、保証型という2つの支援業務をやるということになっています。それで、沖縄公庫についてどうするかという問題がありまして、沖縄公庫については住宅公庫から委託を受けてこの2つの業務をやらせていただくという整理をしまして、そのための所要の法律の改正を行ったということでございます。
3ページ目を見ていただきたいと思います。実は、今回の法令等の改正は法律の改正、政令の改正、省令の改正というふうな3本立てになっておりまして、この3ページのペーパーにはそのうち法律、政令の改正の内容について載せております。その法律の改正の内容でございますが、(1)を御覧ください。住宅金融公庫法の本則で、住宅金融公庫は住宅ローンに関する証券化支援業務を沖縄金融公庫に委託する規定を追加する。合わせて、住宅金融公庫法の附則でもって沖縄公庫法を改正し、沖縄公庫が当該業務を受託する規定を追加するということで、出し手と受け手と両方の制度を整えるということでございます。それから、(2)は政令の改正でございます。住宅金融公庫法施行令、これは政令でございますが、その本則に住宅金融公庫の業務を委託する法人として債権回収会社を追加する。それから、当該委託業務の範囲を決めるといった改正を行いましたので、同じように住宅公庫法施行令の附則において沖縄公庫法の施行令を改正し、沖縄公庫についても同様の規定を追加するということになっております。こういった法律と政令の改正を行うということでございます。
合わせて、これに付随する若干の省令の改正、これは沖縄公庫法の省令でございますが、その改正もやるということで、この一連の証券化支援業務に関する制度改正が今国会で成立し、直ちに施行されたということでございます。沖縄公庫も県内の金融機関等から要請があればこの業務を受託して行っていくということで、全国的に決して沖縄の金融機関等が不利にならないような制度を整えたということでございます。
前回の御報告をした内容から今回新たに付け加えて御説明するのは以上の2点でございます。
5 平成14年度事業実績について
6 平成15年度事業計画等について
○塚越委員長 どうもありがとうございました。それでは、引き続きまして「平成14年度事業実績」及び「平成15年度事業計画等」につきまして、沖縄公庫の原田総務部長からお願いいたします。
○原田総務部長 公庫の総務部長の原田でございます。よろしくお願いします。
それでは、お手元の資料の沖縄振興開発金融公庫の活動状況の資料に基づきまして、14年度事業実績と15年度の事業計画等につきまして御説明をさせていただきたいと思います。
表紙をおめくりいただきまして1ページ目でございます。そこには平成14年度事業実績を掲げてございます。この資料には、14年度の事業実績につきまして13年度の実績と14年度の事業計画との対比で示してございます。真ん中のD欄のところを見ていただきますと、一番下の合計ですが、平成14年度の出融資実績は1,442億300万円となっており、事業計画が2,184億円でしたので、計画に対しまして741億9,700万円の減、66%の執行率となっています。これは、昨年度に引き続きまして景気回復の足取りが重く、民間企業の設備投資に盛り上がりが見られないことや、個人住宅資金の需要が落ち込んだこと等によるものでございます。
また、前年度の実績の1,635億2,600万円と比較いたしますと、193億2,300万円、11.8%の減となっています。これを資金別に見ていきますと、まず一番上の欄でございますが、産業開発資金の14年度の実績は419億4,200万円であり、前年度実績と比べ79億4,000万円の減となっています。これは航空海運等の運輸業、製造業、サービス業での設備投資に係る需要が減となっているほか、テロ対策として実施したホテル事業者向け緊急運転資金の反動減等によるものでございます。
次に中小企業等資金は、506億2,700万円の実績でして、前年度に比べ28億400万円の減となっています。これは引き続き景気回復の足取りが重く、企業の設備投資の不振を背景に資金需要が弱含みで推移したことが主な要因でございます。
住宅資金は438億3,300万円の実績となっていまして、前年度に比べ91億7,400万円の減となっております。14年度は個人住宅資金の申込み受理戸数が低調に推移しましたし、融資限度額引下げの影響により個人住宅の申込み受理平均単価が減少したことから、前年度を下回る実績となったところです。
次の農林漁業資金につきましては24億3,500万円の実績であり、前年度に比べ9億4,900万円の増となっています。これは製糖企業向け融資が増加したためですが、農林漁業を取り巻く状況は依然として厳しく、全体として融資実績は低調である状況です。
医療資金につきましては15億4,500万円の実績でして、前年度に比べ1億600万円の減となっています。病院や一般診療所の資金需要が依然として弱く、低調な融資実績となりました。
生活衛生資金につきましては37億3,100万円の実績であり、前年度に比べ8,500万円の減となっています。14年度は入域観光客数は増加に転じましたものの、設備投資意欲の減退もあり、生活衛生関係業者の資金需要はやや低調でして前年度を下回る結果となりました。
次に出資でございますが、企業に対する出資につきましては出資予定先の事業計画の変更等によりまして実行していません。また、新事業創出促進出資につきましては、化粧品製造販売業のほか、コンピュータ、ソフトウェア開発業、軽量資材製造販売業、事務用品製造販売業の4社に対しまして合計9,000万円の出資を行ったところでございます。資料を1枚めくっていただきまして2ページでございます。そこに参考資料1ということで「セーフティネット貸付への取組みについて」という資料を付けさせていただいております。先ほど御報告しました14年度事業実績の中から中小企業等資金におけるセーフティネット貸付について御報告をさせていただきたいと思います。
平成12年度補正予算により導入されました緊急経営安定対応貸付、いわゆるセーフティネット貸付と呼ばれるものでございますが、※印のところにございますように中小企業経営支援資金、中小企業運転資金円滑化資金、金融環境変化対応資金、中小企業倒産対策資金の4つの資金の総称でございます。例えば1つ目の中小企業経営支援資金につきましては、売上高が前期に比べて5%以上減少をしているとか、最近3か月の売上高が前年同期に比べて減少しており、今後も減少が見込まれるという要件に該当する企業が対象となっています。
このセーフティネット貸付につきましては、14年度では114件、85億4,100万円の貸付実績となりました。13年度実績と比較しますと件数で25%、金額で84%の増加となっています。この85億円という貸付額は、14年度の中小企業等資金の貸付総額である506億円のうち17%を占めています。
なお、13年度はテロ対策の緊急融資を実施し、14年度におきましては一段落したということでございますけれども、セーフティネット貸付がその代わりというわけではございませんけれども、大きく増加している状況が見て取れると思います。
1枚めくっていただきまして3ページでございます。これは、私どもが考えていますセーフティネット貸付のイメージ図を参考までに掲げさせていただいたものでございます。中小企業等を取り巻く環境が長引く景気の低迷、デフレの進行等によりまして大変厳しいものがございます。その中で、資金繰りの厳しい中小企業等に対しましては、民間金融機関からの支援に加えまして、必要に応じて私ども公庫が運転資金等を補完することによりまして、その中小企業の資金繰りが改善され、その結果としまして企業活動の安定、そして発展へつながることになりますし、結果として県経済へ寄与することになるというふうに考えております。
私ども公庫は、県内事業者の企業活動に貢献するため、昨今の経済環境の下、こういうセーフティネットとしての機能を十分に発揮しておるというように考えています。また、平成15年度におきましても県内企業のニーズに対応して万全を期していきたいと考えているところでございます。
1枚めくっていただきまして、2つ目の「平成15年度事業計画等」について御説明をいたします。表の左から2つ目の15年度事業計画のところを御覧いただきますと、平成15年度の事業計画全体で2,015億円の計画を持っています。内訳は貸付が2,010億円、企業に対する出資が3億円、ベンチャー事業等への新事業創出促進出資が2億円でございます。14年度の事業計画と比べますと、新事業創出促進出資で1億円増加していますが、一方で住宅資金が160億円、農林漁業資金が10億円減少しているために、全体では169億円の減となっています。
次に、5ページをお開きください。「平成15年度第1・四半期事業計画及び資金交付計画」を上の表に掲げております。御存じのとおり、公庫は各四半期ごとに事業計画及び資金計画を策定しまして、主務大臣の認可を受け、事業を行っています。第1・四半期の事業計画欄を見ていただきますと、貸付が367億円、出資が1億円を予定しています。これは各資金の需要を勘案したものでございまして、6月までの資金需要には十分対応できるものと考えています。
また、資金交付計画が右から2つ目の欄でございますけれども、貸付456億円、出資1億円を予定いたしています。
下の欄は平成15年度第1・四半期の資金計画でございます。これは4月から6月までの第1・四半期に予定されております収入支出を現金ベースで示したものでございまして、詳細については省略させていただきます。
1枚めくっていただきまして、公庫の環境保全への対応につきまして資料を付けさせていただいています。私ども公庫は、国・県と一体となりまして沖縄の自然環境保全に取り組んでいることをイメージ的に表わしたものが1つ目の表でございます。この中で、国は法律など、また県は条例などにより環境保全への対応をされていますが、公庫は政策金融、制度資金の融通を行うことで環境保全について金融面で支援をしているわけです。
具体的にはその2番目に書いておりますけれども、環境配慮型企業活動支援であったり、環境エネルギー対策貸付という制度を準備していまして、貸付の累計は現時点で34件、37億3,000万円の規模となっています。融資の事例はその下に2つ掲げておりますけれども、ISO14001の認証等に絡む支援をしたり、あるいはフロンガスの回収に絡む支援をしてきたところです。
1枚めくっていただきますと、平成15年度からは環境保全への対応の中に新たに「赤土等流出防止低利」、ちゅら海低利の制度を準備しました。公庫として、環境への取組みを一層強化したところでございます。制度創設までの流れにつきましては省略させていただきますが、この赤土問題につきましては、県の対策として赤土の流出防止条例を制定され、その流出防止に努めておられます。この条例は工事に伴い発生する汚水を河川や海に廃棄する場合に、一定の基準値を設けることで事業者に防止施設の設置を義務付けているわけでございます。
それで、今回このちゅら海低利という制度を創設しまして一層の環境対策への支援を行っているところでございます。この制度はホテル、ショッピングセンター、工場、マンション、病院のように幅広い事業を対象にしていまして、条例が適用され、かつ条例の定める基準値よりも低く抑えるものを要件にしています。当初5年に限り、本来適用される利率から0.2%を控除する制度でして、金利を優遇することで事業者の方が赤土流出を一層抑えるためのインセンティブとなり、結果として沖縄の海を守ることができることを期待しておりますし、これからも制度のPRも含めまして積極的に取り組んでまいりたいと考えています。
以上、簡単ではございますけれども、説明を終わらせていただきます。
7 質疑応答等
○塚越委員長 どうもありがとうございました。そこで、これまでの議事を通じまして御質問、御意見等をお伺いしたいと思います。御質問、御意見のある方はどうぞ。
では、大城委員どうぞ。
○大城委員 ただいま平成14年度の事業実績、それから15年度の事業計画について御説明を受けたわけですけれども、本年も代理貸付業務を受託しております受託金融機関の立場から、現在の代理貸付業務について幾つか改善要望をさせていただきたいと思っております。
県内銀行は公庫発足以来、代理貸付業務の円滑な運営のために受託金融機関として最善の努力をしてきております。近年の金融環境あるいは経済環境の変化も踏まえて、今後とも私ども受託金融機関が安定した代理貸付業務を行っていくために、既に文書でも提出しておりますけれども、改めて改善要請をさせていただければと思っております。
昨年の10月28日の第70回公庫運営協議会におきまして、私の方から手数料の見直しを含む業務改善要請も行っております。それを受けまして、本年3月28日付で社団法人沖縄県銀行協会会長名で「沖縄振興開発金融公庫代理貸付業務に係るお願い」という文書も公庫理事長あてに提出をさせていただいております。
本件については公庫サイドの方でも真剣に受け止めていただきまして、事務方の方で会議が一度は開催をされております。ただ、まだ残念ながら具体的な成果は見えておりません。要請内容については既に公庫側の方では十分御承知のことではありますが、他の委員の方もおいでになっておりますので、簡単に概要をお話させていただきたいとい思います。1つは業務委託手数料の改善ということで、これについては公庫だけの問題ではなくて当然ながら予算が絡む問題ではありますが、現在の事務コストに見合った手数料をちょうだいしていないというのが私ども受託金融機関の認識でありますので、この点については引き続き改善方を要請したいと思います。
2点目に、少し細かくなりますけれども、電算システムの改善ということで、住宅融資業務について沖縄公庫独自のシステムで現在運営されております。そのため、本土の住宅金融公庫とシステムが当然違うということでシステム開発の負荷、そういったものが余分にかかるという状況もありますので、将来的な話にはなりますけれども、是非一本化した住宅金融公庫との電算システムの統合をお願いしたいと思います。
3点目に、事務の合理化、経費の削減という観点から、現在公庫融資の申込者の方に対しましてパンフレット、融資の御案内ということを代理店側がお客様に販売をしております。前提としまして、このパンフレットは沖縄公庫融資普及協会が発行をして、各代理店側が事前に買取りを行っております。住宅融資の申込みがどのくらいあるかということがなかなか把握できないものですから、どうしても代理店側は売切れを防止するために結果としてではありますけれども、実需以上のパンフレットの買取りを行っております。したがって、経費が無駄にかかっているという面もあります。本土の住宅金融公庫の方では代理店に無償配布をして、販売手数料として代理店に単価の10%相当額を支払うという方式になっております。こういった点についても、是非公庫側の方で御努力をいただければと思っております。
あとは幾つか細かい点が多々ございますけれども、今後とも私ども受託金融機関が安定した業務を行うために、とりあえずはこの3月28日付の要請書に対して文書で御回答をいただいて、その上で具体的な改善の実を受託金融機関と公庫の方で前向きな対応をしていただければと考えております。事務的で細かい点も多々ありますけれども、是非そういう点も含めて御対応をお願いできればということで、特に個々の回答については必要はございませんけれども、そういう要請を改めてさせていただきたいと思っております。以上です。
○塚越委員長 その点は事務方で既に会議が開かれたようでして、そういうお話もありましたし、いろいろ御相談になっておられるということです。その御検討を進めておられるということで理解してよろしゅうございますね。
○八木橋理事長 それでよろしゅうございます。せっかくの御要望でございますので、お答え申し上げます。
3月28日付の文書については確かに受け取りまして、私自身拝見させていただいております。銀行協会の各行におかれましては、当公庫の代理貸付業務につきまして普段から多大な御協力をいただいているところでございまして、この機会を借りまして厚く御礼を申し上げます。
ただいまの要請の内容につきましては、私自身から事務当局に指示をいたしまして、公庫としてどういったようなところで改善が図れるかということを今、真摯に検討をしているところでございます。
ただ、ただいま御紹介がございましたように、業務委託手数料の問題から電算システムに至るまで、かなり広範囲にわたる御要望でございまして、予算的な裏付けを要するもの、あるいは電算システムといったような開発期間にある程度の時間を要するもの等々がございまして、すぐここを改善しましたという具合にはなかなかお答えしづらい問題が多々含まれております。そういうことがあるものですから、こういった問題を解決するためにどういった方法が望ましいのか。また、各行が本当にお悩みになっているのはどういう点なのかということを密接な意見交換をするために関係部長による調整の場をセットしていただきまして、そこで煮詰めていこうという段取りを採用したところでございます。
この後、またこういった調整の場を使いながら、またそういうものを通じながら、できるものから速やかに改善を図ってまいりたいと考えておりますので、よろしく御理解を賜りたいと存じます。
○大城委員 ありがとうございます。
○塚越委員長 それでは、ほかにいかがでしょうか。
では、吉山委員お願いいたします。
○吉山委員 中小企業の場合なんですけれども、土地の評価換えで大分担保が不足するという事例が多くなってきています。それで、できるだけ売掛債権を担保にしていただきたいというふうに思うんですけれども、それを進めていく場合、何か大きなネックとなるような問題はございますか。
○八木橋理事長 確かに信用保証協会の方では売掛債権を担保にする制度というものは創設されておりますけれども、公庫においてはそういうものはまだございません。したがって、直ちにそれをやってくれと言っても、それは無理です。
○松田副理事長 やり方をはっきりとまだ決めておりませんで、今後検討していくということになろうかと思います。
○吉山委員 中小企業資金の中でですね。それと、特許権を担保にというお話は……。
○八木橋理事長 知的所有権ですね。
○松田副理事長 これについては、具体的に中小企業をいかに評価するかというような問題ですね。それがまだ研究段階でございまして、ただ、できるかどうかは別に法律的な制約があってできないということではございません。
実績として、知的所有権を担保にしたものは1件だけございます。
○吉山委員吉山委員 売掛債権が、例えば不良債権になりやすいというふうなお考えもありますか。
○松田副理事長 これはケース・バイ・ケースで判断させていただくことになろうかと思います。
8 沖縄の雇用・失業問題について
○塚越委員長 よろしゅうございますか。ほかに何かございますでしょうか。せっかくの機会でございますからいろいろ御意見を賜れればと思いますが、いかがでございますか。それでは、この辺で次の議題に移らせていただきたいと思います。「沖縄の雇用・失業問題」につきまして沖縄国際大学教授の野崎委員に御説明をお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
○野崎委員 沖縄国際大学の野崎です。それでは、雇用・失業問題についてご報告いたしますが、その前に若干おわびを申し上げたいと思います。現在、大学改革の真っ最中でありまして、連日連夜資料作成に追いかけ回されております。そういうことで、このレポートに数値のミスやワープロミスが散見されますが、それはひとつ御容赦ください。
まず1頁をお開けください。「沖縄における雇用・失業問題」ということで沖縄の雇用失業に関し4つにまとめてお話をしたいと思います。沖縄振興の基本は人的資本、ヒューマンキャピタルの涵養にあると常々思っており、どうしてもこの雇用
・失業問題についてお話をさせていただきたいと思っております。
まず「沖縄型雇用、失業の特徴」については、やはり全国と異なるところもあるし、そうではない点も確認してみたいと思います。次いで「需要不足失業とミスマッチ」については、需要不足とミスマッチによる失業率の増大が近年すごく高まっておりますので、その事実を考えていきたい。幾つか計量化も試みておりますので、そのお話をさせてください。3番目の「失業の対価」は、人的資源の不完全利用と潜在産出高との関連性、そしてミスマッチの解消策というものを述べ、それから最後に「雇用の創出が見込まれる分野と公庫の役割」、これは大まかな方向性ですが、そういう報告をさせていただきたいと思っております。
まず最初に「沖縄型雇用、失業の特徴」を簡単にお話させていただきます。1990年から2002年にかけての沖縄における雇用者は7万人も増加しております。これはかなりポジティブに評価していいのではないかと思っております。狭隘な沖縄で雇用を増やしていくこと自体が大変なことですが、これだけの雇用機会が生じたのですから、それだけ景気がよかったのか、あるいは制度支援の成果によるものであるか、ということになりますが、おそらく両者であり、前半が景気に支えられ、後半から制度支援による雇用が生じ始めたと思われます。しかしながら、それにも増して完全失業率が3.0%から8.3%と悪化しております。それから、失業者の全体に占める若年層の割合は50%から40%に低下したのですが、依然として高い割合を占め、若年失業率も5ポイント上昇しており、若年層の雇用確保が最大のポイントと言えます。それに加えて完全失業者の近隣に存在する追加希望就業者や転職希望者などの潜在的な失業率はかなり高く、現在の雇用環境に不満・不安を持った層がかなり存在することがわかります。
雇用構造の変化の中で一番間題なのが新規卒業者の雇用の悪化ということでございます。高卒、大卒併せまして毎年6,300名の無業者が生じております。その無業者というのは学生ではありませんからフリーターになるわけです。毎年6,300名の人達がフリーターになり、時間をかけて自分に合った企業に採用されていくプロセスがあるわけですが、そのときには既に30歳に近いとか、あるいはそれを超えるというように時間が経過し、その間の経済的な損失や技能取得機会の喪失から考えますと一層のIT化による労働市場の効率化や雇用慣行の改善が必要でしょう。さらに、沖縄の労働市場の課題として高い雇用の流動性や雇用のミスマッチの上昇、職業能力評価の変化、エンプロイアビリティの欠如などが挙げられます。
そういうようなものがありまして、2番目の「需要不足失業率とミスマッチ」について、まず3頁の「全国と沖縄の雇用失業率と欠員率の推移」を見て下さい。
そこで少し定義を説明させてください。失業は、需要不足失業、構造的失業、摩擦的失業で構成されますが、需要不足失業率とは需要不足、いわゆる景気循環的な観点から生ずる失業です。構造的失業率とは、労働市場における需要と供給のバランスが取れているにもかかわらず企業が求める人材と求職者の持っている特性との違いがあるために生ずる失業で労働市場の構造的な変化に伴う問題です。摩擦的失業ですが、やはり沖縄は島社会ですから高くならざるを得ない。人事異動や就職あるいは転職に伴う地域間の労働移動がありますし、さらに企業と労働者の持つ情報が相互に不完全であることからも生じたもので、のんびりした県民性、それから島嶼であることから、この要因によるものは結構多いと考えられます。
構造的失業と摩擦的失業を分離するのは困難で、ここでは3つのタイプの失業を需要不足失業率と構造的・摩擦的失業、いわゆる雇用のミスマッチの2つに分けて考えます。さて図-1は縦軸に雇用失業率、これは雇用者に占める失業の割合ですが、それと横軸の有効求人数と求職者就職件数との関係から生ずる欠員率との関係をみたものでUV曲線といわれるものです。
UV曲線では45度線上の右上方への延長移動は構造的・摩擦的失業の上昇、左下方への移動はその下落、45度線の左側が不況による需要不足失業率の増大、右側が需要不足失業率の低下、つまり景気上昇を示します。最初に、沖縄と全国のUV曲線が相似形をしていることが了解いただけるかと思います。要するに、全国の沖縄化が進行しているのですが、しかしながら、沖縄ほど極端な位置にあるわけではありません。全国はバブル期には、景気上昇に伴う需要不足失業率があったのですが、97年以降は需要不足失業率と構造的・摩擦的失業率の同時上昇が進行しております。
沖縄の場合は常に45度線の左側にあり、経済全体として恒常的な需要不足にあるため常に需要を投入しなければ需要不足失業率を解消できない構造となっております。バブル期には構造的・摩擦的失業率、つまり雇用のミスマッチが若干改善されたのですが、それ以降は上昇し、2000年以降は垂直に上昇している。要するに、構造的・摩擦的失業も相当な大きさになってきたと推察されます。
失業率を構造的・摩擦的失業率と需要不足失業率に分離することができれば、適切な政策を的確に行うことにより失業率の低下を数量的に把握することができるはずです。
5頁に分離した結果をグラフで示してあります。全国の失業の推移を四半期別でみますと、バブル崩壊以後は需要不足失業率が1%を超える水準まで上昇したのですが、2%台で安定していた構造的・摩擦的な失業率が4%台まで高まっており、1997年、98年以降の我が国の雇用環境に大きな変化が生じたことがわかります。
一方、図-3の沖縄の場合は、海洋博ショック以後は2%未満で推移していた需要不足失業率が、バブル崩壊後は3%を上回り、特に98年以降は海洋博ショック時を上回る3%に近い水準となっている。一方、構造的・摩擦的失業率は未発達な労働市場への新規参入や再参入、全国との労働移動、すなわちUターン等により3%を超す水準で安定的に推移しておりました。しかしながら、95年以降になりますと構造的・摩擦的失業率が6%に迫る水準になってきていることがわかります。そもそも構造的・摩擦的失業率、いわゆる雇用のミスマッチに関しては、早急な対応はできません。労働の調整ですとか、人的資本の涵養、技能・技術の向上という多様な要因に対する施策は中・長期にわたるものです。国や県の雇用対策事業は随分きめ細かいものがあり、それを着実に実行する以外に、雇用のミスマッチによる失業を下げることはできません。
他方、需要不足失業率もやはり高い水準にあります。需要不足を解消するには民間需要、例えば、消費の拡大や投資の拡大、あるいは観光収入の増大による波及需要の浸透により需要の拡大は可能です。さらに、公的事業、例えば、公共事業を増やすとか、介護とか、福祉関連需要を増大させるのも同様な効果が生じます。
現在、阪神地域では、タイガースブームで大フィーバーしており、実にうらやましい限りですが、しかし、そういう予期せぬ大きなイべントとか、あるいは大型企業の立地、観光客の急激な増加とかの想定はなかなか難しい。残るのは公的支出、つまり、公共投資とか、あるいは福祉関係の追加的な支出があればいいわけです。一過性ではない中・短期な公的需要の投入が可能なら、3%近くの需要不足失業率を2ポイントほど継続的に低下させて1%台にしますと、完全失業率は短期間で6%まで低下します。しかし、そういうことが果たして可能なのか。
その結果の政策評価は、さらなる財政の悪化を招きますので、民間の創意工夫による市場参画との齟齬をどう判断するかによりますが、急激な需要不足失業率を低下させることは困難かもしれません。
次に、6頁をお開けください。6頁では、失業という資源の不完全利用と潜在産出高との関連性、すなわち「失業の対価」を検討しております。我々教員は、大学を卒業する学生の失業する可能性が高いものですから常に危機感を持っております。失業による社会的なコストとしてマクロ経済への影響、同系列の職種に転職することによる技能の継続が可能かどうかという技能の損失、心理面への影響等が考えられます。そういうことから考えますと、長期にわたる失業はなかなか許されません。表-1に失業率と成長率との関連性を示した「全国と沖縄のオークン係数」があります。
簡単に推計結果を御説明いたしますと、バブル期には全国では現実の成長率が潜在成長率を2ポイント上回り、沖縄でも1.2ポイント上回る成長があったわけです。しかし崩壊後は大きな経済的ロスが生じる結果が示されております。これを回避するため、人的資本の適切な配置と高度な人的資本を養成により現実の成長率を高めることができるのではないかというのも一つの方策です。
最後の表になりますが、7頁をお開けください。このように失業が多いのはだれが間違っているのかということになります。そもそも需要不足なのか、あるいは職業安定所の職業紹介状況が悪いのか、何が悪いのかを見たのが図-4ということになります。図-4を見てまいりますと、上の方にいくに従ってミスマッチが縮小するし、右の方ですと需要不足、左上の方が供給不足で、原点に戻りますとミスマッチの拡大ということになり、これもやはり、一地方としての沖縄ですから、動きとしては非常によく似ている。左回りの経路をたどっており、45度線から上にいったり、外れたり、そういことはありません。そういうことから考えてみますと、全国もそうでありますように、沖縄の場合も職業安定所におけるミスマッチはみられず、これは雇用者が自分のレベルを下げてでも就職口を探しているのを示していると解釈されます。
ミスマッチが生じる理由として3つほど挙げておりますが、沖縄の特殊事情としては、いわゆるエンプロイアビリティを考慮していないこと、高校や大学などの教育機関でも働くことや働く能力について、それほど重要視した教育をやっているわけではありませんし、家庭でもやっておりません。そのため若者の高い失業率となったかもしれません。もう一つの理由としてパートやアルバイト市場での個々人のスキルアップは非常に困難で、沖縄の若年層の労働市場の二極化、すなわち、公務員あるいは教員と民間との分離が若年層のフリーターを生む要因となっており、多様な対応策が必要と考えられます。
最後に、8頁の「今後雇用の創出が見込まれる分野と公庫の役割」に移ります。本県では平成13年度以降、緊急雇用対策、職業安定基本計画(前期3か年計画)が矢継ぎ早に打たれ、その結果として今年に入りまして雇用情勢の悪化に歯止めがかかりつつあります。多様な雇用対策を8頁に挙げておりますが、それはそれとして、今後の施策課題として3点ほど挙げておきます。これらは、いわゆる縦割りの職業能力開発プログラムとなっておりますが、それと連動した雇用の受け皿づくりを一体的に進める雇用対策を強化すべきではないでしょうか。IT産業に関しましては成果が出ておりますが、雇用の場の創出と技能開発の双方を考慮した雇用プログラムをつくるのが良いのではないか。また、年齢階層を考慮した細分化された雇用対策の充実も必要で、中高年それから若年に対する柔軟な雇用対策が必要かと思います。学校現場におけるエンプロイアビリティ、いわゆる就業能力養成事業の強化もしっかり考えなければいけないでしょう。
それから、「今後有望な雇用分野」ということで沖縄での可能性というものを幾つかに分けて書いております。これはすぐできることと中・長期的に時間をかけて実現できるものがあり、人々が持っている潜在需要、ウォンツを顕在化させ、具体的なサービスを需要に転化してそれを提供する。そこで雇用が増加するという方法で、これは島田先生の研究会でも提案されており、今朝の新聞で、その第2バージョンが出ておりました。
この全国的な動向と沖縄振興計画からみた沖縄の可能性というものを考えますと、基本として振興計画と個別計画がございますので、それを進捗させるのが大切ですが、それをクロスオーバーさせるのも一つの方法ではないかと思っています。
平均寿命日本一というのは崩れてしまいましたけれども、100歳以上の割合は日本一である。それは、20数年後も変わらないわけで、健康・長寿は最も期待される分野です。全国的なウォンツとしても、健康に対する不安解消というのは最も伸びることが期待されており、まず観光、医療、介護サービス、健康食品などを連携させる健康長寿クラスターをつくりあげるのが第1点です。それから、教育分野も今後の可能性が高い。規制改革により、民間の参入が容易になることにより、教育ビジネスの展開が広がる。今後ワークシェアリング等によって、多様な就業形態になるものと考えられ、その対応として、個人の職業訓練ニーズや教育ニーズなど社会人向け教育サービス、高度な職業教育が拡大多様化すると想定されます。
一方、IT産業は、コールセンターの立地により雇用の場の創出に貢献しており、遠隔医療や遠隔教育等のシステム開発によって地場産業の広義の健康長寿産業や教育分野との連携による発展が期待され、金融特区との連携も考えられます。また、快適な住居や環境づくりなどの新たな需要に対応した建設分野での雇用の拡がりも想定されます。
「ワークシェアリング」に関しましては兵庫県、鳥取県では具体的に面白い取組みをやっておりまして、民間が行うワークシェアリング、公共が行うワークシェアリングである程度の成果が出ております。沖縄はこれから労使で協調してやっていこうという段階にあり、全国でもトップクラスにある沖縄の長時間労働をワークシェアすることで、多様な就業形態を生み出し、新たな雇用も創出されるのではないか、さらには今後の急増する公務員、教職員の退職に対応したワークシェアリングも有効ではないか、と考えております。
雇用に関する「公庫の役割」についてですが、職業訓練とか、就職支援も重要ですが、王道は実は経済を活性化することにより雇用機会を生み出すこと、仕事場をつくることにあると思っております。ここに公庫の役割があるだろうと思います。沖縄の振興に関する政策支援も強固でありますし、沖縄の保持するポテンシャルも見直されております。ベンチャー性の強い新規企業の育成に公庫は取り組んでおりますが、雇用の創出といった観点からも前向きに、より強くプッシュしてほしいところです。それから、先ほど述べた沖縄で可能性のある分野に関しても、公庫は民間金融機関と協調してサーベイしたり、指導・助言を積極的に進めることにより企業経営を安定化させることが、ひいては沖縄の自立につながっていくのではないかと思っております。少し長くなりましたが、これで報告を終わらせていただきます。
9 沖縄県経済の現状と見通しについて
○塚越委員長 どうもありがとうございました。適切なご指摘をいただきまして、また沖縄公庫の役割について非常に貴重な御意見をいただきました。それでは、続きまして内田委員からお願いいたします。
○内田委員 それでは、私の方から沖縄県経済の現状について御説明させていただきます。
私どもは、昨年12月から7か月連続で沖縄経済は緩やかな持ち直しの動きが続いていると判断しております。この意味で、横這いの全国に比べてやや明るめのトーンと判断しております。この点について、資料に基づいてお話をしていきたいと思います。
まず1ページめくっていただきまして、「短観からみた沖縄経済」でございます。下のグラフを見ていただきますと、太い方が沖縄の折れ線で細い方が全国でございますが、沖縄は平成13年9月のテロの後、マイナス18という非常に低い水準にありましたが、その後、徐々に改善し、この3月がマイナス3でございます。6月については今、調査中でございまして、7月初めに発表いたしますが、3か月前の予想では少し悪くなるというふうになっておりますけれども、このところイラク問題、SARSがありまして、やや経営者の見方は慎重になっております。私どもは実績で見る限りはマイナス3ということでかなりゼロに近付いてきていると見ております。このくらいの水準でありますと、実態としては緩やかに景気は持ち直しているという状況にあろうかと思います。
その理由を業種別に見ると3点ございます。最近やはり好調なのはサービスで3月がプラス12となっております。当地の場合はホテルと観光のウェートが高い中でこれらの業種が改善しています。2点目は小売りでございますけれども、こちらもプラス10ということでプラスを維持しております。個人消費もまずまず堅調でございます。3点目は、建設は非常に厳しいですが、建設のマイナス幅が徐々に縮まっておりまして、当面とりあえずは下げ止まっている。これが3つ目の理由でございます。
ただ、心配なのは、このところ卸売が急速に悪化する傾向にございまして、この3月でマイナス3になっており、先行き見通しはマイナス24というふうにマイナスが拡大する予想になっておりますので、当地の場合、卸売がこのところ少し心配な状況になっております。この点について私どもで思っておりますのは、デフレ経済の下で単価が下落する、あるいはマージンが縮小する、あるいは流通が再編されるという問題がございます。特に中抜きの問題とか、あるいは従来型の商店街から大型スーパーあるいは新規に出店すると提携先が変わるといったことで、ちょっとここのところ卸売が厳しくなっているので注意して見ているところです。
問題は、こうした観光の好調、小売の堅調、それから建設の下げ止まりが今後も続くかどうかですけれども、もう少しデータを見ながら御説明したいと思います。
1ページをおめくりください。まず2ページの観光ですけれども、観光客数とホテルの稼働率は好調を維持しております。まず観光客数は3か月ごとの数字を見ていただきますと、このところずっとプラスが並んでおります。4月はマイナス3.2となっておりますが、これはSARSと修学旅行の影響です。SARSは台湾のクルーズ船が運休あるいは飛行機の減便がございまして、大体3%くらいの寄与度でマイナスになっております。それから、修学旅行はイラクの関係のキャンセルがございまして、こちらも減少しております。ただ、一方でSARSあるいはイラクの関係で、海外旅行をやめて沖縄に来るという本土客が増えておりますので、国内客は修学旅行のマイナスと個人客の増加がちょうど消した形でゼロになっており、4月は外人の観光客の減少がそのまま残ったという状況です。
ホテル稼働率を見ていただきますと、ほぼ前年比ゼロになっております。観光客数が減っているのになぜ稼働率がゼロかといいますと、外人の場合ですと特に台湾のクルーズ船は日帰りといいましょうか、例えば10時に石垣島に入りまして、それから川平湾、竹富島の観光をして食事をとってお土産物を買ってまた夕方に船に乗って帰ってしまうとのことで、泊まらない形の観光が多いわけです。それに比べて本土からの観光客は必ず宿泊を伴いますので、ホテルの方は前年を維持したというふうに4月については考えられます。
問題は、イラク戦争の影響とSARSの影響がどうなるかということですけれども、まずイラク戦争の影響は今回は非常に小幅でございました。(3)でテロの13年の影響とイラクの今回の影響の数字を比べておりますけれども、例えば左側のキャンセル数でいいますとテロの時の23万人に対してイラク戦争の時は2万人ということで10分の1ですし、ホテルの稼働率もテロの時は50%台まで落ちましたけれども、今回は70、80%台を維持し影響は軽微に止まっております。影響が軽微だった理由については、3ページで3つほど指摘しております。
まず第1は、前回のテロ事件はちょうど修学旅行のシーズン、10-12月の直前に起こりましたので、修学旅行のキャンセルの影響が大きかったということでございます。下のグラフは月別に修学旅行の占める割合ですけれども、10-12月を見ていただくとおわかりのように相当多くなっております。今回は4-5月で修学旅行はもともと少なかったといった事情があります。それから、県を始め行政、旅行社が本土の学校等に直接出向いて沖縄旅行の安全性を説明するといった行政の対応も今回功を奏したということが指摘できようかと思います。第2として、前回は飛行機が危ないというイメージがありましたけれども、今回はそういったことがなかった。第3として、今回は海外旅行をやめて沖縄旅行にシフトする本土客がかなりいる。これも大きな前回との違いでございます。特に最近ですと日本で一番遠い石垣近辺は5月、6月は絶好調のようでございます。
次に、SARSの影響であります。一番上の図は国内客と、今回少し影響が出ております台湾を始めとする外人客とを分けたものでございまして、棒グラフがその内訳になっております。折れ線グラフが全体の数字ですけれども、4月がマイナスになったというのは先ほど御説明しましたように台湾及びその他アジアを中心とする外国客が減ったことが響いております。それで、SARSに対して県内で感染者を出してはいけないという対応をいろいろしておりますが、それが中段に列挙してございます。これがどのくらい影響するかですけれども、去年483万人沖縄の観光客数がおりますが、そのうち台湾客が13万人、その他外国人客が5万人ということで、合わせて18万人おります。全体の率にしますと4%です。それで、これは全くゼロになるわけではないんですけれども、この部分が今7割くらい減ってきておりますので、それで大体3%くらい毎月減るということであります。
一方で、本土客でアジアへの旅行から振り替えたり、あるいは今の沖縄人気で沖縄の観光客がもともと増えるといった影響は大ざっぱに言いますと今、大体日本からアジアに出る観光客数が年間800万人と言われておりますので、そのうちの2%くらいが沖縄の方に振り替わってくれば外人観光客の減少分が補えます。月によって多少の振れはあり、先行きの予断は許されませんけれども、SARSの影響が今の程度であれば沖縄にとってはむしろ振替え客が多くて好調を維持するものではないかと私どもは見ております。
次に、建設は5ページをごらんください。まず公共工事保証請負額はこのところ公共事業の削減でマイナスが続いております。ただ、昨年は上期が大体2割くらいの減少、下期は若干のプラスでありまして、昨年は非常に上期の請負額が少なくなっております。それは下のグラフを見ていただいてもおわかりかと思います。この結果として、数字を見ると今年の上期は去年が少ない工事請負額に対して数字上はプラスが出てくるとは思いますけれども、全体としてはやはり少しずつ厳しい状況にあろうかと思います。一方で、3行目の新設住宅着工の方も振れはありますが、こちらは天久新都心を始めとして高水準を維持しております。建設全体としては私どもよく生コンの出荷量を見ておりますけれども、公共事業が減っている分、多少減ってきております。今のところ、昨年度の下期と今年度の上期は一時的に数字は下げ止まっておりますけれども、全体の情勢は非常に厳しい中で建設は夏場以降、数字上も悪化する可能性が高いのではないかと予想されます。したがって、こちらの方はまだ予断は許されないと考えております。
次に、個人消費について6ページをお開きください。個人消費は結構頑張っていると考えております。上の方から百貨店売上高の数字が並んでおりますけれども、新都心も新しい店ができておりますので全店ベースで御覧いただいた方がよろしいかと思いますが、このところ大体毎年4%近く伸びておりまして、最近の月別の数字を見ても2%くらい伸びております。それから、乗用車も沖縄が非常に好調なのが特徴で、この3年間6%台の高い伸び、そしてこの3、4月も10%近い高い伸びを続けております。家電につきましても当地はDVDを始めとして非常に頑張っておりまして、全国に比べてもいい数字が出ております。
このように、沖縄は結構個人消費の数字は全国に比べていいわけですけれども、これについて私どもとしては3つ理由を考えております。
1つ目は、やはり沖縄は人口が増えているためで、人が増えると着るものも食べる物も、あるいは住宅関係も、車も増えるということです。2つ目はたまたまだと思いますが、昨年の県の統計を拝見しますと平均賃金が前年を上回っておりまして、全国で所得は減少しておりますし、失業も厳しいんですけれども、もともと沖縄は失業も高かったということで、去年はそれほど所得が減少しなかった。むしろ増えたことが所得要因としてそんなに影響しなかったことがあります。3つ目はよく言われる県民性ですけれども、特に私どもが注目していますのは、やはり相互扶助の観点がありますので、沖縄の方はそれほどこの時期でも貯蓄が増えているわけではございません。全国では先行き不安で貯蓄を増やして消費を減らすといった傾向がございますけれども、その傾向が小さく消費の方も頑張っていると思われます。
以上が実態経済でありまして、SARSの問題は一度感染者が出てしまうと非常に大きな影響が懸念されるところでありますけれども、現状は全体として数字上は結構頑張った数字が出ているというのが今の特徴点でございます。
最後に、7ページと8ページで金融面のことを少しお話ししたいと思います。7ページの預金は4月が一番右でございますけれども、全国が今マイナス0.8、沖縄はプラス2.4です。全国が急に4月からマイナスになったのは、去年のペイオフの関係で信用組合から銀行へのシフトというものがあり、昨年度は高い伸びとなりましたが、今年度からはこの影響がなくなりゼロか若干マイナスとなっております。
特徴的なのはむしろ(2)の貸出金動向でございまして、このところ沖縄はプラス3%くらい、全国がマイナス4%くらいで、沖縄はプラスを維持しております。理由としては特殊要因がございまして、1つは年金福祉協会向け貸出の民間金融機関への移管が去年の秋にございまして、その分が半分くらいは影響しております。それから、地公体向けの貸出が年度末の分ですけれども、ちょっと例年よりは多かったということがございます。それからもう一つは、サービス関係向けの貸出がちょっと増えたといったものがあります。あとは住宅ローンが伸びていますけれども、これは全国も同じような状況でございます。金利の方は低いということで変化はございません。
次に8ページで、先月県内地銀3行の収益が発表されましたので、それについて簡単に御説明します。金融機関の収益力は、業務純益という折れ線グラフでございまして、過去5年間を見ますと緩やかではありますけれども、右上がりに増益となっております。一方で、棒グラフの方は不良債権の影響と株安の影響でございます。これを見ていただきますと10年度、11年度は不良債権処理がかなり多くて収益力を上回りましたので、その分、過去の蓄積をはき出すという非常に厳しい状況にございましたけれども、13年度から収益力が不良債権処理と株安の影響を上回るようになりまして、14年度につきましてははっきり上回っております。
ただ、不良債権の処理額は去年の中間決算発表時の予想に比べてもかなり増えておりますし、株式の償却もかなり株価が厳しい中で増えておりますので、まだまだ予断は許せません。しかし、今期は収益力がそうした株安、不良債権の影響を上回って、結果として蓄積が残る方向になったということでありまして、私どもは安定的な状況であったと見ております。
こうした中で今「りそな問題」、あるいは株安の影響ということがいろいろとちまたでは言われているわけでございますけれども、沖縄の状況を見ますと、まず株安の方について申しますと(5)の真ん中の表でございますが、県内の金融機関の株式の保有額は今年の3月末で237億円ということでありまして、よく言われます自己資本のTier1に対する比率が13.8%でございます。これは大手銀行ですと145%ですので、県内の金融機関の株の保有額というのは大手銀行の10%、すなわち株安の影響は10分の1程度ということで小さいと思っております。
それから、税効果の金額につきましても410億円でございます。これは自己資本に対しまして大体2割くらいです。よく5年、3年という話もありますが、大事な点は金融機関の収益力があるかどうかというところが一番のポイントになります。そういう意味で、見ていただいたように県内の場合には収益力が改善しておりますので、この程度の税効果であれば過大ではないのではないかと見ております。
それから、何で県内の金融機関の収益力が上がっているのかという点については、一番下の収益基盤を見ていただきたいと思います。まず結果からいいますと利ざやが県外より高くなっていますし、先ほど見ていただいたように貸出金も増えているということが理由でございます。具体的に言いますと、まず左側の方で利ざやを見ますと、県内の預貸金の利ざやはもともと全国より高くなっているということと、そうした中で金融機関はかなりリストラをしておりまして、経費が全国より高目だったんですけれども、この差が縮まっている。結果として、総資金利ざやは全国よりも沖縄の方がわずかではありますけれども厚くなっている。
それから、貸出金残高の方でございますけれども、これは細い線あるいは点線が全国の金融機関のバブル期は相当全国の方が増えていったわけです。沖縄も伸びましたけれども、全国に比べるとその増加率は低かったわけです。全国の方は、平成7年頃を大体ピークにいたしまして残高は減ってきております。これに対して沖縄県の方は残高の伸びは随分ピッチは落ちてはおりますけれども、引き続き伸びております、貸出金の増加と利ざやの改善が確保できているので、収益力すなわち業務純益の方も上がってきているというのが今の状況であります。
だから安心というわけではございません。不良債権の比率は沖縄県の場合は全国平均よりも3%高くなっておりますので、まだまだ安心できる状況ではございませんけれども、今年度の収益を見る限りは安定的であったというふうに私は思っております。以上でございます。
10 閉会
○塚越委員長 ありがとうございました。以上で、本日の議題はすべて終了いたしました。お時間もまいりましたので、本日の会議はこれで終わりたいと思いますが、委員の皆様方には、今後とも引き続き御支援、御協力をよろしくお願いいたします。次回は、10月頃に東京で開催したいと考えております。いずれ事前にご通知申し上げますので、よろしくお願いいたします。
本日は、御多忙のところありがとうございました。