栄典制度の在り方に関する懇談会第6回議事要旨

1. 日時

平成13年7月16日(月) 10:00~11:50

2. 場所

総理大臣官邸大客間

3. 議事

  1. (1) 開会
  2. (2) 「栄典制度の在り方に関する論点の整理」に対する意見募集等の結果について
  3. (3) 意見交換
  4. (4) 閉会

4. 出席者

吉川弘之座長、工藤敦夫座長代理、今井延子委員、金平輝子委員、小林陽太郎委員、平山郁夫委員、藤森昭一委員、御厨貴委員、山口昇委員

(政府側)
古川内閣官房副長官、松下内閣府副大臣、佐藤内閣府賞勲局長

5. 会議の模様

  1. (1) 松下内閣府副大臣から挨拶があった。
  2. (2) 配布資料に基づき「栄典制度の在り方に関する論点の整理」に対する意見募集の結果と、内閣府政府広報室を通じて行った「栄典制度の在り方に関する有識者アンケート調査」の結果について、賞勲局長から説明があった。
  3. (3) これらの結果も踏まえて各委員により意見交換が行われた。
    <主な意見の概要>
    • 意見募集等の結果を見ると、地位や期間による評価を外れて、均一化している面を再評価してほしいということが全体の意見として反映されているように思う。しかし、地位や期間による評価から質による評価に転換し、差を設けて評価するのは大変難しい問題。ポストと在職期間による評価を崩すと、栄典制度は崩れてしまう。やはり、ある何年間かある地位にいてきちんと勤め上げたということも一つの功績であるというのが栄典制度の考え方だ。抜群の功績については、褒章を活用するなどの方法で評価することができるのではないか。
    • 意見募集の結果には、ポストと実際の功績とは違うものであるから、これらが自動的にリンクしているようなところは改善し、叙勲における中央・地方間や大企業・中小企業間の格差を是正していく必要があるという意見が現れているのではないか。
    • 功績の質が抜群な人の評価はしやすいが、抜群ではないがある程度評価する必要があるという人の評価が難しい。本当に功績がとび抜けている人はすぐに決まるので問題ないが、そうでないところを評価するということを入れておかなければいけない。
    • 意見募集等の結果には、栄典制度は何となくあった方が良いと思うが、そうであれば公正・平等なものにすべきであるという意見が多いのではないか。ところが、叙勲制度は基本的には人を選別するものであり、ある種のヒエラルキーに当てはめなければならない。そうだけれども、対象の裾野をより広くし、人目につきにくい分野の受章者を増やすべきという意見もある。これらの議論をどううまく合わせていくかが難しい点なのではないか。
    • 意見募集等の結果は、懇談会の議論の内容と大きな流れは一緒なのではないか。今後は、功績評価の基準の改正など運用面をどうするかについて更に詰めていく必要があるのではないか。また、褒章制度をもっと活用していくべきであるとするものが多いが、栄典制度全体の運用をみて、今までの制度との整合を図りながら改めるべきところは改めていくことが必要なのではないか。
    • 意見募集等の結果をみると、懇談会における議論や「論点の整理」に欠落していた部分は特に無かったと考えて良いと思う。また、地位に対する評価ということではなく、本来は個人に対する社会貢献あるいは国への貢献の評価ということであるということも、皆さんよく分かっている。本人以外の人たちが大変リーズナブルだと考える評価というものが、難しいことではあるが、この制度の意義ではないかと思う。
    • 抜群の功績をあげている人に対して、国家・社会に対する功労による勲章などと大上段に振りかぶらずに褒章を授与するというのは良い考え方なのではないか。そのためには、褒章制度を新しいものに変えていくことを検討すべきではないか。
    • 評価の基準を明らかにすべきという議論と、弾力的な運用を行うべきという議論の両方があるが、例えば現行の紅綬褒章が、褒章条例において人命救助を要件とすると明記されているため、逆に人命を救助できないと用いられないといったことにもみられるように、この両方がどう絡んでいくかが難しい点なのではないか。
    • 抜きん出た功績がある場合にどうするかという問題であるが、研究、文化等の分野における功績に対しては学会や研究機関等が表彰する場合があるが、これと国家的表彰との関係をどう考えるか難しいところ。また、褒章を出す場合には功績に即応して出すべきである。警察官や自衛官等の命懸けの行動に対しての場合には考慮する必要があると思う。
    • 意見募集等の結果はおおむね想像どおりであると思う。今後は様々な面での格差を是正することが議論のベースにあり、評価の基準と運用が基本的に大事だと思うが、功績の評価であるから「妥当」ということはあり得ても、「平等」ということはあり得ないと思う。公正な評価を行うためには、過去の授与の実例を大きな要素として考えなければならない。
    • 同じ功績であるならば官民を問わず公正に同じ評価をすることが求められるが、功績の性質に応じて措置を選ばなければならない。褒章や国民栄誉賞、各種顕彰等を組み合わせて、総体として機能していることが大事だと思う。
    • 国のため、公共のためということではないかもしれないが、人道的な業務、国際協力、国際支援等に従事した人に対して何らかの措置を採ることを考えるべきではないか。
    • 問題を整理すると、以下の2点になるのではないか。①パブリック・ポストと功績はリンクせざるを得ない。本来は地位ではなく個人評価なのだけれども、これをするための道具としてポストというものを使わざるを得ないということは認めよう。ただ、社会の変化の中で、例えば官から民へ、中央から地方へ、ドメスティックな分野から国際的な分野へといった流れを踏まえて、リンクの中味を見直していく必要がある。②ポストと功績がリンクしていない部分をどうするかという問題がある。これを叙勲の枠組みの外に出して評価するのか、あるいは、リンクしないものでも実はリンクしている人と同じ価値があることを叙勲の中でみせるか、という問題があるだろう。
    • 現在では功績評価の大部分を量的な評価が占めており、全国規模のもの、大規模なものが高く評価されている。これはやはり見直しをしないといけないと思う。もう少し質的なものを入れていく必要があるのではないか。例えば民間企業の評価においては、企業に対する社会の評価の変化を反映して、効率の良い経営を行っている企業や、独自の技術、カルチャーを持ち冠たるポジションを占めている企業等を評価に入れていくべき。
    • 大学、大学教授は、数が増えたこともあり、その質にはピンからキリまである。これをランク付けすることには差別だという批判があるかも知れないが、やはり国公私立を問わず質の評価を行うべき時代になってくると思う。このように、各分野において時代に即応して質の評価に踏み込めるかどうかということが問題。
    • いろいろな分野の既存の評価の基準を見直していくことは大変重要なことだと思う。ただ、これまでの評価の仕方がどのような点で問題があるか、どのように変えればいいのか、実質的な功績による決め方というのは大変難しいと思うが、今のままでいいとも思わない。そこの議論を相当にしないといけないと思う。
    • 人目につきにくい分野、特に全くの民間のボランティアの場合は、評価の基準が大変難しい。民間の知恵を含めてどうすればよいかということを考えていくべきだ。
    • そうした方々は、見えないところで純粋にやっているが、全く一人でやるということはできないだろうから、NGOやいろんな機関に根を張れば掘り起こすこともできるのではないか。
    • 勲章よりも褒章や総理顕彰、記章といったものの方が、自発的にボランティアを行っている人にとっては受けやすいのではないか。
    • 褒章、記章などは功績があった場合にすぐに出す性質だが、70才になって振り返りその人の一生が見えたときに、褒章をもらっている人がまた叙勲を受けるということがあってもいいのではないか。
    • 勲章は、ある程度の歴史的な時間の経緯を見るというところがあるから、評価する時点が社会の動きから遅れるのは致し方ない。また、対象の網羅性を徹底すると恐らくパンクしてしまうので、経済分野ならベンチャー企業、地方に根ざしている企業など評価を重点化して行い、ある段階でその重点分野を見直すということだと思う。
    • この懇談会では叙勲制度の総論的な方向付けを行い、具体的な基準等の各論については、各省庁がそれぞれの分野に応じて検討していく必要があるが、その基本的な考え方については賞勲局から各省庁に提示し、各省庁、各部局においてそれに従い評価、推薦ができるようにしてほしい。
    • ボランティアを行っている人の一部であっても表彰することができれば、他人のために尽くすという考え方を広めることに寄与するのではないか。
    • 民間での広く知られていない分野での功績について、具体的にどうやって掘り起こすかが問題であるが、例えば、各省庁に義務付けるなどして少し強制的に推薦ルートをつくらなければいけないのかも知れない。
    • ボランティアを一生懸命されている方はあまり個人で表彰されることを好まない傾向があるが、その人たちが中心となっている団体を褒章の対象するということから、意識を変えていくことができるのではないか。
  4. (4) 7回目の会合は、平成13年9月5日に開催することを予定。次回の会合においては、最終報告案についての検討を行うこととされた。
  1. 資料1 「栄典制度の在り方に関する論点の整理」に対する意見募集等の結果の概要
  2. 資料2 「栄典制度の在り方に関する有識者アンケート調査」別ウィンドウで開きます

[文責:内閣府賞勲局総務課]

(注)本議事要旨の内容については、今後変更の可能性があります。