II.-5.情報・通信へのアクセスと情報テクノロジー

IT(情報通信技術)革命の進展は、社会に大きな変革をもたらし、我が国の経済的な繁栄、豊かな国民生活の実現をもたらすものとして期待されている。
 しかし、年齢的・身体的条件によるIT利用の格差が生じており、IT革命の恩恵をすべての国民が享受できる情報バリアフリー環境の実現のためには、高齢者・障害者の情報通信利用の促進が重要な課題となっている。
 政府は、高齢者・障害者を含めた誰もが情報通信の利便を享受できる「情報バリアフリー」環境の整備に向け、使いやすい機器・サービスの開発・普及の促進、地域におけるIT利用拠点の整備、高齢者・障害者向け放送番組の充実、インターネット・機器のアクセシビリティの向上等の施策を推進している。

(a)高齢者・障害者に使いやすい機器・サービスの開発・普及の促進

1997年4月から、高齢者・障害者のための通信・放送サービスの開発等を行うための研究開発を行う民間企業等に対し、その経費の一部を助成している。
 また、2001年4月からは、身体障害者のための通信・放送サービスの提供、又はこれまで実施されていない身体障害者のための通信・放送サービスの開発を行う者に対し助成を行っている。具体的には(1)聴覚障害者等向けの電話リレーサービスや、(2)視覚障害者等向けインターネット点字変換サービスなどがその対象となる。
 聴覚障害者向けには、1997年4月からテキスト文から手話アニメーション文を生成するシステムを、また、2001年からは携帯情報端末(PDA)を用いて手話アニメーションの情報を提供するシステムを開発している。

(b)地域におけるIT利用拠点の整備(IT生きがい・ふれあい支援センターの整備)

高齢者・障害者の就業機会の拡大、情報通信を利用した自立を促進するため、1998年4月から、高齢者・障害者が利用しやすい情報通信システム等を設置したセンター施設の整備を行う地方公共団体等に対する支援を行っている。
 整備されたセンター施設では、官公庁、企業、関係団体などから、ホームページの作成や会議資料の電子化、文書の点字変換などの受注を受け、障害者対応の情報通信機器や点字プリンタ、大型キーボードなどを利用して作業を行っている。

(c)高齢者・障害者向け放送番組の充実

放送を通じた情報へのアクセス機会の均等化を実現するため、1997年5月に放送法等を改正し、字幕放送等の努力義務化を図るとともに2007年末までに字幕付与可能なすべての放送番組に字幕を付与することを目標とした「字幕放送の普及目標」を策定・公表している。
 また、高齢者・障害者向け放送の充実に向け、字幕番組・解説番組等の制作費に対する助成を行うとともに、2004年3月末を目途に、ほぼ全ての録画番組を対象として、音声がすべて文字化された原稿がない場合でも、短時間で自動的に字幕を付与できるシステム実現のための技術確立を目指して研究開発を実施している。

(d)インターネット・機器のアクセシビリティの向上

高齢者・障害者が使いやすいようなキーボードの仕様や見やすい画面表示の方法等を定めた「障害者・高齢者等情報処理機器アクセシビリティ指針」を1995年に策定し、2000年に改定を行った。
 また、高齢者・障害者が円滑に電気通信サービスを利用できるようにするため必要な機能などについてまとめた「障害者等電気通信設備アクセシビリティ指針」を1998年に策定し、この指針を具体化したガイドラインでは、アクセシビリティを考慮した商品にシンボルマークを表示することとしている。
 また、高齢者・障害者が一般のホームページに簡単にアクセスし、内容を理解できるようにするため、その支援に必要なホームページの点検・修正などの機能を持つシステムを開発中である。

目次 | 前ページ| 次ページ