取組分野ごとの検討・取組状況
平成12年11月29日
跡地対策準備協議会
跡地対策準備協議会の第2回会合(平成12年8月24日)において、普天間飛行場の跡地利用の促進及び円滑化等について、「取組分野ごとの課題についての中間的な整理」を取りまとめるとともに、今後、更に取組分野ごとの検討を進め、それぞれの進捗状況に応じて、取組分野ごとの検討・取組状況について、逐次報告を求め協議を進めることとした。
これを受け、取組分野ごとの課題について、国、県、市の事務レベルで、総合的な検討・取組を鋭意進めてきたもののうち、文化財関係、再開発事業関係などについて、以下のとおり、取りまとめたところである。
1. 文化財関係
(1)これまでの検討状況
これまでの検討の結果、埋蔵文化財の所在状況等を把握するために、詳細分布調査(現地踏査及び試掘・確認調査)を計画的に実施した場合、一定の条件が整えば、跡地利用を検討する上で有効となる埋蔵文化財の所在状況の概略については、概ね数年間で把握できる見通しが得られた。また、同様に、再開発事業を円滑に実施する上で重要となるより詳細な遺跡の情報については、概ね返還後の原状回復措置期間中までに把握できる見通しが得られた。
また、これまでの検討の中で明らかになった事項は、次のとおりである。
- 詳細分布調査のうちの試掘調査等により埋蔵文化財の基本的な所在状況を把握でき、これを基に遺跡の所在状況の概略を示す遺跡地図の作成が可能であること。
- また、詳細分布調査のうちの試掘調査と一部並行しながらの確認調査等により、再開発事業を円滑に実施する上で重要となる、より精緻な遺跡地図の作成、遺跡の性格・内容の把握等が可能であること。
- 滑走路区域等返還後でなければ試掘・確認調査を実施することが困難な区域も想定されるが、現に米軍施設等が存在しない大半の区域については、既に実施されている調査の状況を勘案すると、返還前の調査も実施可能であると考えられること。
- 市及び県において、既に一部の地点で、埋蔵文化財の試掘調査等を実施してきているが、これらの調査データ等を整理すれば、埋蔵文化財の所在状況の把握に活用できること。
- 埋蔵文化財の所在状況に係る調査については、県が中心となりつつ、市も共同して、これに取り組む方向であること。
(2)今後の取組
1)埋蔵文化財詳細分布調査の実施計画の策定- これまでの検討を踏まえて、普天間飛行場内の埋蔵文化財の所在状況等をより詳細に把握するため、平成13年度中を目途に、県が中心となり、埋蔵文化財の詳細分布調査(現地踏査及び試掘・確認調査)の具体的な実施計画を策定することとする。
- 詳細分布調査の実施計画の策定に当たっては、(1)既実施の試掘調査データ等の活用、(2)実施時期に応じた調査の範囲(特に返還前に調査可能な範囲)、(3)調査の体制(民間調査機関の活用を含む)、(4)事業費の見込み、等についてより精査するとともに、跡地利用のための手順等を念頭において、実効性のある計画となるよう検討を進めることとする。
- 文化財の調査及び保護を円滑に行うため、専門職員等の拡充など、県と市における埋蔵文化財の調査体制の整備・充実を図ることとする。
- また、調査支援業務への民間調査機関の活用を積極的に図ることとする。
具体的には、磁気探査、重機等による機械作業、写真測量等について、民間調査機関の積極的な導入を図るとともに、遺構等の現場実測、出土品の実測等の作業についても、民間調査機関の活用に向けて検討を進めることとする。 - さらに、大学等との連携・協力についても、今後検討を進めることとする。
- 埋蔵文化財として扱う遺跡の範囲、遺跡の性格・内容に応じた調査の手法等については、県が中心となって、市・国(文化庁)と調整しつつ、更に整理を進めることとする。
- なお、埋蔵文化財の調査手法等については、跡地利用計画の具体化の状況や再開発事業の工事内容等に応じて、今後、整理を進めることとする。
2.再開発事業関係 [跡地利用の遅延要因]
(1)これまでの検討状況
1)既返還跡地の再開発事業の状況
返還跡地において、再開発事業として土地区画整理事業が実施されているものは28地区あるが、その主な事例の進捗状況については、次のとおりである。
- 返還から事業着手(土地区画整理事業の認可)までについては、それぞれの事業毎に期間のばらつきが大きく、また、事業着手までにかなり長期間を要しているものもあること。
- 事業着手後については、それぞれの事業毎の期間のばらつきが比較的小さく、かつ、返還跡地以外の土地区画整理事業と比べても進捗の状況に大差がないこと。
- このため、跡地利用の円滑化に取り組むに当たっては、返還から事業着手までを迅速に行うことが特に効果的と考えられること。
2)跡地利用までの期間の遅延要因
上記の既返還跡地の再開発事業の中でも規模の大きい事例を中心に検討した結果、既返還跡地における跡地利用までの期間の主な遅延要因については、次のとおりである。
(1)返還区域及び返還時期の明示の遅れ
(2)各種調査着手の遅れによる跡地利用計画等の策定の遅れ
(3)跡地利用計画及び事業計画等に関する関係地権者の合意形成の遅れ
(4)公共公益施設の整備のための用地取得の遅れ
(5)再開発事業中の埋蔵文化財発掘調査、不発弾処理等の実施による再開発事業の工事の遅れ
(2)今後の取組
- 上記の遅延要因の整理を踏まえ、これらの遅延要因に関する普天間飛行場の跡地利用の促進及び円滑化に向けた取組の方向を、別添のとおり整理し、それぞれ国、県、市において連携及び協力を図りながら取り組むこととする。
- これらの取組の方向については、今後の取組の成果や更なる検討の結果も踏まえ、来年春以降できるだけ早い時期に取りまとめを予定している、分野毎の課題についての整理に反映させることとする。
3.跡地利用計画策定関係
- 普天間飛行場の跡地利用計画の策定については、当面、県及び市の具体的な取組方針(手順、分担等)について、平成12年度中に整理することとする。
- 県は、上記方針に基づき、平成13年度から広域的な観点からの具体的な調査(中南部圏域計画、広域交通計画、都市計画区域の整備、開発及び保全の方針等に関する調査)に着手する方向で検討を進めることとする。
- 市は、上記方針に基づき、平成13年度から跡地利用計画の前提となる具体的な調査(市の都市計画に関する基本方針等に関する調査)に着手する方向で検討を進めることとする。
- 国(沖縄開発庁)は、跡地利用計画の策定の円滑化に向けて、関連情報の共有化を更に推進するため、跡地利用のためのデータベースの整備、拡充等を進める。
4.地権者支援関係
- 跡地利用に向けた地権者への情報提供について、返還手続きに関しては国(那覇防衛施設局)が、跡地利用に関しては市が、それぞれ中心となって必要な情報を適切に提供できるよう取り組むこととし、それぞれ具体的な情報提供の方法等について検討を進める。
- 地権者の意向を的確に把握するため、市が中心となり平成13年度に意向調査を実施する方向で検討を進めることとし、当面は地権者窓口組織との意見交換等を通じ、実施に向けた環境整備に努める。
- 普天間飛行場はその大半を民有地が占めており、跡地利用の円滑化にとっては関係地権者の合意形成が最も重要な要素の一つであることから、合意形成に向けた効果的な支援のあり方について引き続き検討を進めることとする。