佳作 【中学生部門】 井上 佳音

伝わるやさしさ

 

大阪教育大学附属平野中学校 三年
いのうえ かのん
井上  佳音 (大阪市)

ある日、私が電車に乗っていたときのお話です。その電車は、人の乗り降りが多く、満員の状態でした。そんなとき、一人の女の人が盲導犬をつれて乗車してきました。電車の中の人は、少しずつスペースをつめて、その女の人と盲導犬が乗れる空間をつくっていきました。中には迷惑そうな顔をしている人もいたけれど、ほとんどの人が協力していてすごくあたたかい気持ちになりました。

また、それだけではなく、電車の中で女の人と盲導犬が危ない目に合うことがないようにまわりの人たちが囲むようにして、人に盲導犬がおしつぶされないよう壁をつくっていてすごいなと思いました。女の人もそのようにしてくれているのに気づいたみたいで、まわりの人たちに何度も

「すみません。すみません。」

と言っていました。しかし、その人たちの一人の男の人は、

「ぜんぜん大丈夫ですよ。」

とやさしく声をかけていて、本当に感動しました。私は、はじめ女の人と盲導犬が乗車したとき、大丈夫なのかな。乗らない方が良いのではないかな。とすごく心配でした。でもそんな心配はすぐに消えて、電車の中もあたたかい空気につつまれたような気がしました。このような、心あたたまる行動がもっともっと広がるといいなと思います。

そして、もう一つすごいなと感動したお話があります。これは、駅でのことです。ホームから駅にあがる階段で、盲導犬と目が不自由な男の人、そのとなりに付き添いの女の人がいました。階段を上がろうとしているようでしたが、人が多すぎてなかなか上がることができず、ずっと下で人が少なくなるのを待っているようでした。階段をのぼっていく人々はみんな不思議そうにじっと見ているだけでした。私もその一人でした。すると二十代くらいの若い女の人が、その三人に向かって

「あちらにエレベーターがありますよ。」

と声をかけていました。私は大変そうだなと思って見ることしかできなかったけれど、声をかけるのはすごいと思います。困っている人がいたとき、何か行動にうつせるような人になりたいです。そして、女の人が声をかけると、付き添いの人が

「ありがとうございます。」

と言っていたので、エレベーターの方に行くのかなと思っていたら、そこからは動くことなくそのまま階段の下で待ち続けていました。よく見ると、盲導犬の背中には「訓練中」というカードがついていて、これから飼い主さんをしっかりサポートするために訓練をしていたことがわかりました。道を覚えるために、違う道を通ってはいけないそうです。私は、盲導犬は本当にかしこいし、すごいなと思います。電車の中でもいっさいほえずに、じっと座っていて、飼い主さんを安全に行きたい場所にいけるようサポートします。あまりにも静かすぎて気付かれないことも多いそうです。あるテレビ番組で、盲導犬といっしょに暮らしている方が「この子は、家族の一人でもあり、私の体の一部でもある。」とおっしゃっていてその言葉がすごく心に響きました。私たちの中には、障がい者の方は特別というイメージがあります。でも、これは障がい者の人も私たちと同じ人間で、たとえば目が不自由な人でも盲導犬がいることで私たちとあまり変わらない生活をおくることができることから、少しちがう考え方も必要なのではないかなと思いました。

盲導犬をつれて飲食店に入ろうとすると断わられてしまうことがあるそうです。でも、目の不自由な方にとって盲導犬は家族でもあり、体の一部でもあるのだから、こんなことがなくなってみんなが気持ちよく過ごすことができるようになってほしいと思いました。