佳作 【中学生部門】 細谷 泰志
声かけは心がけ
豊橋市立南陽中学校 二年 |
この夏、僕は父の故郷の広島へ行って来た。おいしいものを食べたり向かいの島へ渡ったり楽しい思い出がいっぱいできた。でも一番心に残ったのは僕のおばあちゃんたちボランティアと障害者の方たちと楽しんだピクニックだ。僕のおばあちゃんは広島でボランティア活動をしている。僕は障害者の方たちとのふれあいピクニックに参加させてもらった。
おばあちゃん以外知っている人は誰もいない。しかも障害者の方とふれあうことはほとんどしたことがなかった。だからピクニックは楽しみだったけど少し不安な気持ちの方が大きかった。
当日の朝、小さな丘の広場に集まった。
僕は車イスにのったのぶ君の担当になった。のぶ君は二十一才の男の人だ。のぶ君のお母さんがつきそっているから少し安心した。
「あーうー。あーうー。」と声を発するばかりでおしゃべりは出来ないようだ。僕はちょっとではなく大いにとまどった。
それから僕が車イスを押して緑の遊歩道へ出発した。この道は車イスの人でも利用できるようにきれいに整備されていた。地元のボランティアさんたちがつくったそうだ。横に小川が流れていてとても気持ちがよい。
のぶ君は足に装具をつけていて歩けるようなので途中から僕がからだをささえて一緒に歩いた。立ちあがったのぶ君はぼくよりずっと背が高かった。フラフラして不安定で少しこわい。おまけにのぶ君は興味があるほうへ突然フラフラ歩いて行こうとする。
僕はからだを支えたり止めたりするのに必死だった。「細谷君、声かけしてみて。言葉はしゃべれないけど、伝わってないようで伝わっているんだよ。」とのぶ君のお母さん。
僕はとまどったけど声をかけてみることにした。「のぶ君、こっちに行こう。」「もっとゆっくり歩こうよ。」「セミが鳴いているね。」「ここは花がいっぱいさいていて、キレイだね。」でもあいかわらずのぶ君は「あーうー」と言ったり、とつぜんジャンプをしたりまわりをキョロキョロ見たりまったく通じていない気がした。
「つまらないな。」心の中でそう思った。緑の中を歩くのはとても気持ちがよいし風もここちよい。それなのにつまらないと思ってしまう。そのあとも同じように声かけしながら歩いていた。しばらくし、僕は気づいたのだ。のぶ君も僕と同じように緑や身体にあたる風や、水の流れる音を楽しんでいるんじゃないかと。そのことに気がついたらなんだかうれしくなった。
もちろん声かけをしても答えてはくれない。あいかわらずキョロキョロしている。でも、からだを支えて緑の中をいっしょに歩いていることがすごく幸せに感じた。風がとてもここちよく感じた。言葉が通じないのになんだか心がつながった気がした。こんな経験は生まれてはじめてだ。
お昼ごはんのバーベキューもおいしくて楽しかった。
お昼ごはんで輪になって座っているみんなはつかれていたけど楽しそうだった。おばあちゃんをみたら障害者の方たちを一人ずつまわって積極的にはなしかけていた。会話が出来ない人がほとんどなのにだ。
おばあちゃんを見ていたら、声かけは単なる会話ではなく心をかけることなんだと僕は気づくことができた。
これからも自分で機会をつくって積極的に障害者の方たちと交流したいと思った。もちろんたくさん声かけをしたいと思う。