II 叙勲制度の基本

II-1 等級について 【現状】
我が国の勲章には旭日章、宝冠章、瑞宝章の3種類の勲章があり、それぞれの勲章に功績の大きさに応じた勲一等から勲八等までの8つの等級区分がある。さらに、これらの上位の勲章として3つの勲章(大勲位菊花章頸飾、大勲位菊花大綬章、勲一等旭日桐花大綬章)がある。(資料7参照
(参考)主な外国勲章の等級区分
イギリス
最優秀英帝国勲章 5等級
フランス
レジョンドヌール勲章、国家功績勲章 それぞれ5等級
ドイツ
ドイツ連邦共和国功績勲章 8等級
イタリア
イタリア共和国功績勲章 5等級
資料15参照
注)一般国民を対象とする勲章を例示したものであり、上記以外にも、イギリスのガーター勲章、バス勲章など多様な勲章制度が存在する。
(1)等級の必要性について 【懇談会における主な議論】
  • 叙勲は、人を評価するものではなく、国家・社会・公共に対する功績の大きさを評価するものであり、功績の大きさにはそれぞれ違いがある以上、功績の大きさの違いに応じた等級は必要ではないか。
  • 功績の大きさには違いがある以上、単一級というのは無理ではないか。功績の大きさがそれぞれ違うのに皆同じ等級というのでは、逆に何のための叙勲かということにもなりかねない。文化勲章は単一級であるが、これは極めて限られた少数の方々に対する最高の勲章だから出来るのであって、多数の一般の方々を対象とする勲章の場合はある程度の等級が必要ではないか。
(2) 等級の数、表示方法について 【懇談会における主な議論】
  • 現在の等級はやや煩雑、細分化されており、もう少し簡素化しても良いのではないか。
  • 6、7、8等級はまとめても良いのではないか。(6等級ぐらいで運用してはどうか。この場合、7、8等級は6等級のところに集約し、下に厚くしてはどうか。)
  • 等級の括り方を大きくすると、逆の不公平が生じるのではないか。
  • 等級の問題については従来の制度との整合性を図らなければならず、これまでと全く別のものとすることは、定着した栄典制度を混乱させることにもつながり、適当でない。
  • 等級の問題については、今後の在るべき姿を示した上で、できるだけ従来の制度との整合性も考えることとしてはどうか。
  • 等級の簡素化を図る場合であっても、特に下位等級の対象者の切り捨てはしてはならない。
  • 外国との比較検討も必要。
  • 等級の違いを表示する方法として、「一」、「二」という数字は使わない方が良いのではないか。
  • 等級の違いの表示を国民にわかりやすい固有的な名称表示にしてはどうか。
II-2 官の叙勲と民の叙勲の在り方について 【現状】
我が国の勲章制度は明治8年の創設以来軍人・官吏を中心に運用されていたが、戦後昭和39年に生存者への叙勲を再開するに当たり、この運用が大幅に改められ、各界各層のあらゆる分野において国家や社会に対して功労のあった者を幅広く対象とすることとされ、民間の分野からも多くの方に勲章が授与されることとなった。
(1)功績の質の違いについて 【懇談会における主な議論】
  • 官と民では功績の質が違うのではないか。また、官と民の功績の評価の仕方には共通性がないのではないか。官の場合は職務内容や勤務年限で比較的明確に把握できるが、民の場合は明確な物差しがないのではないか。官の叙勲と民の叙勲を分けてはどうか。
  • 公務員の国家に対する貢献と、学問、芸術の分野での発明、発見、業績とでは、功績の質が違うのではないか。
  • 官と民の功績の質については、形式的には違うけれども、「パブリック」への貢献という同じ視点でみるということが重要なことなのではないか。
  • かつて官が担っていたものが、今、民に移行しているものもある(三公社の民営化、介護サービスにおける民の役割、NPOなど営利を目的としない民間団体の活動など)。国民一人ひとりが「公」の分野に関与するようになってきている。その意味で、「官」と「民」、「公」や「公共」について定義、考え方をきちんと整理する必要があるのではないか。
(2) 政治家、公務員の扱いについて 【懇談会における主な議論】
  • 叙勲の対象について政治家や官吏を外してはどうかという議論があるが、人を褒めるのに最初から除外事項を設けるというのは間違いではないか。
  • 「公務員は給料をもらって公務に就いているのだから叙勲の対象から外してはどうか」という議論は公正な議論ではないのではないか。官であれ民であれ、公共のために尽くした方についてはきちんと評価を行うべきではないか。
(3) 警察官、自衛官等に対する叙勲の在り方について 【現状】
  • 警察官、自衛官など著しく危険性の高い業務に精励した者については、現在、他の一般の公務員、民間人とともに春秋叙勲の中で叙勲が行われている。
  • これらの著しく危険性の高い業務に精励する者については、候補者数が極めて多い一方春秋叙勲の中では受章者の数がおのずから限られるため、受章者の平均年齢が次第に高くなってきている。
【懇談会における主な議論】
  • 警察官、自衛官等は、治安、防衛など社会・公共のために身命を賭して奉仕することを本務とする特殊な職務であり、他の一般の公務員や民間人とは類型を異にするので、これらとは別の叙勲としてはどうか。
  • 警察官等生命身体の危険を伴う職務に携わった方々については早めに叙勲をするようにしてはどうか。また、春秋2回ということではなく随時受章の機会を設けることとしてはどうか。
  • 警察官等については、春秋叙勲の中では受章者の数に限りがあるため、受章平均年齢が非常に高くなってきている。元気な高齢者には受章を励みにもうひとがんばりしていただくという意味で、これらの方々に対する叙勲を春秋叙勲とは別の叙勲にして、受章者の数を増やし、もっと早く受章できるようにすべきではないか。
II-3 男女別の勲章について 【現状】
現在、旭日章と宝冠章は同格の勲章として、旭日章は男性に、宝冠章は女性にそれぞれ授与されている。また、瑞宝章は男女に共通の勲章として授与されている。宝冠章は、明治21年、当時のヨーロッパにおける女性の功労、徳義を表彰するための勲章の例を参考とし、女性の礼装にふさわしい勲章として設けられたものであり、その図様は、古代女帝の宝冠を模してデザインされ、きわめて美麗であるとして世界的にも高い評価が得られている。なお、現在では、世界的にみても、同じ功績に対して男性と女性に別の勲章を授与している例はない。
【懇談会における主な議論】
  • 栄典制度は、性に中立であるべきである(男女に共通の勲章とすべきである)。
II-4 その他 【懇談会における主な議論】
  • 社会に特に功労があった若干名の人に対して、例えば社会功労章といった格の高い単一級の勲章を創設し授与してはどうかという議論があるが、文化勲章とは違って、誰が、どのような分野から、どのような仕組みで候補者を集約し、選定していくのかが極めて大変で、困難ではないか。

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