最優秀賞 【小学生部門】 益田 幸奈
やくそく
宇部市立川上小学校 二年 |
わたしの二番目の兄は、自へいしょうです。おしゃべりはできないけど、いつもわらっている和音兄ちゃんです。
おふろが大すきです。おふろからあがって、パジャマをきて、おちゃを一口のんで、またおふろに入ります。手をぐるぐるまわして、とびはねます。まわりの人は、へんな人だなとめいわくそうです。わたしはなれているけれど、お兄ちゃんはすこしめだつみたいです。
わたしが小学校に入学した時、お兄ちゃんはしょうがいをもつ人の学校にかよっていました。
「和音兄ちゃんは何のしょうがいなの。」
とわたしが聞くと、母はこたえました。
「自へいしょうよ。人とのかかわりがにが手なの。自分でとじるって書くの。一人ぼっちがすきでくらいかんじかな。」
わたしはすこしおどろいて言いました。
「そんなわけないやん。お兄ちゃんは一人ですぐどこかにいっちゃうけど、みんなといることも大すきだよ。それにいつも楽しそうだもん。ぎゃく、ぎゃく、自分でとじていないよあけっぱなしだよ。」
母はうなづきながら言いました。
「自へいしょうの名前をつけた人がまちがえたんかね。」
わたしと母はわらいました。
和音兄ちゃんが、わたしのおやつをかっ手にぜんぶたべた時、わたしは和音兄ちゃんをおこりました。すると、一番上のお兄ちゃんにおやつをおきっぱなしにしたわたしがわるいと、おこられました。わたしが、なっとくできずにないていると、一番上のお兄ちゃんだって、ずっと前に大じなつう知ひょうを和音兄ちゃんにハサミでバラバラに切られてしまったことを話してくれました。つう知ひょうをかたづけないあなたがわるいと、おやにしかられて、その時はなっとくできなかったそうです。和音兄ちゃんのせいでおこられても、しかたないと思えるようになりました。自分が先に気をつければいいだけだからです。
お父さんは、わたしにはべんきょうしろとうるさいのに、和音兄ちゃんには言わないところは、なんかずるいと思います。お兄ちゃんの学校はときどきジョイフルでハンバーグをたのんでたべるじゅぎょうがあるそうです。うらやましいとおもいます。でも和音兄ちゃんを見ていて、いつも思うのは、大へんそうだなということです。お兄ちゃんは、自分のやってほしいことも、こまっていることも、上手につたえられません。赤ちゃんのなき声がにが手で、わたしも小さい時にいっぱいこまらせたそうです。ラーメンは「うまかっちゃん」ときまっています。みそもしょうゆもほかのとんこつも、なっとくしません。トイレに行きたいと言えないので、はじめて行くばしょはソワソワしていないかかぞくみんなで気にしています。スーパーではぐれたら、わたしがさがしに行きます。チョコレートコーナーかバームクーヘンコーナーの前でよく見つけます。とつぜんキーキーと大ごえをだしてあばれることがあります。でもそういう時は、何かりゆうがあるので、母とそれを考えます。お兄ちゃんも大へんそうだけど、わたしもつかれます。そんな時に母が話してくれました。
「和音兄ちゃんはね。生まれてくる前に、かみさまとお話したの。つぎの人生は、思いどおりにならないことが多いよ。ごかいされることもあるよ。たすけてもらうことばかりだよ。でもきみならやれると思うよ。どうするってね。そしたらお兄ちゃんはね、やってみますってこたえたんだよ。あとね、うるさい妹もいるけどねって、言われたんだよ。」
そういえば母は、
「もうかみさまわーくんは」
と言いながら、お兄ちゃんのかたづけをしていました。かみさまならしかたがないと、わたしはしぶしぶてつだうようになりました。わたしと姉がけんかをすると、母は言いました。
「わーくんは、生まれて今まで一ども人のわる口をいったことがないの。そしてこれからもずっとね。」
お兄ちゃんにはおそわることがいっぱいです。でもわたしは、すぐにわすれてよけいなことをいってしまいます。
わたしは、かみさまとどんなやくそくをして生まれてきたのかな。