51. 以下の戦略は、市民団体との協力の下、政府が、IV節に挙げている目標を達成するのを支援すべき。
52. 「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク(2003-2012年)」を国及び地方レベルで実施するためには、障害に関する国の行動計画が不可欠である。
戦略1: 政府は、2004年までに、障害者団体及びその他の市民団体と協力して、「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク(2003-2012年)」の目標・戦略実施のための、包括的な国の5か年行動計画を策定し、採択すべき。右計画には、障害者を主流の開発計画・プログラムに盛り込むようなインクルーシブな障害者政策・プログラムが含まれるべき。
53. 障害問題を前進させるに当たっては、権利に基づくアプローチをとるべきである。障害者の市民的、文化的、経済的、政治的及び社会的権利に留意し、これを保護する必要がある。障害問題は、開発や人権問題に関する議論や国の計画に組み入れられるべきである。世界的には、40以上の国が障害に関する非差別法(non-discrimination laws on disability)を採択したが、アジア太平洋地域では、9か国が右を採択したのみである。
戦略2: 政府は、特に非差別を確保するため、障害者の権利を保護するための法律と政策の採択及び既存の法律の見直しを検討すべき。それらは、何が障害者に対する差別を構成するのか明確で具体的な定義を含むべき。そのような法律や政策は、国連の人権や障害に関する標準に見合うべきである。障害者は、そのような法律の下、権利を施行する効果的な救済(effective remedies)に平等にアクセスでき得るべき。
戦略3: 各国の国内人権機構は、特別な注意を障害者の人権に向け、それらの人権が全力でその役割を果たせるようにすべき。障害者の人権を保護するために、政府は、各国地域の具体的状況に従って、独立した障害者の人権機構を設立することを検討すべき。
戦略4: 政府は、市民社会の障害者団体を含む障害者が、彼らの生活に影響を与える法律や政策を形成するのを助けること、また、これらの法律や政策の実施状況をモニタリング・評価すること、更に改善を勧告することにおいて、初期の段階から十分に参画できるようにすべき。
戦略5: 各国は、中心となる国際人権条約 (注3)の批准を検討すべき。障害者団体と協議した後、政府は、条約のモニタリング機関に提出する報告書において、障害者の権利について具体的な情報を含めるべき。 (注3. 6つの中心となる国際人権条約とは、「市民的及び政治的権利に関する国際規約」、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」、「拷問禁止条約」、「子どもの権利条約」、「女子差別撤廃条約」及び「人種差別撤廃条約」である。)
戦略6: 政府は、「障害者の権利と尊厳の促進及び保護のための統合的かつ包括的国際条約」の策定に向け、2001年12月19日付国連総会決議56/168により設置されたアドホック委員会の作業を支援し、これに貢献することを検討すべき。また、アドホック委員会の作業への貢献に向けて、世界の全ての地域からの、幅広い範囲の障害者団体による完全参加を促進すべき。
戦略7: 政府は、提案された障害者に関する人権条約(2001年12月19日付国連総会決議56/168で決定されたように)の起草・採択に関し、国、地域及び国際レベルで、障害者とその団体を、手続きに含めるべき。そしてそれは、障害者の障害者の権利と責任に関し、強力な、消費者が影響を持つようなモニタリング制度を確保することになるだろう。
54. 十分なデータがないことが、地域内における、計画の実施をモニタリング・評価する政策と手段の策定を含めた障害問題の軽視につながる最大の要因の一つになっている。多くの発展途上国では、収集されたデータは障害の全体像を完全に把握できていない。このようにデータが限定される要因の一部には、適用される概念的な枠組み、実施される調査の対象と範囲の他、障害データの収集に使われる定義、分類および方法論が挙げられる。また、障害の定義と分類に使われる共通体系が、地域内で一律に適用されていないことも認識されている。この点に関して、障害の定義と分類の共通体系を作成する基礎として、アジア太平洋地域諸国で「国際生活機能分類(ICF)」をより広く利用することが望まれる。
戦略8: 政府は、2005年までに、障害関連のデータ収集と分析のシステムを開発し、また、政策決定と計画策定に役立つように、関連する統計を障害により分類することが奨励される。
戦略9: 政府は、地域内の国別の比較が可能となるように、各国政府は2005年までに、「障害者統計の開発のためのガイドラインと原則」(注4.国連の出版物 販売No.E.01. XVII.15.)に基づく障害の定義を採用することが奨励される。
55. アジア太平洋地域の多くの発展途上国は、従来の施設型且つ中央集権的なリハビリテーションのプログラムやプロジェクトを、貧しく、失業率が高く、社会的サービスの資源が限られた社会的・経済的環境により適したアプローチで補うか、そうしたアプローチに切り替えつつある。このような戦略の中心をなすのが、「地域に依拠したリハビリテーション(CBR)」のプログラムである。地域に依拠したアプローチは、障害の予防、障害児の早期発見と対処、村落部の障害者への接触、社会、文化、宗教的活動を含む地域のあらゆる活動に障害者を含めるための意識向上と支援に、特に適した方法である。教育、訓練、雇用におけるニーズも、このアプローチによって満たすことが可能になる。また、障害者自身がCBRイニシアティブの選択と管理を行うことが不可欠である。
戦略10: 政府は、障害者団体及び市民団体と協力して、障害原因の予防とリハビリテーション、及び障害者のエンパワメントのための地域に依拠したアプローチを促進するために国の政策を、(未だ策定していない場合は)直ちに策定すべき。地域に依拠したリハビリテーション(CBR)の観点は、人権に基づくアプローチを反映し、ピア・カウンセリング(peer counselling)を含む自立生活のコンセプトに基づき形成されるべき。