II.-4.職業訓練と雇用

(a)総合的支援

職業リハビリテーションに関しては、障害者に対する無料の職業準備訓練の実施、多様な障害者に対応した職業リハビリテーションの研究、専門職員の養成研修等を行っている。
 これらに加え、1994年より、「障害者雇用支援センター」として指定された民法法人等において、就職が特に困難な障害者に対し、市町村レベルで就職・職場定着に至るまでの相談、援助を一貫して行ってきた。その後、知的障害者、精神障害者等就業面の支援ばかりでなく、生活習慣の形成や日常生活の管理等生活支援を必要とする就業希望の障害者が増加したことに対応し、2002年より、「障害者就業・生活支援センター」として指定された社会福祉法人等において、障害者に身近な地域で、就業面及び生活面の一体的かつ総合的な支援を行っている。
 また、1991~1998年において、教育・福祉、能力開発等県行政、障害者団体等地域の関係者によるプロジェクトチームを組み、障害者雇用実績のある企業の協力を得て、重度障害者の雇用事例を収集し、好事例集を作成すること等により、その普及を図る重度障害者雇用促進プロジェクト事業を実施した。
 さらに、1993年より、民間企業の活力とノウハウを生かしつつ、地方公共団体と民間企業との共同出資(第3セクター方式)により重度障害者雇用企業の育成を図ってきた。

(b)職域開発

従来から障害者雇用率制度により、事業主に対し一定割合の障害者の雇用を義務づけ、障害者の雇用拡大を図っているところである。
 このような中、1992~2001年において、実際の事業所を活用し、職業生活面からの支援と技術面からの支援を総合的、具体的かつ実践的に行うことにより、重度障害者に基本的労働習慣を体得させ、就業環境への適応を図る「職域開発援助事業」を行った。この事業は、2002年に、他者との円滑なコミュニケーションに困難のある障害者等就職が特に困難な障害者に対して、就職前後にかかわらず障害者のいる職場にジョブコーチを派遣することによりきめ細かな人的支援を行う「職場適応援助者(ジョブコーチ)事業」として発展改組した。
 また、2001年から、障害者の一般雇用への移行を促進するため、障害者雇用のきっかけづくりとして、事業所が障害者を短期の試行雇用(3か月)の形で受け入れる「障害者雇用機会創出事業」を実施している。
 同じく2001年から、地域の精神障害者の生活支援を行う精神障害者地域生活支援センターを運営する社会福祉法人等が、事業所と請負契約を締結し、数人の精神障害者のグループが指導員の支援のもとに一定期間就労することにより一般雇用へとつなげるモデル事業を行っている。
 なお、2001年から、小規模作業所について、社会福祉法人となりやすいよう通所授産施設の規模要件を緩和するとともに、運営についても国庫補助を行うことにより、運営の安定化を支援している。

(c)相談支援

1998年より、従前の公共職業安定所や障害者職業センターにおける職業相談等に加えて、公共職業安定所の職員が医療・保健機関等に赴き、就職意欲は高いものの、就職する準備が十分でない者等を対象に就職活動に関する知識や方法を実践的に示すことにより、就職に向けた取組を的確に行えるよう援助する「精神障害者のジョブガイダンス事業」を行ってきた。また、障害者の家族及び医療・保健・福祉関係者に対して、障害者雇用に関する情報提供を行うとともにピアカウンセラーが具体的な相談に応じることにより障害者の職業的自立を推進する「障害者職業自立等啓発事業」(知的障害者:1998年~、身体・精神障害者:2002年~)等障害の特性に応じた相談事業を行っている。

(d)職業能力の開発

障害者職業能力開発校において、障害の特性や程度等に配慮しつつ、事業主のニーズ等に対応した訓練科目及びカリキュラムの見直しや機器更新を行ってきた。
 また、職業能力開発大学校等において、障害者の職業訓練を担当する指導員の研修を実施するとともに、障害者職業訓練指導員が、障害者職業訓練に関する工夫、対応方法等について相互の情報交換を行っている。
 さらに、健常者とともに職業訓練を受講することが可能な障害者については、障害者が利用しやすいような施設・設備の整備を進めつつ、一般の公共職業能力開発施設への受入れを促進している。

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