IV 褒章

IV-1 叙勲と褒章の関係について 【現状】
叙勲が生涯にわたる国家や社会に対する功績を総合的に評価して行われるものであるのに対して、褒章は特定の分野についての善行を表彰するものである。
明治14年、「褒章条例」(太政官布告第63号)が公布され、紅綬、緑綬、藍綬の3種類の褒章が定められた。その後、大正7年に紺綬褒章、昭和30年に黄綬褒章、紫綬褒章が追加され、現在6種類の褒章が定められている。
叙勲が公務員及び民間人を対象としているのに対し、褒章は主として民間人を対象としている。
また、叙勲の受章年齢が原則として70歳以上であるのに対し、褒章の受章年齢は原則として55歳以上となっている。
【懇談会における主な議論】
  • 栄典には叙勲と褒章があるが、叙勲は国家公共に対する功労の集積で判断するものであり、褒章は善行を褒めるものである。叙勲と褒章の関係を整理する必要があるのではないか。
  • 叙勲は長年の功労の集積に対する評価であるから生涯の功績がほぼ固まった時点をとらえて表彰するという考え方でよいが、褒章は優れた事績を表彰するものであるから、事績があったその都度機動的に授与するようにしてはどうか。
  • 栄典制度というのは、勲章と褒章と2つ合わさったものと考えて議論すべきだと思う。褒章は原則として官には適用がなく、その中で藍綬褒章は商工業の振興に尽くした方を対象にするなど専ら民のための制度として運用されている。制度を立てた基本理念から言えば、勲章は国家・公共への功績への報いであり、褒章は善行を表彰するという考え方でやっているわけであるから、その考え方を整理し、両方の領域をはっきりさせた上で勲章を議論しないと混乱がつきまとうのではないか。
IV-2 褒章の種類について 【現状】
現在、褒章条例(明治14年太政官布告第63号)により、6種類の褒章が定められている。
  • 黄綬褒章 業務に精励して衆民の模範である者
  • 紫綬褒章 学術芸術上の発明改良創作に関して事績の著しい者
  • 藍綬褒章 公衆の利益を興した者又は公同の事務に尽力した者
  • 紅綬褒章 自己の危難を顧みず人命を救助した者
  • 緑綬褒章 孝子など徳行卓絶な者
  • 紺綬褒章 公益のため私財(500万円以上)を寄付した者
このうち、黄綬、紫綬、藍綬の3種類の褒章については、春秋の褒章として毎年春と秋の2回発令されている(主な対象分野例について資料12参照)。紅綬褒章と緑綬褒章については事績の生じた都度発令されることとされているが、これまでに発令された数は多くない。
【懇談会における主な議論】
褒章については大いに活用すべき。このような時代においては特に緑綬褒章をもっと活用すべき。現代にふさわしい徳行の意味を検討した上で、緑綬褒章の活用の仕方を考えてはどうか。
  • 「徳行」には時代によって変わるものと不変なものがあり、何が「徳行」にふさわしいかについては慎重な検討が必要である。
  • 紅綬褒章については、危険を顧みず人命救助等に取り組んだ方に、もっと幅広く活用するようにしてはどうか。
  • 紺綬褒章に多額納税者を加えてはどうか。

[栄典制度の在り方に関する論点の整理目次]  [次へ]