佳作 【小学生部門】 古川 理絢
お兄ちゃんのこと大好きだから
熊本市立碩台小学校 六年 |
私には二人の兄がいる。一番上の兄はダウン症という障がいをもっている。私と二番目の兄はよくけんかをする。けんかの内容は小さい子がやるような単純なことだけど、毎日のように言い争いをしている。上の兄は、そんな私たちを見て、悲しい顔をする。
私と二番目の兄は、一番上の兄を[兄」ではなく、下に見ているところがある。どうしてかというと、私たちにできることができなかったり、勉強が分からなかったりするからだ。私はいつも、一番上の兄を手足のように使ってしまう。
「鉛筆取ってきて。」
「水持ってきて。」
と。やさしい兄は、いやいやながらも言うことを聞いてくれる。時々、やってくれない兄に、
「何でしないの。頼んだよね。」
と、厳しい口調で問いつめてしまうことがある。私は、自分の都合で兄を責めてしまうのだ。そんな時母からは、
「自分のことは自分でしなさい。」
と注意されてしまう。するとますます、兄に強く当たってしまう。兄をにらみつけ、冷たい態度をとる。私がどんな態度をとっても、兄はさりげなく私に、
「かわいいね。大好きだよ。」
と笑顔で言ってくれる。
私は、兄にずっと聞きたかった事がある。それは、自分が障がい者だとわかっているかということだ。そのことをさり気なく聞いてみると兄は、
「ぼくは、アルツハイマーっていう病気でしょ。」
と言った。真剣な話題だったのに、思いがけない答えで、その場にいた家族は大笑いした。兄は、テレビで見たアルツハイマーのことを観て、自分の障がいと重ねていたのだ。兄は自分の障がいのことをよく分かっていない様子だった。
私が一年生だった時、上の兄は六年生だった。兄は特別支援学級に在せきしていた。なぜ、みんなと一緒のクラスではないのか疑問に思った。私は時々思う。兄に障がいがなかったら、勉強を教えてくれるのかなとか、今のように優しい兄のままなのかな、など考えてしまう。友達から、兄の話を聞かされる時は、とてもきんちょうする。何か悪い話ではないかと想像するからだ。でも、友達から聞く話はどれも兄に「ありがとう。」という気持ちが伝わる話だった。泣いていたら、似顔絵をかいてもらって元気づけてくれたとか、おもしろいことをして笑わせてもらったなど誰かを笑顔にする話ばかりだった。
近くの商店街に兄と一緒に買い物に行った時、兄はたくさんのお店の人から、声をかけられていた。この商店街は兄の通学路で、毎日通っているうちに顔見知りになったらしい。店の人と堂々と会話をしている兄を見ると、とても誇らしく思う。
いつも誰にでも笑顔で優しいお兄ちゃん。いつもごめんね。いつもありがとう。強くあたっているけど、お兄ちゃんのこと、
「大好きだよ。」